コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode31 Introduction

「そんな…こんなことって…みんな…みんな…!!」

 

フレイヤによって大半が消失し、多数の死者を出した東京租界。その状況を見て、自身が何を作ったのかようやく理解したニーナは、頭を抱えてモニターを眺めていた。

 

「僕が…やったのか…」

 

右手と両足、頭部の一部を失ったランスロットのコックピットでは、フレイヤを放ったスザクも同様にショックを受けていた。ギアスの為にその記憶はないが、ランスロットの左腕にある銃がそれを明確に物語っていた。彼は周囲を見渡し、ただただ茫然自失となるしかなかった。

 

「この兵器をもう一度使われたら、黒の騎士団は壊滅する…」

 

一方の騎士団側も驚愕以外の感情を持つ者はほとんどおらず、藤堂は目の前の現実を見てゼロに撤退を進言しようと考えていた。しかしそこへ、先にゼロから通信が入る。

 

「藤堂…私だ。全軍東京租界に降下しろ。ナナリーを探すんだ。」

 

「ま、待て!今こちらには多くの犠牲が…」

 

「知ったことかそんなもの!!!」

 

ゼロの叫びに藤堂は声を失う。現在ゼロは完全に冷静さを失っているが、とはいえ指揮系統では最上位に当たる人物だ。彼の命令を拒否する権限は藤堂にはない。

 

「ナナリーを探せ。最優先だ!!全軍でナナリーを探し出すんだ!!!」

 

「いや、撤退する。」

 

そのゼロの言葉を遮ったのはライだ。彼自身もナナリーを妹のように可愛がっていたので、捜索を優先したいのはゼロ、つまりはルルーシュと同様だ。しかし、カレンが捕らえられたときに自分が犯した失敗を、ここで繰り返すわけにはいかなかった。

 

「ライ、お前…何を言っている!?」

 

その命令を取り消そうとしたゼロを、蒼焔が無理矢理後退させた。なおも抵抗しようとするゼロであったが、さすがに出力が違いすぎた為に、結局は斑鳩まで押し戻されるしかなかった。

 

同じ頃、斑鳩ではディートハルトが逃走した捕虜を捜索していた。甲板上でその捕虜を発見し、引き連れていた部下達に銃を構えさせる。

 

「そこまでだ、逃亡者君。」

 

ディートハルトの声に気付き、振り返ったのはコーネリアだった。ディートハルトは扇のかつての恋人で、彼を訪ねてきた為に捕虜とするしかなかったヴィレッタが逃げ出したのだと思っていた為、驚きを隠せないでいた。

 

「久しいな。節操なきテレビ屋が。」

 

コーネリアはディートハルトを見てニヤリと笑う。彼らが相手なら、武器が無くても切り抜けられると踏んでのことだ。

 

(皇女殿下を捕虜に…もう少し、私を信用してくれても良いものを…)

 

ゼロからは信頼はされず、利用されているに過ぎないのは事実ではあったが、自身こそがゼロの右腕だと考えていたディートハルトは失望していた。それでも自分の役割を果たす為に、部下に命令を下す。

 

「脚を狙え!殺さずに捕らえる!」

 

しかしそれと同時に、上空からサイレンを鳴らしつつ降下してくる小型飛行機が目に入った。

 

『当方は、ブリタニアの外交特使である!繰り返す!当方は、ブリタニアの外交特使である!戦闘の意思はない!』

 

小型飛行機は、斑鳩の甲板にゆっくりと着艦した。すぐにタラップが降ろされるが、そこから降りてきた人物はディートハルトもコーネリアも予想していなかった者であった。

 

「兄上!」

 

「シュナイゼルだと!?馬鹿な…敵の真っ只中に自ら乗り込んでくるとは…!」

 

シュナイゼルは銃を構える騎士団達を前にしても、不敵な笑みを崩さずに歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カレン!!」

 

斑鳩に戻り、ゼロをロロに預けたライ。彼は整備員にエナジーフィラーの交換を頼むと、同じく斑鳩へ戻った紅蓮の元へ駆けていた。

 

「…ライ!」

 

紅蓮から飛び降り、ライに向かって走るカレン。その彼女を、ライがしっかりと抱き止めた。

 

「カレン、長い間、助けにいけなくてすまなかった。君を…ようやく君を助けられた…」

 

カレンは、僅かにライの腕が震えていることに気付いた。おそらくはずっと自分を心配し、探し続けてきたのだろう。そこまで心配をかけたことに対して申し訳ないと思うと同時に、自分の事をこれ程想ってくれていることが彼女には嬉しかった。

 

「私も、心配かけてごめんね。でも、ありがとう。」

 

そう言って彼に微笑みかけるカレン。その姿を心の底から愛おしく感じたライは、思わず彼女に口づけをした。

一瞬驚いたカレンだが、すぐにライの頭に手を回す。そのキスは徐々に激しさを増し、すぐにお互いの唇を貪りあうような形となる。ただ、二人とも今いる場所がどこかを完全に失念していた。

 

「…そういうことは、部屋に帰ってからにした方がいいんじゃないかしら?お兄様。」

 

周囲で目を奪われていた者達を代表して、ルーンが声をかけた。アキトを迎えに来ていたレイラや、お互いに怪我がないかを確認しあっていたリョウやユキヤもその光景に固まっていた。アヤノだけは、ガックリと肩を落としていたが。

ルーンの言葉に我を取り戻し、顔を真っ赤にしながら離れる二人。しかしルーンは何事も無かったかのような顔で言葉を続けた。

 

「こちらが、カレンさんかしら?紹介して欲しいのだけれど。」

 

「あ、ああ。彼女は紅月カレン。その…僕の恋人だ。

カレン、彼女は…信じられないと思うんだけど、僕の妹で、ルーンだ。」

 

「…えっ!?でも…そういえばさっき、お兄様って…」

 

ライから彼と、その家族の過去を聞いていたカレンは素直に驚く。妹は戦で死んだと言っていたのでは無かったか。生きていたとしても、この時代にいることはおかしい。しかし周囲の目もあるので、過去のことをハッキリとは口にするわけにもいかない。

 

「僕と同じで、生きていたと言うよりも生かされていたという感じで…詳しくは、また話すよ。」

 

ライが言い終わるのを待って、ルーンはカレンに微笑みかけた。

 

「カレンさんと呼んでいいかしら?お兄様はこんな感じで甘えん坊で、抜けているところもあるけれど、どうか見捨てないであげてね。」

 

「え、あ、いや…私も、だらしないところがあるから…」

 

カレンがルーンの言葉に少し面食らいながらも返答すると、彼女は頭を下げてその場を去った。それを見送ったライはカレンに視線を戻し、彼女に一つ頼み事をする。

 

「カレン、ゼロのこと、頼んでもいいかな?」

 

それはつまり、彼を励ましてやってほしいという意味だった。前回ゼロがシンジュクゲットーに逃げ出した際は、彼がカレンに迫ったことで激怒したライであったが、今回は部屋にロロもいるだろうし、それに彼がもう一度自分の信頼を裏切ることはないと確信してのことだった。

 

「それは、いいけど…あなたはどうするの?」

 

カレンの問いに、ライは彼女の耳元まで顔を持って行き、囁くように答えた。

 

「確信も何もないことなんだが…この闘いでブリタニア側の指揮を取っていたのはシュナイゼルだ。ならば、ゼロに対する切り札となりえるナナリーをみすみす死なせるとは思えない。もちろん、死んでしまった可能性も否定はできないけど…

でも、何もしないよりかはマシだ。手掛かりがないか探してくる。

今なら、団員の救出という名目が立つしね。」

 

彼の言葉に、カレンは納得する。もう一度 頼んだ と繰り返すライに、気をつけて と返して二人は一旦別れた。これが、どんな結果を招くのかも知らずに。

 

 

 

 

 

「ナナリーは…?」

 

「兄さん、しっかりして!ナナリーの事は、僕がもう一度捜索に出るから!」

 

ルルーシュに肩を貸し、彼の私室まで運んだのはロロだ。彼はゼロの仮面を外させてテーブルに置くと、ルルーシュをソファーに座らせた。

その直後、ロロの携帯電話から呼び出し音が鳴る。

 

「ジェレミアか。今は兄さんを静かにしてあげないと…

え…?分かった。僕も後で合流するから。兄さんには僕から説明を…」

 

その様子を見たルルーシュが、突然ロロから携帯電話を取り上げた。

 

「どうしてお前が持っているんだ!?」

 

ルルーシュが指摘したのは、ロロの携帯電話についているロケットだ。本来なら、ルルーシュがナナリーにプレゼントするつもりだったものである。

 

「これはナナリーにあげるつもりだったんだよ!!ナナリーに!!

お前なんかが弟面をするな!!この偽物め!!」

 

以前ライからもう少しロロと向き合うように言われていたルルーシュだが、ナナリーを失った絶望感と怒りによって我を忘れ、ほとんど八つ当たりのように携帯電話を投げつけていた。

 

「まだ気付かないのか!?俺はお前が嫌いなんだ!!大嫌いなんだよ!!」

 

「……兄、さん?」

 

「出ていけ!!二度と目の前に姿を見せるな!!出ていけ!!!」

 

ルルーシュに自身を否定され、縋るものすら失ったロロは、先程までのルルーシュのように、フラフラとした足取りで彼の部屋を後にした。

 

(ライさん…僕は…)

 

ロロが今頼れるのは、すでにライしかいない。しかしそのライも、現在はナナリー捜索の為に東京租界へ出ている。ロロは斑鳩艦内を、宛もなく歩き続けた。

 




サーシャ・ゴットバルト
19歳
身長162センチ
ジェレミア、リリーシャの妹。兄のオレンジ事件によって軍人としての立場が危うくなり、軍を辞めるかどうか悩んでいた。しかし彼女の腕を見込んでいたアドニスを通じてナナリーの騎士候補となり、その後に正式に専任騎士となったことで自分を取り戻した。
そんな自身を選んでくれたナナリーに大恩を感じており、一生をかけて彼女に尽くすつもりでいる。
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