コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode26 Knight's of Euphemia

「皇帝が生きていた…!」

 

「あ、あのお帰りなさい…」

 

斑鳩の私室に戻ったルルーシュはパニックを起こしていた。彼はC.C.の言葉も、自分の部屋にライが来ている事にも気付いていない。

 

「落ち着けルルーシュ。こうなる可能性も予測していた事だろう。」

 

ライはそう言うが、正確にはライの忠告をルルーシュは重く受け止めていなかったのである。ルーンが邪魔をしたという事もあるが、シャルルはCの世界に閉じ込められ、ナナリーが安全になったという考えしか彼の頭には無かった。そしてライは、そうなった場合は闘って取り戻すしかないと腹を決めていた。

 

(いけない…今すぐにナナリーを助けなければ…今すぐに…)

 

だがルルーシュは、二人を無視してナナリーを救う方法を考える。そのルルーシュに、C.C.が一切れのピザを差し出した。

 

「こ、これ…ご主人様の分、取っておきました。朝ごはん、取られていなかったようでしたから…」

 

「うるさい!!」

 

ルルーシュが大声を放ち、C.C.の手にする皿を叩いた。驚いたC.C.は尻餅を着く。その指先からは血が流れていた。

 

「C.C.!」

 

咄嗟にライがC.C.に駆け寄る。ルルーシュも正気に戻った表情でC.C.に歩み寄った。

 

「ごっ…ごめんなさい!今綺麗にしますから…」

 

「そうじゃない…血が出ているじゃないか。」

 

「やったのは君だぞ、ルルーシュ。」

 

ライがルルーシュをジッと睨む。その視線に気付き、ルルーシュも謝罪の言葉を口にする。

 

「…すまない。」

 

「へ…平気です。これくらい、いつもより全然平気です。」

 

「いつもよりって…」

 

ルルーシュは、Cの世界で見せられた彼女の過去を思い出していた。彼女の心を守る存在によって見せられたものだが、それは奴隷時代からコード保持者になるまでの彼女の人生だ。

 

「でも…寒いときは助かるんです。ヒリヒリ熱いから…寒いと手足が動きにくくて仕事が…だから、平気です。外から痛い方が、中から痛いよりも…」

 

ルルーシュは思わずC.C.の手に自分の手を重ねていた。そして、彼女の言葉に涙しそうになる。ライは絆創膏を探していた。

 

「お前は中から痛い時、どうしていたんだ?」

 

「私は……友達がいたら、良かったんですけど。親とか兄弟と違って、友達なら後からでも作れるから…でも私にはそんな味方もいなくて…」

 

C.C.の言葉に、何かを思い出したような表情になるルルーシュ。ライも同様に、何かに気付いて二人の方へ振り向いていた。二人の表情に、C.C.が不安そうに言葉を続けた。

 

「あの…そう聞いたんですけど、違うんですか?」

 

「いや、違わない。それが友達だ。」

 

そう言って、ルルーシュは携帯電話を取り出した。

 

『…はい。』

 

「スザクか?」

 

ルルーシュが電話をかけた友達とは、スザクだ。既に袂を分かっているが、信用できる相手として、そして友達だった者としてこれ以上の人物はいない。

 

「その…ニュース、知ってるよな?」

 

『うん、これでエリア11はまた戦場になる。』

 

「東京租界も、危ないかな…?」

 

探りを容れながら会話を展開しようとしたルルーシュだが、スザクは真っ直ぐに本題を告げてきた。

 

『それは、君が決める事だろ?…ルルーシュ、君はゼロか?』

 

「……そうだ。俺がゼロだ。」

 

半ば予測していた事とはいえ、どこかで違って欲しいと願っていたのだろう。スザクは苦い表情で唇を噛んだ。

 

『…ブリタニアの敵が、僕に何の用だ?』

 

「頼む、ナナリーを助けてくれ。皇帝は俺を抑える為にナナリーを人質にしている。だから…俺は隠れて動くしか無かった!…頼むスザク!お前以外に頼める人間がいないんだ!」

 

スザクには見えないが、ルルーシュは何も映ってはいないモニターに向かって頭を下げていた。ただ、スザクからの返答はルルーシュが予測した通りのものであった。

 

『君の頼みなんか、僕が引き受けると思うのか!?』

 

「思わない…それでもお前しかいないんだ。」

 

『身勝手だな。』

 

「分かっている!しかし、お前しか…お前しか…!頼む!ナナリーを…守ってください!」

 

ルルーシュの懇願にスザクは少し考えて返答した。その答えに、ルルーシュは驚きと安心を覚える。

 

『──分かった。但し、条件がある。ナナリーを守れと言うのなら、ナナリーがいるこのエリア11に、君が一人で来るべきだ。場所は枢木神社。

二人っきりで、会おう。』

 

「…分かった。」

 

それを最後に、ルルーシュは電話を切った。ライに会話の内容を伝え、出発の準備をする。

 

「とりあえず、お前は有事に備えて蒼焔の整備を急いでくれ。決戦に間に合わせて、カレンを助けることだけを考えるんだ。彼女はおそらく政庁にいるだろう。」

 

「しかしルルーシュ…」

 

自分もバックアップとして着いていくと言おうとしたライを、ルルーシュが手で遮る。

 

「ジェレミアを連れていく。ちょうどあいつに一つ頼み事をしていた事だしな。それに、俺に何かあればお前にもナナリーの事を頼みたい。」

 

ルルーシュの覚悟を聞いたライは、表情を引き締めて返答した。

 

「…分かった。」

 

それに頷いて、ルルーシュは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿児島では、星刻率いる黒の騎士団の大部隊が日本奪還の為に進軍してきていた。

 

「敵は我が策に嵌まった。天医の方角が手薄になる筈だ。上陸部隊を取り付かせよ!」

 

星刻の指示に従い、九州、中国地方方面へ続々と部隊を進撃させる騎士団。ブリタニア側の指令室では、これほどの戦力を有していること想定していなかった士官達が慌てていた。しかしそれを、ビスマルクが一喝する。

 

「狼狽えるな!このエリア11を守りきれば、オデュッセウス殿下を始めとする全ての皇族、その軍隊も超合衆国領になだれ込む。他のナイトオブラウンズも、全て最前線に出ている。」

 

「逆に言うと、日本を解放すれば、ブリタニアの植民エリアは次々と決起します。世界地図が塗り変わるのです。」

 

ビスマルクと同様の事を考えていた神楽耶が、大竜胆内で呟く。その言葉を、戦況を見守りながらではあるが、天子や香凛が聞いていた。

 

「つまりは、ここが天王山。」

 

二人が同じ結論に至ったころ、騎士団の左翼側の戦線が、異常な突破力を持つナイトメアによって崩されていた。

 

「質問、お前の大事なものは何だ?」

 

「たっ…助けてくれ!!」

 

「そうだ、命だ!」

 

異常な突破力のナイトメア、ナイトオブテンであるルキアーノが駆るパーシヴァルが量産型暁を次々に撃墜してゆく。その様子を見た星刻は、別動隊を援護に回し、左翼を下がらせる。その星刻に対し、一直線に向かってきた機体があった。

 

「貴候が指揮官だな。」

 

その機体は、ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインの駆るナイトメア、ギャラハッドだ。

 

「頭を潰しにきたか!戦術の基本ではあるが!」

 

神虎を下がらせ、天愕覇王荷電粒子重砲を放つ星刻。しかしビスマルクはギャラハッドの背中に装備されている剣を抜き、なんと砲撃を斬り払ってしまった。

 

「これぞエクスカリバー!皇帝陛下直々に自ら名付けられた聖剣なり!」

 

そう宣言して構えを取るビスマルクだが、その直後に今度は自身が襲撃を受けた。

 

「ぬぅっ…!!」

 

右拳での一撃をエクスカリバーで防いだものの、ギャラハッドが押し込まれる。ビスマルクが見た先では、灰塵壱式が拳を突き出していた。

 

「…久しぶりだな。ビスマルク・ヴァルトシュタイン。」

 

「…ロック・グルーバーか。」

 

元より因縁のある二人だ。特にロックは、この時の為に生きてきたと言っても過言ではない。

 

「星刻、こいつは俺が貰う。お前は引き続き部隊の指揮を。」

 

「…頼んだ。」

 

ロックの言葉を受け、星刻はその場を離れる。それを確認したビスマルクはロックに言葉を放った。

 

「…私が指示を出した事ではない。」

 

だから自分を恨むのはお門違いだというのだ。しかしロックからすれば、そう単純な話ではない。

 

「お前に恨みがないとは言わん。だがそれ以上に、俺が間違っていなかったことを証明しなければならないのさ。あいつらの死を無駄にしない為に!」

 

灰塵壱式が腰から長刀型のMVSを抜く。それを見たビスマルクも、エクスカリバーを構え直した。

 

 

 

 

 

_____________________

 

 

 

枢木神社で相対するルルーシュとスザク。どちらも目線を合わせた瞬間、言葉に詰まったが、それでもスザクが先に言葉を紡いだ。

 

「…一人で来たのか?」

 

「約束だからな。」

 

スザクはここに来るまで、色々な思いが頭を過っていた。親友としてのルルーシュ、アッシュフォード学園で生徒達が自分を受け入れてくれる環境を作ってくれたルルーシュ、そして、ユフィを殺したゼロとしてのルルーシュ。自身の中に渦巻く思いをなんとか殺してルルーシュに相対したのだが、当のルルーシュはスザクのそんな様子には気付いていなかった。

 

「よく来られたね。」

 

「状況によって、31のルートが設定してある。特にブリタニアは、皇族関連のルートが緩いから…」

 

「違うよルルーシュ。」

 

自身の入国した状況を説明しようとしたルルーシュだったが、それはスザクによって遮られた。スザクが言った言葉の意味を、ルルーシュが理解していなかった為だ。

 

「よく僕の前に顔が出せるな、そういう意味だ。」

 

スザクの言葉を受け、ルルーシュは表情を引き締める。それと同時に思い出していた。スザクの自分に対する憎悪の深さを。彼にナナリーを助けて貰うには、まずその問題をクリアしなければならない。

 

「約束だから?今更君の約束が信じられるわけないだろう?」

 

「…だったら、何故お前は一人でここに来たんだ?お前だって!」

 

「…これ以上、嘘をつきたくないから。僕は、ナナリーに嘘をついた。君と同じように……最低だ。」

 

スザクは以前、ルルーシュとナナリーを電話で会話させた後、ナナリーからあれはルルーシュだったのではないかと問い詰められた。その時、目が見えない為に相手に触れることで感情が読めるナナリーに対し、彼女の手が触れようとするのを拒否したのだ。スザクは、自分の行いを後悔していた。

 

「何が友達だ!ずっと僕を裏切っていたくせに…僕だけじゃない。生徒会のみんなも、ナナリーも、ユ…ユフィだって!!」

 

スザクはルルーシュに、ユーフェミアの騎士であることを示す記章を突きつける。ルルーシュは、自身がゼロとして今まで行ってきたことの全てを、思い出さざるを得ない状況になっていた。

 

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