湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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お待たせしました!!!
ということで、前回の続きです~!
今回は美結ちゃんの話ということで、物語の1つの区切りの部分になります。
ここは妥協しちゃいけないという覚悟で書いたので長くなってしまいましたが、めちゃくちゃ頑張ったので、最後まで読んでいただけると幸いです!


もしもあたしが彼女ならば

 

 

 

――自分でも、何故ああなってしまったのか分からない。

普段なら、それでも彼女……いや、彼の全てを受け入れて、その涙を拭ってあげることくらいはできたはずなのに。

何故かあの時は、その判断ができなかった。

……いや、そんな分からない振りをしたところで、結局心の中では分かっているのだ。

俺は……湊さんを、信じることができなかったんだ。

 

「(……はぁ……)」

 

言い訳ではないが、湊さんが俺を騙していないことは分かっていた。

俺を陥れようと考えている人が、あんな涙を流すわけが無いし、それに……。

 

「(あんな、こと……するわけない……)」

 

唇を手を押さえ、あの時の状況を思い出す。

初めてされた好意の口付け。

それは、俺を本気で好きでいるという……何よりの証拠であった。

……………………。

……ここまで考えたら、普通疑問に思うだろう。

なぜ、信じられなかったというのか。

何が、信じられなかったというのか。

その答えは、至極単純明快でいて……自分でも馬鹿らしく、俺の最も嫌うモノであった。

つまりは――怖かったのだ。

自分の判断が、俺にとって正しいのか。

彼女の人生において、正しい判断なのか。

世間からの目が、歪んでしまうのではないか。

大切な妹達に、迷惑がかかってしまうのではないか。

両親に、ちゃんと説明できるのか。

彼女/彼を――これからも、支えていけるのか。

その不安が一気に押し寄せ、怖気付いてしまったのだ。

躊躇って……しまったのだ。

 

「(…………)」

 

だから……後悔しているのだろう。

湊さんのことを信じられなかった、自分自身の心の弱さに。

その涙を拭えなかった、自分の行動力のなさに。

引き止めることの出来なかった、あの日の"選択"に。

 

「(湊さん……)」

 

――悔しい。

悔しい。悔しい。悔しい。

――憎い。

憎い。憎い。憎い。

その怨嗟の呪いが、心を蝕んでいく。

だけど……それくらいでいいのだ。

彼女/彼を2度泣かせてしまった俺には――

 

「これから……どうしよう」

 

制服を着たままベッドに腰掛け、ため息をつきながら天井を仰ぐ。

本当は、今すぐに湊さんの元へ行って、この気持ちを伝えたい。

あの日の決断を……やり直したい。

……けれど。

俺は……彼女/彼に合わせる顔がない。

だから……。

 

「(…………)」

 

後悔の念を抱いたまま、ばたりとベッドに倒れ込む。

そうして、もう何度目か分からない懺悔の時が……今日もまた、終わりを告げる。

……けれど。

今日もまたダメだったのかと、力無く頭を抱える中。

救いの手を差し伸べるかのように――インターホンの音が鳴り響いた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

――最初は、別人かと思った。

生気を失った瞳にやつれた頬、そして絶えず震える身体。

それほどまでに、彼は……変わり果てていたのだ。

 

「悠、さん……」

 

リビングにあがり、いつもの定位置に座る。

けれど、今は……いつもの部屋じゃないみたいに感じる。

これは……まずい。

正直な話、デート以来の再開だから、気まずくなってしまうのではないかと思っていた。

だけど、これは……もうそういう話じゃない。

彼のためにも、一刻も早くなんとかしてあげないと……。

 

「あの、さ……」

 

彼の様子を伺いながら、おそるおそる声をかける。

 

「飛鳥さんと……何があったの?」

 

とりあえず早くしないとと思い、単刀直入に尋ねてみる。

 

「それ、は……」

 

少し表情を苦痛に歪めると、口をパクパクとさせて言い淀む。

けれど、あたしの目を見て少し頷くと……ゆっくりと、事の顛末を話してくれた。

………………。

…………。

……。

 

「……そっ、か」

 

彼の話が終わると同時に、そう呟いて頭の中を整理する。

飛鳥さんとデートしたこと。

飛鳥さんから告白されたこと。

そして……。

あたしには言えない"事情"があって、返事を言えなかったこと。

そのせいで、泣かせてしまったこと……。

以上が、彼から教えてもらったことだ。

しかし……。

"事情"については、結局教えてくれなかったけど……きっと言えないような何かがあるのだろう。

なのでまあ、それを置いた上で思ったことだけど……。

 

「(悠さん……何で……?)」

 

最初は……正直、何言ってるんだろうと思った。

それくらいのことなら、悠さんなら迷わず答えを出すし、なんならすぐに喜んで良い返事をするに決まっている。

なのに、何故……と。

 

「(でも……)」

 

けれど……違ったのだ。

彼の疲弊しきった姿を見て、ようやくその理由を理解する。

その"事情"というのは……彼にとって、それほど重く辛いことだったのだろう。

 

「ごめんな……美結さん」

「……え?」

 

思考中に突然謝られ、慌てて顔を上げて彼の方を見る。

なんで……あたしに……?

 

「君に、答えを出せてないのに……こんな……」

「……っ……」

 

その言葉の意味を理解し、はっと息を飲む。

あたしも……彼を追い詰めていたのだ。

彼ともう少しこの関係を続けたいという、あたしのエゴで。

彼を――苦しめてしまっていたのだ。

 

「…………」

 

あたしが……救わなきゃ。

あたしが……助けてあげなくちゃ。

たとえ、彼に選ばれなくても――

あたしの大好きな人は……あたしが、救うんだ。

 

「……悠さん」

 

彼に伝える言葉を整理しながら、ゆっくりと口を開く。

 

「あなたは……悪くない」

「――っ――」

「悠さんは、何も悪くないんだよ……っ」

 

ブンブンと首を振って必死に否定する彼に、全力で想いをぶつける。

 

「そんなこと……ない。俺は……彼女を傷つけてしまったんだ」

 

狼狽しながら後悔の念を滲ませ、虚ろな瞳であたしを見つめる。

 

「そんな俺が……許されるわけ……」

「……大丈夫」

 

今にも崩れ落ちそうな彼に、安心させるようにそっと優しい声で囁く。

 

「あなたは……飛鳥さんに向き合おうとしたんでしょ」

「…………」

「じゃなかったら、そんなに辛そうなくらい……悩むわけないよっ」

 

そうなのだ。

彼は……それでも必死に、飛鳥さんに贖おうとしているのだ。

自分を苦しめてまで……ずっと……。

 

「あたしには、その"事情"っていうのはわからない」

「…………」

「でも、それがあなたを悩ませるほどに大きくて、1人で抱えきれないほど重い事だったってことは……悠さんを見てればわかるよ」

 

改めて彼の疲弊しきった姿を見て、しみじみと思う。

普通に考えたら、悠さんがここまで追い詰められることなんてないはずだ。

だからこそ……"やり直したい"と後悔する彼の気持ちは、痛いほどに伝わってくる。

でも……それでも、あたしは……っ。

 

「でもね……悠さんの判断は、正しかったんだとあたしは思う」

「え……」

「だって、あんなに人のこと考えてくれる悠さんの判断だもん。間違ってるわけないよ!」

 

素っ頓狂な声で驚く悠さんに対して、続け様にあたしの考えを伝える。

その"事情"というのが何かはわからないけど、それで悠さんが結論を出せなかったとしても……それは間違っていないと思う。

だって、それこそが……本当に、相手のことを考えているが故の行動だと思うから。

 

「でも、俺……湊さんを傷つけたんだよ?」

「それは、悠さんも傷ついてたからだよ」

「彼女を、泣かせてしまったんだよ?」

「それは、悠さんも泣くほど辛かったんだし、仕方ないよ」

「湊さんを……苦しめてしまったんだよ?」

「それは、悠さんも十分苦しんだんだし……おあいこだよ」

 

救いの手を振り払おうと、彼は必死に自分を責め続ける。

けれど……そんなこと、あたしが絶対許さない。

あなたは……あたしが助けるんだから。

 

「でも……でも、俺……」

「……悠さん」

 

もうどうしていいか分からず狼狽える彼に、そっと優しく声をかける。

 

「人は、誰だって"選択"するの。それも1回や2回じゃない。何十回も何百回も、何千回も何万回も……選択して、間違えて……それでも前を向いて生きていくの」

 

そうしてあたしは……語り始めた。

彼に伝えたい……あたしの考えを。

 

「間違いと言ったって、その失敗は取り返しのつかないものかもしれないし、まだやり直せるものかもしれない」

 

彼の瞳が揺れるのを見て、大きく息を吸い込む。

 

「それなのに……さ。まだそのどっちかも分からないのに……諦めて、どうするの?」

「――――」

 

彼の瞳が一段と大きく開く。

 

「これまでもこれからも、たくさんある失敗のうちの……たった1つ。これは、そんな誤った選択の1つに過ぎないんだよ」

 

……そう。

選択というのは、人生において幾度となく降り掛かってくる試練だ。

けれどそれは、どちらを選ぶかという試練ではない。

 

「それなのに、その1回の失敗を……取り返しのつかないものと決めつけて、勝手に諦めて悩み続けて」

「…………」

「それで……本当に良いの?」

 

試練とは――正解でも間違いでも……それでも絶えず前を向いて、次の選択に臨まなければならないということなのだ。

 

「……確かに、そういう時間も必要かもしれない。そうやって悩んだからこそ、得られるものだってあると思う」

 

顔を歪ませて俯く彼に、それでも話を続ける。

事実、選択し続けなければならないと言っても、それはすぐに切り替えなければならないものじゃない。

反省し、次に備えなければ……また間違えてしまうからだ。

 

「でも他の人は?その選択で影響を受ける人は?」

 

しかし、他の人はどうか。

それこそ、"選択を先延ばしにする"という選択をした場合。

待たされている人は……どういう気持ちで待たされているのか。

……だからこそ。

時に悩むことは大事だけど、悩み続けていいわけじゃない。

また、次の選択を……しなければならないのだ。

けれど……それでも。

前の選択を、後悔するというのなら。

 

「まだやれることがあるんじゃないかって考えなよ」

「……っ……」

「……そういう風に悩みなよ」

 

下を向いていた顔が、勢いよくこちらに向けられる。

せめて前向きに……考えるべきだよ、悠さん。

 

「でも、俺……どうすれば……」

 

少しずつ……光を取り戻しつつある瞳のまま、それでも彼は躊躇いの色を見せる。

 

「……そんなの」

 

彼の言葉に対して、ほぼ反射的に言葉が零れる。

戻ってきて……悠さんっ。

 

「あたしが好きだった"八坂悠"という人間なら……そんなことは言わないっ」

 

今日1番の大声で、あたしの想いを解き放つ。

 

「あたしの知ってる八坂悠は――相手のことを考えないで、ズカズカ人の心に入り込んで……それで、その人を救ってしまうような」

「…………」

「そんなことができる、究極のお節介だから」

 

だから……飛鳥さんは、救われたのだ。

だから……周りの人は、あなたと共にいるのだ。

だから……あたしは……。

 

「彼なら……迷わず、飛鳥さんのところに行くはずなのっ!」

悠「――――」

 

全力を以て奮い立たせ、目の前にいる男の人を"八坂悠"へと作り変えていく。

 

「飛鳥さんだって……待ってるはずだから」

「美結、さん……」

「だから……心のままに行動すればいいんだよ、悠さん」

 

泣きながら彼を待ち続ける飛鳥さんの姿が、脳裏に鮮明に浮かび上がる。

彼女は、あなたを責めていない。

ただ……あなたを待っているだけなんだ。

 

「(だから……戻ってきて……悠さんっ)」

 

想いの全てを彼にぶつけ、悠さんの目覚めを待ち続ける。

……そうして。

どのくらいの時間が経過したのだろうか。

永劫のようで刹那に等しいその時が流れた果てに――彼は、ゆっくりと口を開いた。

 

「……ありがとう、美結さん」

「いいってことよ!だって飛鳥さんはあたしの友達だし、あなたは……あたしの初恋の人なんだから」

 

瞳に光が灯り、彼が帰ってきたことを確認する。

そうして、ほっとしてしまったのか……あたしは、つい自分のことを漏らしてしまった。

 

「ほんと……情けねぇなぁ……俺」

「悠さん、自分の事になると、相手にすごい気を遣っちゃう所あるからね」

 

申し訳なさそうに謝る彼に対して、気にしないようにと声をかける。

 

「……でも、あたしはそういうところが好きになったの」

「……っ……」

 

素直な気持ちをもって、真っ直ぐ想いを口にする。

……でも、それだけだ。

もう彼への想いは、あの時伝えたから。

彼への恋心を、全て。

言の葉に乗せ、彼の元へと届けたから――。

 

「だから……あなたはあなたの信じる道を、突き進んで行けばいいと思うよ」

 

背中を押すようにと、"最後"の言葉を伝える。

 

「(最後、か……)」

 

これが終われば、彼はきっと飛鳥さんの所へと行ってしまうのだろう。

それは決して悪いことではなく、それどころか今の2人にとっては良い事なんだけど……。

それは同時に――あたしの初恋の終わりを示しているのだ。

あたしが引き伸ばしてしまった、恋の終わりを――。

 

「……告白の返事も出来てないのに、ここまで言ってくれるなんてな」

「あー、いや……それに関しては、あたしが悪いというか……その……」

「違うよ。俺がもう少し早く決断できてればよかった話だし……美結さんは気にしないで」

 

あくまで自分のせいだと言い張る悠さんを見て、心がずきりと痛み始める。

だって、あの時は……悠さんは答えを言おうとしてくれたのに、あたしが待てなかったのだ。

ううん、待てなかったわけじゃない。

その言葉の先を……聞きたくなかったのだ。

……けれど。

そんなあたしにすら、彼は救いの手を差し伸べてくれる。

 

「(そう……だよね)」

 

やっぱり、と思いながら、彼の姿を見つめる。

彼は……狂っているのだろう。

自分のせいじゃないことも、全て自分が悪いとして罪を背負って。

他人の幸せを願っているくせに、自分の事は一切考えなくて。

自分が苦しんでいるはずなのに、そこから目を逸らして平静を保とうとして。

それでも、常に自分"だけ"を責め続けて……。

そんなの……普通の人間のすることじゃない。

その視点はもう、神や聖母といった類のものと同列だ。

だから。あたしは……彼を"等身大の人間"にしたくて……。

自分の幸せも考えられるような……ただの1人の人間になってほしくて……。

それで……それ、で……。

 

「だから……改めて、美結さん」

「…………」

 

名前を呼ばれ、彼の瞳をじっと見つめると……周囲の空気が変わっていくのを感じる。

 

「俺は……君の気持ちには、答えられない」

 

そうして、彼の口から放たれた言葉は。

”彼自身の幸せ"のための、冷たくも優しい……心のこもった言葉であった。

 

「そう、だよね。うん、大丈夫!覚悟はもう出来てたから」

「でも、美結さんは――」

「いいの」

 

その続きを遮り、必死に笑顔を作り上げる。

 

「ほら、いいから早く……飛鳥さんに伝えてあげな?飛鳥さんだって今も苦しんでるんだし、早く助けてあげなきゃ」

「…………」

 

燻る恋心を殺し……いや、殺しきれなかったからこそ、強引に話を逸らす。

そんなあたしの姿を見て、悠さんも何か言いかけていたけど……真意を理解してくれたようで、それ以上は何も言わなかった。

 

「……わかったよ、美結さん」

「うんうん、彼氏としてここは頑張らないとね!あ、家事少しやっておくから、あたしも少ししたら帰るね」

「そんな……」

「いいのいいの!あたしからの祝福!……って、流石に雑すぎるか」

 

あははと笑いながら、彼に荷物を渡して玄関へと背中を押して連れていく。

あたしは……ここまでだ。

だから、飛鳥さん……あなたは、幸せに――

 

「……美結さん」

「うん?」

 

彼は靴を履いて立ち上がると、そう言ってこちらを振り向く。

 

「ありがとう、美結さん。家事手伝ってくれたり、相談乗ってくれたり……色々やってくれたこと全てに、俺は感謝してる」

「…………」

 

そうして告げられたのは、純粋な感謝であった。

 

「美結さんとは、最初に会った時からは考えられないくらい仲良くなって、毎日助けられることばっかりだったよ」

「確かに……なんか、懐かしいね」

「……でも、ね」

 

最早懐かしいと感じてしまうほどの時間を、あたしは彼と過したのだ。

だから、それで十分だと思った瞬間……彼はそう言って、大きく深呼吸をする。

 

「なによりも……俺は、楽しかったんだ」

 

ゆっくりと放たれた"楽しかった"という言葉に、心の中がじんわりと温かくなっていくのを感じる。

良かった……あたしだけじゃ、なかったんだ。

 

「美結さんと一緒に話すことが、美結さんと一緒にテレビ見ることが、美結さんと一緒に料理考えることが、美結さんと一緒に遊ぶことが……」

「…………」

「美結さんと過ごす……2人きりの生活が」

 

彼の一言一言で、共に過した時間が脳裏に蘇っていく。

 

「俺には……かけがえのないものだったんだ」

「……っ……」

「だから、美結さん……」

 

溢れそうになる涙を必死に堪えながら、その言葉の続きを待つ。

 

「キミとの思い出は……一生忘れない。俺は、美結さんと過ごす全ての時間が――好きだったよ」

 

……ほん、と。

なんなんだよ……この人は、もう……っ。

感情を塞いでいた蓋が、ひび割れて溢れ出していく。

諦めて切り替えたはずの恋心が、再び燃え上がっていく。

彼の為にと必死に堪えていた涙が――両の瞳から流れ落ちていく。

 

「ありがとう……俺を好きになってくれて」

「もう……馬鹿ぁ……」

 

彼の前では我慢しようとしていたのに、全て台無しにされた。

笑顔で送り出して、自分の初恋に別れを告げようとしていたのに。

ただの友人として、彼の背中を押そうとしていたのに。

2人のことを1番近くで見ていた仲間として……応援しようとしていたのに。

全部全部……この言葉に邪魔されたんだ。

 

「(そんなの、嬉しくなっちゃうじゃん……悔しく、なっちゃうじゃん……)」

 

あたしが、先に出会っていれば。

あたしが、飛鳥さんだったならば。

そんな叶わない願いが、後悔の念となってまとわりついてくる。

……でも、そんなこと考えても無駄なんだ。

あたしには……この事実を受け入れるしか、ないのだから。

 

「(それなら、あたしは……)」

 

だから今は、精一杯喜ぼう。

彼にそう言って貰えた全てのことを……胸に抱いて……。

 

「だから……行ってきます」

「ガツンと行って救ってこい……悠さんっ!」

 

最後に聞こえた"ありがとう"という言葉と共に、目の前の扉が閉まる。

 

「う、うぅ……ぁ……」

 

漏れていようとそれでも堪えていた涙が、堰を切って溢れ出す。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

一気に全身の力が抜け、玄関に座り込む。

そうしてあたしは、遠くに行ってしまった悠さんの影を追いながら、幼子のようにわんわんと泣き続ける。

……けれど。

――願わくば……"彼と飛鳥さんが、無事に結ばれますように"、と。

それでもあたしは、2人の幸せを祈り続ける。

……今となっては、これが飛鳥さんへの贖罪だったのか、それとも友人としての心配だったのか。

その真意は、自分でも分からない。

……けれど。

2人の幸せを願うこの心だけは、本物なんだと……そう、願いたかった。

――こうして。

長かった私の初恋は……呆気なく、静かに終わりを告げるのだった。

 

 

 




ということで、いかがだったでしょうか?
これで美結ちゃんの恋が終わるという美結にとっては悲しい結末でしたが、湊くんの幸せのために……という感じで美結ちゃんが大きく成長できた話なんじゃないかなと思っています。
ほんと健気でいい子なので、幸せになってほしいです……。
と、書き終わったばかりなのでしみじみとしていますが、本当のクライマックスはここからですね!
次から湊くんと悠君の恋の決着のシーンに入ります!!!
ここから一切気を抜けない展開になると思うので、楽しみにしていてください!
できるだけ早く書き終われるように頑張ります。
さて、前回の話もたくさん読んでいただきありがとうございました!
感想までいただけて非常に嬉しいので、マジでやる気に繋がってます笑
ということで、今回はここまで。
また次の話も読んでいただければ幸いです~!


余談
今回のタイトル「もしもあたしが彼女ならば」ですが、これは「もしも明日が晴れならば」をもじったものであり、この作品は「オトメドメイン」のライターであるNYAON先生の作品だったりします!
泣きゲーで面白いので、興味があるならオススメします!!!笑
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