湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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お久しぶりです!前回の続きです!
年末で色々と忙しくて書くのが遅くなってしまいましたが、美結ちゃんとのデート回はこれでラストです!
文字数がいつもよりも少ないので物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、許してください笑
一応この後の湊視点の話まで含めて出そうかと思ったのですが、思った以上に長くなってしまいそうだったので次に回してしまいました笑
ですが!内容的には結構頑張って書いたので、今回も読んでいただけると幸いです~!


これはデートですか?(後)

 

 

 

――その時、一陣の風が吹いた。

それは、彼女の思いの丈を表すかのように、強くどこか儚いような――夏色の風だった。

 

「(美結、さん……)」

 

正直、彼女の気持ちには薄々気がついていた。

でも、それでも俺に出来ることなんて、何も無かったんだ。

 

「(……いや、これは言い訳だな)」

 

結局のところ、俺は甘えていただけなんだ。

自分のことを好きでいてくれていると知った上で、彼女の居心地の良さに甘えていたんだ。

だから、これは俺の責任だ。

彼女の想いから逃げ、現実から目を逸らしてきた事への……"罰"なんだ。

だからこそ俺は、彼女に告げなければならない。

俺の……答えを。

 

「(…………)」

 

結論から言えば、俺は彼女の想いに応えられない。

湊さんを、心の底から愛しているからだ。

けれど……。

それを伝えてしまえば、彼女はどうなる?

現実に耐えられなくなり、泣いてしまうかもしれない。

この関係が崩れてしまって、喪失感と後悔の念に苛まれてしまうかもしれない。

いや、それどころか、俺に想いを寄せてしまった自分を責めてしまうかもしれない。

――でも。

それを全て承知の上で、彼女は俺に告白してくれたのだろう。

 

「…………」

 

肩を震わせ、祈るように目を瞑った彼女の姿が、俺の心に深く突き刺さる。

……そもそも、俺と湊さんは付き合ってることになっている。

実際には付き合っている"ふり"ではあるのだが、それは周知の事実となりつつあるし、美結さんも知っている。

だから……これは、全てを投げ捨てても良いという彼女の覚悟の現れなのだろう。

そこまでして、彼女は――

 

「(美結さん、君は……)」

 

……それほどまでに、1人で苦しんでいたのか。

誰にも言えることの無い想いを、ずっと自分の胸の中に閉じ込めて。

笑顔の仮面を貼り付けて、みんなの前で明るく振る舞って。

俺の前でも常に気を張って、バレないように話を逸らして。

……だけど、心の中ではずっと、孤独な想いと対峙し続けて。

それでも、俺が湊さんとすれ違ってしまった時も、俺を支えてくれて。

俺達が再開して元に戻れた時も、自分の気持ちを押し殺して、俺達のために喜んでくれて。

そんな、人のために自分を犠牲にしてきた彼女は……結局、報われないままその想いを散らせることになる。

それが、彼女――皆見美結の恋なのだ。

 

「(こんなの……こんなのって……)」

 

やりきれない思いが、胸の中を満たしていく。

けれど、仕方がないのだ。

なぜなら、それが彼女の選んだ道であり……俺が、決断すべき選択なのだから。

……………………。

責任の重さが、今になって襲いかかってくる。

これが、誰かを選ぶということなのだ。

これが、他の誰かを選ばないということなのだ。

これが……俺が背負うべき"罪"なのだ。

 

「(…………)」

 

ゆっくりと深呼吸をし、1人怯える彼女の姿を見つめる。

正直、美結さんを助けたいと思うし、今すぐに彼女を抱き締めてあげたい。

彼女を、1人じゃないんだと安心させたい。

……けれど。

それは……それだけは、できない。

それだけは、してはいけない。

だって、俺は……。

飛鳥湊という、1人の女の子のことが――

 

「……ありがとう、美結さん」

 

覚悟を決め、彼女から目を逸らさずに、感謝の言葉を紡いでいく。

 

「俺のことをそこまで想ってくれていたなんて……凄く嬉しいよ」

 

美結さんとの思い出を頭に浮かべながら、素直な気持ちをそのまま述べていく。

正直、彼女の気持ちが俺に向いていることには、薄々気がついていた。

まあ、最初は自惚れているように感じてあまり意識しないようにしていたのだが……一緒に過ごす時間が増えていくに連れて、その自惚れは次第に確信へと近づいていったのだ。

……けれど。

まさかここまで俺の事を想ってくれているなんて、想像すらもできなかった。

ぶっちゃけた話、友達の延長線上くらいだと思っていたのだ。

だけど……彼女は泣きながら告白する程に、俺のことを好きでいてくれたのだ。

……だからこそ、彼女にその感謝を伝えなければならない。

そして、彼女の想いに答えを出さなければならないのだ。

 

「……だけど、ね。……俺は……」

 

これが終わったら、俺たちの関係も消えてしまうかもしれない。

そんな嫌な想像が俺の思考を蝕み、言いかけた言葉を詰まらせる。

……でも。

ここで退くわけには……いかねぇんだよ……っ。

 

「……俺は、湊さんのことを……愛しているんだ」

 

途中で深呼吸をして心を落ち着かせながら、理由を先に伝える。

……ごめん、美結さん。

俺は、これから……。

君を、振るよ。

 

「だから……美結さんの、気持ちには――」

「待って……っ」

 

突然その一言によって俺の返事は遮られ、思わず変な声が漏れる。

今、"待って"って言ったよな……?

どういう……ことだ……?

 

「美結、さん……?」

「それは……少しだけ待って……っ」

 

彼女は俯いたまま叫ぶようにそう告げると、より一層大きく全身を震わせる。

そうして、彼女の言う通りに少し待つと、次第に声を殺して啜り泣く音が聞こえてきた。

 

「ごめんね、悠さん……笑いながらって言ったのに……っ」

 

声を震わせながらそう言って、彼女はゆっくりと顔を上げる。

すると――取り繕った笑顔を貼り付けたまま、滂沱の涙を流す女の子姿が……そこにあったんだ。

 

「……でも、ね。情けない話なんだけど……」

「…………」

「今のあたしには……耐えられる自信が、無いんだ」

 

吹けば消えてしまう蝋燭の火のような声で、彼女は自分の想いを吐露する。

――俺は、いつからか彼女のことを誤解していたらしい。

"いつも笑顔でみんなを笑わせてくれるような、天真爛漫なムードメーカー"。

それが、俺が彼女に抱いていた印象だった。

――けれど、それは……。

……ただの、押し付けられたイメージに過ぎなかったんだ。

 

「……おかしいよね。自分で告白しておきながら……待って欲しい、なんて」

 

必死に堪えようとする彼女の気持ちとは裏腹に、無慈悲にも……その涙は絶えず零れ続ける。

本当の彼女は、並以上に社交性に優れた――"特別な"人間ではなかったのだ。

誰よりも繊細で優しく、自分を押し殺して他人を尊重するような……そんな、人よりも気を遣える――"普通の"女の子だったんだ。

それなのに、俺は……。

 

「あたし……みんなが思ってるよりも……自分が思っているよりも、ずっとずっと弱い人間だったみたい」

 

自分を卑下して殻に閉じこもろうとする彼女に、俺は――何も言えなくなる。

 

「だから……悠さん」

 

もう限界だと言わんばかりに苦悶の表情を浮かべながら、彼女は縋るように言葉を紡ぐ。

 

「もう少しだけ……時間を、ください……っ」

 

彼女の……悲痛に満ちた表情が。

嗚咽混じりの、震える声が。

今にも消えてしまいそうな、儚げな姿が。

俺の心を、じわじわと締め付けていく――。

 

「やっぱり、あと少しだけ……。ほんの少しだけで、いいから……」

 

そうして、彼女の口から零れ落ちた、最後の願いは――

 

「あなたに恋する……女の子で、いさせて……っ!」

「――っ――」

 

1人の少女の、美しく純粋なエゴだった。

 

「ごめんね……ほんとに、ごめん……っ」

「そんな、ことは……」

 

人目も気にせず泣きながら謝る彼女に、俺は何も言えずにただ立ち尽くすことしか出来なくなる。

――今すぐにでも、彼女を慰めてあげたい。

――"大丈夫だよ"って、彼女を安心させてあげたい。

けれど……そんなことをしたら、2人への裏切りになってしまう。

だから、今はこうすることしか出来ないんだ……。

 

「悠さん、ごめんね……っ!」

 

そうして、何も言えずただ立ち尽くすだけの俺を、恋情と悲痛の混じり合った瞳で見つめながら……彼女は、去ってしまった。

 

「……はぁ」

 

ただ一人残された世界で、後悔と寂寥感に駆られながら……俺は、彼女のいた場所を見つめる。

 

「これで……良かったんだよな……」

 

心の中に渦巻く感情に翻弄されながら、自分の行動を見つめ直す。

今回は今までとは違い、思わせぶりなこともしなかったし、優柔不断な態度で惑わせることもしなかった。

というか、自分の気持ちを……今の思いを、ちゃんと伝えようとしたんだ。

……けれど。

美結さんに待って欲しいと言われ、その思いは最後まで言葉になることは無かった。

……だから、これは仕方ないことなのかもしれない。

俺に出来ることは、全てやりきったんだと思う。

……そうである、はずなんだ。

はず、なのに……。

 

「どうして、俺は……」

 

絶えず続く胸の苦しみが、心にこびりついて消えてくれない。

そうして、何度も何度も取り除こうと頑張っても……。

どうしても、やるせない気持ちが拭えなかった――

………………。

…………。

……。

――ぽつりぽつり、と闇夜の空から落ちてくる。

そうして、雨は音を立てて俺の体を包み込み、世界を一変させていく。

冷たく降りしきる天の涙は、先程見せた彼女の涙のように……とめどなく降り続けるのであった。

 

 

 




いかがだったでしょうか?
美結ちゃんの恋の行方は思わぬ結末を迎えてしまいましたが、悠君に大きな爪痕を残せましたね笑
まあ、この結論を後回しにする動きが後で少し成果を残すことに繋がるのですが……これはまだ少し先のお話ですね~
さて、次からは湊くん×悠君の話が始まりますが……その前に、湊くんと風莉さんのお話が少し(?)入ります!
一応その話までが前哨戦となっているので、クライマックスまでの準備期間を愉しんでいただければ幸いです~!

追記
皆さんいつもこの作品を読んでいただきありがとうございます!
気づいたらUAが39000超えていて感動しました!
ここまで読んでいただけるとは思っていなかったので、本当に毎回毎回感謝しかありません。ありがとうございます。
あ、感想とか書いていただけると喜びまくってモチベに繋がるので、書いていただけたら嬉しいな?なんて笑
……さて、今回の話ですが、悠君の成長と美結ちゃんの女の部分がメインになっていて、めちゃくちゃ書いてて楽しかったのですが、同時に辛かったです笑
人に気を遣いすぎて逆に相手に迷惑かけていた悠君がここまで成長するとは……と保護者のような目線で今回見ていたのですが、今回はどうしようもなかったなあと思いましたね。
あそこで泣かれて自分の決断を先延ばしにされてしまって頭が混乱している悠君が、あそこまで頑張れるとは……
というか、妹たちの「優しさが時には人を傷つける」的なアドバイスがここまで効いてくるとは……真白も優依も少しは報われましたね笑
というわけで、今回はここまで!
長くなってしまいましたが、また次回も読んでいただければ幸いです!
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