コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode8 Reunion

重アヴァロン内部では、ゼロとナナリーが向かい合っていた。警備兵をギアスで殺害してここまで辿り着いたルルーシュであったが、そこでナナリーの真意を聞いた彼は戸惑いを隠せないでいた。彼女はゼロの、知らぬとは言え兄であるルルーシュの行いを否定し、さらには行政特区を復活させるつもりだと伝えた上で彼に協力を求めたのだ。ナナリーの考えを否定したくないと同時にできないルルーシュは、返答する事が出来ずに立ち尽くしている。

だがその直後、天井の一部を破壊して、ランスロットが部屋へ飛び込んだ。

 

「スザクッ!?」

 

その姿を見るとゼロはナナリーに向かって走り寄った。それとほぼ同時に、スザクもランスロットの外部スピーカーをオンにして、ナナリーに声をかける。

 

「逃げるぞ!俺と!」

 

『ナナリー!』

 

ゼロとスザクの声が重なる。

 

「スザクさあぁぁん!」

 

ナナリーはゼロではなく、スザクを呼んだ。正体を隠しているとはいえ、兄であるルルーシュではなく、スザクを。そのルルーシュは、ランスロットが近付いたことによる風圧で弾き飛ばされた。

 

(違う!そいつは俺を皇帝に売り払った…)

 

ルルーシュの思いとは裏腹に、安心した表情をランスロットに向けるナナリー。

 

『怖かったかい?ゴメン、もう大丈夫だから!』

 

外部スピーカーをオンにしたまま、スザクはナナリーに語りかける。そのままナナリーを車椅子ごと持ち上げると、スザクはランスロットをブレイズルミナスで包み、重アヴァロンを後にした。

 

(ッ!ナナリーが!スザクと!)

 

ゼロの上を通り抜けていくランスロットの掌に、優しく包まれているナナリーが目に入った。

 

(ゼロ、今は…)

 

スザクも飛ばされるゼロには気付いていた。しかし、最も優先されるのは総督であるナナリーの救出だ。着水するアヴァロンからナナリーを連れ、脱出する。

 

「ナナリィィィィィィィッッ!!!!!!」

 

爆発する重アヴァロンから吹き飛ばされたゼロを紅蓮がキャッチする。多大な犠牲を出した上で新総督捕縛作戦は失敗したが、何とかゼロは救えたことで、カレンもひとまず安堵した。

上空を見ると、ラウンズも撤退を開始していた。ナナリー救出という目的を達した以上、ここに留まる必要はないとの判断だろう。

去り行くラウンズに向かって、ライは言葉を紡ぐ。

 

「…アドニス、借りはいつか返すよ。」

 

その言葉を最後に、ライは蒼月をターンさせる。潜水艦には、すでに紅蓮が着艦していた。

紅蓮の手から下ろされたゼロは、フラフラと艦内に向けて歩いてゆく。

 

「ナナリー……ナナリー……」

 

その姿を紅蓮から降りたカレンが心配そうに見つめる。

そのカレンの後ろに、蒼月が着艦した。コックピットが開き、ライが降りてくる。

 

「──ライッ!!!」

 

カレンは潜水艦に降りたライに飛び付いた。彼の首もとに顔を埋め、涙を流す。

 

「良かった、生きてて…」

 

「…ごめん、カレン。心配かけ…んむっ!」

 

言おうとするライの唇に、カレンは自分の唇を押し付けた。唇を離すと、カレンはひとときだけライと目を合わせ、再び彼の首もとに顔を埋めた。

 

「どこにいたか、何があったかは後でちゃんと話すよ。それより、ゼロは…」

 

ライはカレンの頭を撫でながら問いかける。カレンは顔を上げて、ライを見て首を振った。

 

「駄目だったみたい。新総督は…」

 

「そうか…あいつにとっては痛いな。」

 

その言葉に、カレンはやはりライはゼロの正体を知っているのだと確信した。

 

「とりあえず機体を格納しよう。そのあと…」

 

ズン…と船体が揺れる。蒼月の後方に、正体不明のグレーのナイトメアフレームが着艦していた。

 

「あれは…」

 

カレンがライから体を離しながら聞く。

 

「大丈夫、味方だよ。」

 

ライが言うと同時に、その機体から男が降りてきた。長身で、プラチナブロンドの髪を肩の手前あたりまで伸ばしたその男。年齢は二十代前半といったところだろうか。しかし日本人というには無理のある顔立ちである。艦上まで迎えに出てきていた騎士団員達を前に、その男は口を開いた。

 

「…俺はロック・グルーバー、この機体は灰塵壱式。訳あってそこにいるライと行動を共している。俺の願いを聞いて貰えるならば、黒の騎士団にも協力しよう。」

 

団員達の中には不審がる者もいたが、先程ラウンズと真正面から闘っていた姿を見ており、まず敵ではないと見ていいだろうというのが、大方の考えであった。

 

「…ここで話すのもなんですから、とりあえず中に入りましょうか。」

 

そう纏めたのは神楽耶だ。彼女の言葉で、ライやカレンは機体を格納する為に再び騎乗し、隊員達も、必要な者は自らの配置に戻った。

 

余談だが、通常のナイトメアの二倍近くある灰塵壱式を格納するのにはかなりの労力を要した。最終的には両腕を一旦取り外し、格納してから再接続するという方法を取るしか無かった。これにより、ラクシャータは潜水艦の発艦口の拡張を余儀なくされ、一人不満顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの後、僕はギルフォード卿の部隊のほとんどを退けましたが、そこに現れたランスロット・クラブ…アドニスと一騎討ちになりました。」

 

集まっているのはカレン、藤堂と朝比奈、千葉に加え、神楽耶とC.C.もいる。みな、ライが一年間何をしていたか聞きに来たのだ。そのライの後方には、腕を組んで目を閉じ、壁にもたれかかったロックがいた。

 

「飛行型のナイトメアには分が悪く、月下もかなり損傷していました。なんとかフロートに一撃を加えましたが、左腕は破壊され、落下の勢いのままに繰り出された蹴りを避けられなかった。僕が覚えているのは、蹴りをくらってビルに叩きつけられたところまでです。」

 

「そこからは一旦、俺が話そう。」

 

目を閉じたまま、ロックが声をかける。

 

「当時俺は、二つの理由からブリタニアに反感を持ちつつ、その上である程度の規模を持つ組織に渡りをつけられる人物を探していた。そしてたどり着いたのが日本だった。そこで…」

 

ロックは一度言葉を切る。

 

「150機程度のナイトメアで、ブリタニア軍に喧嘩を売る馬鹿げた組織を目にした。」

 

その言葉にカレンと神楽耶は目を尖らせる。

 

「しかし、思わぬ方法で東京疎開を崩し、疎開中心部まで進撃、一時は勝つ目前までいったことには瞠目した。あのまま飛行型ナイトメアが現れなければ本当に勝てていたかもしれんな。ただ…」

 

ロックが歩みよりながら語る。

 

「結果は知っての通りだ。しかし、やはり不可能だったかと思った俺の目には、たった一機でブリタニア軍を足止めし、さらにはその部隊を壊滅寸前に追い込むナイトメアが見えた。それを見て、俺はその機体を誰が操縦しているのかを理解したさ。目的の内の一つを見付けた、と。」

 

ロックがライの肩に手を置く。

 

「後は俺が灰塵壱式で介入し、こいつを回収した。敵の…ランスロット・クラブか。あれはフロートを破損し、少なくないダメージも負っていた。手を引かせるのは簡単だったさ。」

 

「次に僕が目覚めたのは青森の山中を改造した基地だった。」

 

ロックの言葉を繋げたライを、さらにロックがフォローする。

 

「アオモリにあった反乱組織の基地を改造したものでな、俺の灰塵壱式もそこで製造された。チャド・ティーチー・タカムラという男の手で。」

 

その後をライが続ける。

 

「タカムラ博士はナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインの機体設計に関わった男だ。ただ、手柄を横取りされ、ブリタニアから追われた。」

 

ライは一同を見回す。

 

「彼はなんというか…ナイトメアが造れるなら別にブリタニアでなくとも良いという考えの持ち主で、他人が造ったナイトメアを弄れることを大喜びしてたよ。また、自分自身の手でビスマルクの専用機であるギャラハッドを超える機体を造る事も目的の一つだったみたいだ。その為に彼が造ったのが灰塵壱式であり、改造したのが月下、今の蒼月だね。」

 

言い切ったライは一息つく。

 

「あなたはそこで、一年間何をしていたの?」

 

問いかけたのはカレンだ。

 

「三ヶ月は治療とリハビリだったよ。何せユーフェミアに撃たれたせいで内臓がいくつかやられていたし、アドニスとの闘いで怪我もしてしまって…」

 

ライはその日々を思い出して苦笑する。青森にいても騎士団壊滅の情報は聞こえてきた。助けに行きたいのに何も出来ない日々。鬱々とした感情を抑えながらリハビリに励んだ日々を。

 

「青森に騎士団員が潜伏してるって情報もあったけど、向かった時には既にゲットーはブリタニア軍に占拠されていた。ブリタニア軍は僕とロックで壊滅させたが、みんなと会うことは出来なかった。」

 

「…ニアミスしてたのね。」

 

あれだけ必死に探したライが、一時とはいえ近くにいたのだ。カレンは自分の運の無さにため息をつく。

 

「後は情報を集めたり、基地を移動したりかな。そしてようやく先日、ゼロが復活したと知った。そして、動くのは総督が交代するこのタイミングしかないだろうことも察せられた。」

 

ライはゼロの正体に繋がるナナリーの名を出さなかった。新総督がナナリーであると知ったからこそ、ルルーシュが海上で奇襲をかけるだろうと読んでのことだが、そこまで理解しているのはカレンとC.C.だけだ。

 

「そうか…何はともあれライ君、無事で良かった。それに、あの時は君を見捨てる形になり、すまなかった。」

 

藤堂が頭を下げる。

 

「や、やめて下さい藤堂さん。あの時はあれが最善だと思っただけで…結局、ブリタニア軍の足止めという目的は果たせませんでしたし…」

 

ライが身を乗り出して藤堂を止める。それを見て、他の面々も声をかけた。

 

「でも、本当に生きていた下さって良かったですわ。」

 

「ああ、戦力的に見ても、ここまで弱体化してしまった我々にはありがたい。」

 

神楽耶の言葉にC.C.も続く。

その後も其々がライに言葉をかける中、ロックが徐に口を開いた。

 

「次は俺の目的を話してもいいか?まだ残っている一つを。」

 

ロックは既に元の位置に戻っている。その彼に、ライ以外の目が集中する。

 

「ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインに用がある。奴と闘う機会をくれるなら、黒の騎士団に喜んで協力しよう。」

 




灰塵壱式
体高7.25メートル
重量14.9トン
ロックの専用機である大型KMF。手首と足首にブレイズルミナス、膝に小型MVSを装備している事で格闘戦に長ける上、長刀型のMVSも持っている事で高い突破力を誇る。
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