湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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ギリギリ間に合った……ということで、前回の続きです!
今回の話は、前回のあとがきに書いたように、湊くん×悠くんの話の前編となっています!
大方予想通りだとは思いますが、悠君が大ダメージを食らうので楽しみにしていてください笑
細かい話とかはあとがきの方で書くので、とりあえず今週の話もぜひ読んでいただけると幸いです~!


みなとさん@たえられない(前)

 

 

 

――終わった。

俺は……取り返しのつかない事をしてしまったんだ。

 

「(湊……さん……)」

 

雨の中で走り去る湊さんを、ただ後ろから見ることしか出来なかった日の夜。

俺は……代わり映えのない天井を、ただ呆然と眺めていた。

 

「2度と……会えないかもな」

 

ボソリとそう呟き、彼女との思い出の詰まったスマホを手に取る。

――あの時、気づかなければ良かったのかもしれない。

そんな考えが、ふと頭をよぎる。

……いや、結局見つかるのは時間の問題だったはずだ。

彼女は察しが良いから、いつかはバレてしまうものだったのだと思う。

 

「(そんなことも考えずに、俺は……)」

 

何度目かも分からない後悔の念が、再び頭の中を埋め尽くしていく。

――"湊さんのことを、1番に考える。"

その信念に従って行動していたはずが、結局は彼女を苦しめることになっていた。

 

「(…………)」

 

この選択をした時、俺は100%その信念に沿って行動できたという自信があった。

……湊さんにとって一番のトラウマである――"家族を失う"という出来事。

これを2度と経験させてはいけない、と。

俺の腕の中で、家族を思い出して泣いていたあの日……俺はこの胸に誓ったんだ。

だからこそ、この傷だらけ姿を見せたら彼女のトラウマが蘇ると思い、俺はこの事実を隠そうとした。

けれど……それでは、ダメだったんだ。

 

「何が、正解だったんだよ……」

 

気力のない……重く沈んだ声が、ため息と共に口から零れ落ちる。

――やはり、彼女に伝えるべきだったのか?

脳裏に浮かんだ考えを、頭を横に振って否定する。

いや、そんなことをしてしまったら、彼女はせっかく乗り越えたはずのトラウマを甦らせてしまうだろう。

……それに。

俺たちを襲ったあの不良は、湊さんと出会った日にいた奴の仲間だ。

もしも、それをどこかで知ってしまったら……彼女は絶対に自分に負い目を感じてしまうはずだ。

 

「(やっぱり、妹達に世話を頼むべきだったか……?)」

 

会えないと言いながら美結さんといた事に対して、彼女は怒っているに違いない。

だからこそ、妹達世話してもらえればよかったはず……なんだけど。

自分のせいだと己を責め、無我夢中で償いをしようと必死になる美結さんを……俺は、止めることが出来なかった。

 

「(……いや、これじゃ美結さんに罪を擦り付けるみたいだな)」

 

浮かんでしまった考えを、ため息と共に否定する。

俺自身も、美結さんとの毎日を楽しんでいたんだ。

彼女と過ごす毎日に……居心地の良さを感じていたんだ。

だから結局――全て、俺のせいだ。

 

「はぁ……」

 

静寂に包まれた闇の中。

窓から射す月明かりだけが、俺の部屋を仄かに照らす。

それはまるで、僕だけが世界から取り残されたような――そんな感覚さえしてくる。

 

「湊さん……」

 

涙を拭って走る彼女の後ろ姿が、脳裏に鮮明に浮かんでは、途端に靄がかかって消えていく。

……この期に及んで、言い訳をする気はない。

いや、そもそも二度と会う事すら出来ないのかもしれないのだが……。

でもまあ、だからこそ……この独白は、俺の心の中にしまっておこう。

"八坂悠は、彼女の想いを踏み躙った"――それだけで、いいんだ。

それだけで、いいから……。

湊さんに、謝りたいんだ……。

 

「湊さん……会いたいよ……」

 

弱々しく放たれた言葉が、霞となって消えていく。

罪の意識が、深く重く俺の胸に刻まれていく。

そうして、夜の闇と静寂に包まれた部屋の中で……。

時間だけが、刻々と過ぎていくのであった――。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

翌日、俺は学校を休んだ。

理由は、熱とか腹痛とか適当に言ったが……本当は、もう誰とも会いたくなかっただけだ。

 

「…………」

 

何をするでも無く、ただひたすらにベッドの上で目を閉じる。

眠ることさえ出来れば、何も考えないでいられる。

……けれど、そういう時ほど目が冴えてしまうものだ。

そして、運良く眠れても……その夢には、必ず彼女の姿が映るのだ。

 

「これが罰……か……」

 

そう呟きながら瞼を上げ、壁に掛かった時計に目を向ける。

5時……か、学生とかはもうとっくに帰ってるんだろうな。

湊さんも……ちゃんと家に帰れたかな。

 

「(まあ、今の俺にそういう心配されても、迷惑だろうけどな……)」

 

そう考えた瞬間、乾いた笑いが思わず出てくる。

俺は……湊さんに支えられてたんだな……。

大切なことに今更気づいた途端、一気に喪失感と虚無感が襲ってくる。

やっぱり……会いてぇよ……。

 

――ピンポーン

目元が潤んできたタイミングで、玄関のチャイムが鳴り響く。

宅配は頼んでないし……この時間だと、美結さんか?

立て掛けてある松葉杖を手に取り、ゆっくり玄関へと歩き出す。

 

「(美結さんにも、謝らないとな……)」

 

呆然と立ち尽くす俺を、何も言わずにそっとしておいてくれた。

そんな彼女の気遣いが……昨日はとてもありがたかった。

美結さんだって辛いはずなのに……俺は何もしてあげられなかった。

だから……感謝と共に、彼女に謝らないと。

深呼吸をし、無理やり気持ちをリセットして玄関のドアを開ける。

すると――

 

「――悠、さん……」

 

そこには……下を向いて、消えそうな声でそう呟く湊さんの姿があった――。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

とりあえず2人を部屋に案内し、美結さんに飲み物を準備してもらう。

状況としては、2人がテーブルの横に座っているのに対し、俺は1人ベッドに腰かける形となっている。

まあ、怪我で仕方ないとはいえ、こういう時に動けないのはきついな……って、今はそんな場合じゃないよな。

 

「………………」

「………………」

 

湊さんとの間に、重く深い沈黙が流れる。

 

「(……超、気まずい)」

 

先程から互いに目を合わせようとはするのだが、合った瞬間に逸らしてしまうということが続いている。

まあ、"会いたい"と"謝りたい"と願っていた矢先のことだから、俺としては嬉しいはずなのだが……如何せんいきなり過ぎて、心の準備が出来ていないのだ。

それに、まさか今日来るとは思わなかったし、なんなら美結さんと一緒に来るなんて想像すらも出来なかったから……正直、展開が早すぎて頭が痛い。

 

「あ、あはは……2人で押しかけてごめんね」

「……あ、いや、それは大丈夫なんだけど……」

「……ごめんっ」

「いや、気にしなくていいんだよ?」

「……違うの、悠さん」

「……え?」

 

思いもよらない言葉が飛んできて、思わず変な声が漏れる。

違う……?違うって、どういうことだ……?

 

「あたし……飛鳥さんに、言っちゃったんだ」

「言った、って……」

「ごめんなさい……っ!」

 

意味が分からずそのまま聞き返した途端、更に丁寧に謝られてしまった。

 

「(これは……そういう、こと……だよな……)」

 

頭を回転させ、美結さんの意図を考える。

美結さんの様子からすると、たぶん……。

この怪我のこと……だよな……。

 

「湊、さん……」

「……美結さんから……全部聞きました」

 

俺の言葉に反応し、彼女はゆっくりとその重たい口を開く。

 

「不良達と争ったことも、美結さんを守って怪我したことも……それをボクのために言わないでいてくれたことも……全部全部、聞きました」

「……っ……!」

 

予想以上に多くのことを知られていて、頭が一瞬で真っ白になる。

そんな……そんな、嘘だ……。

じゃあ、何のために……俺は……っ!

 

「だから……悠さんがどう思っていたのかも、今なら分かります」

「…………」

「……でも……っ」

 

力強く自分の言葉を否定し、息を大きく吸い込む。

 

「ボクにも……ボクにも、心配させてくださいよ……っ」

「……っ、それ、は……」

 

至極真っ当な想いを告げられ、返す言葉が出てこなくなる。

でも……それでも、俺は……。

湊さんの……ために……っ!

 

「……ボクたち、恋人同士じゃないんですか……っ」

「…………っ!」

 

ハンマーで殴られたような衝撃が、頭の中を駆け巡る。

確かに、俺たちは恋人同士ではある……けれど、それは仮のものであり、本当は"ただの友人関係"に過ぎない。

"ただの友人関係"に過ぎない……のに……。

それを出すのは……ずるいって……っ。

 

「……だって、それは……っ」

「……美結さんは、いいんですか……?」

 

一番弱いところにナイフを突きつけられ、呼吸すらも一瞬止まってしまった。

 

「それ、は……」

「美結さんには、手伝ってもらってるのに……」

「……っ……」

「毎日、お世話してもらってるのに……っ!」

 

畳み掛けるようにして、湊さんの攻撃が続く。

本当にその通りなんだよ……本当に……。

だから……苦しいんだよ……。

 

「ボクは……ダメなんですか……?」

「そんな、ことは……」

 

締め付けられるような心の痛みを堪え、必死に言葉を紡ぎ出す。

湊さんが……ダメなわけ、ないじゃないか……。

俺にとって、君以上の人間が……いるわけ、ないじゃないか……っ!

でも……それでも……俺は……っ!

 

「ボクじゃ、ダメだったんですか……?」

「……ごめん」

 

喉まで出かかった思いを必死に押さえ込み、一言謝罪を述べる。

だって、こんなこと……湊さんに、言えるわけ……。

 

「そんな謝罪なんて……ボクは……欲しくありませんっ!」

「…………っ!」

「そんなの……いらないです……っ!」

 

キッパリとそう言い放ち、立ち上がって俺の目の前にやってくる。

だって、これは……君の、ために……。

 

「だから、教えてください……!」

「教えて、って……」

「ボクの事……嫌いになっちゃったんですか……っ」

「――――――――」

 

俺の想いと真逆の問いを投げかけると同時に、彼女はいつかのように泣き出してしまった。

 

「(あぁ……俺は――)」

 

――湊さんの心を、ここまで追い詰めてしまっていたのか。

自分の罪をはっきりと自覚し、胸の奥が強く締め付けられる。

……ずっと、怒っているとばかり思っていた。

……俺の事を、憎んでいるとさえ思っていた。

 

「(でも、違ったんだ……)」

 

湊さんは、本当はそんなことを考えてた訳じゃなくて……。

それよりもっと、ありきたりで……。

それは、俺が一番先に思い浮かばなきゃいけなかったことで……。

そして……最も、大切なことだったんだ。

 

「(ごめん……湊さん……)」

 

心が耐えられなくなり、唇を強く噛み締める。

――そう。

彼女は――湊さんは……。

大切な人が、他の人に奪われてしまうという不安に。

大切な人が、離れていってしまうという不安に。

ただただ……赤子のように怯えていたのだ。

 

 

 




はい、というわけでいかがだったでしょうか?
前編は悠君の独白と湊くん襲来でしたが……まさかのもう会えないと覚悟した矢先に再開ですからね。もう悠君の感情ぐっちゃぐちゃですよ笑
個人的には、湊くんの最後のセリフラッシュが結構気に入ってます!
悠への気持ちに気づいてしまったせいで、いつもより言葉が攻めてる感じになっているのがもう可愛いです笑
さて、次回の話ですが、湊くん×悠君の続きになります。このまま次で終わってくれれば安心するんですけど、2人の仲が無事に元に戻るのか?
というかその場合、イチャイチャしまくるバカップルになりそうですけど、果たしてそうなってしまうのか?
来週も楽しみにしていてください笑

追記
感想ありがとうございます!!!本当にもうありがたいとしか言えません笑
もうね、一言でもいいんですよ!それだけで嬉しいんですよ笑
ありがたや~~笑
実は先週、この作品の実質的な1話目にあたる最初の話を大幅に変えました笑
まあ展開には一切関係ないですけど、個人的にずっと変えたかったところではあるのでこれで一安心です笑
ここまで見てくださっている皆さんだと、今更ここ替えても意味無くね?と思うかもしれませんが……大目に見てください!
長くなりすぎてしまったので、今回はこのあたりで。
今回はいつもより本文の分量が少なくなってしまいましたが、次は気っと長くなると思うので安心してください!
ということで、また次回も読んでいただければ幸いです~!
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