ということで、本編の続きです!
忘れている方も多いと思いますが、前回は美結さんに連れられて寮へ向かう最中に何か不審な影を見かけて……という話でした。そのため、今回は満を持してその人物が登場します!
悠君にとって非常に因縁のある相手なので、楽しみにしていてください!
それでは、今回も読んでいただけると幸いです。
「――では次の質問です!」
「今度は何だ……!?」
新たな質問に身構えながら、寮への道を歩く。
今日は湊さんと会う予定だったのだが、先生の手伝いで遅れるらしく、代わりに皆見さんに連れられて寮へ向かっている……のだが。
「(いつまで続くんだ……これ?)」
困り果てた俺とは対照的に、玩具を前にした猫のような、ニヤリとした笑顔を浮かべる皆見さん。
最初の方は普通に話していたのだが、歩き出してから割と経ったあたりで、いきなり満を持したというような感じで新聞部の企画(お嫁さんにしたいランキングNo.1の湊さんの理想の男性とは!?)というもので質問攻めされたのだ。
まあ、企画自体に申したいこともなくはないけど、それにしても急過ぎて驚いてしまった。
「ずばり!飛鳥さんとの初キスは?」
「はっ……!?そ、それはちょいと深掘りし過ぎじゃないか!?」
思った以上に攻めた質問に、思わずツッコミを入れる。
確か前にも同じような質問が飛んできたような……てかさっきまで、前に聞かれた馴れ初めや好きなところの細かいverとかそんなだったのに……。
「これが前に出したやつが好評でさ〜!第2弾ということでもっと攻めようかと……」
「何でそうなる!?てか出てたのかよ前のやつ!」
企むような悪い顔で笑う皆見さんにツッコミを入れながら、街路樹の木陰を2人歩く。
まあ、確かに湊さんは学園でも有名人らしいし、彼女に関する新聞なら人気になるのだろう。
……正直、恥ずかしいけど。
「それで、どうなの? 熱く濃厚なものをしてしまったのかにゃ???」
「ばっ、そ、そんな訳ないだろ!? そういうのはもう少し距離感が縮まってからで――ッ!」
背後から気配を感じ、美結さんの手を引く。
「ふぇ?や、八坂さん!?は、恥ずかしい……というか、八坂さんには飛鳥さんという人が――」
「静かに……前から来る。5人……いや、それ以上か」
「ちょっ、ど、どういうこと?一体何が――え?」
皆見さんから素っ頓狂な声が漏れる中、前方からなんだかガラの悪そうな集団がこちらへと向かってくる。
これは……どういうことだ?
「……あいつか?」
「そうです!あいつです……っ!」
顔がはっきり認識できる程の距離になり、先頭を歩く2人の会話が聞こえてくる。
あいつは確か、湊さんと出会った時の――
「おい、お前」
「……俺のことか?」
周囲を見ても俺たち以外の人が居らず、仕方なく返事をする。
どう見ても目的は俺……か。
「──こいつのこと、覚えてるか?」
「ああ、しつこくナンパしてたやつだろ?覚えてるよ」
「そう、か……」
リーダー格と思わしき人物に連れられ、後ろでウォーミングアップをし始める不良5人。
ナンパ男の方は戦意がないらしく、後ろの方に下がってしまったが……これはまずいな。
「え?え?これどういうこと?どんな状況?」
「……走って逃げてくれ」
「……え?」
「学園まで、走って逃げてくれッ!」
戸惑う皆見さんに真剣な声色で伝え、避難を促す。
流石に、俺とこいつらの問題に、関係ない皆見さんを巻き込む訳にはいかない。
「え、でも……それだと、八坂さんが!」
「俺は大丈夫……だけど、もし良かったら、学園に戻って先生とか警備員の方とかに知らせてくれないかな?」
不良達に聞こえないように、そっと小声で伝える。
「うぅ……それなら、急いで行ってくるから……無茶だけは、しないでね?」
「大丈夫大丈夫、ちょっと話し合いをするだけだからさ」
「絶対だから……ね?約束だから……ね?」
「……ああ」
俺の返事に心配しながらも、すぐに連れてくるからと言って皆見さんは学園へと来た道を走り出した。
良かった……これで、最悪の状況だけは免れた。
「ヒュー、彼女は逃がすってか、イケメンだねぇ兄ちゃん」
「さっきの子……あの子じゃねぇ」
「あ、違うのか?もしかして兄ちゃん、二股かけてんのか?」
「そんなんじゃねぇよ、あの子は友達だ」
「友達……ね、手繋いでたけど」
「それはお前らが来たからだよ」
互いに睨み合いながら、湖面に波紋を広げていくように言葉を投げかける。
皆見さん……大丈夫だよ、な。
先に逃がした友人の身を案じながら、目線を男達の方へと向ける。
まあ流石に今回の狙いは俺だし、皆見さんなら大丈夫だろう。
「(……さて)」
眼前に並ぶ6人の不良達とナンパ男を見据え、呼吸を整える。
おそらく……向こうはやる気だ。
そうでなければ、流石にあの人数をこんな道に連れて来ないだろう。
しかし……それにしても、この人数差か。
あのナンパ男は戦意がないから数に入れないとしても――1対6。
「(アニメの主人公みたいにイキリながら戦えればいいんだけど……流石に現実的じゃねぇよな)」
よくある最強系主人公みたいなものを思い出し、自然と笑みがこぼれる。
あんな感じに出来ればいいのだが、超能力も魔法も異能もないこの世界じゃ、それは難しいだろう。
じゃあ今は……俺のできる最善を尽くすだけだな。
「俺は別に恨みとかある訳じゃねぇんだが……メンツってのがあってな」
「まあ、そういうことだろうな」
「ナンパでミスってボコられるなんて恥でしかねぇが……一応うちの仲間なんでな」
「ま、あいつも教育しておいたから、おあいこってことでな」
「それで"おあいこ"とか……小学校からやり直せよ」
「言われてやんのお前〜!口喧嘩では俺らの負けかな?」
軽い口喧嘩をしながら――その時を待つ。
まあ、普通に戦っても、良くて引き分けくらいだし……口喧嘩だけでも勝てただけ十分だな。
「はぁ……ったく、湊さんにも会えてねぇし、ついてねぇなぁ今日は」
ボソリとそう呟き、握り拳に力を込める。
そうして俺は、一気に不良集団の中へと駆け出した。
しかし、そんな状況にあっても、俺の心の中は皆見さんの安否への心配で埋まっていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――走る。走る。
これ以上ないくらいに。
体の限界を出し切るくらいに。
一刻も早く、彼の元へと戻るために。
あたしは……ただひたすらに走り続ける。
「はぁ、はぁ……八坂さん……っ!」
息も絶え絶えで今すぐにでも休みたい体に鞭打って、必死に学園への道を駆け抜ける。
今こうしている間にも、八坂さんはあたしの方に追っ手が来ないように必死に頑張ってくれているのだろう。
それなら、彼の努力を無駄にしてはいけない。
「"話し合い"、とか……絶対嘘だもん……っ!」
彼の言葉を思い出しながら、必死に足を動かす。
あの人達、きっと俗に言う"不良"と呼ばれる人達なんだろうけど……それを前にして、まずあたしの身を守るように動けるなんて……。
私じゃ絶対にできない。というか、この学園の子達じゃ絶対にできないだろう。
「(八坂さん……)」
不良達と相対した時の姿が、ふと頭の中をよぎる。
直前まであたしとふざけながら話していたのに……あの人達が来た瞬間、顔とか雰囲気とかが全部変わっていた。
あたし達の前で見せるような"飛鳥さんの恋人"としての優しい八坂さんではなく、"男"としての八坂さん……。
「(……ちょっと、かっこよかった……かも)」
つい自分の気持ちを自覚してしまい、顔が熱くなっていくのを感じる。
「(……や、やっぱなしなし!飛鳥さんの恋人だもん!こんなこと思っちゃダメ!)」
頭をぶんぶんと振って、浮かんでしまった考えを必死に振り払う。
流石に飛鳥さんもいるのに、そんなこと……。
この気持ちを忘れるためにも、必死に街路樹の影を走り続ける。
「はぁ、はぁ……見えてきた……っ!」
視界の端に、見慣れた校舎が見えてくる。
これで、あとは先生と警備員さんを探すだけだ……!
「はぁ、はぁ、すみません……っ!」
警備員さんに声をかけ、事情を説明する。
そして、その足のまま理事長室に駆け込み、その場にいた西園寺さんにも事情を説明した。
「八坂さんが、不良と……?」
西園寺さんはそう言うと、少し考えるような素振りを見せてから、急いで他の先生方に指示を出してくれた。
これで……きっと大丈夫だろう。
後は、危険なことが起きてしまう前に、間に合えば……っ!
「――皆見さん」
突然後ろから呼び止められ、西園寺さんの方を振り向く。
「はぁ……はぁ……どうしたの……?」
「ありがとう。急いで知らせに来てくれて」
「はぁ、はぁ……そういうのは、八坂さんに言ってあげて……!私は、ただ逃げることしかできなかったから……」
「それでも……っ!……ありがとう」
「は、恥ずかしいな……っと、とりあえず八坂さんのところに行ってきます!」
そう言い残し、校門前で私の案内を待つ警備員さんと体育の先生のところに合流する。
「(お願い……無事でいて……っ!)」
もはや祈りに似た願いを胸に抱きながら、1歩ずつ走り出す。
そうしてあたし達は、八坂さんの待つ場所へと急いで向かうのだった。
いかがだったでしょうか?
なんといつかのナンパ男復活ですけど、まさかの不良を連れてくるというね笑
前の時は悠君にやられてしまったので人数を増やしての再戦ですが、悠君としても前回みたいな初心者ではなく喧嘩慣れしてそうな方々がなんと6人もいるということで、危機感を感じてますね笑
まあ、この人数差でイキリムーブさせるわけにもいかないので、普通にピンチですが、果たして美結は間に合うのか?
そして、湊という存在を知っていながらも、少しずつ心が揺れ始めている美結さんは、この後どうなってしまうのか?
ぜひ次の話も読んでいただければ幸いです~!
追記
美結の一人称「あたし」なの完全にミスしてました……後で直します
いつも感想ありがとうございます!もう嬉しくて毎回楽しみにしているのですが、返信を考えて少し遅れてしまうのが毎回申し訳ないです……
感想とか頂けると有頂天でクソ喜びますので良ければ気軽に……笑
というわけで、次も頑張ります!