早坂愛は避けられたい~有能侍女の恋愛伯仲戦~【完結】   作:鍵のすけ

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誤字報告ありがとうございます!修正させていただきました!


第16話 小倉次郎は言いくるめたい

 前回のあらすじ!

 四宮に危うくひどい目に遭わされそうになったが、奇跡的に免れることが出来た!

 平和を噛みしめる小倉であった。

 それはさておき、場面は四宮の私室。ひとしきりからかった後、小倉と早坂は真面目に相談に乗ってやることにした。

 

「で、それでかぐや様は結局の所、白銀ちゃんとどうなりたいんですか? 付き合いたいんですよね?」

 

 まずは小倉がジャブを打つ。

 そんなことはないが、恋に恋しているだけという可能性もある。そういうことならばさっさと自分の気持ちに区切りを付けてもらったほうがいいという判断だ。

 彼の問いに、秒で返事が返ってきた。

 

「付き合いたいんじゃないの! 付き合ってあげてもいい、よ! 間違えないで小倉!」

「うっわ、早坂良く今までぶん殴らなかったな」

「でしょ? こればかりは手をあげなかった私を褒めてほしい」

 

 とりあえずこれで四宮かぐやは白銀御行に好意を抱いていることが改めて分かったので、小倉は思案する。

 といっても、最も簡単で、最も効果的な策は1つしかないだろう。

 

「早坂がもう何百回も言ってるかもしれませんが、素直に好意を伝えてみたらどうですか?」

「それじゃあ私がまるで会長と付き合いたいみたいじゃないの!」

「いやいや、何も告白しろとまでは言いませんよ。良いですか」

 

 そう言って、小倉はパズルを組み立てるように思考を回す。なるべく四宮の怒りを買わないよう、そしてなるべく早めに今日の結論を出して自分が早く自由時間に入りたいために。

 

「好意を伝えるというのは何もすぐ恋愛に直結するわけではありません。人間関係を円滑にするため、自分は貴方に好ましい感情を抱いていますと伝えるのは必須です。私はお前のことが嫌いという奴を好きになれますか? 好意を伝える努力というのは今後の社会生活を送る中で培われなければならないファクターだと思っています」

 

 熱弁を振るう小倉を見て、早坂はジトーっとした視線を送っていた。

 口が回る回る。

 そういう時の彼は、だいたいそれっぽいことをそれっぽく話しているだけなのだ。

 

「なるほど……小倉にしては一理あるわね」

「先程も言いましたが別に告白しろとまでは言いません。ただ、少しだけ好意を伝える量というか質を向上させてみたらどうでしょうか? そうしたらきっと白銀ちゃんもたまらずかぐや様に告白してしまう!!」

「会長が、私に!!!」

 

 こと白銀絡みになるとアホになる四宮かぐやは、既に頭の中で妄想が広がっていた。

 いつもより少しだけ多い言葉、いつもより少しだけ近い距離、そんな攻めの姿勢を見せる四宮にときめいた白銀はたまらずこう言うのだ。

 

『四宮、俺と付き合ってくれないか?』

 

 気づけば四宮かぐや、拳を天につき上げていた。

 

「いける!! これはいけるわよ!!」

 

 そんな彼女へ忠臣・早坂愛はすかさず援護の一射を放つ。

 

「それならばかぐや様、会長さんのお弁当を作って持っていくというのはいかがでしょうか?」

「お弁当?」

「そう、手作り弁当です」

「手作り弁当!?」

 

 手作り弁当!!

 形こそ色々あれど、自分の好きな物を自分の好きなだけ詰め込める夢と希望に溢れた逸品である!

 そしてそれは解釈を変えると、特定の相手の好きな物を沢山詰め込み渡すことで、相手に喜んでもらえる至高の武器へと豹変するのだ!

 

「確かに早坂の言うとおりだな。俺もその案は賛成ですねかぐや様」

「でも会長って確か、いつも自分でお弁当を作ってきているはず……」

 

 “でも”の辺りから既に小倉、携帯電話を取り出していた。

 

「あ、もしもし白銀? ごめんなこんな夜中に。実はさ、明日ちょーっとだけ俺に協力して欲しいだよな。何って? ちょっと最近、お前の弁当を見て、本格的に料理始めてさー。それで俺の料理、食ってほしいんだよ。頼む。……そうか? ありがとう! 助かる! じゃあ明日、弁当作らずに生徒会室にいてくれよ。持っていくからさ。オーケー、それじゃ!」

 

 通話終了ボタンを押した彼は四宮に向き直る。

 

「それは解決しました。明日、俺は白銀ちゃんに弁当作るの失敗してしまった、って謝り倒すんでその時にかぐや様は弁当を渡せば良いんです」

「小倉、貴方……」

「あんまり白銀ちゃんに嘘つきたくないんで、この手は最初で最後にさせてください。ということでこれから弁当を作る準備をしましょう」

「これから!?」

 

 小倉とアイ・コンタクトを交わした早坂は意図を汲み取り、四宮の肩を掴む。

 

「別に徹夜とは言いません。ただ、明日の弁当作りをスムーズにこなせるよう、下準備をするだけです」

「わ、私に出来るかしら早坂……?」

「出来ますよ、かぐや様なら」

 

 贈り物をするという行為は、好意を伝える最もシンプルな手段であると小倉は考えている。

 昔の国でも贈り物をし合い、仲を維持していたのがデフォルトだ。昔の時点で洗練されたこの行為が、今の現代で通用しないわけがない。学生レベルでその究極と言えるのが、手作り弁当といえる。

 自分のために手間暇を掛けてくれたという事実にグッと来る……はずだ。

 

「早坂の言うとおりですよかぐや様。やる気と想いがあれば、何だって出来ます。そういうことで方針も決まったし、私もお役御免ですね。それじゃあここで失礼します」

 

 出ていこうとした小倉の肩を、早坂ががっしりと掴む。

 

「何逃げようとしてんの? 小倉も手伝うに決まってんじゃん」

「は? 俺も手伝うのか!?」

「当たり前。アンタもいなきゃ、男性の味の好みとか色々分からないでしょ」

「早坂の言う通りよ小倉。よもやこのまま去るだなんていうのは無いわよね?」

「この流れでイケるかなぁと」

 

 瞬間2人から吹き上がる“圧”。

 これは一種のパワハラということだけは今の小倉でも分かるのだが、いかんせん声を上げるタイミングが全くなかった。

 四宮家別邸労働組合なるものを立ち上げてみるか、と割と本気で考えてしまった小倉であった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ということでこれで前準備は整いました。後は明日、少しだけ早く起きて最後の仕上げに取り掛かります。よろしいですね、かぐや様?」

「ええ、ありがとう早坂。そして小倉」

「明日は寝坊しないでくださいねー」

「あら、私を誰だと思っているのかしら?」

「天下無敵の四宮かぐや様でございます」

 

 早坂、そして小倉と監督役が2人も付いていれば、あとは天性のセンスを持つ四宮かぐやが物事を教わりながらテキパキとこなすだけ。

 小倉的には実に簡単な仕事だったと言えよう。何せ、自分は殆ど見ているだけ。要所要所で口を挟んでいけば何も問題なかった。

 明日のお弁当の中身は唐揚げや卵焼きなど、比較的オーソドックスな内容となっている。となると重要となってくるのは味付けや盛り付けである。

 そこは明日、しっかり考えようということで、今夜はお開きとなった。

 四宮を私室まで見送り、2人はそれぞれの部屋まで一緒に歩くこととなった。

 

「いやー、お弁当ですよお弁当。あのかぐや様がお弁当ですって奥様」

「ノリが気持ち悪い」

「いや、でも本当にいい傾向じゃないか。あのかぐや様だぜ」

 

 人を疑い、距離を明確に作り、身近に置いておく相手を選ぶ。そんな四宮かぐやが理由はどうあれ、相手のために何かをするということがどれほどのことなのか。

 彼女を知る者は皆、驚くに違いない。

 

「最近のかぐや様は良いな。昔に比べたらだいぶ笑顔が増えた。それも白銀ちゃんや生徒会メンバーのお陰だと思うぜ」

「そうだね、本当にそう思う」

「それ以上に早坂がいるからでもあるんだぞ」

「私が?」

 

 一度頷き、小倉は続ける。

 

「かぐや様にはお前みたいな信頼出来る奴が1人は付いていなきゃならないんだ。その信頼ってやつは一朝一夕で築けるもんじゃない。だから、お前はいつまでも付いてやれよ」

「それって何だかアンタはいつまでも付いていないみたいじゃない」

「あら? 言葉を間違えちまったな」

 

 訪れる沈黙。廊下には足音だけが鳴り響いた。

 もう少しで早坂の私室へと辿り着く。

 そんな道中で、彼女はぽつりと言う。

 

「もし私がかぐや様を……」

「ん?」

「ううん。なんでも無い。小倉はいつでも小倉のままだね」

「どうしたんだよ急に。気持ち悪いな」

「小倉はいつまでもそのままでいてね」

 

 その意味を聞き返そうとしたら、扉がパタリと閉められてしまった。

 全く意図を読み取れず、首を傾げる小倉。だが、そんな彼でも1つだけ約束できることがあった。

 

「俺が今こうしていられるのもかぐや様とあと、お前のお陰だよ安心しろ」

 

 大事な者達のために、粉骨砕身することだけである。

 

 

 本日の勝敗――引き分け。




今日は日間ランキング72位を頂いていました!ありがとうございます!!皆様のお陰です!

新しく感想をくださった
AvengerRaki様ありがとうございます!

新しく評価をくださった
竹闇様、タイヨー様ありがとうございます!

原作の話も取り入れたいなーという気持ちとオリジナルの話だけでいくかなーという気持ちがあります
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