白長須 那奈也は悩める誰かを助ける男。今日も誰かのために誰かを殺したい人のお手伝いをします。

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この物語はフィクションです。また、犯罪を助長、支持するものではありません。このことを理解した方のみお読みください。お願い致します。


正義の執行手伝います

私はある男を眺めている。辛そうな顔をして傷ついた女に必死で訴えかけている。男の訴えは届かなかったようで彼は泣き崩れて、何十分もそうしていた。

季節は冬、時は九時をまわった。冷たい風に吹かれながら子供のように泣く彼を見て私はニヤリと笑ってこう呟いた。

「次は彼を助けてあげようかな」

彼が泣き止んで歩き出した所を先回りして目の前に現れて声を掛けてみる。興味を示してくれれば嬉しいのだが…

「お前誰だよ…」

「さぁ、誰でしょう?」

「どいてくれよ」

案の定、と言ったところだろうか。私の肩を掴んで無理やり退かしてきた。元々の気性もあるのだろうが、これはかなり来ていると見た。暗い背中に向かってまた声を掛ける。

「彼女、DV被害者かい?」

「どこでそれを聞いたんだ!」

怒り狂ったことを態度で示すように振り返ってドシドシとこちらに向かって歩いてくる。地雷を踏まれるとブチ切れるパターンか、よくあるタイプで扱いやすい。

「私の行きつけの酒場があるんだが、奢るよ。話を聞かせてくれないかな?」

「じゃあ連れてけ」

この手の男は酒で誘えば大抵着いてくる。私の父親が酒狂いだったように…

 

男は私に事の顛末をベラベラと喋った。

どうも、傷まみれの女は彼の同僚で想い人だったらしい。しかし、見知らぬ男に先を越されたと。それだけならいいのだが、その男はDVを日常的に行う上に浮気癖もあるらしい。それを知った彼は「自分ならそんなことはしない、守ってあげる」と言ったそうだが、女は「それでも彼が好き」と返された。女は洗脳されたか陶酔してるか、だと。

「その男が憎い?」

「当たり前だろ!あんな男死ねばいい!」

「じゃあ殺してみる?」

彼は一瞬で酔いが覚めたようになってこちらを見つめている。私は眼で「君次第だ」と伝えてグラスに残った酒を飲んだ。グラスを眺めながら答えを待つ。その間彼はブツブツと繰り返していたが私は肯定も否定もしない。あくまで自分の意思で選択しなければ意味が無い。

「やるよ…俺、やるよ」

「それはいいね。私もサポートするから安心して」

その後私の家に行き、直ぐに計画を立てることにした。やる気のある若者で嬉しい限りだ。

 

「そういえばお前の名前を聞いてなかったな」

「白長須 那奈也(シロナガス ナナヤ)君は?」

「俺は吉永 直人(ヨシナガ ナオト)那奈也って女みたいな名前してるんだな」

「可愛いでしょ?男だって可愛くあっていい時代だよ、今は」

吉永 直人。平均より少し高い身長。恐らく元運動部の体格。度胸もそれなりにある。

「さて、復讐の為にやるべきことは分かる?」

「武器の調達とかか?」

「違うね、調査だよ」

「調査…?」

「相手の名前、年齢、住所、生年月日、身長、体重、学歴、経歴、職場全て調べあげるんだよ。あと顔写真も欲しいかな」

「そんな、俺には難しすぎる…」

「やるんだよ」

 

翌日彼には報復対象の職場を特定させ、職場からハッキングで情報を盗ませた。最近の調査はこれで一発なので殺しも便利になったものだ。

調査によると報復すべき男は武田 慎也(タケダ シンヤ)25歳。ガッチリした男だった。真正面からやり合って勝てる相手ではないだろう。

「ところで、どうやって殺すんだ?」

「武田はどんなところに住んでいる?」

「えーっと、十階建てマンションの2階だ」

「じゃあ、二択。闇に紛れて屠るか、マンションごと沈めるか」

二人でやれば前者でも問題ないだろう。ただ、私は体に自信がある方では無いので私が不安なのだ。確実なのは後者。マンションが沈めば殺人ではなくテロだ。その後バレなければ英雄にもなれるが…。

「前者で行くぞ」

「じゃあもう1回二択ね。派手にやるか静かにやるか」

「静かに行こう」

やり方は決定した。彼に説明していく。

まず、私の家の付近は街灯も少なく一通りも少ないが、コンビニが1軒ある。そして武田は帰宅する時、1週間に1度そのコンビニに行く。そこを狙う。

まず、足はそれなりな私が包丁で武田の足を奪い確実に転ばせる。すぐさまアキレス腱を奪って動けなくしたところを吉永が空の注射器を武田に打ち込む。念の為30mlの注射器を用意した。20mlの空気注射で人間は死ぬ。

「いいね、チャンスは一度きり。二度目はないんだよ」

「分かった…絶対殺して由香さんを救うんだ…」

 

実行当日、予定通り武田は家の近くを通った。私達は計画に従って武田を殺害し、死体を私の家に持ち帰った。風呂場でバラし、ペットのワニに食べさせたり、私も食べたりした。吉永は食べたそうにしていなかったので無理強いはしないでおいた。武田を貪っていると吉永が問うてきた。

「白長須はどうして手伝ってくれたんだ?」

「私が正しいと思ったからかな」

「正しいと思ったら人を殺してもいいのか…」

「誰かのために誰かを殺すことは必ずしも悪いことではないと思うんだ。君が武田を殺すことで由香さんを幸せに出来るんだよ。それでも警察は殺しを取り締まる。何故かわかる?」

「分からない…」

「認めてしまうと民間人が警察ごっこを始めるからだよ。自分の正義で私刑をする者が大量発生するからね。だけれど、私達のようにクレバーな判断と殺しができる人間の私刑は黙認してくれてる。私達は正しいことをしたんだよ、いいね」

良心の呵責からか、吉永は一晩中泣いていた。緊張して水も飲んでいなかったというのによくもそんなに体から水が出てくるものだ。

 

 

数日彼を見張っていたが、面白いことになった。由香さんは武田の死を本当に悲しんでいたらしい。それを見た吉永は私の教えを活かして由香さんを殺し、喰らっていた。死体を喰っている時の吉永の顔は悲しみと恍惚が入り交じった犯罪者の顔をしていた。

その翌日に吉永は高層ビルから飛び降り自殺をした。屋上から飛び降りたものだから残ったのは死体と言うよりゴミ。警察がゴミを拾って調べていたのだが、とある記者がそれをスクープし、雑誌で公表した。その内容は『自殺遺体の胃から人間が出てきた』というもの。この記事は大センセーショナルとなり、実に数ヶ月もの間世間を賑わせた。カニバル創作ブームも起きていた。

人の死は大衆の思考や認知さえも変えうるのかもしれない。




読んでいただきありがとうございました。初めての投稿です。このように稚拙なものですが、たまに投稿しますので宜しくお願い致します。

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