前回の最後に風莉様が嫌な予感を感じていましたが、果たしてどうなるのか?
読んでいただけたら幸いです。
いつも読んでいただきありがとうございます。本当に感謝しかありません!
でも、投稿ペースが週一なのは許してください……笑
~翌日~
「――ご~がい!ご~がい!ご~が~いっ!」
「みなさん、号外ですよ~!」
湊たちが登校する30分ほど前。
新聞部である柚子と美結は、いつも作っている校内新聞の号外を配り歩いていた。
「号外?」
「珍しいね、号外なんて」
「そうなんだよ!見て見てこれ」
「号外……なんていい響きなんでしょう!新聞部部長としては、とても嬉しいです〜!」
久々の特大スクープに感極まっている柚子を横目に、クラスメイトの子たちは美結から配られた新聞に目を移す。
「「え、えぇっ!?」」
「ふっふーん、驚いたでしょ?」
期待通りのリアクションに、思わず美結はガッツポーズをとる。
「え、これ……本当なの?」
「そうなんだよ〜。あたしも最初驚いちゃってさ~」
「そうだったんだ……」
「……あの、何かあったんですか?」
騒ぎを聞き付けた下級生の子たちが、美結たちのもとへ集まってくる。
「よくぞ聞いてくれました!」
「実はなんと!あの飛鳥さんが――」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……柚子センパイ、どうしちゃったのだ?」
「確かに、どうしちゃったんですかね?」
朝の心地よい風と暖かな木漏れ日の中。
そんなことを話しながら、僕たちは街路樹の多い静かな通学路を歩く。
今日は珍しく、風莉さん、ひなたさん、僕の3人での登校であった。
というのも、実は今朝、柚子さんは朝ご飯を食べ終わると、急いで先に学園へ行ってしまったのだ。
「新聞部のこと、かしら?」
「たぶん、そうですよね」
「新聞部で何かあったのだ?」
「いえ、そういう話は聞いてないですね」
「だとしたら、本当にどうしたのかしら?」
3人でうーんと考えながら、それでも始業のベルには間に合うようにと足を進める。
……と、話しているうちに、僕達は学園に着いた。
けれど……。
「……?」
学園に着くと、周囲の方々がひそひそと何か話している。
………………。
心なしか、みなさんの視線が僕に向いてるような……?
「あれ?壁に何か貼ってあるのだ」
そう言うと、ひなたさんは壁に貼ってある新聞に駆け寄る。
「なになに……“ごうがい”?……って、はわわっ!」
そうして、その記事を読んだ瞬間……彼女は可愛らしい声で驚きながら、こちらをじっと見てくるのだった。
「お、お姉様が……!お姉様が、取られたのだ……!?」
「……え?」
「どういう、こと?」
「――ふっふっふ〜驚いてるようだね、ひなたちゃん!」
突然、そんな声が聞こえてきたかと思うと、人混みの中から上機嫌な美結さんと満面の笑みを浮かべた柚子さんがこちらに近づいてきた。
「ついに!念願の!ゴシップネタです!」
「あのー……柚子さん、どういうことですか?」
「よく分からないのだけど……?」
「まあまあ、飛鳥さんも西園寺さんも、その新聞を見てみて!」
美結さんにそう言われて、風莉さんと共に新聞に目を向ける。
するとそこには――
「え?……えっ!?ぼ、ボクの……」
「彼氏……?」
夜の街で撮影された僕の写真が掲載されていた。
しかも、その隣には……僕の“彼氏”として悠さんの姿も写っていた。
「……湊。これは、どういうこと?」
「え!?あ、いや……こ、これは違うんですっ!というか美結さん!どこでこの写真を!?」
「うーんとね、紅月学園ってあるでしょ?」
突然、悠さんの学校の名前が出てきて驚いた。
何か、嫌な予感がする……。
「確か、うちの近くの学園……でしたよね?」
「そうそう!でさー、そこにも新聞部があってね、そこの新聞部の人から貰ったの」
「そう……」
楽しそうに話してくれる2人とは対照的に、隣から冷たい視線を感じる。
「で、でも……どうしてこの人が、お姉様の彼氏だと分かったのだ?」
「なんかね、この写真を貰った時に聞いた話によると……その子が見てた時、この男の人がナンパに絡まれてる飛鳥さんを助けて、『俺の女に手を出すな』って感じのこと言ってたらしいんだって〜」
「(き、き……聞かれてたぁぁぁぁぁ!!!)」
まさかの、悠さんに助けて貰ったところを見られていた。
それも、悠さんに"俺の女"って言われたとこも聞かれてるというおまけ付きで。
「(あぁ……どうしよう……)」
どうにかして、みんなの誤解を解かなければいけない。
けれど、新聞が校内に貼ってある以上、学校中に噂が知れ渡るのは時間の問題だろう。
……まさかこんなタイミングで、風莉さんの嫌な予感が当たると思わなかった。
「しかも、3人の男性に囲まれてた湊さんを助けたらしいんです〜!湊さんの彼氏さん、カッコイイですね……!」
「我輩を助けてくれたお姉様を、助けた男……つまり、お姉様を守る円卓の騎士……。是非とも我が魔王軍に入れたい人材であるな!……でも、お姉様が取られたのだぁ……」
「なるほど……だから、昨日は帰りが遅かったのね」
「こ、これは違うんですって!」
思い思いに感想を述べ始めるお嬢様達を前に、どうにか必死に否定する。
風莉さんには誤解された状態で納得されてしまったし、それに柚子さんは、悠さんを僕の“彼氏”として褒められてしまった……。
まあ、友達が褒められるのは嬉しいことなんだけど……なんか、複雑な気分だ。
これは早いうちに誤解を解かないとなぁ……。
胃がキリキリと痛むのを感じながら、思わずため息が漏れる。
……なんで円卓なのか分からないけど、ひなたさんのは触れないでおこう。
「ああ、それと……写真を撮った子が飛鳥さんに謝りたがってたよ。あの時近くにいたのに助けられなくてごめんなさい、って」
「まあ、それは仕方のないことですよ。実際、ボクもあの時は動けませんでしたし……」
確かに、あの状況では女の子が助けに来るのは無理な話だろう。
時間も時間だったし、僕もあの時は荷物を持ってた上に3人に囲まれてたから、ひなたさんの時みたいに投げ飛ばす事も出来なかったくらいだし。
「それでそれで!このお相手の男性とはいつからお付き合いしてるんですか?」
「だから、違いますって!」
「またまたぁ〜、“俺の女”とか言われてるのに否定するのかな?」
「うぅ……それは……」
――キーンコーンカーンコーン
最悪のタイミングで、朝のチャイムが鳴る。
「あ、皆さんそろそろ教室に戻りませんと」
「そうね。行きましょう、湊」
「うぅ……はい……」
別々の反応を示すお嬢様達の後に続き、ゆっくりと教室へ向かう。
まさか、たった一日でこんなことになるとは……。
再び溜息をつきながら、窓の外の景色を眺める。
そうして、誤解が解けないまま……僕の大変な一日が、幕を開けるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「はぁ……」
――放課後。
結局、あの後も噂は広まり、昼休みになる頃には学園中に知れ渡ってしまっていた。
そのため、今日は一日中いろんな人に注目されて大変な目にあった……。
僕としても、何とかして誤解を解こうと頑張ったんだけど……否定しても誰も信じてくれなかった。
「(まあ、あの写真に加えて、実際にあの場にいた人がいるんだもんね……)」
不運なことに、写真を撮った子は男たちが去っていくタイミングで、その場を離れたらしい。
そのため、その子はあれが演技であったことを知らなかったようだ。
「ど、どうしよう……」
流石にこのままにするわけにはいかないし、何か作戦を立てないと……。
「──あれ、今朝の写真の人じゃない?」
「あ~、飛鳥さんの彼氏の?」
「確かに……写真の人に似てるね」
「校門前で誰かを待ってる……?」
「それ絶対飛鳥さんのこと待ってるんだよ!」
ふと、クラスメイトの話し声が聞こえてくる。
「(悠さんが、来てる……?)」
いやいや、そんなわざわざ僕に会いに女子校まで来るはずない。
たぶん、見間違いか何かだろう。
そんなことを考えていると、少し楽しそうな様子の美結さんが僕の席に近寄ってきた。
「彼氏さん、来てるんじゃないかにゃ~?」
「か、からかわないでください……!って、彼氏じゃないですってば!そ、それにっ、たぶん見間違いですって!」
「ほんとかにゃ~?」
「いや、だってそんな昨日の今日で……。しかも、女子校まで来るはず――」
――ガラガラッ!
大きな物音を立てながら突然ドアが開くと、ひなたさんが慌てた様子で教室に入ってきた。
「お、お姉様!"八坂悠"って人がお姉様を呼んでるのだ!」
「……えっ!?悠さんが……?」
「ふ~ん……"悠さん"ね。さあさあ、後はごゆっくり~!あ、後で話聞かせてね!」
そう言うと、美結さんはニヤニヤしながら僕を教室の外まで連れていく。
「(うぅ……さらに誤解が……でも、悠さん……どうしたんだろう……?)」
美結さんに弱みを握られたのを感じながら、彼女に引っ張られるままに走り出す。
そうして、早いうちにどうにかしなきゃと考えながら、僕は悠さんの元へと向かうのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ここまで、来てしまった……」
湊さんと出会った翌日。
俺は一人、白鈴女子学園の校門の前で湊さんを待っていた。
幸い、湊さんの知り合いの子に会えたおかげで、湊さんを呼べたから良かったものの、これがもし会えなければ、俺は完全に不審者になっていただろう。
「(それにしても、辛いな……)」
湊さんを待ちながら、スマホで適当なページを開いていく。
本当は壁にでも寄りかかって曲でも聞いて待っていたいけど、それこそ本当に警察でも呼ばれそうなので、今回は我慢している。
………………。
というか、さっきから門から出てくる子たちにめっちゃチラチラ見られるんだけど……。
「(やっぱ、"こっちでも"なのか……)」
最悪の可能性が、少しずつ現実味を帯びていく。
「悠さ〜ん!」
そうして物思いに耽ってると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
声のする方を見ると、湊さんが小走りでこちらに向かっていた。
昨日ぶりに見たけど……やっぱり可愛いな、湊さん。
……って、流石に真面目に考えないと。
「湊さん。突然こっちまで来ちゃってごめんね」
「いえいえ、大丈夫ですよ。でも、昨日の今日で来たってことは、何かあるんですよね……?」
何かを察したような彼女の言葉に、ゆっくりと首を縦に振る。
「わかりました。あ、あの……会えたのは嬉しいんですけど、その……ここだと色々まずいので……」
「あ……ごっ、ごめん!それじゃあ……」
そう言って、どこに行こうかと考える。
といっても、湊さん鈴女だしなぁ……良い場所あるかな。
「うーん…………あっ!湊さん、少し先に行ったところにある喫茶店まで行こうか」
「わかりました!じゃあ、案内お願いしますね」
そうして、湊さんと並んで一歩一歩と歩き出す。
これから行くのは、俺自身まだあまり行ったことがない喫茶店だ。
というのも、その店は以前俺がテスト勉強をするために色々な店を探していた際に、偶然見つけた喫茶店なのである。
その喫茶店はどうやら個人経営の店らしく、常連客や俺のように偶然見つけたような人が集まるような、俗に言う"穴場"というものであり、全体的にオシャレな雰囲気が漂う場所であった。
「(あそこなら、たぶん湊さんに失礼じゃない……よな?)」
そう自分に言い聞かせながら、さっきの葛藤を思い出す。
正直、最初はファミレスに行こうと思っていたが、流石にお嬢様学校の生徒をファミレスに連れて行くわけにはいかないと思い、色んな店を考えた結果、そこに行くことにした。
途中、ス○バとかサ〇マルクとかも浮かんだけれど……それはどうにか踏みとどまった。
……あの喫茶店知ってて良かったと、この時ばかりは過去の自分に感謝するのだった。
………………。
それにしても……。
「(やべぇ……なんか緊張するな……!)」
次第に強くなってくる緊張感に、心臓の鼓動がバクバクと急速に早まる。
生まれてこの方、こうやって女子と2人で出かけることなんて、ほとんど経験したことがない。
あるとしても、それこそ妹と出かける時くらいなものだ。
早足になるのを必死に抑え、湊さんの歩幅に合わせる。
「──あ、あれって飛鳥先輩じゃない?」
「隣にいる人も彼氏さん……だよね?……ってことは、デート!?」
「他校の人との逢瀬……羨ましいね〜」
学園の方から、ふとそんな声が聞こえてくる。
「(いや、めっちゃ恥ずかしいんだけど!?)」
先程からの緊張感に更に恥ずかしさまで加わって、もう何が何だかわからない。
「(み、湊さんはどうなんだろ……?)」
ちょっと気になって、湊さんの方を見る。
しかし、湊さんは少しも動じておらず、いつも通りの笑顔を浮かべていた。
「(やっぱり、1度振られてるしな……)」
湊さんにとって、この関係は"ただの友達"でしかないから、焦りはいていても、流石に緊張は無いのだろう。
まあ、それでも友達になれただけ、俺としては嬉しいんだけどね。
そんな幸せを噛み締めながら、1歩ずつ足を進める。
そうして、緊張してることがバレないように前を向きながら、俺たちは喫茶店へと向かうのだった。
というわけで、悠君来ちゃった(笑)という感じでしたが、いかがだったでしょうか?
一応書いてる時はオトメドメインを開きながらやっているので、変なところはないようにしているのですが……もしあったらごめんなさい笑
次の投稿は一週間後の6/7くらいを予定してます!
次回も読んでいただけたら嬉しいです!