コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode22 He name is…

「そう、ルルーシュがそんな事を…」

 

「お兄様は意地っ張りなんです。でも、ライさんがいらしてからは少しずつそういう所も変わっていったんですけど…」

 

政庁では、勾留されているカレンと総督であるナナリーが楽しげに話をしていた。

なおこの部屋は、カレンの為に特別に用意されたものである。ナナリーが彼女との対話を希望した為に急遽檻として使用することになったもので、部屋の中央へ一本道が続き、中心部が強化ガラスで出来た檻になっている。部屋の出入口付近と檻を繋ぐ一本道、そして中心部の檻の周囲は崖のようになっており、落ちればまず助からない高さとなっていた。

 

「どこか似ていたものね、あの二人…ナナリーも、ライとは仲が良かったわよね?」

 

「はい。ライさんには、折紙を教えて頂いたり、お弁当を食べさせて頂いたり、お勉強を見て頂いたり…随分良くして頂きました。」

 

ナナリーを妹のように可愛がっていたライの姿を知っているカレンは、彼女の様子にさらに笑顔を浮かべる。しかし、その二人のやりとりを邪魔する人物が入室してきていた。

 

「失礼します。ナナリー総督、捕虜一◯七(ヒトマルナナ)号を、お借りしたいのですが。」

 

二人の前に現れたのはスザクだ。彼はナナリーの許可を取ると、彼女を部屋から退出させた。そしてカレンの前に戻ると、彼女に向けて口を開く。

 

「どうしても、ゼロの正体を話す気はないのかい?」

 

「知らないし、知っていても話す気はないって何度言えばわかるのかしら?」

 

カレンは憮然とした表情で返答する。ブリタニアの捕虜になってから、何度も受けた質問だ。その度に、彼女は同じ答えを返していた。

 

「旧中華連邦領内では、いたるところで戦争状態に突入している。黒の騎士団のせいで、多数の死者も出ている。僕は…決断しなくちゃいけない。ゼロの正体を暴き、惨劇を止める為に。」

 

カレンに歩み寄るスザク。カレンが囚われる牢の扉の前で、一旦立ち止まる。

 

「全ての証言、証拠が、ルルーシュは白だと言っている。だけど…」

 

言葉と共に、扉を開くスザク。

 

「僕の心はずっと、ルルーシュが犯人だと、ゼロであると…」

 

「さっきも言った筈よ!これ以上、あんたに言うことはないわ!」

 

カレンは立ち上がってスザクに言葉をぶつける。その姿を見てなおスザクは歩を進め、牢の中へと足を踏み入れていた。

 

「もういいんだ!これ以上、悲劇を生み出さない為にも、手段に拘ってはいられない!」

 

そう行って懐から箱を取り出すスザク。蓋を開けると、その中から現れたのは紛れもなくリフレインであった。

 

「ルルーシュのことは知らない! 何回言ったら分かるのよ!?」

 

言葉と共に左手を振り、彼の頬を叩くカレン。だがそれでも、スザクの表情は微塵も変化しなかった。

 

「騎士団の前に積み上げられた、何の罪もない中華連邦の人達の亡骸に誓って、そう言えるのか?」

 

スザクの問いに一瞬戸惑いを見せるカレン。それを見たスザクは、カレンの腹部に一撃を叩き込み、怯んだカレンを椅子に押し付けた。

 

「話してもらう。このリフレインで。」

 

「やめて…やめてよ!やめてったら!!」

 

抵抗するカレンの腕を取り、リフレインの注入器を押し付けようとするスザク。そのスザクの手を、後ろから掴む者があった。

 

「やめろスザク。それはやりすぎだ。」

 

そこには、エリア24から戻ったばかりのアドニスの姿があった。彼の後ろにはノネットもいる。

 

「アドニス…でも、彼らの惨劇を止める為には…」

 

「間違った方法で得た結果に、意味はないんじゃなかったのか?」

 

アドニスに止められてもなおその必要性を説こうとするスザクに、アドニスがかつてスザクが口にした言葉を返す。その言葉を受けてハッとした表情を浮かべたスザクを、アドニスが殴りつけた。

 

「がっ…」

 

アドニスの全力で放たれた打撃を受けたことで、側面の壁に叩きつけられるスザク。その拍子に落としてしまったリフレインを、アドニスが拾い上げた。

 

「この女は、貴様の友人でもあったのだろう。それを犠牲にして、人生すらねじ曲げてしまう可能性を無視出来るのならば、お前にはラウンズに在籍する資格も、このエリアを救う資格もないぞ。

ユーフェミア皇女殿下がまだ存命であれば、この光景をどう思っただろうな。」

 

アドニスの言葉を受けて項垂れるスザク。自身の行動の意味を理解出来ていなかったことを痛感した彼は、下を向いたまま歯を食い縛ってその行動を恥じた。そのスザクの首根っこをノネットが掴み、無理矢理立ち上がらせる。

 

「とりあえず頭を冷やしてこい、枢木。冷静になれないなら、この先お前をこのエリアの責任者として扱う訳にはいかなくなるのだからな。」

 

言いながら、半ば引きずるように部屋の出入口まで連れていくノネット。彼女はスザクを退出させると、一つため息をついてカレンの元へ戻ってきた。

 

「すまないな…言い訳にはならないが、あいつも一杯一杯でな。」

 

カレンに謝罪しつつ、折り畳み式の椅子を2つ取り出すノネット。彼女の真意が分からず、カレンは訝しげな視線を向けながら言葉を発した。

 

「ゼロの正体なら、さっきもスザクに…」

 

「いや、ゼロのことじゃない。」

 

カレンの言葉を遮るノネット。彼女は椅子を組み上げ、その一つにアドニスを座らせた。そしてもう一つをカレンの正面に置き、自身も腰を下ろした。

 

「エニアグラム卿、俺はまだ信じちゃいませんがね。」

 

ノネットに対し、疑問を口にするアドニス。その顔にはいつもの皮肉そうな笑みが戻っていた。ノネットはそれをじろりと睨み、言葉を返す。

 

「ノネットさんだ、アドニス。何度も言わせるな。それに、それを確認する為にここへ来たんじゃないか。お前だって全く信じられない訳じゃないからこうして私に着いてきているんだろう?戻ったばかりで疲れているくせに…」

 

アドニスへの返答を終えると、視線をカレンに移すノネット。彼女は真っ直ぐにカレンを見ていた。

 

「…一体何を聞こうっていうのよ?」

 

「なに、あの蒼月とかいう機体のパイロットのことさ。」

 

ノネットが尋ねたのはライのことだ。しかし彼は名前も顔もすでにブリタニアに知られている。これ以上、何が知りたいのかカレンには分からなかった。

 

「ライといったか…あの男はお前の恋人だそうだな?だから、お前ならこの答えを知っているんじゃないかと思ってな。」

 

「…答え?」

 

ノネットが何を言っているのか、カレンにはさっぱり分からない。一方のノネットは、カレンの様子などおかまいなしに言葉を続ける。

 

「先日の中華連邦での戦闘で、お前が捕まった後の話なんだが、私はあいつに勝負を挑んだ。こちらが乗っていたのが量産機だったというのもあるが、結果は圧倒的な敗北だった。そこで、一つ感じたことがあるのさ。」

 

元々アドニスと何度も闘い、彼がラウンズとなってからも言うなればライバルのような関係で、ライが彼と何度も闘っていたことは知っている。しかし、中華連邦でさらに別のラウンズとの因縁をつくり、しかもそれを圧倒したなどということを聞かされていなかったカレンは驚いていた。そしてその闘いで敗れた張本人であるノネットが、今自分の目の前にいる。彼女が口にした疑問は、カレンを今以上に驚愕させるものだった。

 

「あの男、この時代の人間ではないんじゃないのかい?具体的には、200年程前の…」

 

ノネットの言葉に、カレンは目を見開く。彼のすぐ近くにいた自分やゼロでさえ、そんな可能性は微塵も考えなかったし、気付けなかったことだ。その答えに、一度闘っただけのノネットがたどり着いている。カレンはラウンズとしての戦闘力以上に、彼女のことを恐ろしい存在だと感じていた。

 

「今の反応で私の推測が正しいことが分かったよ。」

 

彼女はカレンの反応を見て笑みを浮かべる。さらに確認として、言葉を続けた。

 

「あいつは、ライディース・リオ・ブリタニア本人なんだな?」

 

「ライディース・リオ・ブリタニアって……狂王!?」

 

ノネットの言葉に、カレンはまた驚愕を重ねる。ライの過去は本人から聞いていたが、それがまさか現在のブリタニアの礎を作った、狂王と呼ばれる伝説の人物その人であるとまでは聞いていなかったのだ。

 

「そこまでは知らないのか。いや、言った私も未だに信じられんが…」

 

「俺もまだ半信半疑ですよ。200年前の人物が生きてこの時代に…それなら…」

 

「ああ、私達はとんでもない奴を相手にしていることになるな。」

 

アドニスもカレンと同様に驚愕していた。ノネットだけは笑みを浮かべていたが、そこにはいつもの余裕は微塵も感じられなかった。

 

「これは、私の祖先が王に仕えていたからこそたどり着いた答えだ。私は皇帝陛下に忠節を誓ってはいるが…いや、だからこそ今のブリタニアを壊す為に、彼はこの時代に現れたということかな?」

 

そう言うとノネットは立ち上がって椅子を片付け、また来ると言い残してカレンの前から去った。アドニスもそれに続き、部屋から出ていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

 

「あら?あちらはもう終わっちゃったみたいね。思ったより遊べなかったわ。」

 

ジークフリートが撃墜されたのを見てMVSを収納するヴィンセント・アソールト。それを見たライは蒼月を止め、彼女の真意を問い質した。

 

「どういうつもりだ、ルーン?」

 

ライの言葉に、どこか妖艶な笑みを浮かべながらルーンは答えた。

 

「本気にしないでよお兄様。こんなのちょっとした意地悪じゃない。ほら、言うでしょ?好きな相手の気を引こうとして意地悪をしちゃうみたいな。

それに、V.V.も見てたことだしね。」

 

アソールトを砂漠に着陸させるルーン。それに倣って、ライも蒼月を着陸させ、コックピットから降りた。彼の目には、自身と同じようにアソールトから降り、こちらに歩いてくるルーンの姿が写っていた。

 

「久しぶりね、お兄様。」

 

そう言ってゆっくりと抱擁してきたルーンを、ライは強く抱き返す。二百年前に自分が殺してしまったと思っていた最愛の妹が生きていたことに、ライは我を忘れてしまっていた。

 

「…嬉しいけど、痛いわ、お兄様。」

 

彼女の言葉に、ようやく自分が力を込めすぎていることに気付いたライは、慌てて体を離す。その様子を見て、ルーンはクスリと笑った。

 

「す、すまないルーン。しかし何故…」

 

ライの疑問も当然だ。ルーンはライのギアスによって戦場に立ち、敵と相打って死んだのだ。彼女の遺体もその目で確認している。

 

「…そのことについて、私もお兄様に謝らなきゃならないわ。私は、ギアスを持っていることをお兄様に隠していた。」

 

「な…ギアスを!?」

 

ライが驚愕の声を上げる。ライの知らぬところで、彼女も契約をしていたのだろう。力を得る為に。

 

「…死ぬまで分からなかったのだけれど、私のギアスは一度だけ自分の死を無かったことに出来る力。蘇った私は、周囲を見て絶望したわ。」

 

当時彼女が復活した時、彼女の周りには大量の死体があったのだ。敵味方入り乱れ、その中に息のある者は一人もいなかった。

 

「その中にお母様も、お兄様もいるのだと思ったわ。せっかく蘇ったのに、守りたいと思った人達が先に死んでしまっていたんだもの。そこへ、あの男が現れたのよ。彼は契約の為に、ふさわしい時代まで私を眠らせることを提案したわ。そして、私はそれを受けた。」

 

彼女の言葉を黙って聞くライ。彼女はライの反応を見て、さらに言葉を続けた。

 

「その私を起こしたのはV.V.よ。見つけたのは偶然だったようだけど、人間兵器として利用できると考えたのでしょうね。そしてそこで働くうちに、黒の騎士団のことを知った。映像を見て、あの月下というナイトメアのパイロットがお兄様だと確信したわ。だけど、V.V.がいる限り、私は自由に動けなかった。」

 

だから、と彼女は続ける。その目は、真っ直ぐにライを見つめていた。

 

「こういう機会を待ち望んでいたわ。騎士団がV.V.を倒す為に現れ、私を監視する余裕が無くなるのを。」

 

「…そうだったのか。何はともあれ、生きていてくれて良かった。ルーン。」

 

ライはルーンの言葉を聞いて納得する。

それと同時に、今度は優しく彼女を抱き締めた。

 

「あら、お兄様ったら甘えん坊ね。いいわ、二百年ぶりなんだし、たっぷり甘えさせてあげる。」

 

そう言うと、ルーンはライの背に手を回す。そのルーンに、ライはやや脱力したようになりながら言葉を返した。

 

「…ルーン。君、だいぶ変わったな。」

 

「そりゃあ変わりもするわよ。最後に会ってから二百年も経っているのに…。それに、私は四年前に起こされて、その間ずっとV.V.の下で働かされてたのよ?変わるなって方が難しいんじゃない?」

 

ルーンは当たり前だというように告げた。ライの言葉を待たず、さらに続きを口にする。

 

「お兄様が目覚めたのは一年ちょっと前でしょう?四歳違いだったのに、年子になっちゃったわね。」

 

そう言ってライに笑いかけるルーン。彼女の言葉通り、ルーンはライの記憶よりも遥かに成長し、今や身長もライとほとんど変わらないくらいにまで伸びていた。

 

「ルーン、許されることではないけど、それでも僕は君に…」

 

「いいわよ、もう。」

 

ルーンに謝罪の言葉を口にしようとするライを、彼女は遮った。

 

「わざとじゃないこと、私達を守ろうとしたんだということは理解してるし、私もお兄様に隠し事をしていた訳だし…こうして再会できたのだから、今さら過去の事をとやかく言うつもりはないわ。」

 

「……ありがとう、ルーン。」

 

彼女の言葉を受け、自身が許され、受け入れられたことを知って心の底から安堵するライ。彼女から視線を外すと、その顔を嚮団施設の方へ向けた。

 

「…ゼロの元へ行かないと。今は彼を助けるのが、僕の役目だからね。」

 

「なら私は、そのお兄様を手助けして差し上げようかしら。」

 

言葉を交わした二人は、其々のナイトメアに乗り込み、ゼロの元へ飛び立っていった。

 




ルーン・リオ・ブリタニア
身長177センチ
母譲りの黒髪を真っ直ぐ伸ばしている。
ライに近い身体能力を持つが、200年前までは素直で優しかった性格がV.V.のせいでかなりひん曲がってしまった。
趣味はライを困らせること。
(自分のイメージでは、物語シリーズ初期のガハラさんが近いです。)
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