ということで、前回の続きです!
今回の話は美結ちゃん視点なんですが……何というか辛い内容になっているので、楽しみにしていてください笑
また、例によってあとがきに色々書きますので、前書きはこの辺で……
今回の話も読んでいただければ幸いです~!
――自分が醜いと感じたのは、これで何回目だろうか。
この2人を見ていると、どうしてもそんな気持ちが芽生えてしまう。
まあ、彼女持ちの人にこんな感情を抱くなんて、正直自分でもどうかと思うんだけど……。
「(こんなの、思ってしまう方がおかしいのにね)」
はぁ、とため息をつきながら、窓の外に目を向ける。
道路沿いに連なる街灯の明かりが、少し弱々しく点滅している。
そんな景色を見ながら、あたしは自分の醜さと向き合うしかないのかと思うと、今から少し憂鬱になる。
「(あたし……最低だよね……)」
再び深いため息をつき、先程の2人の様子を思い出す。
すれ違ったままだった2人は、互いの想いをぶつけ合うことで、どうにか和解することができた。
これはまさにその通りだし、それ以上それ以下でもないはずだ。
……それで、いいじゃないか。
「(それなのに、あたし……)」
そんな、誰もが願うようなハッピーエンドの結末に。
あたしは……"悠さんとのこの生活も、もう終わりなのか"、と。
"このままの日々が続けばいいのに"、と。
飛鳥さんが、喜びの涙を流す中で……醜くも、そんな穢れきったこと考えてしまったのだった。
「(なんで、こんなことになっちゃうのかなぁ……)」
そんな、どうしようもないような……やるせない気持ちに駆られながらも、再び彼女達の方に視線を向ける。
彼女たちの幸せを素直に喜べないような……そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。
だから、先程から考えれば考える程自分に嫌気が差してくるんだ。
「(胸が……苦しいよ……)」
それもこれも、全てあたしがこんな気持ちを抱いてしまったからだと思うと……正直、なんとも言えない気持ちになる。
だって、この気持ちのせいでこんなに辛い思いをしているはずなのに……。
"この気持ちがなければ、彼の全てをこんなに愛おしく思うことなんてなかった"、と。
そう考えるだけで、全て許せてしまうのだ。
「(ダメだなぁ……あたし)」
混沌とした感情の渦に振り回されながら、乾いた笑いしか出てこなくなる。
ほんとに、何やってるんだろうな……あたしは。
幸せを噛み締めながら、互いの想いを伝え合う2人見て――そっと視線を外に逸らす。
これで耐えられないとなると……これから大丈夫なのかな。
そう思いながら、先程よりも強く光る街灯の明かりに視線を向ける。
「(あたしも……あの光みたいに、強くなれたらなぁ……)」
月明かりに負けないようにと、健気に光るその灯りを……ただひたすらにじっと眺める。
そうして、2人の声が次第に遠のいていく中で……あたしは、自分の想いを押し殺すことしか出来なかった。
……恋って、難しいんだね。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――……美結さん、ありがとね」
「あ、うん。こっちこそ、いきなり来ちゃってごめんね?」
彼から零れたその純粋な気持ちに、チクリと胸が痛む。
あれから数分後、泣いていた飛鳥さんも段々と調子を取り戻していったのだが……気づけば悠さんの膝で寝てしまった。
まあ、これまでずっと思い詰めていた分、その反動が一気に来てしまったのだろう。
やっと悠さんに会えたんだ……流石にこうなっちゃうのも仕方ないよね。
「……いや、美結さんのおかげだよ」
「……え?」
「美結さんが言ってくれなかったら……美結さんが連れてきてくれなかったら……今頃俺達は、まだすれ違ったままだったかもしれない」
膝の上で眠る彼女をそっと撫でながら、悠さんは噛み締めるようにそう呟く。
あたしのおかげなんて……そんなわけ……。
「そ、そんなことないよ!元はと言えば、あたしのせいでもあるんだし……」
「そんなことあるんだって。というか、美結さんのせいじゃないからね?」
つい口走ってしまったことにツッコミを入れられ、そっと口を噤む。
まあ、飛鳥さんもそんな感じのことを言ってたけど……でも、あたしにとっては"悠さんに助けて貰ったせいで、悠さんが怪我をしてしまった"ということが純然たる事実なんだよ……。
「……ごめんね」
「……え?」
「俺が本来やるべきことなのに……美結さんにやって貰っちゃって」
悠さんの視線が下に向いたことで、少し遅れて言葉の意味を理解する。
「美結さんだって、辛かったと思うんだ。それこそ、俺よりも湊さんとは長いんだし」
「あはは……まあ、それを言っちゃうと、そうなんだけどね」
また、チクリ――と胸が痛む。
確かに、今回のことはあたしにとっても辛かったけど……それよりも、彼へのダメージが大きかったことは、誰の目にも明らかだった。
それに……あたしの辛さは、悠さんが抱いているようなそんな綺麗なものじゃないんだよ……。
「ごめんね。俺のせいで、こんなことに巻き込んじまって」
「いや、そんな悠さんのせいじゃ……」
「こうなることなら、最初から隠さずに湊さんに言えばよかったのにね」
「でも……それは……」
彼の軽い後悔の想いに、思わず否定の言葉が漏れ出す。
だって、そうしたら……あたしとの生活は……。
あたしとの、あの日々は……悠さんにとって、何でもなかったの……?
「大丈夫だよ。後悔はしてないから」
「……っ!?そ、そっか……よかった」
あたしの気持ちを読まれたのかと思うくらいに、タイミングよく悠さんはそう告げる。
でも……喜んでなんか、いられないよね。
だって、あたしが……悠さんにとって、"飛鳥さんの代わり"でしかないことには変わりがないんだから……。
「……でも、ごめんね?あたしなんかが手伝い役になっちゃって。……あ、飛鳥さんと一緒の方が、良かったのにね……」
段々自分が嫌になってきて、ついそんなことを口に出してしまった。
こんなこと、悠さんに言っても困られるだけなのに……。
結局あたしは、飛鳥さんの代わりすらも務められなか――
「――違うよ、美結さん」
「……え?」
俯いて反省している最中にそんな否定の言葉が飛んできて、思わず顔を上げて彼の顔を見つめる。
え……え?どういう……こと……?
「違う、って……」
予想外の返しに頭が回らず、呟くようにその意味を聞き返す。
すると、彼は聞き届けると同時に撫でる手を止め、あたしの方へと体を向き直す。
そして、大きく深呼吸をした後……ゆっくりと、その口を開いた。
「……最初は、さ」
「ん……?」
「最初は……手伝って貰っちゃって申し訳ないな、って感じだったんだ」
告げられた言葉に既視感を感じて、彼の目を見つめた時……思い出した。
これは……あの日の話の続きなのかもしれない。
「あー……確かに、最初の頃は悠さん畏まってたもんね〜!自分の家なのに」
「うぐっ……マジかよ」
「なんか、飛鳥さんと一緒にいるところしか見たこと無かったから、割と新鮮だったよ〜」
「ぐぬぬ……何も言い返せねぇ……」
悔しそうにする彼の姿を見て、思わず笑みが零れる。
しかし、その気持ちも……一瞬のうちに打ち消され、再び笑顔が貼り付けられていく。
「でも……さ。途中から、自分の中で何かが変わり始めたんだよね」
「ふむふむ、というと〜?」
自分らしく、わざとらしく……いつもの姿を再現しながら、胸の内にある感情に蓋をしていく。
しかし――
「……美結さんとの生活が、思った以上に楽しくて……さ」
「――――――」
彼の放ったその言葉が、あたしの心に入り込む。
閉じかけた蓋が……次第にこじ開けられていく。
「一刻も早くこの体を治して、美結さんに恩返ししないと!……って思ってたんだけどさ」
「……………………」
「何日も何日も一緒に過ごしていくうちに……段々、楽しくなってきちゃってさ」
追い討ちのように告げられていく彼の想いに、心が御しきれなくなってくる。
例えようのない嬉しさと最後に残った理性の欠片が……秘めた想いの狭間でせめぎ合って、胸が苦しくなってくる。
「気がつけば、今日は何話そうかな?とか、今日は何時に来るのかな?とか、考えるようになってさ……」
「……っ……」
「美結さんが……いるのが当たり前の存在、というか……生活の一部に、なってたんだ」
次々と述べられていく言葉に比例して、喜びの感情が膨れ上がっていく。
そして同時に、醜い感情があたしの心を喰い荒らしていくのだ。
「だから……湊さんに見られてしまったあの日」
「……っ……」
「"ああ、ついにバチがあたったんだな"って、直感的にそう感じたんだよね」
淡々と彼の口から放たれた事実に、思わず動揺が隠せなくなる。
まさか、悠さんもあたしと同じことを考えていたなんて……。
「そんな、こと……」
「いや、まあ……本当にそうだったのかはわかんないけどさ。もう湊さんに二度と会えなくても……俺のせいだから仕方ないって、思ってたんだよね」
「………………」
「だから……美結さんが湊さんを連れてきてくれた時、正直すごく驚いたけど……同時に、すごく嬉しかったんだ」
「悠、さん……」
彼の言葉からその想いが伝わってきて、1人の友人として嬉しくなってくると同時に……もう1つの感情がじわじわとあたしの心を蝕んでいく。
お願い……あと少しくらい耐えてよ……っ!
「ありがとう……美結さん。俺なんかと一緒にいてくれて……俺なんかの世話をしてくれて……」
「……っ……」
「そして……湊さんと、仲直りさせてくれて」
喜びの感情が高まるに連れて、"女"としての気持ちが増幅していく。
もう……ダメだ。
これ以上は……あたしの心がもたないよ……。
「本当に……ありがとう、美結さん。美結さんのおかげだよ……!」
「悠、さん……」
「だから……っ!“あたしなんか”なんて言うのはやめてくれよ……。俺は、美結さんと一緒に居られてよかったって、ずっと思ってるんだよっ!」
悠さんからの感謝の想いに、胸の奥がキュウっと苦しくなる。
諦めたいのに……彼のことは、もう忘れたいのに……っ。
どうして……どうして、こんな……。
「……そ、そんな大したことしてないよ〜!まあ、だって、あたしだって楽しかったし?」
「……うん」
「この生活が、いつまでも続けばいいな〜って思ってた程だからね〜!……でも、うん……わかった。もうそんなことは言わないよ」
「美結さん……」
この気持ちを隠さないとと思い、必死にいつもの様子を取り繕う。
心が……痛いんだよ……。
もう、ボロボロなんだよ……誰か、助けてよぉ……っ。
「ま、まあ、飛鳥さんとも仲直り出来たことだし!存分にイチャイチャしてね〜!」
「っ!い、イチャイチャなんて……」
「いや、さっきのアレでイチャイチャじゃないって言ったら、世の中のカップルなんてどうなっちゃうのさ!?」
「いや、世の中のカップルも大概だけどね!?」
少しふざけたことで多少は落ち着いたけど……それでも、今も心は悲鳴を上げ続けている。
正直、できることなら……今すぐここから出て行きたい。
一刻も早く、この気持ちを吐露したい。
早く……楽になりたいよぉ……。
「とりあえず、今後とも末永くお幸せに〜!まあ、あたし達の取材付きだけど」
「それは嬉しくないんですが……!?」
「……ん、んん……」
「あ、湊さん」
……と、話しているうちに、気づけば飛鳥さんが目覚めそうになっていた。
運が良いのか悪いのか……飛鳥さんも、このタイミングで起きてくるなんて。
……というかまさか、自分でもここまで追い詰められるとは思わなかった。
今度はもう少し、心を強く持つ練習でもしないとな……。
「ん……ここは……確か……」
「あ〜、まだ寝ぼけちゃってるね」
「そっとしておいてもいいけど……そろそろ起こすか」
そう言って飛鳥さんの体を揺すり始める彼の目の前に……中身のないコップが2つ置いてある。
「(……もしかしたら、これで……)」
咄嗟にある事に気が付き、あたしの目の前に置いてある3つ目のコップに注がれたお茶を急いで飲み干す。
そうしてあたしは、彼に対してとある提案をするのだった。
「――あっ、飲み物なくなってきたからあたし買ってくるよ」
「え、あ、俺が……」
「……いや、その体じゃ無理でしょって」
「……確かに。ごめん美結さん」
適当に理由を付けて、どうにか逃げる手段を確保していく。
よし、これなら……っ!
「外暗いし、すぐそこの自販機で買ってくるよ〜」
「毎回毎回ごめんね……本当にありがとう!」
「いいっていいって!それじゃあ、行ってくるね〜」
そう言って、あたしは足早に玄関の扉を開け、財布を片手に階段を駆け下りていく。
もう……無理だ。耐えられる気がしない。
「(悠さんのことは忘れようと頑張ったのに……未練が……っ)」
ブンブンと頭を振り払っても。
別のことを考えようとしても。
一段一段進んでいく度に……彼との思い出が、脳裏に鮮明に蘇ってくる。
ああ……こんなことになるなら……。
――恋なんて、しなきゃ良かったんだ。
さて、いかがだったでしょうか?
今回は美結ちゃんの心情を書きましたが、本当に辛いのは次から始まる悠×湊くんのイチャイチャなんですよね……
でもまあ、この美結ちゃんの失恋の行きつく先は結構大事な部分になっていくと思うので、美結×悠の関係性も見ておくと面白いかと思います笑
次回は完全なる悠×湊くんのイチャイチャです!
正直書きながら胸焼けしててある意味地獄みたいになっていますが、皆さんも楽しみにしていてください笑
ということで、次回も読んでいただければと思います!
追記
いつもいつも感想ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです笑
今後の投稿についてですが、とりあえず用事がどうにかなったので、次からは以前までのペースで出せると思います!
物語も佳境に入ってきて、2人の関係性も加速していくと思うので楽しみにしていてください笑
……本当は昨日出したかったんですけど、遅れてしまいました……すみません!!!