湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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またもや期間が空いてしまいました!すみません!!!
というわけで、前回の続きです!
前回は美結さんが走って悠くんの待つ場所へと向かう話でしたが、今回はついに悠の元へと無事にたどり着いたということで、
一体悠君はどうなってしまったのか?そして美結さんたちどうなってしまうのか?
ぜひ今回も読んでいただければ幸いです~!


男の娘が絶対に負けないラブコメ

 

 

 

「――八坂さん……っ!」

 

次第に見慣れた人影が見えてきた瞬間、気がつけばあたしは叫んでいた。

あたしを守り、逃がしてくれた恩人は……ボロボロになりながらも3人と戦っており、その場には3人の人間が血を流しながら倒れていた。

 

「君たち、何をやってるんですか!」

「……ちっ、おいテメェら引くぞ。そいつら連れてけ」

「は、はいっ!わ、わかりましたっ」

 

先生と警備員の方が、怒鳴りながらその喧嘩を仲裁しに八坂さんたちの元へと駆け寄る。

すると、不良達は分が悪いと判断したようで、後ろの方で隠れていたチャラついた男と共に倒れた仲間を連れてどこかへ行ってしまった。

 

「(逃げられたけど、どうにかなった……というか、八坂さんは!?)」

 

血で滲んだ道路に佇む彼の方に、急いで目を向ける。

八坂さんの制服は朱く滲んでおり、その手はおびただしいほどの返り血で真紅に染まっていた。

そして頭から絶えず血を流し、朦朧とした目で不良達が逃げた方向をじっと見つめていた。

 

「八坂さんっ!」

 

その姿に耐えられなくなり、八坂さんの元へと駆け寄る。

気がつけば、あたしは彼の胸へと飛び込んでいた。

 

「み、皆見さん……!?」

 

自分のせいで汚れてしまった彼を、力いっぱい抱き締める。

 

「ごめんなさい……ほんとにごめんなさい……っ」

 

突然のことに驚く彼に、ただただ謝り続ける。

あたしのせいで……こんなことに……っ!

 

「謝らないでくれ、皆見さん。元はと言えば俺のせいなんだからさ」

「でも……それでも……っ」

「だけど、無事でよかったぁ……」

「……へ?」

「ずっと心配だったんだ、皆見さんに何かあったらどうしようって」

 

心底安心したような表情で、彼はそう告げる。

けれど、あたしを安心させようとするその笑顔の裏で、歯を食いしばって痛みに耐えていることに、あたしはもう……気づいていたんだ。

 

「そんな、あたしは……」

「ほんとに良かった……」

「八坂さん……」

 

肩の荷を下ろしたような、そんな安堵の色を浮かべた表情のまま、彼は何度もそう言い続ける。

自分だって、大変な思いをしていたはずなのに……。

どうして、この人は……。

 

「ごめんね、皆見さんにここまでさせちゃって」

「そ、そんなの八坂さんに比べれば全然……」

「皆見さんが助けに来てくれなかったら、正直やばかったよ」

 

嘘偽りのない誠意に満ちた声でそう言うと、彼は乾いた笑みを浮かべる。

そしてその後、こちらに向き直し、再び真剣な表情になると――

 

「ダメだな……俺は。皆見さんに助けてもらうなんて」

「そんなこと……っ」

「情けないよな……。本当に、ごめん……」

 

悔しさや申し訳なさ、後悔や自嘲の混ざり合ったような重たい声で、彼はあたしに……そっと頭を下げた。

 

「……あたし、助けられたんだよ……?」

「…………」

「そんなこと、言わないでよ……バカ」

 

なんで、この人は……こんなにも、自分を責めてしまうのだろう。

恩人のそんな姿を見ていると、自然と目に熱いものが込み上げてくる。

 

「(無理、しないでよ……)」

 

いつかこの人は、壊れてしてしまうんじゃないか……?

気がつけば、そんな考えが……頭の中で警鐘を鳴らしていた。

 

「ごめんね、皆見さん」

 

そう言うと、彼は戸惑いの表情を浮かべながらも、あたしの頭に手を伸ばす。

そして一瞬躊躇した後、その汚れた手を拭いてから、安心させるようにとそっと頭を撫でてくれた。

 

「もう……っ、自分のことも、心配してよ……っ」

 

八坂さんの温もりと優しさを感じながら、そう言って彼の胸に顔をうずめる。

でも良かった……これで、一安心だ。

緊張していたものが解れ、ほっと胸を撫で下ろす。

とりあえず保健室にでも行って、八坂さんの手当てしてあげないと。

 

「これでもう、大丈夫だから……手当てするから、保健室に――」

 

ビシャッ。

 

「……ぇ……?」

 

顔を上げた途端──頬に何か暖かい液体がかかる。

赤い紅い緋い朱いあかいアカイ――美しく綺麗な液体が。

 

「(……どう、いう……こと……?)」

 

思考停止した頭のまま、意味が分からず彼の顔を見つめる。

 

「……ぇ……な、なん……で……?」

 

目の前の光景が信じられず、そんな言葉が自然と零れる。

そこには、困ったような顔で口から血を流す八坂さんの姿があった。

 

「ぁ……そ、そんな……いや……いやあああぁぁぁあああぁぁぁ」

 

眼前に広がるこの景色を、一生忘れることは無いだろう。

そう思えるほどの深い絶望が、あたしの視界を暗く深く覆っていた。

 

「──どうしたんですか!?」

「八坂さんがぁ……八坂さんがぁ……っ!」

 

急いで駆けつけた警備員さんに状況を説明しようとするが、上手く言葉にならない。

どうして、こんな時に……っ!

 

「……っ、ここじゃ救急車を呼べないか……とりあえず保健室に連れてくぞ。皆見、手伝ってもらえるか?」

 

焦りの色が混じった先生の言葉に、首を大きく振ってうんうんと頷く。

泣いてもいい、叫んでもいい……でも、そんなのは後だ。

今は……八坂さんを助けないと……っ!

 

「……ぁ……皆見……さん……」

「八坂さん!?話さなくていいから、お願いだから安静にして……っ!」

「ごめ……んな……、こんな……頼りなく、て……」

 

これ以上無理しないでと願うあたしに対して、か細い声で彼は謝罪の言葉を口にする。

こんな状況下にあっても、彼は自分のことを顧みずに、あたしのことを考えている。

そんな彼の優しさが……あたしの胸を強く締め付けていた。

 

「この、ことは……湊さん、には……言わないで、欲しい……んだ……」

「な、なんで……こういう大事なことは、ちゃんと話さなきゃ――」

「心配……かけたく、ないんだ……」

「……っ……!」

 

強い意志のこもった言葉に、もはや何も言えなくなる。

 

「湊さん、は……家族を失ったトラウマを、乗り越えた……ばかり、なんだ……っ」

「それは……」

「だから……俺が、こんなことになった……なんて、知ったら……」

「――――――」

 

彼の抱く飛鳥さんへの想いが、ひしひしと伝わってくる。

確かに、彼女は誕生会の時に八坂さんのおかげで立ち直ることが出来た。

だからこそ、その自分が彼女のトラウマを再び掘り起こさせるようなことをする訳にはいかないのだろう。

 

「西園寺さんも……先生から、聞いて……知ってしまうと、思うんだ……っ」

「それは……理事長だからね」

「だから、さ……西園寺さんにも、"湊さんに言わないでくれ"って……伝えて、ほしいんだ……っ!」

 

鈍色の雲の隙間から、茜色の光が差し込む。

結局、この人は……最後まで飛鳥さんのことを心配しているんだ。

それもそうだろう。だって、彼は飛鳥さんの"彼氏"なんだから。

 

「(はぁ……)」

 

至極当たり前のことを再確認し、彼に気づかれないようにため息をつく。

そんなの、自分でも理解しているし……そもそも、最初から分かってたんだよ。

……でも、さ。

 

「(ずるいよ……ずるいよ、そんなの……っ)」

 

胸に抱いたこの感情を何と言うのか……今のあたしにはまだ分からない。

けれどきっと、この"想い"は……本来、あたしなんかが抱いてはいけないものだったんだ。

 

「ごめん、な……こんな、頼み事なんか……しちゃって……」

「そんなことない!あたしは……あなたに、助けられたんだから……っ!」

「そっ、か……」

 

申し訳なさそうに謝る八坂さんに対して、必死に気持ちを伝える。

あたしは……あたしは、まだあなたに……。

何も……返せてないんだよ……っ!

 

「君が無事で……本当に、良かっ……た……」

「……ぁ……」

 

目を細め、少し満足そうにそう告げた瞬間。

彼の体は、糸の切れた人形のように動かなくなり――膝をついてから、あたしの胸へと力なく飛び込んでくるのだった。

 

「――――――」

 

言葉にならない叫びが、際限なく口から溢れ出す。

――正直もうこの瞬間にも、ショックで倒れそうだった。

けれど、そうしてしまったら、八坂さんはどうなってしまうのか。

ぐちゃぐちゃに掻き乱された思考の中で、最後にそう考えたから……あたしはギリギリのところでどうにか踏み止まった。

 

「……っぁ、先生ぇ……早く、八坂さんを……っ!」

 

流れ続ける滂沱の涙を振り払いながら、近くにいる大人に助けを求める。

こういう時に、どうすればいいのか分からない。

何をすればこの人は助かるのか……頭がいっぱいいっぱいで分からない。

そんな自分の現状に、あたしは例えようのないほどの無力感を強く感じていた――。

雲間に射す夕日が、その身を再び闇に包み込まれる中。

街路樹の隣で灯り始めた街灯が、そんなあたしを嘲笑うかのように、ゆっくりと不規則に点滅していた。

 

 

 




はい、ということで、いかがだったでしょうか?
まさかの悠君が……という展開になってしまいましたが、同時についに美結さんの気持ちが見えてきましたね笑
きっと悠君の想いを汲んで湊くんに言わない+風莉への口止めをしてくれるとは思いますが、果たしてそれが良い選択となるのか……
次の話は湊君視点になると思うので、楽しみにしていてください!笑
それでは、また次の話も読んでいただければと思います~!

追記
前回も感想ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!
また、いつも読んでくださっている方々には本当に頭が上がりません笑
ありがとうございます!!!
……次以降の話なのですが、タイトルにもあるように、完全に負けヒロイン確定コースに美結さんを入れるのが辛いです……笑
この後もしかしたら訪れるかもしれない修羅場とかあったら……((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
とりあえず、次はきっと平和?な話だと思うので、楽しみにしていてください!!!
頑張ります!!!
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