コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
「剣門関は落ちたな。澳門の空軍施設も抑えた。カザフスタンの守りには、朝比奈と洪古を回せばいいとして…建康の内政担当は、水無瀬と杉山に任せるか。」
「うん、それがいいと思うよ。藤堂さん達には、引き続き前線に出て貰わないといけないしね。」
ルルーシュの言葉に同意するライ。彼らは、着々と中華連邦の支配基盤を構築していた。各地で軍閥が兵を上げていたが、それも星刻や藤堂、ロックの手で鎮圧されていた。
その指令を終えると、ルルーシュは立ち上がる。
「どこに?」
ロロが聞くと、ルルーシュが振り向いて答える。
「イケブクロの様子を見てくる。悪いが宿題の続きは、ライに見てもらってくれ。」
「わかったよ兄さん。いってらっしゃい。」
ロロに背を向け、学園を後にするルルーシュ。その背に向けて、ライは無言で手を振った。
「…さて、ロロ。」
ライがロロに目を向ける。
「何?ライさん。」
そのライを幾分か訝しげな目で見ながら、ロロは問い返す。ライは、そのロロの様子を見て苦笑しながら告げた。
「根を詰めすぎても良くないから、休憩しないかい?お菓子を焼いてみたんだけど、これはタルトタタンといってね…」
言いつつ、ロロの前に焼き菓子を置くライ。まさかライがお菓子作りまででき、あまつさえそれを自分に振る舞ってくれる等と思っていなかったロロは、驚きを隠せないままライを見つめた。
「君の口に合うといいけど…まぁとりあえず、どうぞ。」
切り分けられて自身の前に置かれたその焼き菓子を、ロロは毒味でもするかのようにおずおずと口に運んだ。
「シャーリー!」
シャーリーの前からは、自分の名を呼びながら歩いてくるサングラスをかけた男の姿があった。記憶が戻ったことにより、周りの全てが嘘に見える彼女は思わず身を引き、逃げ出そうとしてしまう。
「待って!」
そう言いながら、男がシャーリーの手を掴む。
「僕だよ。」
サングラスを外すと、そこにはスザクの顔があった。ナイトオブセブンとして顔が通っている彼は、騒ぎになるのを避ける為に、わざわざサングラスを用意してきたのだ。
「どうしたの?急に呼び出して。」
スザクの言葉に、何から話すか逡巡するシャーリー。意を決して話そうとした時、背後から声が掛けられた。
「…シャーリー?」
そこにいたのはルルーシュだ。自分の記憶についてスザクに相談したかったのだが、その記憶の中心にいるルルーシュが来てしまったことで、シャーリーは話すことが出来なくなってしまった。
その頃、アッシュフォード学園では騒ぎが起こっていた。ジェレミアが学園に乗り込んできたのだ。
「ジェレミア卿!?何故…」
監視カメラでその姿を確認したヴィレッタは驚く。死んだと思っていた彼が、堂々と学園に侵入してきたばかりか、自身の作戦区域に入ってきたからだ。
クラブハウスの前で咲世子が迎え討つも、彼女の身体能力を持ってすら苦戦する程だ。
「…僕が行きます!」
ライが現場に向かおうと、席を立つ。しかしそれを、ロロとヴィレッタが押し留めた。
「ライさんは生徒や教師に顔が割れています。ここに残って指示をして下さい!」
「ああ、対処は私達がする!」
そう言って、2人は作戦指令部を後にした。
(ジェレミア…ここへ来たということは、ゼロの正体がルルーシュだと知ってのことだろう。であれば、ギアスに何かしらの対策を練っているはずだが…)
そのライの考えは的中する。彼が見るモニターでは、ロロのギアスを解除し、咲世子の背中を斬りつけ、ロロを地面に抑えつけるジェレミアの姿があった。
(くそっ…やはり始めから僕が行っていれば!)
ライは慌てて指令室から飛び出す。焦るライの気持ちとは裏腹に、エレベーターはゆっくりと下ってきていた。
「ジェレミア卿!」
ロロを殺そうとするジェレミアに、ヴィレッタが声をかける。
「ヴィレッタ!?お前もルルーシュに取り込まれたのか!?」
ジェレミアの問いに、ヴィレッタは懇願するような表情で答えた。
「ルルーシュは今イケブクロの駅ビルにいます!お願いですジェレミア卿、私を解放して下さい!」
その言葉に何事かを察したジェレミアは、ロロから手を離して立ち上がる。一方のロロは痛みに呻き、彼に続いて立ち上がることは出来ない。
「…引き受けた。」
彼は2人に背中を向け、学園を去っていった。
同じ頃、ルルーシュはスザク、シャーリーと一緒にいた。
「境界線だな、ここは。」
「租界とゲットー。でも無くしてみせる、いつか…」
駅ビルからの景色を眺め、言葉を発する2人。その2人が、実は共犯者なのではないかという考えがシャーリーの中に生まれていた。
「…どうした、シャーリー?」
振り返って後退るシャーリーに、ルルーシュが近付く。それを見て、シャーリーは声を上げて逃げた。そして駅ビル屋上の縁に登ると、止めようと追い掛けてくる2人を拒絶した。
「…来ないで!!」
「シャーリー!?」
キューピッドの日までと比較して、あまりの変わり様にルルーシュは戸惑う。そのルルーシュの様子に気付くことなく、シャーリーは言葉を続けた。
「嘘つき…みんな偽物のくせに!私は…あぁっ!!」
シャーリーが足を踏み外し、屋上から落下する。咄嗟に飛び出してルルーシュが腕を掴み、そのルルーシュの足をスザクが掴むことでなんとか落下は防いだが、宙ぶらりんの状態となっており、危険なことに変わりはない。
ショックで一瞬気を失ったシャーリーだが、すぐに意識を取り戻して暴れだした。
「いやっ!離して!離してっ!!」
「ダメだ!!離さない!!」
シャーリーの言葉を、ルルーシュは拒否する。
「俺はもう…俺はもう失いたくないんだ!何一つ、失いたくない…シャーリー!」
嘆願するようなルルーシュの言葉と表情に、シャーリーは思わず頷く。今の彼の言葉は自分の過去を悔い、苦しんでいる者の言葉だ。だからこそ、信じる気になったのである。
シャーリーはルルーシュにしっかりと掴まる。それを確認したルルーシュは、すぐにスザクに声をかけ、それを受けたスザクは全力で二人を引き上げた。
「…前にもこんなことあったよね。ほら、2人がアーサーを捕まえようとして…」
シャーリーを引き上げ、座り込むルルーシュとスザクに静かに語り掛ける。彼女が思い出していたのは、スザクがアッシュフォード学園に入学してすぐの頃の話だった。
「引き上げる役はいつもスザク君だね。」
「ルルーシュが上だったら、2人とも落ちてるよ。」
「体力バカが。そこまで言うなら落ちる前に助けろ。」
「無理言うなよ…」
そこまで言って、ルルーシュと談笑している自分に気付くスザク。彼は、スザクにとって最愛の人であるユーフェミアを殺した張本人であり、今もゼロとして活動している可能性がある男だ。スザクはそのことを思いだし、自身を戒めた。
(違う…一人なんだ、ルルは…)
一方のシャーリーは、2人の様子を見て現在の関係に気付いていた。彼にはブリタニア内において全てを話せるような味方はおらず、孤独に闘いを続けているのだと。
その時、ルルーシュの携帯電話から呼び出し音がなった。
『兄さん、気を付けて!そっちにジェレミアが向かってる!嚮団の刺客なんだ。僕のギアスが効かなかった…』
2人から少し離れて電話に出たルルーシュ。ロロから意外な名前が出たことで、彼の表情は一気に引き締まった。
「あいつが生きていた?刺客とはどういうことだ?」
『わからない…とにかく、僕とライさんが向かってるから、無茶はしないで!』
そう言うと、ロロは電話を切った。そして携帯電話をしまったルルーシュに、スザクが歩み寄っていった。
「何かあったのかい?友達からの電話って訳じゃなさそうだけど…」
尋問するような口調でルルーシュに詰め寄るスザク。その後頭部に、シャーリーが軽い平手を浴びせた。
「イテッ…シャーリー?」
「ダメだよスザク君。私の用事が先でしょ。」
そのことをすっかり忘れていたスザクは、思い出したようにシャーリーの顔を見つめた。
「そういえば、2人で待ち合わせしてたんだよな?」
「ヤキモチ焼いてくれた?」
その質問に、笑い掛けるルルーシュ。それを見て、シャーリーも笑顔を返し、スザクの腕をとった。
「さ、行きましょスザク君。」
「ま、待ってくれないかな?先に…」
スザクの抵抗を無視して、シャーリーはルルーシュの前からスザクを連れ去った。
(ここは戦場になる。シャーリーの安全を考えれば、スザクと一緒にいるのが一番いいはず…)
ルルーシュはそう考え、2人の背中を見送った。
「調度いい。君に聞いておきたい事がある。」
兵を上げた軍閥を制圧し、そこにある基地をそのまま拠点として使用する事を決めた藤堂。その彼の前を共に闘っていたロックが通りかかった事で、彼は以前から疑問に思っていた事を言葉にした。
「なんだ?」
「私は日本を取り戻す為に闘っている。が、もちろん騎士団員達の中にはそれぞれの闘う理由があり、向いている方向は少しずつ違うだろう。それはいいのだが、君は何故こういった局地戦にまで参加しているのだ?こちらに協力する理由は、ナイトオブワンと闘いたいが為だと言っていたが…」
言い換えれば、藤堂はどうもロックを信用できないという事であった。入団の経緯にしてもそうであったし、その後にゼロの命令を待たずにライと共に独断で出撃しようとしたり、かと思えば今は大人しく命令に従っている。藤堂にはロックがこうして闘っている理由が何なのか、戦場を共にするに当たって信頼して良い相手なのかどうかを確かめておく必要があったのである。
「ビスマルクと闘いたい事を除けば、俺がこうして闘っている理由は一つ。自分なりの忠誠心といったところだ。」
「忠誠心?それは…」
ロックの言葉は、当然ながらゼロを指したものではない。それを分かった上で藤堂はさらに問いを続けようとした。
「ああ。一般的な騎士の姿とは掛け離れているだろうが、俺はライに忠誠を誓っている。あいつは唯一、俺が認めた男だからな。誤解を恐れずに言えば、俺は黒の騎士団を利用しているだけだ。但し、ライや俺を裏切らなければ寝首を掻くつもりはない。そこは信頼してくれて構わん。」
「成程…しかし、ライ君は記憶を失っているのではないのか?それに君の言葉を聞けば、彼は少なくともブリタニアの貴族では…」
藤堂の疑問に、ロックは頬を上げて笑みを浮かべながら答えた。
「奴がハーフだという事は知っているだろう?それに、忠誠の形は一つではあるまい。深く知りたければ、あいつに直接聞くんだな。まぁ、お前達が随分とあいつを買っているのは理解している。これまでの行いを見れば、少なくとも敵でないことは理解できると思うがな。」
「…分かった。つまらぬ事を聞いて済まなかったな。」
軽く頭を下げる藤堂に対して、ロックは特に気を悪くした風もなく返答した。
「構わんさ。お互いを知っておくのも必要な事だ。それに、このやりとりでお前達からあいつへの信頼が得られるのならば、無駄な時間だとは思わんしな。」
ロックのニヤリとした笑顔に、藤堂も渋さのある笑みで答えた。
駅ビルの入口付近では、ジェレミアが警備員を気絶させていた。そして上階にルルーシュの姿を見付けると、彼を追って階段を駆け上がった。
それと時を同じくして、ロロとライは駅ビルのヘリポートへ到着し、二手に別れてルルーシュとジェレミアの捜索を開始する。そしてルルーシュかジェレミアを見付けた場合、必ず連絡しあうことを約束していた。
シャーリーも、スザクから警備員に預けられていたが、ルルーシュが心配になったことでその警備員を振り切り、施設内に侵入していた。途中、ジェレミアに倒された警備員が所有していた拳銃を見つけ、震える手でそれを拾った。
(助けなきゃ…ルルを…私が…!)
彼女もルルーシュを探し、恐怖で震える脚と心を叱咤しながら、駅ビルに向けて再び歩みを進めた。
「機械の体、ギアスキャンセラー…執念は一流だな。オレンジ君。」
駅のホームまで逃げてきたルルーシュは列車の横で止まり、息を乱しながらジェレミアに語り掛ける。
「執念ではない。これは忠義…」
「気に入らないな。あの皇帝のどこに、忠誠を尽くす価値がある!」
言葉とともに、右手に持つスイッチを押すルルーシュ。すると列車の上部から、ゲフィオンディスターバーが現れた。
「な、にぃ…!」
歩みが止まるジェレミア。それを見て、ルルーシュは自身の予測が正しかったこと、そして勝利を確信した。
「その性能…やはりサクラダイトを使っていたか。ありがとう、君はいいテストケースとなった。」
ルルーシュが不敵な笑みを讃えながら告げる。それに対し、ジェレミアは歯を食いしばって何とか立っている、といった状態であった。
「さあ、話してもらおうか。嚮団の位置を。」
ルルーシュの言葉に、ジェレミアは無理矢理体を動かし、ゆっくりと歩を進める。
「話すのはそちらの方だ!私には、理由がある…忠義を貫く、覚悟が…確かめなければならぬ、真実が…」
仮面のような物で隠れた彼の左目付近からは、オイルが血のように流れ出た。そこまでして忠義を貫こうとするジェレミアの異常さに、ルルーシュは戸惑いを隠せない。
「…バカな、動けるはずがない!」
「ルルーシュ、お前は何故ゼロを演じ、祖国ブリタニアを、実の父親を敵に回す?」
ジェレミアの問いに、ルルーシュは咄嗟に答えていた。
「俺が、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだからだ!」
その言葉で、ジェレミアの歩みが止まる。
「俺の父ブリタニア皇帝は、母さんを見殺しにした!その為に、ナナリーは目と脚を奪われた!俺達の未来まで…」
「──知っています。私もあそこにおりましたから。」
ルルーシュの独白に、ジェレミアも自身の忠義の所以を伝える。それは、ルルーシュにとって最も予想していなかった答えであった。
「初任務でした。敬愛するマリアンヌ后妃の護衛…」
力尽き、地面に両手をつくジェレミア。しかし彼は、その体勢のままで話を続けた。
「しかし、私は守れなかった…忠義を果たせなかったのです…」
「それで純血派を…」
「ルルーシュ様、あなたがゼロとなったのは、やはりマリアンヌ様の為であったのですね…」
ジェレミアが左手をルルーシュに向けて伸ばす。その右目からは涙が溢れ出ていた。
「お前は、俺を殺しに来たのではなく…」
「私の主君は、V.V.ではなく、マリアンヌ様…これで、思い残すことは…」
左手が力なく地面に落ち、倒れこもうとするジェレミア。それを見て、ルルーシュはゲフィオンディスターバーを解除した。
「ジェレミア卿!」
ルルーシュがジェレミアに駆け寄る。ゲフィオンディスターバーが停止したことで、彼の体はある程度の動きを取り戻していた。
「殿下…」
「ジェレミア・ゴットバルトよ。貴候の忠節はまだ終わっていない筈。そうだな?」
そう語り掛けるルルーシュに、ジェレミアは涙を流したまま、それでも表情を引き締めて答える。
「イエス・ユアマジェスティ!」
ルルーシュとジェレミアが和解する少し前、ロロは予想だにしていなかった人物と出会っていた。
「ロロ!?」
「シャーリー、さん…」
彼女がこの騒ぎの中を、それも銃を持って歩くなど全くの想定外である。彼はライに連絡するか迷いつつ、警戒しながら距離を詰めた。
「答えて、ロロ。あなたは、ルルが好き?……私は、ルルが好き。あなたはどう?」
「好きだよ。たった一人の兄さんだもの。」
ロロの答えに、シャーリーはどこか安心したような表情を向けた。
「あなたは味方なのね、ルルの。…ねぇお願い、私も仲間に入れて!私もルルを守りたいの!取り戻してあげたいの、ルルの幸せを!妹のナナちゃんだって、一緒に…」
その言葉が引き金となった。シャーリーの言葉は、ルルーシュがゼロであると彼女にバレたということであり、ロロが最も恐怖している、ナナリーという自分の存在を否定する者の名前が出たことによって、その感情は暴発した。
ロロは自身のギアスを使い、シャーリーの体感時間を止める。そしてその手から銃を奪い、彼女に向けて放とうとした。
「ロロ、やめるんだ。」
その銃をそっと抑え、銃口を下へ向ける手が目に入った。ロロが目を向けると、そこにいたのはライであった。
「ライさん…でも!彼女に兄さんの正体を知られて…」
「違うだろロロ。君は、ナナリーの事に言及されたから彼女を撃とうとしたんだ。」
ライの言葉に、ロロは目を逸らす。自身の心中を言い当てられたことで、彼の用意した言い訳は全て使えなくなってしまったからだ。
そのロロを、ライが力一杯抱き締めた。
「ちょっ…ライさん!?」
ロロが慌てて体を離そうとするが、膂力ではライに敵わない。ロロが諦めて大人しくなったところで、ようやくライは彼を解放した。ただ、両手はロロの肩に置いている。それとほぼ同時に、シャーリーにかかったギアスも解けていた。
「…えっ!?ライ君!?」
彼女の前には、カレンに勧誘されて黒の騎士団に入り、その後行方不明になったはずのライがいた。シャーリーは自身が握っていたはずの銃がロロの手に渡っていることにも気付かず、驚きの声を上げていた。
「ロロ、君は君なんだ。」
ロロの目を見つめ、ライが諭すように伝える。
「ナナリーの代わりには誰もなれないように、君の代わりにも誰もなれはしない。今まで君は、暗殺者としてしか自分の居場所を保てなかった。だからこそ今の立場を守りたいのは分かる。だけど…」
ライはそこで一度言葉を切る。ロロが自分の言葉を聞いているのを確認した上で、続きを口にした。
「君はナナリーの代わりじゃない。君は、君でいいんだ。そして、ルルーシュだけじゃない。僕だって、君の事を大事な仲間だと思っている。だから、自分で自分を裏切るようなことは、もうするな。」
ライの言葉を受けて、ロロは涙を流した。怒られると思っていた彼は、予想に反して自分が肯定されたことによって、これまで自分の全てだと思っていた価値観が崩れていくのを感じていた。自分がシャーリーに対してしようとしたことの意味も。
そして、他者の温もりを知ってしまった今は、もう二度と彼女に対して同じ事は出来ないであろうことも。
涙を流す彼の手からゆっくりと銃を受け取り、振り返ってシャーリーと向き合うライ。
「…久しぶりだね、シャーリー。」
「ライ君…ずっと心配していたけど、元気そうで良かった。ねぇ、ライ君はルルの仲間なんだよね?」
ライにも問い掛けるシャーリー。彼女が次に言うことが、ライには分かっていた。
「そうだよ。ただ、君を騎士団に迎え入れることはできない。」
「…っ!でも!!私もルルを守りたいの!」
自身が言おうとしたことを読まれ、先に断られたことでシャーリーは驚く。しかし彼女は、自分もルルーシュの力になれるということを説明しようとした。しかし、ライはそれを遮ってシャーリーに告げる。
「シャーリー、君が彼の力になれないとは思ってないよ。だけど、その力は別の所で使ってやってくれ。」
「…え?」
「彼が帰る場所、アッシュフォード学園や、このエリアでの彼の居場所を、君が守ってやってくれ。それは僕には出来ない、君にしか出来ないことなんだ。」
ライはシャーリーにも、真剣な表情を向ける。彼の真摯な言葉に、シャーリーは我知らず頷いていた。
「戦場で彼を守るのは僕、日常で彼を守るのは君だ。任せていいかい?シャーリー。」
「……分かった。でも、ライ君も無茶はダメだよ!それで怪我したらカレンだって…」
そう言って笑うシャーリーに、ライも笑いかける。入口近くまで彼女を送ったあと、ライはロロと供に、アッシュフォード学園へと戻っていった。
「アドニス君、少しいいかな?」
アヴァロン船内で彼を呼び止めたのはシュナイゼルだ。咄嗟に膝を着こうとするアドニスを手で制し、彼は穏やかな笑みをアドニスに向けた。
「何か…?」
「ナナリーに騎士をつけるのを進めてくれたそうだね。騎士団の行動を正確に予測した君のその先見の明を見込んで、頼みがあるのだが…エリア24へ向かってくれないかい?」