湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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お久しぶりです!!!遅れてしまいましたが前回の続きです笑
やっとここから少し……な展開が始まります!本当にお待たせしました!
今回からついに湊さん視点ということで、はい。辛いです。
この話は書きながら胃がキリキリしていたので、読んでいる方々にもこのダメージが届けばと思います()
ということで、前置きはここまでにして、ぜひ今回の話も読んでいただければ幸いです!


俺と彼女(偽)とお世話役が修羅場すぎる

 

 

 

最近――美結さんの様子がおかしい。

隣の席で一緒に授業を受ける彼女を横目でそっと見つめながら、ふとそんな疑念を抱く。

いきなりな話だと思うけど……実は最近、そう思えるようなことが次々起きているのだ。

例えば、今までであれば、休み時間ごとに僕に話しかけてきてくれたはずなのに……最近はその頻度が低下している。

それに、何よりも……授業が終わると美結さんは部活にも行かずに、1人急いで帰ってしまうのだ。

まあ、それについては柚子さんも不思議に思っていて、話を聞く限り、どうやら"やむを得ない事情"があるらしい……が。

それにしても、やっぱり何かおかしい。

 

「(何か、あったのかな……?)」

 

首を傾げつつ先生の板書を必死に写す彼女を見つめながら、少し心配になってくる。

 

彼女は僕がクラスに馴染めていない時に、積極的に話に来てくれた……言わば、恩人のような存在だ。

だからこそ、僕に何か出来ることがあれば、積極的に手伝ってあげたいのだけど……。

 

「(なんで、何も言ってくれないんだろう……)」

 

前に、あまりに心配になって1度聞いてみたのだけど、美結さんには「大丈夫だから心配しないで!」と言われてしまった。

まあ、こういう言い方をするってことは、何かあるはずなんだけど……。

けれど、彼女を見ていても、何が原因なのか、全くもって分からない。

だからこそ、本人に聞くのが1番だったんだけど……その作戦も失敗してしまっている。

 

「(やっぱり、ボクが信頼されていないから……なのかな?)」

 

段々と不安になり、ふとそんなことを考えてしまう。

いや、美結さんに限ってそれは無いはずだ。

やっぱり、何か別の要因があるに違いない。

 

「(本当に、何があったのかな……?)」

 

再び彼女の方へと視線を向け、訝しむようにその様子を観察する。

――静寂に包まれた世界で、チョークの音だけが反響する。

そうして、また今日も彼女のことを考えながら、刻々と時間だけが過ぎていくのであった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

ホームルームが終わり、みんなが帰る準備をしたり部活に行く準備をしたりしている中で……誰よりも速く、彼女は荷物を持って教室を出ていく。

 

「今日も……か」

 

そんな姿を目で追いながら、ぽつりとそう呟く。

考え過ぎならいいけど……やっぱり、美結さんに何かあったんじゃ……?

 

「――行きますよ、湊さん!」

 

後ろから元気な声が聞こえてきた瞬間、いきなり両肩に手が置かれると同時に後頭部に柔らかいモノがぶつけられ、何事かと思って後ろを振り返る。

すると、その塊はゆっくりと僕の頭を離れていき……その場所には、既に帰る準備を整えた柚子さんの姿があった。

 

「ゆ、柚子さん!?こ、これは……って!」

 

先程の柔らかい感触を思い出し、彼女の胸へと視線を向ける。

じゃあ、さっきのは……柚子さんの……お、おっぱい……!?

その正体が分かると同時に顔がかぁっと熱くなり、段々と頭が回らなくなってくる。

 

「(あれ?ボク……照れてる?)」

 

自分の頬を触りながら、その熱の原因を確かめる。

きっとこれは、"照れ"だと思うから……ということはやっぱり、僕は普通に女の子が好きなんだ。

思わぬ所で自身の悩みが解決し、胸の内に不思議な感情が芽生える。

じゃあ、悠さんへの……この、気持ちは……。

"普通で良かった"という思いと同時に、胸の内にモヤモヤとした感情が渦巻いている。

 

「(なんだろう……胸が苦しい……)」

 

胸に手を置き、ゆっくりと深呼吸をする。

残念に……そして悲しく思う気持ちが、胸の蓋から溢れそうになる。

悠さんへの気持ちが恋じゃないってわかったのに、一体どうして……。

考えれば考えるほど呼吸が苦しくなり、思考がぼやけてくる。

僕は……僕は……っ!

 

「湊さん?大丈夫ですか?」

「……っ!?だ、大丈夫、です……!」

 

無理やり表情筋を動かし、不自然にならないように笑顔を浮かべる。

変になっちゃった気がするけど、大丈夫……だよね?

 

「そう、ですか……あ!急がないと、美結さん行っちゃいますよ!」

「……え?」

 

そう言うと、柚子さんにいきなり右手を引っ張られ、反射的にもう片方の手で机に置いてあるカバンを掴む。

 

「え、どういうことですか……?」

「それはですね……」

 

柚子さんに連れられて廊下を走りながら、当然の疑問を口にする。

これって、もしかして……。

 

「美結さんの……尾行です!」

 

清々しい程に元気良くそう言って、彼女は強引に僕の腕を引っ張っていく。

そんな楽しそうな彼女に溜息をつきながらも、僕自身美結さんのことを心配していたのもあり、自らの足で柚さんと共に走り出す。

そうして、先生方の"廊下は走るな"という注意を背に、僕達は美結さんの跡を追いかけていくのであった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「〜〜〜♪」

 

鼻歌交じりに道を歩く上機嫌な美結さんの遥か後方で、2つの影がその跡を追いかける。

普通に考えれば、周りの方から通報されてもおかしくないような状況なのだが……幸いにも、2人ともその前を歩く少女と同じ制服を着ていたおかげで、どうにか事なきを得ていた。

 

「ホシは、どこへ行くんでしょうかね?」

「いや、何かの犯人じゃないんですから……」

 

曲がり角で身を隠しながらノリノリで警察ごっこを始めた柚子さんにツッコミを入れつつ、美結さんの後ろ姿をじっと見つめる。

美結さん、どこに行くんだろ……?

 

「それで……どうして、こんなことを?」

「それはですね〜。ご存知の通り、美結さんが最近部活にも顔を出さずに帰ってしまうので、その跡をつけてみようかな〜と」

 

そう言うと、柚子さんはいつの間にか用意していたあんぱんを開けながら、美結さんの通った道をバレないように歩き出す。

まあ、こうしてるとふざけてるように見えるけど……やはり柚子さんも心配なのだ。

 

「(これで、何か分かればいいんだけど……)」

 

柚子さんの後ろを追いながら、次の曲がり角で彼女と共にひょっこりと頭を出す。

美結さんの行き先さえ分かれば、もしかしたら……。

 

「あ!動きましたよ!」

「あ、ちょっと待ってくださいよぉ〜」

 

興奮気味に追跡捜査の真似事を続ける彼女につられ、あまり音を立てないように足を早める。

 

「こういうの、なんか楽しいですね!」

「ま、まあ……分からなくもない、ですけど……」

 

嬉しそうに笑う彼女の興奮が伝播したのか、心なしか僕自身も段々と楽しくなってくる。

たまには、こういうのも悪くないかも。

そうして、少し頬を緩ませながら美結さんを追いかけていく中で――ふと、ある1つの疑惑が生じる。

 

「(そういえばこの道、すごく見覚えが……)」

 

「あ、あの角で曲がりましたよ!行きましょう!」

「……あ、は、はいっ!」

 

じわじわと込み上げてくる既視感に、心がざわついてくる。

直感的に感じた嫌な予感が全身に危険信号を出し始め、少しずつ足取りがゆっくりとしたものになってくる。

そうして、僕達が美結さんの曲がった角に差し掛かった瞬間――

その予想は――的中した。

 

「こ、ここって……」

「ん?湊さん、何か知ってるんですか?」

「悠さんの……家……」

「……え」

 

僕の視線の数十メートル先に。

美結さんが歩いていく道の先に。

僕の見慣れた、思い出のアパートが……重くその存在感を示すかのように佇んでいた。

 

「ぐ、偶然かもしれませんし!それにほら、美結さんが八坂さんの家に行く理由がないですし!」

 

そう言って、柚子は僕の気を紛らわそうと頑張ってくれているが……もう、遅い。

疑惑は……既に確信へと変わってしまったんだ。

 

「柚子さん……あれ……」

 

信じられない光景を前にして、柚子さんにも分かるようにその方向を指さす。

そこには……とても楽しそうに悠さんのアパートの階段を昇る美結さんの姿があった。

 

「湊、さん……」

湊「……………………」

 

柚子さんの声を背に、ふらついた足取りで悠さんのアパートへと歩き出す。

どう見たって、これは否定できない事実なのだと、直感がそう告げている。

けれど、それでも――心のどこかで、まだ彼女を……いや、彼を信じたいという思いがあったんだと思う。

 

「そんな……嘘だ……」

 

あの悠さんが……あの悠さんが、僕に会わずに内緒で……美結さんと会っているなんて。

 

「嘘だ……何かの間違いに決まってます……」

 

首をぶんぶんと振った後、目と鼻の先にある建物に目を凝らす。

そうだ!もしかしたら、あのアパートは僕の記憶違いかもしれない。

そうだ。そうに違いない。

……いや、そうであってください……。

淀み始めた意識の中で、後ろから柚子さんの声が聞こえてくるが、もう何と言っているのかも分からない。

 

「悠さん……悠さん……」

 

まるで亡霊のように、彼の名前を呼び続ける。

心が折れかけても、それでもなお……歩みを止めずに、重くなる足を絶えず動かす。

そうして、一歩一歩踏みしめるように歩いていくうちに……美結さんは、悠さんの部屋の前にたどり着いてしまった。

 

「ここが、八坂さんの……」

「あの部屋……悠さんの……」

 

階段下で隠れるようにして美結さんの様子を伺いながら、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた意識の中で、柚子さんにそう伝える。

そうして、複雑な感情に振り回されてる中で――彼女は無慈悲にも、彼の部屋へと入っていくのであった。

 

「あ〜今日も疲れたぁ〜」

 

美結さんの話し声と共に、荷物を置く音が聞こえてくる。

そうして鍵をかける音が聞こえた後、僕達も玄関の前へと歩きだす。

 

「(悠さん……)」

 

最後まで彼のことを信じようと決意し、扉にそっと耳を当てる。

大丈夫。悠さんなら、すぐに追い出して――

 

「ただいま、"悠さん"」

 

その言葉が聞こえた瞬間――心にヒビが入っていくのを感じる。

 

「(……っ、ぁ……っく……)」

 

呼吸が苦しくなり、動悸がおさまらない。

でも……でも、悠さんなら――

 

「おかえり……"美結さん"」

「……ぇ……」

 

トドメを刺すかのように、言葉が放たれる。

――嘘だ。

慣れた人にしか話すことの無い、信頼の証としての……言葉が。

――嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。

その口調から、2人の距離感も伝わってくる。

――もう、やめてよ……これ以上僕を……。

2人だけの……温かくて、幸せな関係が。

――1人に……しないでよ……っ。

そうして、何も言えずに、何も出来ずに……ただ呆然と立ち尽くすことしか出来なくなる。

最後の最後まで彼を信じていた僕の心は――"その一言"で、音を立てて完全に崩れ落ちてしまったのだった。

 

「……ぁ……ぁ、ぁぁ…………」

 

悠さんとの思い出が、走馬灯のように甦る。

そして同時に、その全ての記憶が……黒く黒く塗り潰されていく。

 

「湊さんっ!?」

 

カバンが手から離れ、音を立てて地面に叩きつけられる。

そして僕自身も……何も考えられずに、鈍い音と共に膝から崩れ落ちる。

もう……全身に力が入らない。

いや……何もしたくない。

 

「(何で……ボク……)」

 

深く沈んだ頭のまま、胸に残る違和感に対して思考を巡らせる。

僕と悠さんは恋人同士と言っても、その関係は偽りのものだ。

それに……僕は1度、彼からの告白を断ってしまっている。

まあ、だからといって、"友達として"彼が僕より美結さんを優先していることに対して怒るのは、別に何も不思議なことではないのだが……。

この胸に抱く気持ちは、明らかにそれとは違う。

"友達として"ではなく、なにかもっと特別な――

 

「……ゆ……う、さん……っ……」

 

悠さんが、女である美結さんとこんなに仲良くしていたって、別に悪いことじゃないのに。

"ただの友達"である僕には、何も関係がないはずなのに。

なんなんだろう……この胸の痛みは……。

 

「(――あぁ……やっぱり)」

 

苦しくて張り裂けそうな胸の痛みに耐える中で。

このどうしようもない感覚に……ある1つの答えを見つけてしまった。

結局、僕は──"彼のことが好き"……だったんだ。

 

「湊さん……」

 

柚子さんにハンカチを差し出され、その時にやっと気がついた。

両目から、今までにないほどに、とめどなく涙が溢れていることに。

 

「柚子さん……ボク……」

「湊さん……」

「ボク……壊れちゃいました」

 

今僕は、どんな顔をしているのだろうか。

くしゃくしゃになって、泣いているのか。

心が壊れ、笑っているのか。

それとも、また違う表情なのか。

全くもって……分からない。

……けれど。

けれど、それでも1つ言えることは――

もう、自分の感情すらも……分からなくなっている、ということだけだ。

 

「……ん?なんか玄関から物音しない?」

「いや?あんまわかんないけど……」

 

そんな会話が聞こえてくると共に、部屋の方から足音が近づいてくる。

あぁ……ここで会ってしまったら、僕はどうなってしまうのだろうか。

そんな考えが、ふと脳裏に浮かぶ。

 

「(でも、もう……いいかな……)」

 

もう……どうなってもいいや。

だって、僕にはもう……悠さんが……。

 

「……っ!湊さん、少し失礼します!」

「……うぅ……ぅ、ぁ……あぁ……」

 

自分の体が浮き上がり、同時に柚子さんに肩を担がれていることに気がつく。

 

「(柚子、さん……)」

 

そうして彼女は、鉛のように動かなくなった僕を支えながら階段を降りていく。

 

「ごめん……なさい……っ」

「湊さんが謝る必要はありません!辛い時は、誰しもそうなってしまいますから」

 

優しい言葉を掛けられ、絶望のあまり枯れ果てたはずの涙が再び溢れ出す。

……正直、ここから先のことはあまり覚えていない。

思えば、この時既に……僕の心は、完全に崩れ去ってしまっていたのだろう。

 

「……ぁ、雨だ……」

 

そうして、柚子さんに連れられて第二寮へと歩き始めた途端、ぽつりぽつりと予想外の雨が降り始める。

確か今日は、雨が降る予報なんて出てなかったはずなのに……。

 

「ほんとですね……湊さん、急ぎましょう」

「……はい……」

 

重く冷たい雨が、僕達の体を濡らしていく。

想いと共に溢れ出した涙が……無慈悲にも、雨によって流されていく。

そうして、大切なものが零れ落ちていくのを深く感じながら。

僕達は……再び彼のいない世界へと、重い足取りのまま帰っていくのであった――。

 

 

 




というわけで、いかがだったでしょうか?
最初に湊くんが柚子の胸に触れて思春期男子的なムーブかまして、悠への気持ちが分からなくなってからの急転直下でしたが、みなさんはどうでしたか?
自分は湊くんが悠君のことを”友達”としてではなく”恋愛対象”として見てしまったところがすごく好きだったのですが、その直後の絶望しているところで胃がボロボロになりました……笑
もう湊くんが辛いです……!
次回はこの話の美結ちゃん視点とそのあとの話になるので、楽しみにしていてください!笑
それでは、また次の話も読んでいただければ幸いです~!

追記
感想ありがとうございます!本当に嬉しくていつも幸せです!
ほんとに毎週こんなに多くの方が見てくださるとは……ありがたい限りです!感謝しかありません笑
今回は前々から言っていたシリアスパートというかドロドロパートというかそんな感じのところですが、思ったよりもちゃんと書きたいものが書けた気がします笑
今回で湊くんも言っていた通り、2人ともまだ偽の恋人同士なので、これを乗り越えた後にどうなっていくのか……楽しみにしていてください!
というわけで、次も頑張りますので、ぜひ読んでいただければと思います!!!
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