ということで、前回の続きです!
多分細かいこと書こうとするとネタバレになるので、あとがきの方で書きます笑
今回も、ぜひ読んでいただければ幸いです~!笑
「――ボクの事……嫌いになっちゃったんですか……っ」
湊さんの言葉が、頭の中を駆け巡る。
罪悪感が心臓を中心として、波のように全身に広がっていく。
正直もう既に、俺の心は度重なる後悔と悔恨の念によって押し潰されそうになっていた。
……けれど。
「(……"ごめん"だけじゃ、済まないよな)」
湊さんが望んでいるのは、そんな言葉では無い。
彼女が真に求めているのは……"安心"なのだ。
そのためには、俺の口からしっかりと説明しないといけない。
だからこそ、俺は……。
「(全て……全て、伝えるんだ……っ!)」
目を瞑り、暗闇の中で無心で呼吸を整える。
そうして、覚悟を決めた瞬間。
一際大きく息を吸い込み、そっと口を開いた。
「そんなわけ、ないじゃないか……っ!」
「……っ……」
彼女を安心させるようにと、力強く問いに答える。
「俺はただ、湊さんに辛い思いをして欲しくなくて……。だから、こんな姿を見せる訳には――」
「……っ!でも、ボクだって……悠さんの、ためなら……っ!」
純粋な気持ちを伝えようとして、その言葉が遮られる。
彼女はきっと、俺のためなら耐えられると言いたいのだろう。
そのくらい、これだけ一緒にいればわかる。
けれど……そんな考えは……。
「それじゃあ……それじゃあ、ダメなんだっ!」
「なんで、そんな――」
「もう湊さんは……十分に、頑張ったんだよっ!」
「――っ!」
今度はこちらが遮るようにして、言葉を紡いでいく。
俺のこの気持ち……湊さんに、届いてくれ――
「ある日突然、家族を失って……それでも、残った唯一の家族と毎日を必死に生き抜いて……」
「…………」
「でも、その唯一の家族すらも、失ってしまって……」
「…………」
下を向いて無言で震える彼女を前に、今すぐ抱き締めたいという気持ちを押さえ付けて、その続きを述べていく。
「そんな、簡単には想像できないような幾多の苦しみ、悲しみを……最近やっと、乗り越えたっていうのに……」
「……っ……」
「その手伝いを、俺がこの手でしたっていうのに……っ!」
「……悠、さん……」
放たれた言葉に、気持ちが強く入り始める。
それと同時に、罪悪感と後悔がより一層心の中に充ちていく。
「家族の代わりに、俺がそばにいてやるって……言ったのに……っ!」
「……っ……」
「そんな俺が、大怪我をしたなんて知ったら……っ」
彼女は――再びその深い闇の中へと戻ってしまうかもしれない。
それどころか、これが追い打ちとなって……その心が壊れてしまうかもしれない。
それが……あの時直感的に想像できてしまった、最悪のシナリオだったんだ。
「だから……そんな湊さんに、また同じ思いをさせたくなかったんだ……っ!」
「悠、さん……」
しっかりと俺の口から動機を告げ、次の言葉を練りながら彼女の様子を伺う。
きっと、この話も……もう既に美結さんから教えられているのだろう。
そうとは分かっているのだが……どうしても、彼女の反応は予想よりも大きく……そしてその動揺も大きいように見えてしまったのだった。
「それで、俺は湊さんに全てを隠して……忙しくて会えないって、嘘をつくことにしたんだ」
「……………………」
心が苦しくなっていくのを感じながらも、絶えず次の言葉を続けていく。
「だから……湊さんにだけは、知られたくなかったんだ」
「悠、さん……」
ある程度話し終わり、湊さんの方をそっと見つめる。
依然として、彼女は下を向いていたが……俺の名を呼ぶ声は、どこか震えているように感じた。
「俺の事を、どう思ってくれても構わない」
「…………」
「嘘つきだの、クズだのと思ってくれても構わない」
真剣な眼差しで彼女を見つめながら、立て続けに思いをぶちまけていく。
「"ごめん"、なんて言葉じゃ足りないのは分かってるさ……。でも、それでも――」
「わかってます……っ!」
「……っ!」
そう言いかけた途端、大きな叫び声によってその言葉は遮られた。
「自分でも……分かってますよ……っ!」
「湊、さん……」
彼女の潤んだ瞳が、俺の心を鷲掴みにする。
そうして、湊さんは涙を拭いながら……静かに語り始めた。
「家族を失うのは……正直、今も怖いです……」
「…………」
「トラウマだって、悠さんがいたから克服できたわけですし……。もしも、その悠さんが……いなくなったりなんか、したら……」
そう言いかけて、彼女は両の瞳に大粒の涙を浮かべる。
"悠さんがいたから"、と言ってくれるのは……正直、助けた身からしたら凄く嬉しい。
……けれど、やっぱりそう考えると……隠したままの方が、良かったんじゃ……。
「だから……悠さんの判断は、正しいのかも知れません……」
「湊、さん……」
「――でもっ!」
「……っ!」
「ボクは……ボクはっ!悠さんに……いや、"家族"に……信じて貰えない方が、辛いんですよ……っ!」
深い想いが込められた彼女の叫びが、一瞬で俺の思考を停止させる。
「(家族……家族……?)」
普段あまり自分の意思を出さない湊さんだからこそ、これには流石に滅茶苦茶驚いてしまった。
というか、今……俺の事、"家族"って言った気がするんだけど……。
「湊、さん……それって――」
「悠さんは!悠さんは、もう……ボクの、"家族"……なんですっ!」
「…………っ!」
「…………!」
湊さんからの思わぬ告白に、心臓の鼓動が速くなっていく。
「(俺、が……家族……)」
心の中で何度も呟き、その言葉の意味を理解する。
その言葉は、友人としても……そして、彼女の"偽りの恋人"としても、とても嬉しいものであり……俺の心は思わず舞い上がっていた。
「湊、さん……」
「悠さんだけじゃない。風莉さんも、柚子さんも、ひなたさんも……美結さんも、七海先生も……!」
「――――」
「みんなみんな、もうボクの家族なんです……っ!」
目を瞑り、彼女は身の回りの人達に思いを馳せながら、その続きを紡いでいく。
俺だけじゃ、ない……か。そ、そりゃあそうだよな!湊さんにはたくさんの人がついてるんだし!
心の中で必死に言い訳をして、どうにか平静を保つ。
どうやら、俺は少し……というか、結構な勘違いをしていたらしい。
まあ、そもそも振られてるし……そうだよなぁ……。
「だから……っ!その"家族"に信じてもらえないのは……辛いんですよ……っ」
「……っ……」
絞り出すようなか細い声が、浮ついた俺の心を現実へと呼び戻す。
そっか……俺のことを家族のように思ってくれているのなら、今回のことは"家族から信頼されてないが故のこと"とも捉えられるからな。
「と、特に……悠さんは、その――ボクの恋人、なんですから……っ!」
「……っ!ご、ごめん……っ」
突然の爆弾発言に俺の心は再び掻き乱され……思わず、反射的に謝ってしまった。
まさか湊さんから、またしてもその言葉を聞くことになるとは……。
きっと、彼女にはその気がないのだろうけど……流石にこういうのは、勘違いしちゃうって。
「謝罪なんて……そんなの、いりませんっ!」
首をぶんぶんと大きく横に振り、湊さんは俺の顔へと近づいてくる。
あまりの恥ずかしさに視線が合わせられなくなるが……今はそれどころじゃない。
「だから……だから……っ!」
そう言って、彼女は涙を溢れさせながら、俺の胸へと抱きついてくる。
完治してないから全身が痛いはずなのに……何故かこの時は、少しの痛みすらも感じなかったんだ。
そして――
「ボクにも……頼ってくださいよ……っ!」
「…………」
「守られるだけが……ボクの……いや、"恋人"の仕事じゃないんですよ……っ!」
彼女の小さくか細い両手が、背中へと回される。
体を締め付ける力が、彼女の涙に比例するように少しずつ強くなっていく。
「それとも……ボクにはまだ、悠さんの隣に立つ資格はないんですか……?」
「そんな、こと――」
その続きを遮るようにと、より一層強く抱き締められる。
「(湊、さん……)」
不安による震えが、彼女の小さな両手から伝わってくる。
胸の辺りから……啜り泣く声も聞こえてくる。
――これは……全部、俺のせいだ。
彼女を思うあまり……かえって、不安にさせてしまったんだ。
だから……ちゃんと、言わないと。
彼女の気持ちを理解した上での……俺の気持ちを。
「"資格がない"、なんて……そんなわけないに決まってんだろ……っ!」
俺の胸で泣き続ける女の子を、そっと優しく両手で包み込む。
「ずっと一緒にいるって言ったろ……?だから、どんな時でも俺の隣にいていいんだよ……っ」
「うぅ……ぁ……」
「だって……湊さんは、俺の"彼女"なんだから」
胸に抱いた想いをぶちまけて、彼女を強く抱き寄せる。
俺の方こそ、湊さんの隣に立つ資格なんてないと思ってたのに……まさか湊さんに言われてしまうとは思ってもみなかった。
それほど、俺のことを意識してくれてるのかな。
それだったら……嬉しいんだけどさ。
……それにしても。
「(……やっぱり、振られた傷がまだ癒えてないんだろうなぁ……)」
比較的傷の少ない左手で優しく頭を撫でながら――それでも、"伝えられなかった想い"に目を向ける。
今日は、チキって言えなかったけど……さ。
俺はもう……湊さんしか、考えられないんだよ。
「うぅ……悠さん……」
「ごめん……ほんとにごめん、湊さん……っ。俺、全然気づけなくて……」
「もうっ……!悠さんのバカぁ……っ!謝らなくていいのに……!」
「……あ、また忘れてた……」
つい、彼女から言われたことも忘れ、いつものように謝ってしまった。
このまま"謝ったら罰金"とかにしたら、家賃よりも高くなりそうだな。
「俺さ、湊さんに言えなかったことが……ずっと、辛かったんだ」
「……はい」
2人で抱き合いながら、ポツリとそう話し始める。
「毎日、湊さんに会いたくてさ……。でも、会ったら湊さんにバレちゃうから……絶対に会うことが出来なくて……」
「……うん」
「必死に我慢しようとして、それでも耐えられなくて……。電話で我慢しようとしても、それも耐えられそうになくて……」
辛い日々の記憶が、昨日のように思い出される。
あれだけ湊さんと一緒にいたのに、ある日突然会えなくなるなんて……あれほど辛いことは、今まであったのかな。
「それで、俺のその様子を察したのか、美結さんが話し相手になってくれて……」
「…………」
「でも、それもなんというか……美結さんに、申し訳なくて……」
「悠、さん……」
彼女を離さないまま、視線を美結さんの方へと向ける。
美結さんとの生活は楽しかったんだけど……なんというか、"湊さんの代わり"になってしまうのが嫌で……。
だからこそ、言葉じゃ言い表せない程に……本当に、美結さんには迷惑をかけすぎたと思う。
「だから結局、毎日のように電話することにしたんだ」
「そう、だったんですか……」
「だって……湊さんに、心配をかけることだけはしたくなかったし……」
思えば、ここまで心配させてしまった上に、不安にさせてしまった時点でダメだったんだけど……さ。
それでも……。
「湊さんにだけは……せめて、笑顔でいて欲しかったんだ」
「――――――」
最後に残った想いを込めて、誠心誠意湊さんに伝える。
なんかキザなセリフっぽくなっちゃったけど……まあ、いいか。
「………〜〜〜ッッ!も、もうっ!ゆ、悠さんのバカ……っ!」
「ご、ごめん……」
「もう、二度と……絶対に、こんなことしないでくださいね……っ」
大粒の涙を流しながらも、それでも花のような笑顔で彼女はそう尋ねてくる。
「ああ……二度としないって誓うよ」
「約束……ですから、ね?」
そう言って、どこか清々しい表情を浮かべた後、湊さんは再び俺の胸に顔をうずめる。
触れ合った部分を通じて、彼女の温もりが全身に伝わってくる。
「(ようやく……ようやく湊さんと、またこうして……会うことが出来たんだ)」
もう二度と、会えないと思っていた。
もう二度と、あの笑顔を見れないと思っていた。
それも全て……彼女を心配するあまり、彼女を信じられなかった俺のせいだった。
――けれど、奇跡が起きた。
こうして再び出会い、互いの想いを理解し……そして乗り越えられたんだ。
「(だから……)」
傷だらけの腕で、より強く彼女を抱き締める。
今度こそ絶対に……俺はこの手を離さない。
もう二度と……俺は間違えない。
湊さんが許す限り……俺は、そばに居続けるよ。
新たな決意を胸に、胸元で啜り泣く彼女をそっと撫でる。
そうして、俺たちは抱き合ったまま……気が済むまで、互いの想いを確かめ合ったのだった。
はい、いかがだったでしょうか?
遂に2人がまたこうして仲良くできるのは書いていて嬉しいですけど……2人とも、変わりましたね笑
多分次辺りから日常に戻りますが、何でこの2人付き合ってないの???ってなると思います。
まあもう湊くんが完全に自覚しちゃったせいなんですけど……仕方ないですね笑
ということで、これで2人に残された問題があと1つになりましたけど……最後にして最大の問題が残っています……。
まだ少し先のことではありますが、どうなってしまうのか楽しみにしていてください笑
ではまた次回も読んでいただければ幸いです笑
追記
感想ありがとうございます!!!ほんと嬉しいです~~~!!!
それに先週はPVも増えててほんとありがたい限りです笑
さて、次の話のことですが、実は今月中旬に少し用事があって、投稿ペースが落ちてしまうと思います。
まあ、だからこそそれまでにここの部分を完結させようと1回の文量を増やしていたのですが……どうにか間に合いました笑
楽しみにしてくださっている方々には申し訳ないのですが、できる限り執筆の方も頑張りますので、気長に待っていただければと思います。