湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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皆さんお久しぶりです!
本当に遅くなってしまって申し訳ありません!前回の続きです!
実は前回の話の後に異動が決まり、引っ越しやら何やらで書く時間が消えてしまってこんなに期間が空いてしまいました……
でも、一応どうにか書くことができたので、楽しみにしてくださっていた皆さん、お待たせしました!!!
ということで、今回も最後まで読んでいただければ幸いです~!



湊君を攻略したい!(前)

 

 

 

「──悠、さん……?」

 

信じられないものを見るかのような瞳が、震える声と共にこちらに向けられる。

 

「もう、移動しすぎだよ……湊さん」

「え……だって、え……?」

 

まるで予想外だったと言わんとばかりに、湊さんは段々と動揺し始める。

まあ、俺も最初は湊さんがここにいるとは思わなかったし、まさかここに俺が来るとは思わないよな。

 

「なんで……ここに……?」

「あー、みんなが──お嬢様達が、手伝ってくれてさ。必死に探して見つけた……って感じかな」

 

道中で助けてくれたみんなの姿が、ぽつりぽつりと頭の中に浮かんでくる。

結局のところ、気づけば俺は美結さんだけじゃなく、お嬢様達や先生にまで手伝ってもらってしまった。

だから、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど……それでも、そのおかげで俺はまた湊さんと出逢えたのだ。

 

「帰ったって聞いたのに、寮に行ってもいなかったからさ……驚いちゃったよ」

「そ、それは……」

 

今日のことを思い出して言い淀む湊さんに対して、そのまま続きを述べていく。

 

「……わかってるよ」

「……え?」

「思い出……辿ってたんでしょ?」

 

"どうしてそれを"と言って驚く彼女/彼に対して、素直に理由を告げる。

 

「そんなの、後を追い続ければわかるって」

「なん、で……」

「まあ、湊さんが喫茶店に行ったあたりから、ずっと追いかけてたからね」

「え……」

 

そう口にしながら、ほんの一瞬だけ嬉しそうな顔を見せると、湊さんは俯いて辛そうな表情を浮かべる。

……よし。

ここから……俺の番だ。

 

「……ありがとう」

「な、なんで……悠さんが……?」

「俺との思い出を、大切にしてくれて。……俺を、好きでいてくれて」

 

どうやら感謝されると思っていなかったようで、湊さんは俺の言葉を聞くと、目を見開いてこちらに視線を向けた。

 

「だって、それは……」

「──だからこそっ!」

 

その思いから逃げようとする彼女/彼に対して、有無を言わさず言葉を紡いでいく。

 

「だからこそ……言わせてくれっ」

「悠、さん……?」

 

バクバクと緊張で高鳴る心臓を抑えるように、ゆっくりと深呼吸をする。

ちゃんと、伝えなければ。

俺の……俺自身の、言葉で。

 

「……俺が、間違ってたよ」

「う……ぇ……?」

 

まるで信じられない言葉を聞いたかのような反応を示すと、潤んだ瞳から一筋の涙が零れ落ちる。

 

「……な……、んで……っ?」

「……こんなに泣いてくれる人が、俺を騙そうとしてたわけないよな」

「……悠、さん……?」

 

彼女/彼の頬に手を伸ばし、そっとその流れる雫を拭う。

"あの時出来なかった"この行為が、俺の覚悟をより強いものへと変えていく──

 

「あ、れ……?なんで、ボク……っ?」

 

どうやら湊さんは自分でも気づいていなかったようで、慌ててハンカチを取り出すと、急いで溢れる雫を拭いていく。

 

「……ずっと俺に、隠し事をしていた……」

「……っ!」

「でも、それには……何か、理由があったんだろ?」

「それ、は……」

 

戸惑った表情で言い淀む彼女/彼の態度から、その持ち前の人の良さが見えてくる。

やっぱり……湊さんがそういうことするはずないんだよ。

 

「騙そうとか、からかってやろうとか……そんなことを考えてたわけじゃないんだろ?」

「──っ、はい!……信じて……ください……っ」

「……だったら……さ」

 

"せめてこれだけは信じて欲しい"というように、彼女/彼は縋り付くように言葉を零す。

──だからこそ、思うのだ。

湊さんは、こんなにも誠実であったというのに。

それなのに……俺は……。

 

「俺が怒る理由なんて……俺が拒む理由なんて……」

「……っ……」

「……そんなの、ないに決まってたんだ……っ!」

 

あの日から溜まり続けた後悔の念が、堰を切って溢れ出す。

俺の心に渦巻いていた罪悪感が、一斉に解き放たれていく。

 

「それなのに……それなのに……っ」

「……悠、さん……」

 

言い訳なんて、言いたくない。

けれど、それでも……彼女/彼に伝えなきゃいけない気がするんだ。

 

「色んなことを一気に言われて、頭がぐちゃぐちゃになって……何が正しいのか、分からなくなって……」

 

あの日のことを思い出しながら、自然と言葉が口から出ていく。

 

「"男同士で付き合う"ってのが……俺には、わかんなくなっちまって……」

「……っ……」

 

話を聞きながら一瞬顔を強ばらせるも、湊さんはそれでも揺れた瞳で俺を見つめる。

 

「俺と湊さんの話なのに、妹達や両親、それに今まで出会ってきた色々な人達の姿が浮かんできて……」

「……ぅ……」

「周囲の目なんて、気にしちゃいけないのに……それで、頭がさらにぐちゃぐちゃになって……」

 

──気にしたことなんてなかったはずの"世間の目"が、背後からその姿を現したあの日。

あの瞬間の恐怖と、そんな自分への怒りは……今も、この胸に残っている。

 

「泣いてる君を……助けなきゃって、その涙を拭ってあげなきゃって……。そう、思っていたのに……」

「…………」

「身体が……動かなくて……っ」

 

これまで何度も、湊さんを助けようとしてきた。

本能のままに、彼女/彼へと手を差し伸べてきた。

……けれど。

この時初めて……この身が、竦んでしまったのだ。

 

「だから……こんなことしてる時点で、俺にはその資格がないんだって……」

「そんな、こと……っ」

 

否定しようとしてくれる湊さんに構わず……俺は俺を断罪する。

 

「湊さんだって、辛いはずなのに……俺は、こんなことでうじうじして……」

「……違う……っ」

「湊さんは、こんなやつのことを好きになってくれたのに……っ!」

「……悠さんは、そんな人じゃ……っ!」

 

想いが強くなっていくに連れて、互いの声も次第に大きくなっていく。

 

「君の好きな男は、こんな程度のやつなんだって……そう、思うのに……っ」

「違う……っ!」

「君は、それでも……っ!俺を、好きでいてくれて……っ!」

 

告白してくれた時の彼女/彼氏の表情が、今も頭から離れない。

──公園の街頭に照らされた、薄く赤らんだ頬。

──覗きこまれた時に見えた、じわりと潤んだ瞳。

そして、あの時感じた──唇の感触。

その全てが……今も、瞼を閉じれば感じられるのだ。

 

「だから……自分が情けなくて、ずっと後悔して……」

「……ぅ……」

「あの時、なにか出来たんじゃないかって……ずっと、苦しくて……辛くて……」

 

今も消えない罪の意識が、絶えず心を痛め続ける。

だからこそ、俺は悩み続けたのだ。

そんな俺を、好きだと言ってくれた人に……俺は、なんてことをしてしまったのだ、と。

 

「でも、そんな俺よりも……湊さんの方が辛いに決まってるのに……っ」

「……っ……」

「隠していたことを打ち明けるのにも、尋常じゃないくらいの勇気が必要なのに……それでも、好きだって気持ちを伝えてくれて……っ!」

 

あの時の彼女/彼は、今までにないくらい青ざめた顔で震えていた。

それは、不良に絡まれた時よりも、家出を決意した時よりも……それよりも、ずっと……。

 

「だから俺は、あの日の自分が憎くて……あの日の決断を、やり直したいって後悔して……」

 

けれど。それでも俺は……動けなかった。

……動けなかったんだ。

 

「ずっとずっと、悩んでたんだ」

「……悠、さん……」

 

心配そうに見つめる湊さんの視線が、心の奥に突き刺さる。

あの日から俺は──抜け殻になった。

自分の想いに蓋をして、外のことばかり気にして。

それで後悔しても、どうすることもできなくて。

ぽっかりと心に大きな穴を開けたまま、毎日を耐え続けて……。

 

「……でも、さ」

 

そこで終わるかと思っていた俺の世界に、ある日──"彼女"は現れた。

 

「それでも踏み切れなくて、悩んでいた俺を……美結さんが、背中を押してくれたんだ」

「……っ!?」

 

どうしてと呟いて驚く湊さんをよそに、俺はその続きを述べていく。

 

「あたしの知ってるあなたなら、こんなことしないって」

「…………」

「それこそ、迷わず湊さんのところに行くって」

 

あの時彼女から放たれた言葉は、至極単純明快であり……ひどく、ありきたりなものだった。

……けれど。

 

「そう、言ってくれたから……それで、俺は立ち直れたんだ」

 

その、熱のこもった彼女の想いの欠片は──あの時の俺が、何よりも1番に求めていたものであった。

 

「だから今、俺はここにいる」

「悠さん……」

「君に……謝るために」

 

そう告げると同時に、改まって湊さんの方向へと向き直す。

 

「だから……ごめん」

「……ゆ、悠さんが……謝る必要、なんて……」

「……いや」

 

それでも俺は引き下がらずに、ゆっくりと頭を下げる。

 

「これは、俺が謝らないといけないんだ」

「なん、で……」

「俺のことを信じて、正直に話してくれた君を……俺は、不安にさせてしまったんだから」

 

体を直角に曲げ、素直な想いのまま、この胸の罪悪感を伝えていく。

──けれど。

 

「でもボクだって……ボクだって、悠さんを傷つけてしまったんですよっ!」

 

まるで仕返しかのように、湊さんの口から後悔の言葉が零れていく。

 

「あなたは、"女"としてのボクを好きになってくれたんですよ……?それなのに、ボクはそれが嬉しくて……いつまで経っても、本当のことが言えなくて……」

 

当時のことを思い返しながら、後悔に満ちた言葉だけが紡がれていく。

そうして、俺がまずいと思った時には……。

 

「だから……悠さんが悩むのだって、仕方ないことなんです……。だって、それは……ボクのせい、なんですから」

 

俺の思い描いていたものとは真逆の道を辿るような……そんな彼女/彼の後悔の念が、静かに力強く語られていた。

 

「……ボクも、悠さんに辛い思いをさせてしまったことを後悔してました」

「湊さん……」

「だから……謝るのは、ボクの方なんですっ。大好きな人をここまで騙してきて、その上でこんなに苦しめたんですから……っ!」

 

溢れる涙をそのままに、湊さんは想いを紡ぎ続ける。

だからこそ、俺も……。

 

「そんなことない……っ!隠し事は辛かったけど、本当のことを言ってもらって嬉しかったんだよ?」

「でもそれは、今落ち着いてるからで……っ!」

「それだったら俺も、湊さんに酷いことをしちゃったんだよ?大切な時に何も出来ず、ただ立ち尽くすことしか出来なかったんだよ……?」

 

湊さんに負けじと、俺も自らの罪を告白していく。

謝るべきなのは、俺の方なんだ。

だから……湊さんに、そんな顔させるわけにはいかないんだ……っ!

 

「そんなことない……っ!悠さんは、こんな酷いやつのことなんか忘れて……"美結さん"と、幸せになってください……っ!」

「なっ……!」

 

突如出された恩人の名に、思わず動揺が隠せなくなる。

 

「ボクのことなんて振って、忘れて……自分のために生きてください……っ!」

「そんなこと──」

「美結さんと一緒にいた方が……あなたは、幸せになれるんです……っ!」

 

今日1番の悲痛な叫びが、夜の街に響き渡る。

やはり俺は……最悪な男だ。

彼女/彼がここまで、思い詰めていたというのに。

それでも、湊さんの気持ちに気づかずに……俺は……。

 

「悔しいですけど……悠さんと美結さんは、すごくお似合いでした」

「……え……」

「"ボクの方が先に出会ってたのに"って、思うくらい……2人は、幸せそうだったんです……っ」

 

美しくも醜い想いが、言葉に乗って俺の元へと届く。

……そっ、か。

湊さんは、これを……抱えていたのか。

 

「だからこそ……今も、悔しいです。すごく、すごく……」

「だ、だったら──」

「……でも、ダメなんですっ」

 

言いかけたその言葉を遮られ、思わず口を噤む。

 

「ボクは……男、ですから……っ!」

「────」

「女である美結さんといた方が……悠さんは、傷つかなくて済むんです……っ!」

 

両手に作られた握り拳を思い切り振り下ろし、彼女/彼は想いのままに叫び続ける。

──なぜ、彼女はこう思うようになってしまったのか。

その原因の一端は……俺にある。

それは、男だと言われて動揺して……思わずあんな顔を見せてしまったからであり。

そして──湊さんに隠れて、美結さんと共に過ごしていたからであろう。

 

「あなたは、他人を第一に考えて……自分を、勘定に入れない人です」

「そんな、ことは……」

「他人にはお節介なくせに、自分のことは後回し……でも、それが当たり前みたいに振舞って……」

 

溜まっていたのであろう鬱憤が、褒め言葉として怒り口調で飛んでくる。

 

「時には自分を傷つけてまで、他人を助けようとして……。そんなの……そんなの、ダメなんです……っ!」

「でも、俺は──」

「あなたはっ!」

 

言い返そうとした言葉が、声にならずに胸の内へ戻っていく。

 

「あなたは、もう……自分を大切にして、いいんですよ……?」

「だから……っ!」

「お願いします……っ!もうこれ以上……あなたの苦しむ姿を、見せないで……っ」

 

更なる滂沱の涙と共に溢れ出した彼の悲痛な願い。

それは、非力な拳と共に……俺の胸へと叩き込まれた。

 

「それでも、俺は……君を──」

「だから……だからぁ……っ!」

 

そんな"彼"の一撃に耐えたが、それでも想いが俺の心を握り潰していく。

────────。

 

「ボクに……優しく、しないで……っ!」

「──うるせぇっ!!!」

 

彼の言葉を遮って、なりふり構わずその体を抱き寄せる。

もう……後悔なんてしたくないんだ。

 

「……ふぇ……ぇ?」

「俺はもう……俺のために生きるって決めたんだ」

「悠……さん……?」

 

意味もわからず俺の腕の中で震える湊さんを、安心させるようにと力強く抱きしめる。

放出し続けるアドレナリンが、俺の思考をクリアにしていく。

自分でも……わかってる。

俺が昔から──自分のことよりも他人を優先してしまうことなんて。

そんなこと……ずっと昔から、わかってたんだ。

……だけど。

だからこそ、俺は……決めたんだ。

もう、変わろうって。

自分のことを大事にしようって。

それは、誰かに言われたわけでもなく。

誰かのためでもなく。

正真正銘、自分のために。

誰でもない、自分自身のために───

 

「だ、だったら……」

「だから、俺は……!」

 

彼の頭の後ろに手を回し、そっと髪を優しく撫でる。

 

「ボクのことなんて、放っといて──」

「俺はッ!!!」

 

──さあ、今こそ伝えるんだ。

 

「飛鳥湊さん、君のことが──」

 

目の前にいる“彼”に───俺の、本当の気持ちを。

 

「君の全てが───好きなんだっ!」

 

 

 




ということで、いかがだったでしょうか?
悠君がついに動くという大事な話でしたが、個人的には湊くんの「美結さんと一緒にいた方が……あなたは、幸せになれるんです……っ!」というセリフが死ぬほど好きです笑
……と、今までの話を見てくださった皆さんならもう薄々お察しだと思うのですが、次は湊くん視点です。
今まで散々上げては落として湊くんを苦しめてきましたが、もう次で悠君に湊くんを幸せにしてもらいます。
皆さん、お待たせしました。
湊くんを───完全攻略します。

追記
長い間空いてしまいましたが、皆さんその間も読んでいただきありがとうございます!!!
まさか累計UA48000突破していると思わず、めちゃくちゃ驚いてますし、感謝しかありません!!!
次回もまた時間がかかってしまうと思いますが、温かい目で見守っていただければと思います。
というわけで、今回はここまで!
また次の話も、最後まで読んでいただければと思います~!
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