湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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お久しぶりです!というか本当に遅くなってしまってすみません!
ようやく最新話が投稿できました!!!
この1か月間Twitterも週1で更新できるかどうか……という状態だったので、色々大変でしたが、とりあえずどうにか書きました笑
今回も読んでいただければ幸いです!


Re:イチから始める女子寮生活

 

 

 

鮮やかな群青の空に、夜の帳が降りてくる。

空にはもう夕暮れの面影はなく、辺り一面を埋める闇と、その中で光る街灯が、夜の訪れを告げていた。

 

「あ……着いちゃいましたね」

「なんか、あっという間だったな」

 

そんな言葉を交わしながら、目の前の建物を見上げる。

湊さんと話しているうちに、気がつけば俺たちは寮の前に着いていた。

……と言っても、湊さんは話している最中もどこか上の空と言った感じで、少し心配になるほどだったのだが……。

 

「……スーツケースを、持って戻るのって……なんだか、恥ずかしいです」

 

そう言うと、湊さんは顔をこわばらせながら、口角を少し上げる。

その様子といい、来る最中の反応といい、湊さんがこれからのことを案じて緊張しているのは、俺にもわかるほど明確であった。

 

「大丈夫?……少し休むか?」

「い、いえっ!大丈夫です。ボクなら、全然……」

 

俺の意図を悟ったのか、湊さんは焦ったように笑顔を形作る。

しかし、言葉とは裏腹に、彼女の両肩は小刻みに震えていた。

 

「(まあ……そりゃあそうだよな)」

 

湊さんは……1度は、何も言わずに出ていこうとした身だ。

その罪悪感は、並大抵のものでは無いのだろう。

それに、スーツケースを持っているから言い訳なんてできないし、気まずい空気になるのは目に見えている。

そう考えたら、彼女が緊張しているのも、仕方のないことなのかもしれない。

 

「……湊さん」

「ひゃっ!?ゆ、悠さん?」

 

彼女の両肩に、そっと手を置く。

 

「俺がついてるから、安心して……そばに、いるからさ」

「……っ!?」

 

緊張が解れるようにと祈りを込めて、耳元でそっと囁く。

いきなりだったからか、湊さんは少し身体を震わせた後、拗ねたように頬を膨らませていた。

 

「もうっ、くすぐったいですよぉ……!」

「ごめんごめん!」

「でも……ありがとう、ございます……よし、行きます」

 

深呼吸をすると、彼女は意を決したような表情を浮かべる。

 

「じゃあ、開けるからね?」

「はい」

 

そうして俺は、眼前に重く佇む扉を開いた。

――湊さんなら、大丈夫。

そんな思いを胸に、俺は彼女を決戦の地へと連れて行くのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「――失礼します。湊さん連れてきたよ」

「……た、ただいま……帰りました」

 

俺の声に続けて、湊さんは声を震わせながら言葉を紡ぐ。

もうみんな揃ってるかな……?

 

「円卓の騎士!お姉様!おかえりなさ……って、どうしたのだ!?」

「……え?」

 

俺達の声に反応し、奥の方から大垣さんが出てきてくれた……が。

何故か湊さんの顔を見た途端……彼女は突然、目を大きく見開いて驚いたような表情を浮かべた。

 

「どうかしたの〜?」

 

大垣さんの声につられて、ぞろぞろとみんなが玄関に集まってくる。

 

「飛鳥お前……なんか、目の周りが赤く腫れてねぇか……?」

「い、いえっ、そんなことは……」

「……湊……」

「もしかして……八坂さんが泣かせた!?」

「あ、いや……ち、違うよっ!?」

 

あらぬ誤解を受けそうになり、皆見さんの言葉を必死に否定する。

ま、まあ……正しいっちゃ正しいんだけど、なんだろう……。

とりあえず、色々と語弊があるから、認める訳にはいかないだろう。

 

「そういえばお姉様、そのピンとネックレスはどうしたのだ?」

「あ、これは……悠さんから貰ったもので……」

「綺麗なネックレスですね〜湊さんにお似合いです!」

「そのヘアピンも似合っているわ」

「あ、ありがとう……ございます」

 

付けていたプレゼントを褒められ、少し頬を赤らめる湊さん。

やべぇ……俺が褒められてるみたいで、めっちゃ嬉しい。

 

「いいなぁ〜私もそういうの欲しいなぁ〜……って、あれ?飛鳥さん、その荷物は?」

「……っ……」

「スーツケース……ですね」

「旅行に行ってた……ってわけじゃないよね?」

「……湊?」

 

予想通り、俺の時と同様にスーツケースを指摘され、湊さんは言葉を詰まらせる。

……頑張れ、湊さん。

 

「これは……どういうこと?」

「それは……」

 

西園寺さんにジリジリと詰め寄られ、次第にその表情が曇り始める。

……こうなったら、やっぱり俺が……!

 

「いや、それには深いワケが――」

「大丈夫です、悠さん……ボクが、言いますから」

 

言いかけた言葉が、決意のこもった声に遮られる。

 

「湊、さん……」

 

……そうして、彼女は話し始めた。

自分の存在が、皆に迷惑をかけてしまっていることも。

何も言わずに、出ていこうとしていたことも。

俺に……助けられたことも。

そして今日、この場で……別れを告げようとしていたことも――

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「――それで、今まで悠さんの家に行っていました」

「そう……」

 

一通り話し終えると、皆さん様々な反応を示していたが、驚きとそれに伴った悲しみの感情は、ただ1人の恋人を除いて全員に共通していることであった。

 

「つまり、お姉様はみんなに迷惑かけたくないから、ここから出ていこうとしてた……ってことなのだ?」

「そう……ですね」

「そんな、湊さん……!」

 

予想していた……恐れていた反応が、次第に返ってくる。

心を強く持ったはずだったのに、心が苦しくなってくる。

 

「でも、どうして飛鳥さんは戻って来てくれたの?だって、そのまま八坂さんと別れて行っちゃうことだって出来たのに」

「それは……」

 

美結さんに指摘され、二の句が継げなくなる。

"別れを告げずに去っていくのが嫌だったから。"

それが本心であるはずなのに……どうして、僕は……。

 

「悠さんと……みなさんと、別れたくなくて……」

「お姉様……」

「湊さん……」

「本当は……ここでお別れを言いに来たんです。今までありがとうございました、って」

「飛鳥……」

 

瞳が潤み始め、段々と視界がぼやけてくる。

胸の奥底から、何か熱いものが込み上げてくる。

ダメだ……僕、もう……っ!

 

「……でも、やっぱり……まだ、ここにいたいです……っ!」

「飛鳥さん……」

 

本心を告げた瞬間、涙が堰を切ったように溢れ出す。

悠さんの前で出し切ったはずだったのに……まだこの感情は、とどまることを知らない。

 

「……湊」

「風莉、さん……」

「……私、少し怒っているわ」

「え……?」

 

予想外の言葉に、自分の耳を疑う。

しかし、風莉さんは口を尖らせ、ムスッとした顔でこちらを見つめていた。

 

「なんで、勝手にいなくなるの?」

「そ、それは……」

「……湊の決断が、私たちを思ってのことなのは、"色々と"分かっているわ」

「…………」

 

不満そうな顔で、風莉さんは含みのある言葉を口にする。

きっと、その中には女装がバレたらどうしようという僕の心配も含まれているのだろう。

 

「けれど、私は……いえ、私たちは、そんなこと……望んでいないわ」

「そ、そうなのだ!お姉様がいなくなるなんて嫌なのだ!」

「湊さんがどこかへ行ってしまうなんて……そんなの嫌です……!」

「風莉さん……ひなたさん、柚子さん……」

 

そう言って、お嬢様達は僕を引き留めようと必死に説得してくれている。

……良くないってことは、自分でもよく分かっている。

けれど、それでも僕は、そんな状況を――どうしても、嬉しいと思ってしまったんだ。

 

「でもボクは……本来、ここにいてはいけない存在で……っ!」

「それでも、湊にはここにいて欲しいの。だって、私たち……あなたのことが大好きだから」

「……っ……」

「あーその、なんだ。お前がいなくなると……この寮のこと、誰がやるんだよ。これは……他の誰にも、代わりができるもんじゃないんだよ」

「飛鳥さんがいなくなったら、私だけじゃなくて、学園のみんなも悲しむから!そのくらい、飛鳥さんの存在って大きいんだからね!」

「七海先生……美結さん……っ」

 

七海先生や美結さんまでもが、僕のことを止めようとしてくれている。

その事実が、決心した僕の心を鈍らせてくる。

 

「――ほら、湊さん」

 

僕を支えてくれた最愛の人に、そっと背中を押される。

 

「怖がらずに、ちゃんと聞いてみな?」

「悠、さん……」

 

そんなこと聞いたら、風莉さんたちはきっと了解してくれるだろう。

その想像が容易につくからこそ、聞いてはいけないのだと自分を戒める。

けれど……。

 

「たまには、頼ってもいいんじゃないか?」

 

彼はそう言って、笑顔で僕を送り出してくれた。

 

「(……まったく、悠さんはお人好しなんですから……)」

 

悠さんの言葉を聞いた瞬間、自然と頬が緩み始めるのが分かる。

この人は、何度僕のことを救えば気が済むのだろう。

そんなことすら、思い浮かんでしまう。

――でも。

今の僕には、悠さんがいるだけで――僕を支えてくれる大切な存在がいるだけで――この上ないくらいに嬉しかったんだ。

 

「すぅ……はぁ……風莉さん。ボクは、ここにいても……いいん、ですか……?」

 

……おそるおそる、願いを口にする。

 

「ええ。良いに決まっているわ。それが、ばあやとの……約束だし。それに……湊はもう、家族だもの」

「か……ぞく……」

「あなたのこと、頼まれたのだから……もう、勝手にいなくなるなんて、許さないんだから……っ!」

 

震える手が、そっと優しくて温かいものに包まれる。

その瞬間、留めていたものが堰を切って溢れ出す。

 

「うぅ……か、かざり……さん……っ」

「これからも……私たちの側に、いてくれるかしら?」

 

そう言った途端、僕の両手にたくさんの温もりが重なる。

風莉さん、ひなたさん、柚子さん、美結さん、七海先生……悠さん。

みんなの温かい手が――僕の手を包み込むように重なる。

 

「お姉様、どこにも行かないで……?」

「湊さんは、ここにいていいんですからね?」

「理事長もそう言ってるんだ、甘えちまえよ」

「もう、飛鳥さんは……この学園の一員なんだから!」

「み、みな……さん……っ!」

 

一人一人の言葉が嬉しくて、嗚咽混じりの声が出る。

 

「は……い……っ、これからも……よろしく、お願いします……っ!」

 

溢れんばかりの感情を抑えながら、振り絞るように言葉を紡ぐ。

みんなの手から伝わってくる温もりを噛み締めながら、僕は風莉さんの問いに答えたのだった。

 

「……湊さん」

 

背後から、頭にぽんと手が乗せられる。

 

「悠、さん……」

「な?俺の言った通り、だろ?」

「……はいっ!」

 

絵に書いたような幸せが、ただ純粋に嬉しくて。

微笑みを返したいけど、上手く笑えなくて。

みんなの温もりに触れながら、呼吸を整えて。

けれどまだ、泣き止むのは無理そうで――

 

「……パーティー、始めましょう?」

 

そう言って差し出された手に、そっと手を伸ばす。

――家族だと言って貰えた。

――そばにいて欲しいと言って貰えた。

……ねぇ、おばあちゃん。

僕、お嬢様の力になるどころか、新しい家族を与えられちゃったんだ。

もしかして、これが本当の目的だったのかな?

僕が一人ぼっちにならないように……寂しくならないように、家族になってくれる人たちの側にいるようにって……。

 

「(そういうこと……なのかな……?)」

 

虚空に向かって、問いかける。

それを確かめる術は――もう、存在しない。

……でも。

おばあちゃん……お母さん、お父さん。

もう僕は……寂しくないよ。

みなさんのいる、大切な場所を見つけたから。

僕を支えてくれる人を見つけたから。

僕のことを第1に思ってくれる、大切な……を見つけたから。

だから――

 

「(ありがとう……そして、さよなら)」

 

心の中で、そっと別れを告げる。

そうして僕は、みんなのいる"新たな自分の居場所"へと帰ってきたのだった——

 

 

 




というわけで、いかがだったでしょうか?
今回で湊くんの過去編?がようやく終わりましたね~
これからは湊くんと悠君のイチャラブが見たいです……けどそれを邪魔するものがいるとかいないとか……?
とりあえず次からは平穏な日常が戻ってくると思いますので、ぜひ読んでいただけたらと思います!

追記
本当にすみません。気になる終わり方をしておいてここまで間が空いてしまったことが申し訳ないです……
次の投稿もたぶんまた間が空いてしまう可能性が……すみません……
音沙汰ないからもう投稿しなくなったのではと思われるかもしれませんが、私自身はやる気MAXなので、そこは心配しないでください!
感想ありがとうございました!毎回読むのが楽しみなので、書いてくれたら嬉しいです!
それではまた次回!
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