湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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すみません!!!遅くなったうえに全然進んでいませんが許してください……
ということで、前回の続きです。
今回は湊くん視点でキス後の話なので、湊くんの悶える姿が……?
と、これ以上言うとネタバレなので、まえがきはここまで。
今回の話も最後まで読んでいただければ幸いです~!


彼が助けに来ないのはどう考えても僕が悪い!

 

 

 

――僕は、間違えてしまったのだろうか。

――やはり、伝えるべきではなかったのだろうか。

零れ落ちる涙をそのままに、星降る夜を僕は一人走り続ける。

慣れない下駄で走っているせいで、鼻緒が擦れて足が痛い。

手をぎゅっと握っていたせいで、爪が食い込んで手が痛い。

彼に告白したせいで……胸が締め付けられて心が痛い。

……けれど。

 

「(ボクは……やっと、言えたんだ)」

 

その痛みと同時に、何故か達成感や安堵感みたいなものを感じていた。

彼にあんな表情をさせてしまったのに、なんで喜んでいるんだろう……と、自分が嫌になってくる。

だけど、それでも……彼に想いを告げられたことが嬉しくて、その喜びを噛み締めてしまうのだ。

本当に、どうしちゃったんだろうか。

こんなに、舞い上がっ……て……。

 

「(…………)」

 

その理由を考えた途端――頭の中に、先程の光景が蘇る。

……というか。

 

「やっちゃった……」

 

足を止め、まだ少し温かさの残る唇に手を伸ばす。

遂に……やってしまった。

 

「ぼ、ボク……悠さんに……」

 

少し冷えた夏空の中でも熱を放つ頬を触りながら、さっきの出来事を思い出す。

 

「キス……しちゃったんだ……」

 

言葉にした途端、徐々に実感が湧いてきて、恥ずかしさで死にそうになる。

な、なんで僕、あんなこと……。

頬を抓って夢じゃないことを確認しながら、無意味にも、頭の中で理由を探す。

"もう二度と会えないかも"、って思ったら……身体が勝手に動いてしまったのだ。

……いや、何やってるんだ僕!?

 

「………〜〜〜ッッ!!」

 

思い出せば思い出すほど恥ずかしさは増していき、顔がやかんのように赤く沸騰する。

絶対今の顔はまずい……他の人に見せられない……っ!

顔の熱を冷ますように手で扇ぎながら、一旦落ち着こうと深呼吸をする。

しかし、そう思ったところで……既に茹で上がってしまった顔の熱は、今更抑えきれないのだ。

とりあえず、冷静にならないと……。

 

「(……でも)」

 

ふと、その先に待ち構えていた現実を思い出してしまい、急速に熱が冷めていくのを感じる。

これで僕は……。

悠さんと、会えなくなっちゃうのかな……。

 

「(やっぱり、嫌だよぉ……)」

 

自分で言っておきながら、こんなに後悔するなんて……僕は何をやってるんだろう。

決意したはずの想いが揺らいできて、心が苦しくなってくる。

というか、ここまで気分の浮き沈みが激しいとなると……実は情緒不安定なのかもしれない。

 

「(あぁ……)」

 

星の大海に負けじと光を放つ月を、流れる雲が隠していく。

こんな暗い夜だと……1人じゃ、危ないのかもしれない。

それこそ、犯罪や暴力沙汰だけではなく、ナンパも……。

はぁ、と溜息をついて、その美しくも不穏な空を眺める。

確か、彼と出会った日も……こんな夜だったなぁ……。

 

「――ねぇねぇ、お姉さん」

 

――不意に、後ろから声をかけられる。

一縷の望みを持って周囲を見回すが……悲しいことに、他には誰もいない。

つまり、この声の主は……僕に話しかけているということになる。

そんな冷静な状況分析に自分でも驚きながら、おそるおそる声のした方向へと振り向く。

すると、そこには……チャラそうな男性が、ニヤけた表情で立っていた。

 

「(……また、だ)」

 

あの日も、こんな感じでナンパされた。

買い物帰りの暗い夜道、それは突然訪れた。

……だけど。

 

「(あの時は……悠さんが、助けに来てくれたんだ)」

 

助けに来てくれたのに困ってて、逆に僕が助け舟を出すことになったけど。

それでも……その気持ちが、その行動が、あの時の僕にとっては嬉しくて。

そしてそこから、僕達の関係は始まったのだ。

 

「(……でも)」

 

けれど、彼はもう……ここには来ない。

ボクが……その関係を、壊してしまったのだから。

 

「お姉さん可愛いね〜!一目で好きになっちゃったよ」

「…………」

「それでさ、これから一緒にどうかな?」

 

典型的なセリフを言われ、表情が強ばっていくのを感じる。

この人に可愛いと言われても、全く何も思わない。

この人に好きって言われても、全く何も思わない。

やっぱり……悠さんがいい。

彼じゃなきゃ、嫌なんだ。

僕は……悠さんしか……。

こんな時に彼への想いが溢れてきて、思わず涙が零れそうになる。

怖い……怖いよぉ……。

 

「ほらほらいいじゃんさぁ〜、な?」

「い、いや……っ」

 

1歩ずつ後退り、段々と近づいてくる男から距離をとる。

そこで――気づいてしまった。

 

「(なんで、ボク……)」

 

彼と出会うまでは、こういうのは全然平気だったはずだ。

それこそ、水梅モールでひなたさんに絡んでいた不良を投げ飛ばしたこともあったのに。

どうして、僕は……。

こんなにも、心細くなっているのだろうか。

 

「(悠、さん……)」

 

ここにはいない彼の名を心の中で呟きながら、浴衣の裾をギュッと摘む。

彼と出会ったことで、僕はどうしてしまったのだろう。

今までは、女子校にいても心だけは男らしくあろうと思っていたのに。

ついに、心まで……女の子みたいに気弱になってしまったのだろうか――。

 

「か、彼氏が……いるので……」

 

勇気を振り絞って、か細い声でそう呟く。

確かに、この状況は今の僕にとって少し怖い。

……だけど。

もう、"これを言うことも無くなってしまうのだろう"という事実の方が……今の僕にとっては、怖くて辛いことなのだ。

 

「あー、そういう感じだったかぁ〜……仕方ない」

 

――と。

ナンパしてきた男はそう言うと、軽く手を振って明後日の方向を向いて……。

 

「ごめんね、彼氏さんと仲良くね〜」

 

そう言って、残念そうな顔をしながら去っていってしまった。

 

「(……助かった……?)」

 

すぐに解放されるという予想外の展開に、数秒の間頭が回らず、ただ呆然とその後ろ姿を見つめる。

けれど、僕は……。

 

「……また、悠さんに……」

 

この時……不覚にも、思ってしまったのだ。

 

「悠さんに……助けてもらいたかったな……」

 

懺悔にも似た後悔の一言が、何も無い夜道に反響する。

だけどもう、彼はいない。

だから僕は……その想いを胸に隠しこみ、1歩ずつ歩き出す。

――街灯の明かりに薄められた、満天の星空の下。

その夜の寂しさに身を震わせながら、僕は一人帰路についた。

………………。

…………。

……。

そうして、僕の恋は。

誰にも知られることなく、静かに終わりを告げるのだった。

 

 

 




さて、いかがだったでしょうか?
いつもより短いので、時間たってるくせにこれしかないのか……と思う方も多いと思いますが……すみません!!!
5話くらいまで少し書き直ししてたら思ったよりも時間消えてて焦りましたが、とりあえずキリの良いところで止めました。
本当はお嬢様たちの視点書きたかったんですけど……次で書きます!!!
なんか最終章のところに入ってから丁寧に書きたくて、書くペースがめちゃくちゃ落ちてしまっているのですが、気長に待っていただけたら幸いです。
UA、感想、今回もありがとうございます!
もうあと少しで2人の関係がゴールへと到達してしまいますが、最後の瞬間まで読んでいただけると幸いです!
ではまた次回の話も、読んでいただけたらと思います~!
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