コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

17 / 73
episode11 Exile

「そうか。みんな修学旅行に…」

 

ルルーシュはロロとアッシュフォード学園に戻っていた。

 

「追いかける?」

 

「いや、誰もいない鳥籠が、今の俺には…」

 

言おうとしたルルーシュの目に、打ち上げられた花火が写った。

 

ルルーシュが屋上へ走ると、そこにはシャーリー、ミレイ、リヴァルの姿があった。

 

「おかえり、ルル。」

 

「ルルーシュもやろうよ!文化祭で使ったのの余りだけど。」

 

シャーリー、ミレイがルルーシュに声をかける。三人の姿を見て、ルルーシュは自分が修学旅行へ参加しなかった為に、彼らもまたそれと同じ選択をしたのだと理解した。

 

「どうして…」

 

「俺達だけで行っちゃ、泣くでしょ君ぃ。」

 

おどけて見せるリヴァル。そのリヴァルに続いて、ミレイが微笑みながら答えた。

 

「旅行なんてのはねぇ、どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなのよ。」

 

「そうそう。」

 

シャーリーもミレイに同意する。そのシャーリーの手には、折鶴があった。

 

「…それは?」

 

「ああこれ?願い事が叶うっていうから作ってみたの。誰に教わったのかどうしても思い出せないんだけど…」

 

「何を願ったんだ?」

 

ルルーシュの問いに、シャーリーは微笑みながら答える。

 

「もう叶ったよ、少しだけ。みんなで一緒に花火がしたいなって。」

 

「みんな…?」

 

「ニーナ、カレン、ライ…」

 

シャーリーの言葉にリヴァルとミレイが続く。

 

「それに、スザクも。」

 

「ルルーシュとロロもね。」

 

「一羽だけだから、ルルしか叶わなかったけど。」

 

苦笑いするシャーリー。その言葉に、ルルーシュは幸せとは何か、という事を考えさせられていた。そして、自分が見落としていた小さな幸せに気付く。家族や仲間と、供に過ごした幸せな時間を。

 

「みんな、またここで花火を上げよう。絶対に、もう一度…みんなで…」

 

(そう、俺の闘いは…もうナナリーだけじゃ…)

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

『枢木卿、時間です。』

 

部下からの声にスザクは閉じていた目を開くと、全軍に向けて命令を下した。

 

「攻撃開始!」

 

ブリタニア軍の戦艦から、砲撃が放たれる。

 

「来たぞ!タンカー爆破、敵ソナーを無効化する。ダウントリム30度、急速先行!」

 

騎士団の潜水艦内では、藤堂が指揮を取っていた。その後ろにはカレンもいる。扇や玉置もブリーフィングルームに集まって状況を見守る中、ライとロックはナイトメアに乗り込んでいた。

 

『この戦力差では、いくら俺達が時間稼ぎをしたところで逃げ切れんぞ。』

 

ロックからの通信に、ライは周辺の海図や敵艦隊の情報をダウンロードしながら答える。

 

「それは最後の手段だよロック。僕だって水中戦闘が可能な機体とはいえ、たった二機で状況を変えられるとは思ってないさ。」

 

蒼月と灰塵壱式は水中でも行動可能なナイトメアだ。ただ、ブリタニア側は水中専用ナイトメアであるポートマンを既に多数潜航させている。その上、スザクは他のラウンズも引き連れて来ていると考えて間違いないだろう。

そうであれば自分達が囮になるよりも、一気に状況を変えられる一手を考える必要があった。

 

「…タンカーやミサイルの爆発の影響で、通信が滞ってる。このままじゃ…」

 

蒼月の操縦席では、海図のダウンロードが遅れていた。ライは歯噛みして、コックピットの壁面を殴る。その間にも、頭上からは魚雷が降り注いでいた。

 

『敵は徐々に包囲を狭めてくるだろう。うまく引き込めれば、灰塵と蒼月であればポートマンだけは一気に殲滅できるだろうが…』

 

ロック自身も、それだけでは逃げ切れないのは分かっていた。だからこそ、自分にはないライの閃きに期待しているのだ。

 

「…これは!!」

 

ライがようやくある程度ダウンロードが進んだ海図を見て、何かに気付く。まだ完全にダウンロードできた訳ではないのでかすれているが、使えるものを見つけたのには間違い無かった。

 

「藤堂さん!」

 

『ライ君か。』

 

ライは慌てて藤堂に向けて通信を開いた。

 

「今から伝える場所へ船を動かして下さい!ダウントリム50度!ポイントは…」

 

かすれた海図から何とかどこのポイントか読み取ろうとするライ。その彼らに、さらに通信が入った。

 

『ポイントはN14だ!急速潜航しろ。』

 

ゼロの声に沸き立つ扇や玉置らと同様に、ライもどこか安心していた。

 

「──全く、僕の苦労を台無しに…」

 

『そう言う割には、嬉しそうだが。』

 

ロックの言葉に苦笑で返すライ。言葉だけは悔しがってはいるが、内心の喜びを隠せていないのは明らかだった。

 

『正面に向けて、魚雷全弾発射。時限信管にて40秒だ。』

 

ゼロの言葉に戸惑いを表す扇達。藤堂ですら躊躇するそぶりを見せるが、ライの言葉が彼を後押しした。

 

『大丈夫です。狙い通りにいけば一気に状況を変えられます。発射して下さい!』

 

「分かった。──信管設定後、全弾発射!」

 

藤堂の言葉に従い、魚雷が発射される。同時にブリタニア軍にも補足され、ランスロットで飛び立ったスザクにより指示が下される。

 

「敵はポイントN14、攻撃を集中しろ!浮上してきたら自分が捕縛する。」

 

ブリタニアの艦隊とポートマンが移動を開始する。潜水艦はなおも潜航し、海底にまで達していた。

 

『アンカーで船体を固定して下さい。その後、衝撃に備えるようにと!』

 

ライの指示により、船体が固定される。魚雷は、海底に建造されたとある施設に着弾していた。魚雷が爆発すると、そこから大量のメタンハイドレートが排出される。それにより、ポートマンは海上まで押し上げられ、戦艦の放った魚雷と衝突して多数の爆発が起きた。

 

『枢木卿、泡が…うわあぁぁぁっ!』

 

「泡!?」

 

スザクが事態を飲み込めずに周囲を見回した時、船団の下から大量のメタンハイドレートが浮かび上がってきた。そのメタンハイドレートに押しやられ、艦隊は次々と転覆してゆく。

 

「海底から…巨大な泡を!?」

 

驚くスザクに、トリスタンに騎乗したジノが近付く。

 

「なんだなんだ?スザク、援軍以前の問題だろうこれは。」

 

トリスタンの横には、モルドレッドとランスロット・クラブの姿もある。

 

「とりあえず、生き残った部隊を確認しろ。その後、部隊を分けて騎士団の捜索と味方の救助に…」

 

アドニスが言いかけたとき、部下からの通信が入った。

 

『ゼロです!ゼロがこちらに向かってきます!』

 

アドニス達が目を向けた先には、ヴィンセントの掌に乗り、高速で接近してくるゼロの姿があった。

 

「これが、お前の答えなのか!」

 

ランスロットがヴァリスを向ける。それに対して帰ってきた答えは意外なものだった。

 

「撃つな!撃てば君命に逆らうことになるぞ。」

 

ゼロはヴィンセントの掌の上で立ち上がった。

 

「私は、ナナリー総督の申し出を受けよう。──そう、特区日本だよ。」

 

「…降伏するってことか!?」

 

「馬鹿なっ!!」

 

ゼロの言葉に、扇や藤堂も動揺を露にする。

 

「ゼロが命じる!黒の騎士団は全員、特区日本に参加せよ!!」

 

 

 

ヴィンセントが潜水艦に着艦し、ゼロから離れる。そのゼロを四機のナイトメアが見下ろしていたが、ゼロの方針を受け、やがて撤退していった。

 

潜水艦のブリーフィングルームでは、ライとロックを除いた主要メンバーが集結していた。

 

「…行政特区に入るって、なに考えてんだろうね。」

 

口にしたのは朝比奈だ。それに続き、周囲の者達も疑問を呈する中、藤堂が静かに扇へ話しかけた。

 

「扇、ゼロの判断が我ら日本人の為にならないものなら…」

 

「─藤堂さん…」

 

扇は、藤堂の決断に驚いていた。無論、まずはゼロの真意を聞いてからという前提はあるものの、ここ最近のゼロの様子を見ていれば、不審に思うのも当然ではあった。二人のやりとりに気付いている朝比奈も、厳しい目をゼロが入ってくるであろう扉へ向けている。

そこへ、その扉を開いてゼロが現れた。

 

「ゼロ様!新妻をこんなに待たせて!」

 

そのゼロに、神楽耶が走り寄って抱き付く。神楽耶をゆっくりと下ろしながら、ゼロはまず神楽耶個人へ向けての挨拶を口にした。

 

「神楽耶様、変わらぬ元気なお姿、安心しました。」

 

「ゼロ様こそ、相変わらず人を驚かせてくださいますのね。特区日本に参加するだなんて。」

 

神楽耶の後ろから、扇が口を挟む。

 

「そうだ!あれはどういうことなんだ?」

 

「だーかーらぁ!誘いに乗ったふりしてブリタニアを潰すんだよ!」

 

扇の言葉に続いたのは玉置だ。彼はゼロを一切疑っていない為に周囲が動揺する中において、全く動じていなかった。

 

「闘って、闘って…それでどうする?」

 

しかしゼロから返ってきた言葉に、玉置を含めた全員がさらに驚いた。

 

「…あるのか?闘わずに済む方法が。」

 

問いかける扇。その扇に朝比奈と藤堂も続いた。

 

「それじゃあ僕らは、今まで一体何のために…!」

 

「ブリタニアの中から変えるつもりか!?我らは独立の為に…」

 

「藤堂!日本人とは何だ?」

 

その藤堂の言葉を、ゼロは遮る。

 

「…心だよ。」

 

言いよどむ藤堂に対し、ゼロが告げる。その声は真剣そのものであった。

 

「作戦概要を説明する。…ライはどこだ?」

 

ゼロはライの姿を探す。ライは出撃準備をしていた蒼月を格納し直していたのだが、さすがにそこまではゼロも知らない。

 

「…あいつの意見も欲しい。全員揃ったところで、説明を始めよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナナリーを除いたエリア11の重臣達は、一室に集まっていた。

アーニャだけは先日の戦闘を撮影した無人機の映像を携帯で見ていたが。

 

「なんだ?一方的にやられたのがそんなに悔しかったのか?」

 

「…そうじゃない。」

 

ジノのからかいに、ムスッとした表情で返すアーニャ。

 

「その割には、こないだからずっとその映像ばかり見てるじゃないか。」

 

ジノの疑問に、アーニャはジノに携帯電話を突き付けながら答える。

 

「…私は、この動きを見たことがある。それに、向こうは私の事を知っていた。声にも聞き覚えがあるような気がする。」

 

そこには、モルドレッドに攻撃を加えるボクサー、灰塵壱式の姿があった。

 

「…だけど、思い出せない。大切なことだったような気がするのに。」

 

映像に見入るジノだったが、ゼロから通信が来たことでそれは中断された。

 

『ほう、ナイトオブラウンズが4人も。しかし、総督の姿がないようだが。』

 

「これは事務レベルの話だ。」

 

そう返したスザクに続き、ロイドが質問する。

 

「あのさ、聞きたいんだけど。君と前のゼロはおんなじ?それとも…」

 

『ゼロの真贋は中身ではなく、その行動によって測られる。』

 

「あはっ、哲学だねぇ。」

 

「黒の騎士団の意見はまとまったのか?特区日本に参加すると言ったからには…」

 

ロイドに続いて尋ねたジノに、ゼロはにわかには信じがたい答えを返した。

 

『こちらには、百万人を動員する用意がある。』

 

「本当なんだな?」

 

スザクの確認に、ゼロはそれに答える形であることを告げる。

 

『ただし、条件がある。私を見逃して欲しい。』

 

「!?」

 

スザクの目が驚きで見開かれる。それを無視して、さらにゼロは続けた。

 

『とは言え君達にも事情はあるだろう。ゼロは国外追放処分にするというのはどうだろうか。』

 

「…こんな話がバレたら組織内でリンチだよ?」

 

思わぬ話の流れに、ロイドはにやつきながら返した。

 

『だから殺されない為に内密に話している。』

 

「エリア特法十二条第八項。そちらを適用すれば総督の権限内で国外追放処分は執行可能です。」

 

告げたのはミス・ローマイヤだ。彼女は内心、ゼロの国外追放には賛成しているようだ。

 

「ミス・ローマイヤ!ゼロを見逃せというのですか!」

 

憤るスザクにローマイヤは淡々と告げる。

 

「法的解釈を述べただけです。」

 

『どうだろう。式典で発表してもいい。君達にとっても…』

 

「悪い話でないことは確かだ。反乱軍は指揮官を失い、エリア11の統治も容易になる。その言葉に、裏がなければだが。」

 

ゼロの言葉をアドニスが補足する。

 

「しかし…犯罪者を!」

 

スザクは最後まで納得がいかず、ゼロが映る画面を睨み続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅月カレンだな。改めて自己紹介させて貰うが、俺はロック・グルーバー。当時のライの騎士だ。」

 

潜水艦内の一室で向かい合う二人。ロックが話があるといって彼女を呼び出したのだが、一対一で話すのはこれが初めてであった。

 

「あ、うん。よろしく…って、当時?…ってことは!」

 

「ああ、俺も200年前の人間という事になる。まぁ、一年ちょっと前に起こされたあいつとは違って、俺はもう七年程になるが…」

 

その間に記憶を消去され、自分を見失ったまま生活していた事だけ告げると、話を200年前まで戻した。

 

「あいつの話なんだがな…あいつは当時、一切女性に興味を示さなかった。仲が良い女性といえば母君と妹だけで、あとは政治と戦争に没頭していた。そんなあいつが、初めて血縁者以外で自分の命より大事だと言ったのがお前だ。」

 

ライの思いを知り、カレンはロックの前であるにも関わらず少し赤面する。だがロックはその様子に頓着することなく言葉を続けた。

 

「だからこそ、あいつの心をお前に支えてやって欲しい。騎士として、そして友としても、俺には不可能な事だ。悔しい事だがな…まぁ、それを頼みたかったんだ。」

 

ロックの真剣な瞳に、カレンは大きく頷いた。そして、彼の内心を汲み取って返答する。

 

「分かったわ。だけど、あなたも彼の事を大事に思っているんでしょう?」

 

「無論だ。当時でもこの時代でも、唯一俺が認めた男だからな。」

 

ロックの言葉を聞いて、カレンは微笑みを浮かべた。

 

「なら、私達で支えてやりましょう。彼はすぐ、一人で抱え込もうとするから…私は恋人として、あなたは親友として、それぞれ出来る事があると思うから。」

 

「…そうだな。あいつに何か異変が見えた場合は、真っ先にお前に相談すると約束しよう、紅月。」

 

ロックが右手を差し出す。カレンはそれを握り返しながら言葉を返した。

 

「よろしくね、ロック。それと、カレンでいいわ。」

 




いつも読んで頂き、ありがとうございます。一日で当初考えていたよりかなり順調に修正が進み、自分でも驚いています。今後もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。