早坂愛は避けられたい~有能侍女の恋愛伯仲戦~【完結】 作:鍵のすけ
今日も今日とて1日を終えた小倉は、充実感に包まれていた。
そのままいつもどおり勉強し、4時には眠りにつければ良いのだが、今日は予定があった。
目的地まで歩いていると、後ろから声を掛けられたので、振り返るとそこには早坂がいた。
「お疲れ小倉」
「お疲れ早坂。今日も1日働いたなー」
「ん」
どちらから促すことなく、2人は歩き出す。
その道中、特に喋ることもなかったので、黙々と歩いていると早坂から話しかけてきた。
「小倉はさ」
「ん?」
「この前、書記ちゃんと喋ってたじゃん?」
「ああ、この間の相当やべー時な。あの時は本当に助かったわ。お陰でかぐや様に吊るされずに済んだ」
「それは感謝してよ。いや、そういうことじゃなくて」
少し歯切れ悪そうに、彼女は聞いてきた。
「書記ちゃんはどう思う?」
「何だその質問」
「いーから」
「んーそうだなぁ」
突然の彼女の質問に面食らいながらも、小倉は振り返ってみた。
藤原千花という人間はあの時感じた事が全てであった。
明るく、別け隔てなく接することが出来る、人当たりの良い少女。ただ、時折異常なくらい勘が良く、やはり最重要危険人物だという印象で揺るぐことはないだろう。
ただ、と小倉はそこで一瞬思考を馬鹿にする。
「おっぱい大きくて可愛い子だよなー」
その言葉が出る前の思考を口にしておけばまた違った結果になっただろうに、その辺を一切合切省いた結果がこれである。
早坂の目つきが鋭くなるのも、当然の帰結であろう。
「ふーん。小倉は書記ちゃんのことそういう風に思ってるんだ」
「いや、あれは男ども放ってはおかねえって。お前も知ってるかもしれんが、書記ちゃんに告白する奴ら結構いるんだぜ」
「知ってる。私の調べた限りでは男子の人気ランキングトップだし」
「やっぱりそうだよな~。ってか、何だその調査」
「かぐや様と会長をさっさとくっつけるために、何か参考になる女子がいるかなと思ってね」
「お前、ほんとかぐや様のために何でもするよなー。すげえわ」
突然褒められたことで調子を崩されそうになる早坂。そんな素振りを一切悟らせぬよう、彼女は更に小倉へ話をする。
しかし声は、とても小さく。
「……私も書記ちゃんみたいにすればモテたりするのかな」
「いや、それは無いだろ」
「は?」
殴られる気配を察したのか、小倉はすぐに言葉を続ける。
「お前がそんなマネしても絶対に後で辛くなるパターンだろうが。ふっつーのお前が、ふっつーにいてくれればそれだけでモテるって。絶対にさ」
「良くもまあ恥ずかしげもなく、そんな事を……」
「俺が保証してやるよ」
「彼女いない歴がそのまま年齢の奴が何言ってんの」
「お前も彼氏いない歴イコール年齢だろ?」
バチリ、と二人の間に火花が飛び散る。とは言え、今日はそこまで口喧嘩をするつもりは無かった小倉。
少々強引だが、話題を変えることにした。
「ところでさ、何で今日は俺も呼ばれてんの? かぐや様に」
小倉が向かっていたのは主・四宮かぐやの私室であった。
本来ならよほどの緊急事態でも無ければまず入ることはないであろう禁域。せいぜい近づいたとしても、前回、早坂がダウンした時にああやって四宮を起こしに行くのが関の山。
しかも、と小倉は彼女を見る。
早坂だけでは用件が足りないのか。というのが自然な疑問である。
「早坂は何か聞いてないのか?」
「いや。全然」
「あの腹黒お嬢様が早坂以外を呼びつけるなんて普通じゃねえよ」
「小倉、言葉」
「おっと、こりゃいけない。聞かれてたら困るな。まあ、まだ部屋までは距離あるから聞こえてないか」
「……そういう風に言ってるととんでもない仕返し来るよ」
もしバレたら。
そんなもしもを何となく想像して身震いをしたと同時に、彼は笑い飛ばした。
「まあ何されるか分からんから怖いよなー。胸の大きさと報復レベルは反比例するって言うしなー。あ、あと寛大な心も反比例するっていうんだっけかな? あっはっは!」
もう少しで四宮の私室へと辿り着く。
部屋についたら決して余計なことは言わないように、と早坂に念を押される小倉。
いくら何でもそんなヘマする訳ないと彼は笑い飛ばし、廊下の突き当りを右折する。
「胸の大きさと寛大な心は、報復レベルと反比例する。新しい角度の新鮮な発見ね。――ありがとう小倉。おかげで知見を広げる事が出来たわ」
四宮かぐやが、立っていた。
それはとても、とても、冷たい目をしていたそうな。
見つめ合う小倉と四宮。彼はとても優しい笑顔で、恭しく礼をする。
「これはこれはかぐや様。こんな夜中に歩き回るとお身体に触りますよ? それに今夜は冷える。ベッドに入り、暖かくしてお眠りください。それでは私はこれにて失礼をば」
「そういう貴方もここでは冷えるでしょう? せっかくだから私の部屋に来なさいな。そうだわ早坂、た っ ぷ り とお話しが出来るようにコーヒーでも入れてくれるかしら?」
「かしこまりましたかぐや様。お ぐ ら さ ま は先に部屋にお入りください」
瞬間、逃走を図る小倉。それを読み切っていた四宮、肩をがっちりと掴む。武術を嗜む彼女は適切な力で、適切な箇所を掴むことで効率良く彼を抑えることが出来ていた。
逃走不可能。
気づけば彼は、そそくさとコーヒーの準備をしに行った早坂の背中へ呪いの言葉を吐いていた。
「おい赤の他人のフリしてんじゃねえぞ早坂! おい裏切り者!!」
「部屋に入る」
「ひゃい」
有無を言わさぬ迫力に、入室してすぐ直立不動の体勢を取る小倉。
その立ち振い舞いはさながら荒野に突き刺さる一本の刀とでも言えよう。顔面は蒼白である。
「私、藤原さんには結構面倒見が良いって言われてるんですよね」
「ういっす」
「そんな私への評価にしては少々、酷いが過ぎると思わないかしら?」
「かぐや様、どこまで聞こえてらしたんでしょうか?」
「あなた達を出迎えようと部屋の外に出たら、ちょうど2人のやり取りが聞こえてきたからまあ……最初からかしらね」
「あっ、そうですかー」
生まれ変わりというのが本当にあるのなら、今度はもう少し愛情溢れる主の元に仕える事が出来ますようにと彼はとりあえずは祈ることにした。
「失礼しますかぐや様、コーヒーを淹れて来まし……あ、やっぱり土下座してる」
早坂の目に飛び込んできたのは仁王立ちで笑顔を貼り付ける四宮と、地面に口づけをしている小倉の姿があった。
だから最初から止めておけば良いのに、と彼女は喉元まで出かかったがそれを飲み込んだ。
「小倉」
「はい」
「貴方の役目は?」
「馬車馬のように働くことです」
「次はないわよ?」
「ありがたき幸せ」
そこでようやく早坂に気づいた四宮は彼女を呼び、コーヒーで一服することになった。
小倉と早坂も飲むことを許されたので、それぞれ一口飲むことにした。
彼は早坂のコーヒーが好きである。プロ顔負けの一流の仕事がそこにはあったからだ。
「さて、色々ありましたが2人を呼んだのは他でもありません。会長にどうしたら告白してもらえるかを考えるために呼びました」
「そういうことなら俺いらないんじゃ……」
「いいえ。男性の視点から見た貴方の意見も欲しいわ。最近、会長と付き合いが多いし、何か良い意見が出ると期待してるわ」
――これはもしかして良い意見出なければ給料カットされるやつか?
一瞬だけ小倉に悪寒が走る。
「あー……なるほど、早坂これ面倒なやつか」
「面倒なやつよ」
「2人共! 何その呆れた顔は! 私は真剣なのよ!」
そうは言われても、小倉と早坂の意見はほぼ同じだった。既にアイ・コンタクトも交わしている。
四宮かぐやは白銀御行のことが好きである。
だが、余計過ぎるプライドが彼女を面倒にしている。ただでさえ面倒な性格だというのに。
そうなってくると、どんな妙案を提案しても変なプライドがことごとくを却下してくるであろうことは目に見えていた。
「あーそれならかぐや様、俺に妙案があります」
「私も案が1つあります」
「あら、随分早いわね」
2人は頷き合い、そして示し合わせた訳ではなかったが声を揃え、こう言った。
「「かぐや様が押し倒せば片が付きますよ」」
「お、おおお押し倒す!?」
顔を真っ赤にする四宮が面白くて、そしてさっさとこの話を終えたかった2人は無言の協力体制を取り、徹底的にからかってやることにした。
飲み会が続き、更新が出来ていませんでした。あとシナプテックドライブというスイッチのゲームを買って遊んでました。許してください…。
早坂かわいい(免罪符)
新しく感想をくださった
trantam様、なかたまん様、クルーザー様ありがとうございます!
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カツ24様(10評価と一言評価ほんとうにありがとうございます)、フォイ様、ルート様、むにえる様、エッカート様、秋涼様、読者その1様、神威混淆様ありがとうございます!