コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode18 Love attack

ルルーシュは、ライを引き連れて日本に来ていた。カレンが日本に拘留されている可能性を考えてのことで、一旦咲世子と入れ替わり、本物のルルーシュとしてアッシュフォード学園に再び戻ったのだ。しかし彼を待ち受けていたのは、予想外の展開であった。

 

「ナイトオブラウンズが生徒会メンバーになった、その問題もクリアされていないのに…」

 

ルルーシュには、ルルーシュに扮した咲世子がシャーリーにキスをした事実と、ジノとアーニャが入学してきたことが告げられていた。シャーリーとのキスに関しては隠し扉が見付からないよう、彼女の気を引く為に咲世子は最善の手を打ったつもりでいたので平然としている。その後ろではロロが驚きの声を上げていたが。

さらに咲世子は、翌日のスケジュールをルルーシュに伝える。そのスケジュールには、分刻みで108名の女生徒とのデートや、条約締結の為の会談等がぎっしり詰め込まれていた。ちなみに睡眠時間は三時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、何とかスケジュールをこなしてアッシュフォード学園に戻ったルルーシュを待っていたのは、デートのキャンセル待ちをする女生徒の集団だった。走り寄る彼女らを見て、ルルーシュは顔を引き攣らせる。

 

「もう勘弁してください!」

 

そう叫んで逃げたルルーシュを追う女生徒達。そしてヘトヘトになりながらも逃げるルルーシュを、シャーリーが突き飛ばした。

その表情は、明らかに怒気を孕んでいる。

 

「今度はどなたとお約束かしら?」

 

「いやそれは…」

 

言い訳をしようとしたルルーシュの耳に、ミレイの声が聞こえた。

 

「ル~~~ック!」

 

そちらを見ると、クラブハウスの二階から、ミレイが身を乗り出していた。

 

「決めました!私の卒業イベント!名付けて、キューピッドの日!」

 

「あのさぁ、ミレイ。何だよそのキューピッドの日って。」

 

「呼び捨て!?」

 

ミレイにジノが問い掛ける。リヴァルはジノがミレイを呼び捨てにしたことに怒っていたが、当の本人は全く気にする様子もなく、説明を始める。

 

「当日は全校生徒に、この帽子を被ってもらいます。で、相手の帽子を奪って被ると~…生徒会長命令で、その二人は強制的に恋人どうしになりま~す!」

 

「「「ええぇぇぇぇぇっっ!!?」」」

 

生徒達の驚きの声が、学園内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キューピッドの日…今日のイベントで、女達との関係を一気に清算する!」

 

機情の指令室では、ルルーシュがイベントに向けて策を練っていた。

 

「幸いこのイベントには、教師も参加できる。ヴィレッタに俺の帽子を奪って貰おう。」

 

「…えっ?」

 

その言葉に、自分は無関係だと思っていたヴィレッタは驚く。

 

「それは、おかしな誤解を招くだろう。この件は、咲世子が責任を取るべきで…」

 

「それに、君がそこまで帽子を守りきれる保証もないしな。」

 

ルルーシュの向かい側に座るライも口を挟む。事実、ルルーシュの運動能力は低く、強引に奪われてしまう可能性も否定できなかった。

 

「…その点は問題ない。お前に変装を頼むからな。」

 

ルルーシュの言葉に、ライも驚いた。まさか自分を指名してくるとは思わなかったからだ。

 

「…カレンのことがあるからお前にこういう事をさせるのは気が進まないが、確実性が一番高いのはお前だ。頼む。俺に変装してくれ!」

 

ルルーシュがテーブルに手をついて頼み込んだ。そこまでされては、ライも断ることは出来ない。ライは渋々ながらもそれを了承した。

 

「…分かった。でも今回だけだよ。」

 

「あ、ああ!助かる!」

 

ルルーシュが顔を上げるのに合わせて、ヴィレッタが提案を口にする。

 

「帽子を取らせるのはシャーリーでいいのでは?あれは相当お前に惚れているぞ。お前を守る為に私を撃ったこともある。」

 

「…だから、もう巻き込みたくないんだ。」

 

ルルーシュの言葉により、結局帽子はヴィレッタに預けることになった。

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

 

『みなさ~ん、今日が最後の生徒会長、ミレイ・アッシュフォードで~す!それでは、キューピッドの日を開始しま~す!あ、ターゲットから最低2メートルは離れていてね。』

 

女生徒に囲まれるルルーシュに扮したライは、周囲を見渡して考える。

 

(ルルーシュはモテるんだなぁ。まぁ、このくらいなら全然逃げられるとは思うけど…)

 

自分の事を棚に上げ、感心してみせるライ。実際のところ、騎士団内でも女性隊員から相当な人気があるのだが、カレンとの仲が知れ渡っている為に誰もライにアタックしてくる者がいないというだけである。

しかし、どこかこの状況を楽観視していたライに鉄槌を下すような一言がミレイから発せられた。

 

『では、スタートの前に私から一言。

…3年B組ルルーシュ・ランペルージの帽子を私の所に持ってきた部は、部費を10倍にします!』

 

「…はぁ!?」

 

ライが驚きの声を上げると同時に、キューピッドの日はスタートした。女子生徒だけでなく、男子生徒も周囲に群がってきたことで逃げ場をなくしたライは、生徒達の頭上を飛び越え廊下に出た。しかしそこにもルルーシュを捕まえようとする生徒が集まってきていたことで、ライは窓から階下へ飛び降りた。

 

「マジかよ!?ここ3階だぞ!」

 

「違う!雨樋を伝って2階へ逃げたんだ!急げ!」

 

その姿を追って、駆け出す生徒達。ライは既に中庭に出ており、生徒達の間を走り抜けていた。

そのライに向けて、ラグビー部が突撃してきた。しかしライはその脚の間に体を捩じ込んですり抜けると、すぐに走り去ってしまった。

 

「う、嘘だろ…まるで幽霊みたいにすり抜けてった…」

 

抜けられぬように間をつめて走っていたつもりの部員達には、まるでルルーシュが透明人間になったように見えていた。

ルルーシュの指示に従い、体育館方面へ移動するライ。そこには、科学部の部員達が自前のバズーカを構えてルルーシュを待っていた。

 

「シッ!」

 

声を上げると、放たれるバズーカの隙間を最小限の動きで切り抜けていくライ。ラグビー部に続き、科学部員達にもルルーシュがすり抜けていったように見えていた。

 

「ひえぇ…ゆ、幽霊ぃ!?」

 

へたりこむ部員を尻目に、ライはすぐに走り去る。余談だが、これ以降しばらくルルーシュが幽霊であるとの噂が流行ってしまうのだが、ライはそこまで考えていなかった。

そのライの前に、ミレイが用意した幻惑部隊が立ちはだかる。彼女らは其々際どい水着や衣装を着て、ポージングをしていた。

 

「えぇっ!?」

 

急ブレーキを掛けるライ。ルルーシュの仮面を着けているので周りから見られることはないが、その顔は真っ赤に染まっており、思わず顔を背けた。

 

「…会長も、ムチャクチャだなぁ!」

 

大きく迂回して女生徒達を視界から追い出す。時間をロスしたが、なんとか予定通りルルーシュとの入れ替わりを予定する最終ポイントに近付いていたのだが…

 

「…嘘でしょ。」

 

ライの目の前には、モルドレッドで出撃してきたアーニャの姿があった。まさかこんなイベントに、ナイトメアまで持ち出すとは…。ライは呆れながら最終ポイントである図書室へ向かってスピードを上げた。

しかしタイミング悪く、その図書室にはシャーリーがいた。彼女は最近のルルーシュの様子がおかしいことに気が付き、自分にキスをした図書室に何かあるのかもしれない、と調べにきていたのだ。

そのシャーリーに、窓を突き破って手を伸ばすモルドレッド。

 

「危ないっ!!」

 

地下からライと入れ替わる為に出てきたルルーシュがそれに気付き、咄嗟にかばうことでシャーリーを抱えたまま階段を転げ落ちた。ライはその間に地下室へのエレベーターに転がり込んでいる。

 

「ルルーシュが、2人?」

 

本物と、ライが変装したルルーシュ2人が同時に現れたことで混乱するアーニャ。そのアーニャに、ヴィレッタが声をかけた。

 

「ナイトオブシックス様、ここは機情の作戦区域であります。すみやかにナイトメアをお引き下さい。」

 

『……ダメ?』

 

ヴィレッタの言葉に、まるでだだっ子のように聞き返すアーニャ。その言葉にやや毒気を抜かれつつも、ヴィレッタは毅然と言葉を返した。

 

「ダメです!」

 

『ダメ……』

 

アーニャは心底残念そうだ。なお、ルルーシュの帽子は、シャーリーの手に渡っている。シャーリーは、いつか本当に好きにさせてみせる と、ルルーシュに宣言していた。

一方、モルドレッドが出撃したことで、緊急事態かと慌てた警察や軍がアッシュフォード学園を囲んでおり、ジノがその対応にあたっていた。

緊急出動したスザクは、そのおかげでミレイに最後の挨拶が出来たことで、胸を撫で下ろしていたが。

 

「うむ、これにてモラトリアム終了ぅ!」

 

そう宣言し、自分の帽子を投げて校舎に入っていくミレイ。最後に生徒会室を見ておこうと足を向けると、その前に花束を持った銀髪の男が立っていた。

 

「…ライ!?」

 

「ミレイさん、卒業おめでとうございます。最後に挨拶がしたくて、抜け出してきました。」

 

そう言って頭を下げるライ。彼が黒の騎士団の団員だとは知っているが、このエリアにいることも、わざわざ自分の為に抜け出してくることも想定していなかった為に、ミレイはとても驚いていた。

 

「…ありがとう、ライ。本当はあなたとカレンにも参加して欲しかったんだけど…」

 

「…ミレイさんには迷惑ばかりかけてすいません。カレンの分も、僕からお祝いさせて下さい。」

 

そう言ってミレイに花束を渡す。ミレイはそれを笑顔で受け取った。

 

「ありがとう。カレンとうまくやりなさいよ!」

 

ミレイの言葉に、ライは苦笑する。

 

「ええ、ありがとうございます。じゃあまた、お元気で!」

 

もう一度頭を下げて、ライは去っていった。その後ろ姿を、ミレイは静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしよう?ルーフトップガーデン。…そっか、じゃあハーブの苗だけ買って帰るね。園芸部にはルルから話してくれると…うん、じゃあ!」

 

携帯電話を手に、街中を歩くシャーリー。その彼女が、突然携帯電話を手から落とす。マオに唆され、ルルーシュを撃ったときにかけられたギアス、そして皇帝により、ギアスによって書き換えられた記憶。それらが突如として彼女の頭の中を駆け抜けていた。

ジェレミアが使ったギアスキャンセラーによるものだが、そのせいで、彼女にかかっていた2つのギアスは、どちらも解かれてしまったのだ。

 

「思い出した…私のお父さんを殺したゼロは…ルルーシュ…」

 


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