その日、俺はいつも通り多くの書類を捌きながら、プリマクロンとエネルギー生命体トルネドロンについて深く考え込んでいた。なんとかしてプリマクロンを発見し、可能であれば完成前にトルネドロンを破棄、滅却してしまわねばならない。起動してしまったトルネドロンは無敵だ。真正面からでは、手の出しようが無い。
「だがなあ……。今の段階で、やれる事はやってあるんだよなあ……」
「宇宙での物資の流れも、可能な限りで調査してますが……」
「この間、変な資材の流れを追って行ったら、クインテッサ星人の兵器製造工場星だったもんなあ」
うん、ルナクローバーの言う通り、可能な限り情報を集めて、宇宙で不審な物資とかの流れも監視してもいるんだ。いくらプリマクロンだからって、ゼロから色々な物資を生み出すのはけっこうな難事のはず。だから何処かから物資類を手に入れてるはずだって考えたんだがな。
そしたらプリマクロンじゃなく、クインテッサ星人があちこちの星に売りつけてる兵器を製造してる工場星にぶつかったんだ。その工場星は、NAIL、サイバトロン、デストロン主流派が動かせるだけの部隊を繰り出して制圧。
そして様々な技術情報のコピーを取った後は、まかり間違ってクインテッサ星人に奪還されたり、ガルバトロン派に奪われたりしない様に『こんな物は壊してしまおう』と3軍司令官の全員一致で、工場星は爆破された。いや、生産力と言う面では既にセイバートロン星や地球だけで、充分な工業力があるからな。
それに、そのまま保持しておいたとして、そこに駐留させる軍事力も問題だ。はっきり言うとだな、兵力足りないんだ。ただでさえ、セイバートロン星、地球、惑星パラドロン、惑星ジャンキオンに防衛戦力置いといて、その上で惑星アセニアとかにも駐留部隊を派遣してるんだ。
今の
だもんで、そう簡単に兵力増やすわけにもいかない。兵力減らすわけにもいかない。あとサイバトロンがスクランブルシティを完成させてメトロフレックスが居るからな。
話を戻そう。そんなわけで、クインテッサ星人から奪取した工場星は爆破したんだ。クインテッサ星人涙目。ざまあみやがれ、だ。これで奴らの経済規模は、随分と縮小したはずだな。
「ふう……。
「兵力欲しいけど、勝手に増やすわけにはいかないって言うのはジレンマですよねー」
「ま、今の段階ではセイバートロン星3陣営が協調して事にあたれば、なんとか兵力も足りるしな。無い物ねだりは、よしとこう。さ、仕事の続きだ」
そんな感じで、司令室で仕事をしていた時だ。突然指令室のスカイファイアーから壁のディスプレイスクリーンに通信が入った。
『スタースクリーム! 大変だよ!』
「どうしたスカイファイアー!」
『スペースパンチからの暗号通信だ! ガルバトロンが、セイバートロン星のブラックホール炉衛星を狙ってる! 唐突に思い付きで行動を始めたらしく、直前までわからなかったそうなんだ!』
「「!!」」
俺とルナクローバーは、表情を硬くする。
「36基の衛星のうち、どれだ!?」
『わからない! ガルバトロンは、完全に思い付きだけで行動してるらしくて! No.2のサイクロナスやスカージにも何も言わずに、ただ唐突に『NAILのブラックホール炉衛星だ! あれを南極の、オクトーンの頭上に落としてやるわ!』と叫んで単身飛び出したそうなんだ! サイクロナス、スカージとスウィープス、サウンドウェーブたちは後を追ったらしい!
サイクロナスは残りの面々に留守番を命じたって話で、スペースパンチはこれ以上動けないそうだ!』
「ちぃっ! キチ○イめ! 対宙監視網を最大に! それとサイバトロン、デストロン主流派とのホットラインを開いてくれ! 俺も今すぐ指令室へ向かう!」
『了解だよ!』
俺とルナクローバーは、急ぎ指令室へと走った。
そして今、俺たちは出撃待機室に集合している。とりあえず使い捨てが前提の量産型ドロイド部隊を各ブラックホール炉衛星に多数貼り付けて、時間稼ぎをさせる作戦だ。そしてガルバトロンが現れたならば、俺の超空間ゲートでこの場の面々を一気にそこへ送り込む。
ちなみにここに居るのは、NAILからは俺とコンバッティコン部隊。サイバトロンからはコンボイとエアーボット部隊。デストロン主流派からはオクトーンとアストロトレインとスタントロン部隊だ。
そしてついにガルバトロン出現の報が入る。場所は、今現在で最後に建造された第37番ブラックホール炉衛星だ。ちなみに36基なのに37番が最後だって言うのは、1基の衛星をユニクロンの背中に叩きつけて壊したので、数が合わないだけなのだ。
それはともかく、俺は叫ぶ。
「いくぞ、お前ら! トランスフォーム!」
「「「「「「おおーーー!!」」」」」」
そして俺は、超空間ゲートを開いた。
超空間ゲートを越えた時、そこは量産型ドロイドの残骸でいっぱいの空間だった。そしてサイクロナスとスカージ含むスウィープスどもを従えたガルバトロンが、その真っただ中で馬鹿笑いをしていやがる。ちくしょう、量産型ドロイドだって、
「トランスフォーム! ガルバトロン、このキ○ガイめ!」
「おお、誰かと思えばスタースクリームではないか。出迎えご苦労、はあっはっはっは。だがの、今日用事があるのは貴様では無いのだ。オクトーン! ブラックホール炉衛星を狙えば、貴様が出て来ると思っておったぞ!」
「ガルバトロン……。だからと言って、これだけの戦力差で勝てるとでも思っているのかね? わたしを誘き出すためだけに、自分が死んではどうしようもあるまい?」
オクトーンの呆れかえった台詞に、ガルバトロンは
「ククク。だがなオクトーンよ。その余裕もこれまでだ。スタントロン部隊! アストロトレイン! 裏切りは許してやろう! オクトーンを叩き潰せ!」
「「「「「「嫌だね」」」」」」
「な、何っ!?」
俺もコンボイも、コンバッティコンたちもエアーボットたちも、呆れ果てた視線でガルバトロンを見遣る。ガルバトロンは叫んだ。
「馬鹿な! 裏切り者のスタントロンとアストロトレインが再び寝返らんまではわかる!だが、何故貴様らまでもが、その裏切り者どもを信じきっておるのだ!」
「や、奴らが動揺した隙をついて、オクトーンだけでも首を取るって話じゃなかったんですかい?」
「スカージ! 余計な口を……」
スカージとサイクロナスが言い争っている。俺はガルバトロンに言ってやった。
「スタントロンたちの
「その通りだ、ガルバトロン。その信義は、貴様には無い物だよ」
「お、おのれスタースクリーム、おのれコンボイっ!! こうなればオクトーンだけでも! トランスフォーム!」
ガルバトロンがSFガンにトランスフォームした。だが、させんよ。俺は叫ぶ。
「コンバッティコン! 撃て撃て撃てー!!」
「エアーボット諸君! 負けずに撃つんだ!」
「スタントロン部隊! アストロトレイン! 撃ち方始め!」
コンボイやオクトーンも叫ぶ。全員の全開射撃が、ガルバトロンに集中した。だが必死にサイクロナスがガルバトロンに体当たりして、砲撃を
「が、ガルバトロン様! ご無事で! ぐわっ!?」
「馬鹿者! わしの射撃が外れてしまったではないか!」
((((((いや、必死で命を助けた部下に、そりゃないだろ))))))
俺たち全員の思いは一つになった。サイクロナスを殴ったガルバトロンは、舌打ちして叫ぶ。
「ちっ……。ふははは、今日のところはこの辺にしておいてやろう! だが、ここにサウンドウェーブがおらんのを、不思議に思わなんだか!? 奴は別のブラックホール衛星へ向かわせたわ!」
「何っ!?」
「今頃は密かに警戒網を潜り抜けたサウンドウェーブの手で、その別の衛星が南極の裏切り者どもの本部へ落下し始めている頃だろうよ! こう言う小細工をさせれば、奴の右に出る者はおらぬわ!
ふははは! ではさらばだ! デストロン軍団、
「あわわわ!」
「お、お待ちくださいガルバトロン様! おいてかないでー!」
ガルバトロンは、右手のビーム砲からビームを噴いて、その反動推進で一気にこの現場を離脱して行く。だが俺たちは、それを追う余裕も無く、『
「スカイファイアー! 応答しろ!」
『こちらNAIL本部指令室、どうしたんだねスタースクリーム』
「全ブラックホール炉衛星をチェックしてくれ! 軌道を外れている奴は無いか!?」
『!! 何かあったんだね! すぐチェックさせる』
しばし沈黙の時が流れる。俺は返答があり次第、超空間ゲートを展開できる様に準備をした。そしてスカイファイアーの声が俺たちに届く。
『チェックは完了したよ。軌道を外れている衛星は、1つも無い』
「「「「「「!?」」」」」」
俺たちは、唖然とする。そしてコンボイとオクトーンが口々に言った。
「さすがのサウンドウェーブでも、単騎で多数の戦闘ドロイドを突破するのは難しかったのか?」
「いや、直接戦闘では困難だろうけどね。奴がその気になれば、戦闘ドロイド相手ならセンサーを誤魔化して狂わせ、見つからずに通り抜けるのは不可能では無いよ?」
「だが、それでブラックホール炉衛星を落としても、今度は離脱が困難だろう。衛星が落ちるなら、セイバートロン星3勢力の軍が一斉に集まって来るのは目に見えている」
コンボイ、オクトーン、その他の面々は首を
「スカイファイアー! 刑務所に、プロテクティコンを走らせろ! 他の手すきの連中も、全員だ!」
『りょ、了解だよスタースクリーム! だけど何で?』
「サウンドウェーブの狙いは、刑務所に服役してるランブル、フレンジー、ラットバットだ! 奴め、
「「「「「『!!』」」」」」
全員が驚愕した。そしてスカイファイアーの声が答える。
『わかった! すぐに手が空いてる全員を送る!』
「ち、間に合えばいいんだが……」
俺は小さく舌打ちをする。サウンドウェーブの奴め……。
結論から言えば、なんとか間に合った。サウンドウェーブ、コンドル、バズソー、ジャガー、オーバーキル、スラッグフェストの攻撃で、刑務所の看守たちや警護の兵士たちやドロイドが、かなりの被害を受けたんだが、それでも彼らは増援が行くまで刑務所を護り抜いてくれたんだ。
ちなみに襲撃に同調して、レーザーウェーブのド阿呆が暴動を起こそうとしやがった。だけどサンストーム、アシッドストーム、ホットリンク、ビットストリーム、ブランチヘイズ等々多数の旧デストロン軍団軍団員は、出所が間近であり再教育後はNAILやデストロン主流派が引き受け手になってくれる事が確定しているため、動かなかったんだよな。
うん、あいつらには今のガルバトロンの醜態とかを撮影したニュース映像とか見せてやってるし。ガルバトロン派に対する忠誠とかその類は、すり減ってやがるんだよな。レーザーウェーブは流石にソレが、俺たちの謀略だと決めつけているんだが。まあ謀略なのは否定しない。けれど謀略ではあるが、嘘は何一つ言ってないんだよな、コレが。
そして肝心のランブル、フレンジー、ラットバットだが。奴らは刑務所でも奥の方に収監されてるんで、今回の騒ぎは知らずにいる。知ってたら、たぶん騒ぎを起こしたんだろうなあ。奴らはメガトロンやガルバトロンはともかく、サウンドウェーブに対する忠誠は鋼のごとくだ。
「にしても……。サウンドウェーブが、とうとうガルバトロンの命令を無視したか。あげくに、ガルバトロンを
「当然じゃないんですかー?
「そう言う事じゃないんだよな。サウンドウェーブの奴の真意は、どこにあるのか。それ次第では……」
サウンドウェーブの理想は、何処にある? 奴のメガトロンとデストロン軍団への忠誠っぷりは、見事なもんだ。だが今は、デストロン軍団は大きく2つに割れ、数の上からも主流派はオクトーン派だ。
サウンドウェーブが未だにガルバトロン派に属しているのは、オクトーンのデストロン主流派が自分たちでの宇宙統一を掲げていないからではないか、と俺は考えていた。それが正しいのであれば、今回のサウンドウェーブの行動は、その真意はどこにある?
「まったく、考え無きゃならねえ事ばかり多くなるな。プリマクロンの捜索に、全力を注ぎてえのによ。
プリマクロンの奴め、何処に居る? そしてサウンドウェーブも……。ガルバトロンは思い付きで行動しやがるから、行いが読めねえし」
ああ、安寧が欲しい。たまには休みを取って、ルナクローバーをデートにでも連れ出してやりてえんだがな。そのぐらいは、せめてもしてやりてえよ。頑張って働いてくれてるんだし。ほんと、何時になったら、のんびりできるんだかな。
アニメの『トランスフォーマー2010』には無い事件も、この世界では起こります。いや、既にNAILが出来て、そのリーダーがスタスクですし。
そしてとうとうサウンドウェーブが動き出しました。彼は何を考えているのか。それとも何も考えずに、機械的に計算だけで動いているのか?少なくとも、カセットロンへの情はあると思うのですが……。
そしてオミソにされているビルドロン。出番も無い彼等に、日の目が当たるときは来るのか。
アニマトロンも今回お留守番で出番なし。でもあいつらは、普通の合体トランスフォーマー数体と互角に戦えるから、まだマシですが。
地球で行方不明(潜伏中)のダイナザウラー。彼もまだ出番無いぞ。さあ、どうなる!
いや、本気でどうなるんだ、ガルバトロン……。2010最終回まで行けば、人格も多少は落ち着いてコンボイと握手して『今日は戦いは無しだ』とまで言うくらいには狂気も落ち着くんだが。そこまでいけるのか?