湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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すみません!所用があって前回から間があいてしまいましたが、ようやく続きです!!!
……今回の話につきましては、もう何も言うことはありません。
今回の話で、湊くんは動きます。
なので、湊くんの告白を見届けていただければと思います。
ぜひ最後まで読んでいってください!


可愛ければ男の娘でも好きになってくれますか?(中)

 

 

 

――カラン、カラン……と。

甲高い下駄の音が、静かな夜の世界に響き渡る。

その音に合わせるようにと、彼は僕の隣で歩幅を合わせて歩いてくれている。

なんともまあ、歩きにくいはずなのに。

その大きい足じゃ、もう少し早く歩けるのに。

それでも彼は、文句の一つも言わずに、僕の隣にいてくれる。

カラン。カラン。

先程よりも小さい足音が、一定のリズムで聞こえてくる。

そうして、何度目か分からないが……また僕は、空を見上げた――。

 

「(……やっぱり、綺麗だなぁ)」

 

天に流れる無数の星の大河が、頭上の世界を埋め尽くす。

街灯が点々と立ち並んでいるのに、それでもなおその光は衰えることなく、僕達の瞳にその景色を映し出している。

七夕――織姫と彦星が年に一度再会出来る唯一の日。

大切で貴重な――運命の日。

2人にとっては、この日が終わってしまったらまた逢えなくなってしまうという"悲劇の日"でもあるのだけど。

……なんでだろうか。

こんな美しい世界の中で再会できるのなら、なんと幸せなことなのだろう――と。

この純粋無垢な天空の姿を前にして、僕はそう思ってしまうのだ。

………………。

…………。

……。

絶妙な距離感のまま、2人並んで線路沿いをゆっくりと歩く。

遠くの方では、まだ祭りの喧騒が聞こえてくる。

賑やかで、華やかな――人々の求める非日常。

けれど、僕達はそんな幸せな世界から――1歩ずつ、遠ざかっていく。

ゆっくりと。着実に。

――ここを曲がれば、いつもの道だ。

――ここを曲がれば、今日という日が終わる。終わってしまう。

また、代わり映えのない日常に戻ってしまう。

12時の鐘が鳴り響いた後の、夢から覚めた現実へと――。

 

「(……もう、戻れないよ……)」

 

踏み出した足に力を込めて、停滞している日常に別れを告げる。

……だから、僕は。

それに、抗うことにしたんだ。

現実を、再び夢のようなものにするために。

彼との関係を、1歩先へと進めるために。

大好きな彼に、告白するために――。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

季節にそぐわぬ涼しい風が、木々の合間を抜けて僕達の横を通り過ぎていく。

夜の温度を感じさせる少し冷めた空気に、悠さんはちょうど良いと言って涼んでいたが……僕の頬は、まだ少し火照っていた。

 

「……ゆ、悠さん」

 

熱で赤くなっているであろう唇から、目の前の想い人の名が零れ落ちる。

そんないつもと違う僕の様子にも、彼は"どうしたの"と言ってあえて触れないでいてくれている。

 

「と、とりあえず……そこのベンチに座りませんか?」

「……ああ」

 

……あと少しのところで逃げてしまい、そのまま2人でベンチに腰かける。

いや、今のは雰囲気を作ろうとして座ることを選んだだけですから、逃げてなんかいません!……多分。

そうして、自分を無理やり納得させながら、辺りの景色を見渡す。

遠くで輝く祭り光のとは対照的に、ここは暗くて人がいない。

あるのはそう――街灯に照らされたこのベンチと、使い古された遊具の数々だけであった。

 

「(緊張してきた……っ)」

 

哀愁を漂わせるブランコを横目に、ギュッと自分の手を握りしめる。

……ここは、いつもの帰り道から少し過ぎたところにある――線路沿いの公園。

あの後、一通り祭りを楽しんだ僕達は、人混みに飲まれる前に帰ろうということで、少し早めに帰路についた――はずだった。

そう……暗い夜道を歩く中、ボクは"2人きりで話がしたい"と言って、この場所に寄ってもらったのだ。

理由は至極単純。

僕は……ここで悠さんに告白するつもりだ。

 

「それで……話って、何かな?」

「……っ……悠さん」

 

雰囲気から何かを察しながらも、悠さんはあえて触れずに僕の出方を待つ。

ここで逃げちゃダメだ……ボクは、頑張るって決めたんだから。

 

「……これからする話は、あなたを……傷つけてしまうかも知れません。……いや、傷つけるに決まっています」

「……え?」

「それでも、あなたは……最後まで、聞いてくれますか?」

 

逸る心臓を押さえつけて、彼に最初で最後の忠告を促す。

悠さんからすれば、いきなりこんなこと言われても意味分からないと思うし、何事かと思うだろう。

……けれど。

 

「その様子だと、冗談じゃないみたいだね」

「……ボクは、本気です」

「……わかった。最後まで聞くって約束するよ」

 

そう言うと、彼はいつものような笑顔を抑え、真剣な瞳で僕を見つめる。

……そうだ。

こういう時に、何も言わずに信じてくれるのが……僕が好きになった人なんだ。

だから、僕も……。

覚悟を決めろ、飛鳥湊。

 

「……美結さんは」

「……え?」

「美結さんは、ボクと悠さんの表の関係を知っていながらも……悠さんに告白しました」

 

いきなり出されたもう1人のライバルの名に驚きながらも、悠さんはそのまま言葉の続きを促す。

 

「美結さんは、勇気を出して……自分の想いを伝えたんです」

「……ああ、そうだね」

「なら、ボクも――」

 

無理だと知りながらも挑んでいったライバルの顔が、そう言いかけた僕の脳裏にちらつく。

ああ、美結さん……ごめんなさい。

 

「正々堂々、ちゃんと言わなきゃいけないことがあるんです」

 

美結さんが勇気を出して言ったのに……僕だけ隠し事をしているなんて、フェアじゃないですよね。

でも……本当のことを知ったら、悠さんは……美結さんの方へ行ってしまうのかな……?

 

「……悠、さん。ボクは――あなたに、隠していたことがあります」

「……え……?」

 

突然放たれた"隠し事"という事実に、流石の彼も動揺を隠せず口を開いたまま愕然としている。

だけど……それでも、ボクはもう止まれないんだ。

 

「……これから言う事は、嘘ではなく全て本当のことです」

「…………」

「……信じて、ください」

 

何かを言いかけて……それでも、僕の目を見てうなずく。

それが……彼の示す誠意なのだろう。

だから、僕も……その優しさに、応えなければならない。

でも……どうしても、震えが止まらないんだ。

 

「……悠、さん……ボクは……」

「……うん」

 

呼吸が荒くなり、心臓が痛いほどに締め付けられる。

彼を失うかもしれないという未来が、正常な思考を破壊して喉元にナイフを突きつけてくる。

 

「……ボク、は……本当、は……っ」

 

彼に拒絶されるという恐怖が、真っ暗な視界を揺らめていく。

幸せな日常が崩れていく光景が、僕を殺す勢いで責め立てていく。

けれど……それでも。

 

「(ボクは……この気持ちを、彼に伝えたいんだ……っ)」

 

……そう。

だからこそ、その想いの丈を吐き出す前に。

この事実を、伝えないと……。

震える両手を押さえつけ、ゆっくりと深呼吸をする。

悠さん――ごめんなさい。

ボク、は――

 

「……男、なんです……っ」

 

震える唇から漏れ出すように、隠していた事実が放たれる。

 

「……え、いや、え……ど、どういう……え?」

「…………」

「――――」

 

どういうこと?と言いたげな表情で僕の方を見つめると――一瞬でその顔を引き締める。

きっと、僕の真剣な眼差しを見て、冗談では無いことを察したのだろう。

……胸が、痛い。

 

「……湊、さん……?」

「……はい」

「君は……本当に……」

「……そう、です。……今まで、隠していてごめんなさい……っ」

 

事実を確認しようとする悠さんに対し、謝りながら事実を肯定する。

怖いよ……誰か…ぁ…。

 

「な、なんで……そんな……」

「……ご、ごめんなさい……っ」

 

数秒の困惑の後、目に見えて動揺し始めた悠さんに、ただ謝ることしか出来なくなる。

 

「まさ、か……」

 

――刹那。

悠さんはボソリとそう呟くと……次第にその混乱した表情が青ざめていく。

――"騙していたのか"、と。

――"俺を弄んで、楽しんでいたのか"、と。

そう言いたげな歪んだ瞳が、ボクの心臓を無惨にも貫いていき、心の奥底へと到達する。

 

「ち、違うんです……っ、ボク……は――」

 

そう言いかけて――ギュッと口を噤む。

ああ……間違えてしまった。

彼の絶望しきった表情が、僕の心を内側から破壊していく。

僕を支えていたはずの彼との思い出が、一斉に牙を剥く。

痛い。怖い。苦しい。嫌だ。助けて。お願い。

誰か。だれか。ダレカ。ダレカダレカダレカダレカダレカダレカ。

――不安で押し潰されかけていた心が、再びその扉を閉じようとしている。

なんで言ってしまったのだろう。

なんで我慢できなかったのだろう。

先に立たない後悔が、頭の中で渦を巻いて思考を蹂躙していく。

……けれど。

そう考えたところで……もう、わかっているのだ。

これ以上は……この想いを抑えることなどできなかった、と。

 

「……ぁ……」

「湊さん……君は――」

 

ここまでしてしまったら……もう、止められない。

たとえ、痛くても、辛くても、苦しくても……。

 

「……悠、さん……っ」

 

彼に想いを伝えると、決めてしまったのだから。

 

「実は……もう1つ、話したいことが……あるんです……」

「……っ……」

 

まだあるのか、と言いたげな憔悴しきった顔で、彼は困惑の眼差しをこちらに向けてくる。まあ、普通に考えたら……そういう反応になるだろう。

 

「……立て続けに言われても、困っちゃいますよね……」

「…………」

「……でも」

 

もう、この震えを抑えてくれる人もいないのだと感覚的に理解しながら、そのまま僕は続ける。

 

「もう、抑えておくことなんて……できないんです……っ」

「…………」

「気持ちが……溢れちゃうんです……っ!」

 

その言葉と同時に、僕の両の瞳から雫が零れ落ちる。

 

「……最初に、言っておきます」

 

あんなことを言われてもなお、心配そうにしてくれる彼を前に、僕はある宣言を言い放つ。

 

「……悠さんが、ボクを、選ばなくても……ボクは……後悔、しません」

「……え……」

「……その、覚悟は……してきました、から」

 

それはある意味、これから言う内容がバレてしまうような……そんな孤独な誓いだったけれど。

 

「だから……聞いてください……っ」

「……あ、ああ」

 

僕の覚悟を決めるのに、そして彼に……その覚悟を知ってもらうのには、十分過ぎる程であった。

 

「最初、は……」

 

そうして僕は――ある少年の、儚い恋を語り始めた。

 

「最初は……仲良くなれればいいかな、くらいに思ってました……」

「…………」

「悠さんに、告白されても……そもそもボクは男ですから、付き合うとかはありえない……って、そう思ってたんです……」

 

彼と出会った時のことを思い出しながら、懐かしむように当時のことを暴露する。

彼との出会いは、衝撃的で……僕にとって、忘れられないものなのだ。

 

「……でも、悠さんと何度も会って、話していくうちに……ボク、は……」

「湊、さん……?」

 

次第に歯切れの悪くなっていく様子とその言葉の意味を理解したのか、悠さんは不思議そうに僕を見つめると、次第にその瞳を見開いていく。

 

「……今でも、"男の人が好き"っていうのは、ないんです。……男の人に"可愛い"って言われても……嫌、なんです」

「……だったら……なんで……」

「――でもっ」

 

彼の当然の疑問を遮り、全身に力を込めて、"彼との終わりに"怯える体を無理矢理にでも黙らせる。

 

「悠さんだけは……違うんです……っ」

「……え……」

 

……その反応は、当然だと思う。

だって、これは……。

 

「"悠さん"に可愛いって言われるから、嬉しいんです……っ」

「なん……え……?」

「男の人じゃなくて……"悠さん"だから、好きなんです……っ!」

 

自然と出てきた胸の内を、畳み掛けるように言い放ち、彼にこの告白の意味を理解させる。

 

「悠さんは、ボクのことを助けてくれて、共通の話題で盛り上がれて、家族のトラウマも克服させてくれて、ずっと一緒にいるって言ってくれて……」

 

身体中に封印していたありったけの気持ちを、言葉に乗せて彼に届ける。

でも、まだこんなものじゃないんだ。

もっともっと、語り尽くせないくらい……僕は、悠さんのことを……。

 

「ボクのことを第一に考えてくれて、ボクが悲しまないように気を遣ってくれて、ボクのことを……信じて、くれて」

 

そう言って、明るさを取り戻しつつある彼の瞳に、想いのままに視線を送る。

悠さんは、今だってこうしてボクの話を聞いてくれている。

男だと言っても、それを嘘だと言わずに……僕の言葉を信じてくれている。

普通に考えて、ここまで長い間騙されていたと知ったら……怒って信用しなくなってしまうものだろう。

けれども、彼は……こんな僕を、信じてくれているのだ。

 

「あなたは……ボクを救ってくれた恩人であり、1番大切な人なんです」

 

だから僕は、ありのままを彼に伝えたいのだ。

上手く言葉にまとまらなくてもいい。

美しい表現を使えなくてもいい。

ただ……僕の、言葉で。

僕だけの……僕にしか分からない、この大切な気持ちを。

今の僕にできる全力で……想いのままにぶつけたいんだ。

 

「……ずっと、この気持ちがなんなのか……考えてきました」

 

ずっと悩み続けていた……この感情の本当の意味。

 

「悠さんのことを考えると、胸がギューって締め付けられて、それ以外のことが考えられなくなるような……そんな、気持ち」

 

それはあまりにも単純で、平凡で、ありきたりなものだったけれど。

 

「……だ、抱き締められると……顔が熱くなって、熱が出たみたいにクラクラしてきて……心臓が爆発しそうになるような……そんな、気持ち」

 

僕にとっては、かけがえのないものであり……彼と出会わなければ、一生分からなかった気持ちだったのかもしれない。

 

「久々にできた同性の友達だからだと……ずっと、自分に言い聞かせてきました」

 

自分を抑え込み、一人で悩んできた日々の記憶を……今も、鮮明に覚えている。

 

「……けれど、違ったんです」

「え……」

 

……そう。

僕と悠さんが引き裂かれてしまった――運命の日。

 

「……あの日、悠さんが美結さんと一緒にいると知った時……気づいちゃったんです」

 

あの時感じた、張り裂けそうな胸の痛みが……今もまだ忘れられない。

けれど、それが……皮肉にも、僕のこの感情を知るきっかけとなった。

つまり、あの一件は……僕の背中を後押しする、最後の一手となったのだ。

 

「……この気持ちが……恋、だったんだって……っ」

「――っ――!」

 

僕が気づいてしまった感情の意味を知り、目の前で混乱する彼から息を呑む音が聞こえる。

 

「……最初に、言ったように」

 

だけど、そんな思考を掻き乱された彼に休む暇も与えず、僕は再び告げる。

 

「悠さんが……ボクを、選ばなくても……ボクは、大丈夫です」

「……っ……」

「……後悔、しないように……覚悟、してきました、から……」

 

抑えきれていた涙が熱を持って瞳から零れ落ち、止まることなく溢れ続ける。

覚悟を決めて塞いだはずの後悔の念が、弱った心を握り潰そうと身体中を蝕んでいく。

 

「……だけど。……これだけは、言わせてください……っ」

 

けれど……もう遅い。

今更止めることなんて、もう出来ない。

だから、僕は……。

――もう二度と、こうして話せなくなったとしても。

――もう二度と、笑い合えなくなったとしても。

彼に……"告白"するんだ。

 

「……ボク、飛鳥湊は……」

 

小刻みに揺れる唇をゆっくりと開き、震えた声を絞り出す。

 

「八坂悠さん、あなたの……ことが……っ」

 

走馬灯のように駆け巡る想い出を胸に、思いっきり息を吸い込む。

僕の恋心よ……願わくば、あなたに届きますように。

 

「……あなたのことが……好き、なんです……っ!」

 

………………。

…………。

……。

そうして放たれた……ありきたりな告白の言葉。

けれどもそれは、八坂悠という"偽の恋人"に向けられた……様々な想いの結晶であった。

――だけど。

彼が、この想いを受け取ってくれたとしても。

彼が、この想いを拒んでしまったとしても。

僕達の関係は……二度と、元には戻れなくなってしまったのだった。

 

 

 




……いかがだったでしょうか?
といっても、皆さん同じような気持ちだと思います。
湊くん……頑張ったなあって思います。まじで。はい。
まあそんなわけで、ここでは少し悠君の話を。
今回悠君は湊くんに対して困惑して憔悴してしまいましたが、実は脳死で受け入れてゴールインするというプランも考えていました笑
で、実は途中までそれで書いていたので、こんなに時間がかかってしまったのですが……悠君であれば湊の男の娘という事実と告白なら受け止められそうと思っていました。
ですが、思えば、悠君からすると、長らく一緒にいた友人に3~4ヶ月もの間騙されていたということなってしまうため、そう考えた場合に、そんな簡単に割り切れることはないな……と思い、今回の話のような路線へと変更しました。
……まあ、こっちもこっちで中々いい感じにキャラ同士が揺れ動いてくれると思うので、今は後悔してないですね笑
……と、終わる前に少し。
謎のUA数急増によって累計UA43000突破しました!
本当に本当にありがとうございます!!!
感想もいただけて嬉しいです笑
その為、いつもよりテンションが高いですが、すみません笑
というわけで、次回は悠君視点での子の告白シーンの続きを書きたいと思います。
湊くんが別れ際に“アレ”をするかも……?
とりあえず、あとがきはここまで!
ガチで大事なシーンの為時間がかかっていますが、稲賀に待っていただければ&また次回も読んでいただければ幸いです!
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