前回は美結ちゃんの切ない願いで今後の展開に少し嫌な予感がして終わるという感じでしたが、今回は悠君視点です!
美結ちゃんとの生活を悠自身はどう考えているのか?
そして、その気持ちに気づいているのか?
そのあたりを注目しながら、今週も読んでいただけると幸いです!
※悠くんと湊くんはまだ偽りの恋人関係であり、湊くんの心が悠くんにだんだん向いてきていることに悠くんは気づいていないことを忘れないように!(作者は半分忘れてた笑)
「――あー……飽きたぁ……」
誰もいない1人だけの部屋で、ため息と共にボソリとそう呟く。
しかし、そんな俺の声も……無駄に広く感じる空間の中で霞のように消えていった。
やはり、何も出来ないとなると……非常に退屈だ。
いや、実際には美結さんのおかげで身体もだいぶ調子を取り戻してきたし、打撲に関しては順調に回復してきたのだが……。
如何せん、利き腕である右腕と肋骨はまだヒビが入ったままであり、日常生活に支障が出まくっているのだ。
そのため、動画サイトで1日中適当に動画を見ているのだが……こんなに見ていると、流石に飽きてくる。
「美結さん……まだかなぁ……」
つい、いつものように美結さんの名を口にする。
というのも、彼女には学校が終わった後や休日に世話をしてもらっているのだが、同時に良き話し相手にもなってもらっているのだ。
だから、彼女がいる間は退屈することは無いのだが……。
「まあ、今日は学校だし……仕方ないよな」
再びため息をつきながら、ベッドの上で横になる。
しかし、散々こう言ってきたが、本当は自分としては湊さんと話したい……というか、もうずっと会いたいと思っている。
けれど、もし会ってしまうと、この姿が湊さんにバレてしまう可能性がある。
だからこそ、電話だけで済ませているのだが……それでも、電話をし過ぎると湊さんにも迷惑だから、あまり積極的にかけるわけにはいかないのだ。
「仕方ない。合鍵は預けてあるし、寝て待つか……」
スマホをベッドの脇に置き、ゆっくりと目を閉じる。
そうして、意識を深い闇の中へと委ねようとしている――と。
ガチャリ、と急ぐようにして鍵を開ける音が聞こえる。
「――ごめんなさい!色々あって遅くなっちゃった!!!」
太陽のように明るく元気な声と共に、彼女は持ち前の無邪気な笑顔で入ってきた。
救世主が……来た……!
「おかえり〜、美結さ〜ん!」
「悠さんただいま〜!退屈だった?」
「ば、バレてる……!?」
「あはは……まあ、顔を見ればわかるって!」
軽い口調でそう言うと、彼女はいつものように満面の笑みでこちらを見てくる。
俺、そんな退屈そうな顔してたのか……。
せっかく来てくれたのに、そんな顔で出迎えてしまって申し訳ないな。
「やっぱり、悠さんには可愛い可愛い美結ちゃんが必要なのかな〜???」
「うぐっ……まあ、否定はしないけど」
「か、可愛いは否定してもいいんだよ!?」
「……ん?何で?」
自分で言い出したはずなのに、俺でも分かるくらいに顔を真っ赤にして慌て始める美結さん。
まあ、こういう所が可愛いんだけど……流石にこれ以上は言わないでおこう。
「いや、ほら……調子に乗るなーとか、可愛くないだろーとか、言っていいんだよって……」
「あー……まあ、調子に乗るなよとは思わなくもないけど……そういう場を盛り上げようとするのは美結さんの良い所だし……」
あははと苦笑いしながら謙遜する彼女に対し、俺の抱く率直な気持ちを伝える。
「それに、美結さんが可愛いのは本当のことだからな?」
「………〜〜〜ッッ!」
そうして伝えたかったことを話した瞬間、彼女はプルプルと震えながらそっぽを向いてしまった。
何か怒らせるようなことでも言っちゃったかな……?
「そ、そういう所だよ……悠さん!」
「え、何が!?俺はただ、事実を述べただけ――」
「ほらまたそう言うんだからぁ〜〜〜っ!!」
俺の言葉を遮るようにそう叫ぶと、美結さんは再び震えながら両手で顔を隠してしまった。
うちの妹達や湊さんで耐性がついていたはずなのに……女心って、難しいんだなぁ……。
「……でも……嬉しいな……」
「……ん?ごめん、一瞬聞き取れなかったんだけど、もう1回言ってもらっていい?」
「いーやーでーすー!」
「何でさ!?」
頬を膨らませながら、わざとらしく拒絶してくる美結さん。
その姿もまた可愛いと思いながらも、これ以上はダメだと思い口に出すことは自重した。
「……そ、それでさ!悠さん今日は何してたの?」
いきなりすぎる話題転換に驚きながらも、彼女の気持ちを思いやって喉まで出かかった言葉をそのまま飲み込む。
いや、誤魔化し方下手くそか!?
「あー……動画見てた、かな」
「ん〜?エッチなやつとか?」
「っ、んなわけ……!」
突然の奇襲に驚き、少し言葉に詰まる。
「(さっきの仕返しか……!!!)」
直感的にそう思い、彼女の顔に目を向ける。
しかし――
俺の姿を見てニヤついているはずの彼女は……ニヤけた顔が不自然になり、次第に絵具を垂らしたように赤くなっていった。
「あ、その……た、溜まってる……ってことだよね」
「…………」
「そう、だよね……。確かに、 彼氏持ちの友達も"男は3日も我慢したら爆発する"って言ってたし……」
悠「……いや、物騒すぎない!?」
一瞬停止していた思考を動かし、ワンテンポ遅れてツッコミを入れる。
まあ、辛いなぁとは思うけど……爆発はしないよ!?
というか、このしおらしい女性は誰だ……!?
「その身体じゃ、その……できない……もんね」
「そ、それは……」
顔を下に向けてそう言いながら、彼女はそっと身を乗り出す。
なんか話が変な方向に向かっている気がするんだが……?
「それなら、あたしが……」
「……え?」
――瞬間
彼女はプルプルと震えながら、ゆっくりと顔を上げ……熱を帯びた瞳でこちらを覗いてきた。
「(……っ!)」
目の前に、耳の付け根まで真っ赤にした彼女の姿が映る。
一瞬信じられないような言葉が聞こえた気がして、思わず聞き返してしまった。
「〜〜〜っ!?な、何でもない何でもないよ!」
俺の声が聞こえた瞬間、彼女は目をグルグルさせながらさらに顔を紅潮させる。
どう見ても……テンパってるよな……?
「あたし……なんてことを……」
悶絶という言葉が似合う程に、美結さんは俺の隣で頭を抱えながらのたうち回る。
「あー……何かわかんないけど、俺の事を思って言ってくれたんだよね、ありがとう」
「……っ……」
彼女を安心させるように、分かっていない"フリ"をする。
本当は……彼女が何をしようとしていたのか、分かっているんだ。
けれど、それを彼女の口から聞いてしまったら……俺達のこの関係は崩れてしまい、元のままという訳にはいかなくなる。
彼女もそれがわかっているから、最後まで言わずに思いとどまったのだろう。
「そんな……ことは……」
「そういやほんと、考えれば美結さんに助けられてばっかだな」
話を逸らすついでに……改めて、今の状況を再確認する。
思えば……あの日以来、俺は美結さんに支えられて生きている。
「毎日こうして来てくれて、世話してくれて、話し相手にもなってくれて……」
「…………」
「自分の用事だってあるはずなのに、俺のことを優先してくれて……」
……そうだ。彼女だって、自分の都合もあるだろう。
それなのに、美結さんは自分のことも顧みずに、俺の事ばかり優先していて。
「美結さんが、罪悪感から手伝ってくれてるのはわかってるさ。でも、だからこそ……感謝してもしきれないよ」
「悠さん……」
その理由は、偏に俺への感謝や罪悪感から来るものなのだろう。
確かに、状況だけ見れば、彼女が俺にそういう気持ちを抱くことも間違ってはいないのかもしれない。
けれど、元はと言えば……俺が悪いのだ。
俺が彼女を巻き込まなければ……こんなことにはならなかっただろう。
だけど彼女は、それを承知した上で、俺を支えようとしてくれている。
自分を助けてくれた恩人……として。
「(そんな大層なもんじゃないんだけどな)」
そう思いながらも、俺はこうして、その厚意に甘えてしまっている。
でも、だからこそ……俺は彼女に対して感謝し続けたいのだ。
「そう言ってくれると、あたしも嬉しいな」
「美結さん……」
「――でも、ね」
そう言うと、彼女はふわっと笑い、そっと顔の前で人差し指を立てる。
「1つだけ、間違えてるよ」
「……え?」
「あたしが悠さんとこうして過ごしているのは……確かに、最初は罪悪感から来たものだったんだと思う」
そう話しながら、美結さんはどこか懐かしむように、ここではないどこかを見つめる。
「……でもね。今は、悠さんと過ごすこの生活が楽しくて……"自分の意思で"ここにいるの」
そう言うと同時に、彼女は正面からこちらを向き、俺の目をしっかりと見据える。
「だから……ね。あたしこそ、感謝すべきなの」
「そんな、こと……」
「悠さん。あたしなんかと一緒にいてくれて、ありがとう……!」
感謝の言葉を述べると共に、美結さんは深々と頭を下げる。
どうやら、日頃の感謝を伝えるつもりが、逆に感謝されることになってしまったらしい。
……まったく。
「まさか、感謝の気持ちをそのまま返されるとはな」
「まあ、互いにそういう気持ちを抱いてたからね〜」
互いに顔を見合わせて、2人揃って心の底から笑い合う。
なんというか……こういうのも、悪くないな。
「よし!今日はパーティーでもやろっか!」
「いきなり!?」
「うん!……2人の気持ちが、通じ合った記念に」
何かを噛み締めるように目を閉じながらそう言うと、彼女は腕まくりをして力一杯にガッわツポーズをする。
なんか語弊があるように思えるが……あながち間違ってないからいいのか?
「よし!夕飯頑張っちゃうぞ〜!」
「俺も何か手伝えることがあれば……」
「悠さんはいいの!しっかり休んで治して!」
今日も懲りずに手伝おうとするも、やはりいつものように止められてしまった。
もうこのやり取りも数え切れないほどやった気がするが……それでも俺は、何もしない訳には……!
「でも、俺だって……!」
「……じゃあ、さ。代わりと言ってはなんだけど……あたしの頼み、聞いてくれない?」
そう言うと彼女は、期待半分不安半分といった表情でこちらを見てくる。」
「……まあ、美結さんがそう言うなら……」
「よしっ!じゃ、じゃあさ……ゆ、悠さんが元気になったら……その……あ、あたしとっ!……い、一緒に、お出かけしてくれない……?」
「あ、そんなのでいいの?全然大丈夫だけど……」
緊張がこちらにも伝わってくる程のオーラで真剣に尋ねてくる彼女に対して、対極的なくらいに軽い気持ちで返してしまった。
なんだろう……思ったよりもハードルの低い代替案に、肩透かしをくらったような気分になってしまった、というやつかもしれない。
……というかこれくらい、こういう時に頼まなくても、いつでも俺が――
「あの、その……ふ、2人きり……で」
「…………え?」
自分でも分かるくらい、素っ頓狂な声を出してしまったかもしれない。
でも、それほどまでに、彼女が勇気を持って絞り出した言葉は……俺の思考を止めるのに十分なものであった。
「……あ、や、やっぱなしっ!いきなりそんなこと言われても嫌だよね?」
「…………」
「あはは……あたし何言ってるんだろ?じゃあ、他に何か――」
「いいよ」
「……え?」
悟られないようにと必死に笑って誤魔化そうとする彼女に対して、たった3文字の……されど、とても大きな意味を持つ言葉をそっと述べる。
「これが治ったら、2人で出かけようか」
「悠、さん……」
信じられないといったような表情で、こちらを見つめる美結さん。
すると、彼女の悲しみを隠す仮面の笑顔は、次第に崩れ始め――
「いい、の……?」
「ああ、他でもない恩人の頼みだ。それくらい、大丈夫だよ」
「そっか……そっかぁ……えへへ」
そうして理由を伝えると同時に、彼女はいつものような……いや、いつも以上の無邪気な笑みを浮かべた。
――これは、湊さんへの裏切りだ。
――やっては、いけないことなんだ。
そんな気持ちが、自分の中でせめぎ合っている。
しかし、それで断ってしまったら……美結さんは、きっと悲しむだろう。
「(でも、俺は……恩人を悲しませることだけは、したくないっ)」
これは――先延ばしだ。
俺の気持ちは、湊さんに向いている。
それは、どんなことがあっても……覆されることはない。
だから俺は……その日に、彼女を悲しませることになる。
「(結局、先延ばしにしたって……意味なんてないのにな……)」
――きっといつか、バチが当たると思う。
けれど……色々思うこともあるけど、やっぱり美結さんは笑顔じゃなきゃな。
だから俺は……これでいいんだ。
「うん……!じゃあ、お願いします!」
「……ああ。治ったら行こうな」
「……よし!今日はもっと頑張っちゃおうかな!」
「おっ!楽しみ……だけど、無理しないでね」
「うん!皆見美結、精一杯頑張ります!」
そう言うと、彼女は目じりに溜まった涙を拭いつつ、ガッツポーズで気合いを入れる。
そうしてエプロン姿の美少女は、ぱたぱたと台所へと駆けていくのであった。
……この日、俺が軽く引くほど豪勢な食事となったのは、この期に及んでは言うまでもないだろう。
【補足】
今回の悠君の件ですが……"恩人である美結さんを悲しませないように"という善意から動いているので、異常にタチが悪いです!
いっそのこと"美結さんを好きになった"とかなら良かったんですけどねぇ〜(良くない)
これで湊LOVE状態のままと言うのがヤバい……
さて、いかがだったでしょうか?
自分としては、このシーン書きながらすごくメンタルえぐれてました笑
美結ちゃん辛いし悠君お前……笑
ということでまあ、言わずもがな、やばいであろうシーンは湊くん視点なのですが、次……はギリギリそこに入らないかもしれないです。
多分次に妹達が見舞いに来るシーンを入れてから湊くんに行くと思うので楽しみにしていてください(血涙)
追記
感想ありがとうございます!超絶嬉しいですね笑
まあそんな中で次の次にメンタルブレイク回をしようとしているのは自分でもどうかと思うのですが笑
自分の作品を毎週ここまで多くの方が見てくださることに感謝しかありません!ありがとうございます!!!
次も頑張りますので、次回も読んでいただければと思います~!