今回の話はここから湊と悠の関係が色々変化していくための準備の話なので、次の話からまた一悶着あるかも……という感じです笑
というわけで、今回もぜひ読んでいただければと思います!
追記
遂にEXストーリーを投稿したので、見てみてください!
R18タグの関係上別のシリーズとして投稿しているので、チェックしていただけると幸いです笑
「――いやほんと、ごめんね湊さん」
「い、いえいえそんな、気にしないでください」
飲み物の用意をしながら、悠さんは改めて謝罪の言葉を口にする。
前回と同じところに座り、目の前でくつろぐ姉妹と雑談していた僕は、色々と複雑な思いを抱えているせいか、そんな陳腐な返ししか出来なかった。
「そうだよお兄、もっと謝らないと」
「誰 の せ い だ と ?」
「ご、ごめんなさいお兄ちゃん……私たちのせいで準備が遅くなっちゃったんだもんね……」
「そう……そうなんだよ真白……!」
「私のせいで……お兄ちゃんに、迷惑を……」
にひひと笑いながら、悠さんをからかう優依さんと、それに対して溜息をつきながら怒る悠さん。
その一方で、真白さんは悲しそうな表情を浮かべながら俯いてしまった。
なんというか、この少しのやり取りだけで、悠さんが普段2人とどのように過ごしているのかわかった気がする。
「ま、真白?」
「私、悪い子です……もうお兄ちゃんの隣に立つ資格なんて……」
「ま、真白さーん?」
「罰なら……どんな事でも受けるから……っ!何でも……するから……っ!私の事……捨てないで……っ!」
「そこまで言ってないからね!?」
もはや行き過ぎた愛に対して、半ば驚きながらツッコミを入れる悠さん。
ま、真白ちゃんってすごいブラコンなんだろうなぁ……。
「そうだよ真白ちゃん、お兄もそこまで怒ってないって」
「いや、お前は反省しろよ」
「あはは……」
無邪気に笑いながら、変になった空気を変えるように、優依さんは兄を茶化し始める。
きっといつもこうして関係を良好にしてきたのだろうと容易に想像はつくけれど……なんというか、僕には苦笑することしかできなかった。
「あ、うちの兄が本当にすみません」
「お 前 マ ジ で 覚 え と け よ ?」
「ほ、本当に仲が良いんですね……」
「はいっ!私たちは、特別な絆で結ばれてますから……!」
だんだんと見慣れてきたやりとりを見ながら、ぽつりとそんな言葉が出てくる。
しかし、真白さんが嬉しそうにそう言うと、残りの2人はバツが悪そうにしながら同時に右頬をかいていた。
やはり2人とも真白さんに振り回されながらも、その純粋さには逆らえないようであった。
「あ、もし良かったら、悠さんのこと教えてくれませんか?」
「お兄のこと?」
ふと、思いついたことを口にする。
実家での悠さん……ちょっと気になる……!
「はい!ボクの前での悠さんと違うのかなぁ、と」
「それはもう!任せてください!お兄ちゃんのことなら、なんでも知ってますから!」
「いや、流石にそれは怖いって」
意気揚々と目を輝かせながら話す真白さんに、素のトーンで冷静にツッコミを入れる優依さん。
何故だろう……付いていないはずなのに、真白さんの耳と尻尾がぴょこぴょこ動いているのが見えてきた。
「でもまあ、そうだなぁ……お兄は料理……というか家事全般が好きだったね〜!料理美味しかったし」
「お兄ちゃんの料理は何よりも美味しかったですからね!」
「ちょっ、恥ずかしいからやめろって」
白い忠犬と黒い野良猫のような2人に褒められ、満更でもなさそうに照れる悠さん。
僕の前とは違うその照れ方は、今まで見た事のないものであり、僕の目にはとても新鮮に映った。
「ふ〜ん、恥ずかしいんだぁ?」
「な、なんだよ、急に」
そう言うと、黒猫妹は目を細めてニヤリと笑みを浮かべる。
明らかになにか企んでるんだろうけど……どうしたんだろう?
「飛鳥さん、その本棚の3段目から教科書全部出してみて?」
「え?」
「――はっ!?」
突然の指示に戸惑う僕をよそに、目を見張りながら信じられないといった様子で驚く悠さん。
はっと何かに気づいたようだったけど、あの本棚に何かあるのかな……?
少し疑問に思いながら、部屋の隅に置いてある本棚に視線を向ける。
「だ、ダメだよ優依ちゃん!お兄ちゃん必死に隠してるんだから!」
「おいおいおいおい……ガチで?」
声を震わせながら、信じられないものを見るような目で妹さんたちを見る悠さん。
「実家と大体同じところにあるから分かりやすかったけど、言っちゃダメだよ!」
「いや、モロやん!?」
「はわわっ!ご、ごめんなさい……!」
「流石にわかりやすいところに置くお兄が悪いって」
「なんでだよォォォ!?」
天然気味に暴露していく真白さんとそれを煽る優依さん。
そして、いつもよりテンションが1.5倍くらいになった状態で叫ぶ悠さんを横目に、僕は1人考えていた。
これ、何の話なんだろう……?
「察しが悪くてすみません……あの……何の話なんですか?」
「それは――」
「やめろっ!?」
「adultyなbookだよ」
「そこまで言うなら変な言い方するなよマイシスタァァァァァ!!!」
男子学生の悲痛な叫びが、部屋の中でこだまする。
こんなテンプレみたいな流れ、現実で初めて見た気がする……。
「でもお兄の本、ジャンルが幅広くて凄いよね」
「年上モノも年下モノも……い、妹モノもありましたね……えへへ」
「――――」
「ゆ、悠さんっ!?」
場所どころか内容すらも暴露され、僕の彼氏(仮)は声を失って膝から崩れ落ちる。
確かに、そういう趣味とかを他の人に暴露されるのはきついよねぇ……。
「ケモ耳のやつもあったし――あ、"男の娘モノ"もあったよね」
「えっ!?」
「ぐはぁっ!?」
黒猫の口から放たれた一言に、悠さんだけでなく、僕も衝撃を受ける。
「(男の娘……男の娘って、確か……)」
"男の娘"という言葉の意味を、衝撃で鈍った頭で必死に考える。
それって……僕も入る……ってこと、だよね?
「お、男の娘……?」
「そうそう!この人見た目が女の子であれば、男でもいけるんだよね。普通に驚いちゃったよ」
「確か……『女の子よりボクがいいの?』っていうやつだったと思います!」
「あああああぁぁぁぁぁ!!!」
「お兄ちゃん!?」
「はわわっ!?あばっあばばばばば……っ!?」
「え!?ど、どうしたの飛鳥さん?」
作品名すら暴露されて半泣きで絶叫する悠さんの隣で、もはや挙動不審な驚き方をしてしまった。
悠さんは男でも……え、僕……え?
女の子より……僕……えええええっ!?
「あー……やっぱり男の娘はきついかぁ……お兄、その趣味はやめた方がいいぜ」
「そ こ ま で に し と け よ ?」
「おっと、流石に怒らせすぎたか……って、痛っ!?」
いつものようにニヤけながら冗談を言う優依さんに、全力で脳天に手刀を入れる悠さん。
妹だからきっと加減しているはずだけど……痛そうだなぁ。
「何すんのよバカお兄ぃぃぃ!!!」
「愛の鞭だよ」
「やりやがったな!お兄にしかぶたれたことないのに」
「いやそれ俺じゃねぇか」
喧嘩のようにすら見えるやり取りをしながらも、冗談を言ってふざけ合う八坂兄妹。
やっぱり、仲良いんだなぁ……(棒)。
「あ、でもこんなにジャンルが幅広いのに、共通してるところもあるんですよ!」
「そ、そうなんですか?」
「あ、飛鳥さん気になる?気になっちゃう?」
「お前復活早いな」
頭を抑えたまま、いつもの口調に戻る優依さん。
"男の娘"と共通してることなんてあるのかと思いながら、再び"男の娘"という言葉が頭の中を駆け巡る。
「き、気になると言われると少し語弊があるというか……なんというか、その……」
「あ〜可愛い!!!健気だねお兄の彼女さんは〜うんうん、えーとね、なんかお兄はね、Mな子が好きっぽいよ」
「――――――――」
今日1番の驚き顔を見せた後、下を向いてプルプルと震え始める。
誰が見てもガチギレしてると分かるような姿を見ながらも、シスターズは話を続ける。
「そうですね、なんというか……従順?な感じの人ですかね?」
「じ、従順……」
Mな子……従順……。
2人の言葉が、頭の中をぐるぐると回り続ける。
悠さんは、そういう子が好きなんだ……。
「まあ普通にお兄がSっぽいからね、仕方な……痛っ!?2度もぶった!?しかも拳で!?」
「抵抗するし、21歳でもないけど……お前マジで許さんからな?」
続けようとする優依さんの頭に、悠さんの握り拳が炸裂する。
「うぅ……真白ちゃんこれ痛いよぉ……」
「よしよし、自業自得だよ〜優依ちゃん」
涙目を浮かべて抱きつく優依さんの頭をそっと優しく撫でながら、白い髪の少女はきっぱりと言い捨てる。
「……お兄ちゃんは大丈夫ですか?」
「うぅ……湊さぁん……」
「へ?あ、悠さん……!?」
まるで妹の真似をするように、僕の彼氏は僕の胸に飛び込んでくる。
なんで僕も抱きつかれてるの!?
「は、はうぅっ……よ、よしよし、辛かったですね〜!」
「――っ――!?」
以前自分がされた時のことを思い出しながら、悠さんの頭を抱き寄せてそっと優しく撫でてみる。
「は、はわわっ!?」
「お、おう……これは、すごいね」
そんな僕たちの傍で、白黒姉妹は顔を赤くしながらこちらをじっと見つめている。
ついやってみたけど、これは流石に恥ずかしい……!
「やべぇ……なんか目覚めそう」
「こうして、お兄の性癖がまた開拓されていくのであった――完」
「いや終わるなよ!……まあ、色々と終わりそうだけどさ!?」
何かを終わらせようとする妹さんに対して、紅潮した顔でツッコミを入れる悠さん。
しかし、僕はあまりの恥ずかしさに、その後数分間悠さんと目を合わすことができなかったのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――そ、それにしてもお兄に彼女ね〜、どんなところが良かったの?こんなダメダメそうな人なのに」
悠さんの拳がクリーンヒットした頭を抑えながら、優依さんは毒を含んだ言葉を放つ。
殴られたばかりなのに、復活早くない……?
「おい、さりげなくディスるなよ」
「そうだよ優依ちゃん!お兄ちゃんは私たちの大切な大切なお兄ちゃんなんだから!彼女だって、いつかはできるものだったんだよ……うぅ……」
「そんなに喜んでくれるのか、真白!」
「いやお兄、多分それ違うと思う……」
きっと特別な感情を抱いていたであろう真白ちゃんの涙に対して、勘違いで嬉しそうにする悠さん。
よくある物語の鈍感主人公って、現実だとこんな感じなのかな……。
「でも、お兄のどんなとこが好きになったの?」
「え、えーと……」
「そんなの、全部に決まってますよね!お兄ちゃんは完璧なお兄ちゃんですから!」
「真白、あんたは黙ってなさい」
そう言うと、優依さんは少し暴走気味の真白さんの頬をムニっと引っ張る。
「ほ、ほめんにゃしゃい……ゆいちゃぁん!」
口を横に伸ばされながら謝る真白さん。
なんだろう、犬と猫のじゃれ合いを見てるみたいで心が洗われていく……。
「それで、どんなところが?」
「そう、ですね……」
質問されると同時に、"好き"という言葉が頭の中で反芻する。
僕の"好き"というのは、友達としてのものなのか。
それとも……。
「(とりあえず、好きな所を挙げながら考えようかな……)」
「そうですね……まずは、優しいところ……ですね」
「そうですよね!そうですよね!」
「なるほどねぇ〜確かに、お兄は基本優しいからね」
「あ、ありがとう……」
少し頬を赤く染めながら、こちらから顔を逸らす悠さん。
その照れ顔に不思議と心が揺れ動くのを感じつつ、悠さんの好きな所を挙げながら、この気持ちの真意を確かめる。
「後は気遣いができるところとか、僕に寄り添ってくれているところとか、辛い時はいつも助けてくれるところとか、誰よりも僕を大切にしてくれているところとか、少し不器用だけど一生懸命なところとか、それから――」
「す、ストップストップ!落ち着いて!」
「な、なかなかやりますね……飛鳥さん」
優依さんに止められ、はっと我に返る。
なんかこれ……デジャブを感じるような……?
「一応、もっとあるんですけど……?」
「………〜〜〜ッッ!」
「ほら、この人顔真っ赤だから止めてあげてください!」
「こ、このままだと、恥ずか死しちゃいますよぉ!」
真剣に心配する双子の言葉を受け、悠さんの方へ顔を向ける。
悠さんは、先程とは比べ物にならないくらい顔を紅潮させながら、目をひたすら泳がせていた。
「ご、ごめんなさい……悠さん」
「いや、そんな謝らなくても……俺としては、その、嬉しいから……さ」
照れ隠しで目を合わせずに、素直に想いを伝えてくれる悠さん。
……………………。
悠さんは僕のことを何度も助けてくれて、僕のために尽くしてくれた。
それこそ、僕の心のトラウマである"家族"のことも、彼がいたおかげで僕は乗り越えることが出来たんだ。
それに、僕が寮に戻れたのも悠さんが引き止めてくれたおかげだし……。
……ああ、そっか。
心の中でバラバラになっているピースがカチリとハマり、その形を成していく。
「(ボクの中で、悠さんの存在は……こんなにも、大きかったんだなぁ……)」
改めて、自分の気持ちを再認識する。
悠さんは……僕の中で、誰にも変えがたい存在なんだ。
それほどまでに大切な人なんだ、と。
「(……………………)」
ふと、そこで新たな疑問が頭の中に生じる。
じゃあ僕は――悠さんに、どう思われたいんだろうか。
「はいイチャイチャ禁止〜!一応、妹たちが見てるんだからね?」
「それで、お兄ちゃんはどうなんですか?」
「そ、それは……」
姉妹にそう言われ、未だに赤くなった頬の熱が冷めないまま悠さんは口ごもる。
"自分はどう思って欲しいのだろうか?"
その様子を見ながらも、僕の頭の中ではその疑問がぐるぐると回り続ける。
彼は、恩人としても、友人としても、自分の中でかけがえのない存在になっている。
それは確かなことであり、今まで何度も感じてきたことだ。
けれど、やはりそれだけでは無いのかもしれない。
「(真白さん……優依さん……)」
今日この2人と会った時に感じた、このモヤモヤした気持ち。
悠さんとは仮の恋人関係であり、2人も悠さんと兄妹であるから、何も変に思うことは無いはずなのに。
感じて……しまったんだ。
この――ドロドロとした醜い感情を。
「(あの時感じた、気持ちは……まさ、か……?)」
「俺は、その……湊さんの全てが、好き……だから」
「「だよねぇ」」
「これ聞く意味あった!?」
3兄妹の会話が、僕の耳からすり抜けていく。
何か大切な話をしているようだったが、もうそれどころじゃない。
「(そんな……嘘だ……)」
自分の気持ちが信じられず、思考が止まり始める。
だって、僕は男で、悠さんも男で……。
でも、僕はこんなこと思ってるし、悠さんも僕のことを好きって言ってくれているし……。
「み、湊さん?」
「ひ、ひゃいっ!?」
「大丈夫?具合でも悪いの?」
「あ、いえ、そういうわけでは……」
突然名前を呼ばれ、驚いて変な声が出てしまった。
「お兄の愛の告白にドン引きした、とか?」
「いや、それだったら流石に泣くからな?お兄ちゃん、お前の胸で号泣するからな?」
「うわ……」
「お前が引くなよ!?」
軽快な会話が、兄妹間で繰り広げられる。
でもなんだろう……さっきまで平気だったのに、意識してきただけで、心がモヤモヤしてくる。
「お兄ちゃん!私の胸ならいつでも貸しますからね!それこそ……泣く以外でも……っ」
「真白ちゃんストップストップ!今この人彼女持ちだから」
「あぅ……飛鳥さん。お兄ちゃんのことを、よろしくお願いします……!」
「……っ……あ、あはは……僕なんかで良ければ……」
真白さんの言葉に動揺し、一瞬反応が遅れてしまった。
やっぱり、僕は……。
「湊さん!"僕なんか"とか言わないでくれ!逆に俺の方が釣り合ってないんだから……」
「こいつ情緒不安定かよ……」
メンタルが弱った兄に対して、吐き捨てるような言葉と共に冷たい目線を向ける優依さん。そんな他愛のない会話を聞きながらも、僕はずっとこの胸に巣食う感情のことを考えていたんだ。
……………………。
――思えば、この時から気づき始めていたのかもしれない。
この気持ちが……もしかしたら"恋心"なのかもしれない、と。
「あれ、お兄ちゃん。雨が降ってきそうですよ!」
「ほ、ほんとだ……!とりあえず、洗濯物を取り込まないと……」
窓の外に広がる空に、暗雲が立ち込める。
この時から、僕達の関係は……少しずつ動き始めたんだ。
そして、この気持ちの変化が、後に自分を苦しめることになるなんて……この時の僕には、知る由もなかった。
いかがだったでしょうか?
個人的には悠君の兄妹間の関係性がすごく好きなのでもっと書きたかったのですが、流石にメインヒロインが黙ってなかったので、できる限り抑えました笑
……という話はここまでにしておいて……前回の投稿から約1ヶ月も経ってしまってすみませんでした!
一応空き時間を見つけて書いてはいたのですが、前よりも筆が進まず……。
ですが、次からは話が大きく動くと思うので、本腰入れてしっかりと書いていきたいと思います!
湊くんと悠君の関係が今後どう変化していくのか、楽しみにしていてください!
次の話やEX1の続きは現在プロット段階で進んでいますので、気長に待っていただければと思います。
というわけで、次回も読んでいただければ幸いです!
追記
今回も感想ありがとうございます!感想を見た瞬間に嬉しくて謎の達成感が得られるので、マジで支えになってます!!!
というわけで次も頑張ります!