コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode32 A kind lie

「以上が、私が嚮団で見聞きした全てです。」

 

斑鳩の幹部用会議室には、シュナイゼルとコーネリア、それにシュナイゼルの副官であるカノンが座り、騎士団側の人員の到着を待っていた。

 

「ありがとう、コーネリア。これで私は…」

 

シュナイゼルが言いかけたところで、会議室の扉が開く。

 

「お待たせしました。」

 

入ってきた面子は、ディートハルトと藤堂、朝比奈と千葉に加え、玉城までいた。

 

「悪りぃな。お前らにやられた負傷兵の世話に手間取ってよ。」

 

会談の目的が明らかになっていない内から挑発を行う玉城に対し、ディートハルトが注意をしようとする。

 

「玉城さん、先程も話したようにこの場は…」

 

「俺は黒の騎士団内務掃拭賛助官だ。事務総長、扇要の代理でもあるだろ。」

 

彼の言葉通り、扇はこの会談に参加していない。彼は斑鳩内に捕らわれているヴィレッタの元にいるのだが、それを知っているのはディートハルトだけだ。

 

「それはあなたの思い込みで…」

 

「いや、是非立ち会って頂きたいのですか。」

 

口を挟んだのはシュナイゼルだ。彼はこの会談までに騎士団の主要メンバーの経歴等を、捕縛されていた際の資料を事前に読み込む事で、ある程度の認識を持った状態で訪れていた。その彼からすれば、玉城は最も利用しやすい人物だったのだろう。

 

「玉城真一郎、ゼロの最も旧い同志であり、歴戦の勇士と聞いています。」

 

「ヘッ!話せるじゃねえか!」

 

シュナイゼルの内心を読む程の頭脳を持たない玉城は、彼の言葉にあっさり乗せられた。シュナイゼルの正面に当たる椅子に勢いよく座ると、他の面々も諦めたように席についた。

 

「ゼロとも、一戦交えてみたかったのですがね。」

 

二つのテーブルの調度中間地点に置かれた、チェスボードを眺めながらシュナイゼルが告げた。

 

「ゼロは参りません。お話の内容を確認した上で…」

 

「でしょうね。出てこられる筈がない。

彼は人に相談するタイプではありません。一人で抱え込み、人を遠ざけるばず…」

 

ディートハルトの答えに対し、シュナイゼルはあたかもゼロの正体を知っていると匂わせるような返答をした。

 

「ゼロの事を、よく知っておられるような口ぶりですね。」

 

「あなたよりは。」

 

シュナイゼルの返答に顔色を変えるディートハルトや藤堂。それを無視するように、シュナイゼルは言葉を続ける。

 

「ゼロは、私やこのコーネリアの弟です。

神聖ブリタニア帝国第十一皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…私が最も愛し、恐れた男です。」

 

「馬鹿な…」

 

「ゼロがブリタニアの皇子様だって…?」

 

騎士団側の面々が驚きの声を上げる中、ディートハルトだけは落ち着いた佇まいを崩さなかった。その彼に、コーネリアが問いかける。

 

「ディートハルト、お前は気付いていたのではないのか?ジェレミアやヴィレッタから情報を手に入れていたようだしな。」

 

「…無駄な事です。そのような戯れ言で我らを混乱させようなどと。我々はゼロを系譜ではなく、起こした奇跡によって認めているのですから。」

 

「しかし、その奇跡が偽りだとしたらどうでしょう?」

 

ディートハルトの答えに対し、シュナイゼルがさらに疑問を投げ掛ける。彼はこのタイミングで、最も効果的なカードを切った。

 

「ゼロには特別な力、ギアスがあります。人に命令を強制する力です。強力な、催眠術と考えて貰えば…」

 

「俺のゼロにケチつけてんじゃねーよ!あいつはなぁ、頭がキレて度胸があってすげーんだ!皇子とかギアスとかよぉ、証拠はあんのかよ!?」

 

シュナイゼルの言葉を真っ先に否定したのは玉城だ。しかしそれは、シュナイゼルの思惑通り、玉城の言葉や感情でもって藤堂らをコントロールする形になってしまったことを意味していた。そして、その事に藤堂らは気付けていない。

 

「証拠ならある!」

 

カノンがスザクとの会話を録音したレコーダーを出そうとしたその時、玉城らの後方から扇が声を放った。彼の後ろには、ヴィレッタも立っている。

 

「彼の言う通り、ゼロの正体はブリタニアの元皇子ルルーシュ!ギアスという力で人を操る、ペテン師だ!!」

 

「…だからと言って、ゼロのこれまでの実績が否定される訳ではない。それに本当にギアスがあるのなら、頼もしいじゃありませんか。ブリタニアに対抗する強力な武器になる。」

 

ディートハルトが立ち上がって自身の意見を述べるが、扇がそれを否定する。

 

「その力が敵に対してだけ使われるものならな。」

 

「そうだ。奴は実の妹ユーフェミアを操って、特区日本に集まったイレブンを虐殺させた。」

 

コーネリアの言葉に、玉城が咄嗟に立ち上がりながら否定を口にした。

 

「ダァホ!!ゼロは正義の味方なんだ!!あいつは…」

 

「証拠ならあります。」

 

シュナイゼルは、カノンから受け取ったボイスレコーダーを起動させる。そこから放たれたのは、枢木神社でスザクとルルーシュが交わした言葉であった。

 

「ゼロが、日本人を殺せと…?」

 

「偽物に決まってる!!」

 

まだ信じられない様子の藤堂と玉城に、カノンが歩みより、ある資料を渡した。

 

「こちらが、ギアスをかけられた疑いのある事件、人物です。」

 

その資料には、ホテルジャック事件を起こした元日本解放戦線の草壁中佐や、解放戦線トップの片瀬少将、ユーフェミアやスザクまで非常に多くの人物が記されていた。

 

「私とて、彼のギアスに操られていないという保証はない。そう考えると、とても恐ろしい。」

 

シュナイゼルの言葉に、千葉や玉城らはさらに動揺する。それは、シュナイゼルの手法に完全に嵌まってしまったことを意味していた。そしてそれをさらに加速させるべく、カノンが口を開く。

 

「そしてもう一つ、私達は事前にフレイヤ弾頭のことをゼロに通告しました。無駄な争いを避けたかったからです。

ランスロットに通信記録が残っています。しかし…」

 

「我らに伝えなかった…」

 

もはやゼロを信じるつもりが無くなった藤堂がカノンの言葉を継ぐ。それに続いて、玉城も声を上げた。

 

「俺達はただの駒だったってのか!?チクショー…チクショオォォォッ!!」

 

「みなさん、私の弟を、ゼロを引き渡して頂けますね?」

 

完全に藤堂達の心をゼロから引き離した。そう確信したシュナイゼルは、話を纏めにかかった。それに対し、真っ先に返答したのは扇だ。

 

「条件がある。日本を、返せ!」

 

扇の言葉に、コーネリアは目を見開いて驚きを露にする。この男に、今の状況を利用する頭などあると思っていなかったからだ。

 

「信じた仲間を裏切るんだ。せめて日本くらい取り返さなくては…俺は、自分を許せない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長から連絡は?」

 

「…まだありません。」

 

アキトの問いに答えたのはレイラだ。周囲には特務隊の面々も控えている。

 

「そうか…誰かを探しに行ったようだが、あの状況では…」

 

「ええ、望み薄かもしれませんね。ただ、あの人はそういった事を諦められないのでしょう。短い付き合いですが、それは分かります。あの爆発の時も、真っ先にルーン副隊長とあなた達を助けに動いていましたから…」

 

レイラの言葉に、リョウが反応した。

 

「全く…あんな甘ちゃんでよく部隊の隊長なんて務まるもんだ。」

 

「でも、そのおかげで僕らは生きてる。」

 

リョウの言葉を、ユキヤは静かに否定する。リョウ自身にもそれは理解出来ている事で、軽口を叩いただけのつもりであった為にゆっくりと頷いた。

 

「分かってるって。だが、礼を言うにも隊長が帰ってこないとな。」

 

「ああ、随分大きな借りが出来ちまったぜ。」

 

アシュレイの言葉を最後に、全員が脱いでいたパイロットスーツに再び着替え始める。いつライが戻って出撃の命令を受けてもいいように、準備を整えておこうという気持ちの表れであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナナリーのこと、なんて言っていいかわからないけど…私も、捕まってる間は良くして貰ったから…」

 

ソファーに座り、項垂れるルルーシュに声をかけているのはカレンだ。しかし彼女の言葉も、彼にどこまで届いているかは分からない。

 

「…ご主人様、ふ、服を脱いでください。どこか痛いところがあるなら、私が…」

 

そう言って絆創膏を取り出すC.C.。それを見たカレンは、C.C.の変わりようと、二人の関係に驚いていた。

 

「私が捕まってる間に何があったのよ…?」

 

絶句するカレンに、ルルーシュがようやく我を取り戻したような表情に戻り、言葉を返した。

 

「ち、違う!その…記憶を失っているんだ。俺のせいで…」

 

カレンは、ナナリーだけではなくC.C.まで失ったルルーシュが、どれほどの孤独感に苛まれているのか理解した。もう彼には、心を許せる相手がほとんどいない。もし自分とライに何かあれば、彼はいよいよ一人になってしまう。

どうにか彼を励まそうとした時、扇から通信が入った。

ゼロは、先程よりは幾分かしっかりとした足取りで、カレンと供に指定された四号倉庫へ向かった。

 

「カレン…救出が遅くなってすまなかった。」

 

倉庫へ向かうエレベーターの中で、ゼロがカレンに告げた。

 

「ルルーシュ、私ね…ナナリーと話したわ。あなたの事、ライの事…

こんな時に言うのもなんだけど、私にもお兄ちゃんがいたから…」

 

エレベーターが到着し、扉が開く。話しながらエレベーターを出る二人を、真正面から証明が照らした。

 

「観念しろゼロ!」

 

「よくも我々をペテンにかけてくれたな!」

 

「君のギアスの事は分かっているんだ!」

 

二人が目を向けた先には、こちらに銃を向ける藤堂達と、自分にカメラを向けるディートハルトの姿があった。

 

「待って!一方的すぎるわこんなの!ゼロのおかげで私達ここまで来られたんじゃない!彼の言い分も…」

 

カレンが咄嗟にゼロの前に立ち、彼を庇う。しかし団員達が、彼女の言葉を聞き入れることは無かった。

 

「どけ!カレン!」

 

「まさかギアスにかかっているんじゃないよな!?」

 

何とかこの場を切り抜け、ゼロを助ける方法を考えるカレン。しかしルルーシュは、倉庫の奥へ控えるシュナイゼルを見付けていた。

 

(シュナイゼル…これはあなたのチェックか。ならば、万が一にも隙はないのでしょうね。)

 

それに気付いたルルーシュは、ゼロの仮面を外した。

 

「フハハハハッ!今頃気付いたのか!?自分達が利用されている事に!貴様らが、駒にしか過ぎないということに!」

 

ルルーシュは、ここまで追い詰められ、かつナナリーという闘う目的を失ったことで、自分に残された道は潔く死ぬことだけだと確信した。その言葉を聞いたカレンが驚いてルルーシュから数歩離れる。彼女を巻き込む気は無かったルルーシュは、自身の考え通りになったことに安堵していた。

 

「カレン、君はこの中でも特別優秀な駒だった。そう、全ては盤上のこと。ゲームだったんだよこれは…」

 

「……そう。さよなら、ルルーシュ。」

 

彼に背を向け、団員達の元に歩みだしたカレン。その背に向かって、ルルーシュが彼女にしか聞こえない程度の声で呟いた。

 

「カレン、君はあいつと生きろ。」

 

「えっ…!?」

 

その言葉に、足を止めかけるカレン。しかしルルーシュからある程度距離が離れていたことで、彼女の安全は確保されたと考えた藤堂が部下達に命令を下す。

 

「撃て!!」

 

団員達の銃が一斉に火を吹く。しかし、突如として現れた蜃気楼がルルーシュの壁となったことで、彼には一発として銃弾が当たることは無かった。

 

『大丈夫!?兄さん!?』

 

「ロロ!?」

 

蜃気楼を操縦しているのは、ルルーシュに自身を否定され、彼の元を去ったと思っていたロロだ。彼は自身のギアスを発動すると、ルルーシュを連れて斑鳩から脱出した。

 

「…消えた!?」

 

「バベルタワーの時の…」

 

一瞬にして消えた蜃気楼に驚く団員達。カノンが護衛として連れてきたアーニャに、蜃気楼を捕縛するよう命令した。

次いで藤堂が、暁隊に追撃するように命令を下した。

 

「破壊なら…」

 

モルドレッドが放つミサイルを、ロロが絶対守護領域を蜃気楼の背後に展開することで防ぐ。続いて暁隊も、蜃気楼に砲撃を加えていた。

 

「絶対守護領域の計算が、こんなに大変だなんて…やっぱりすごいや、僕の兄さんは…」

 

思わず苦笑いするロロ。しかし後方では、モルドレッドがシュタルケハドロンを構えていた。自身が計算した絶対守護領域では、シュタルケハドロンは防げない。広範囲ではあるが、ギアスを使うしかないと覚悟したロロに、通信が入った。

 

『…ロロか。ルルーシュはそこにいるのか?』

 

「ライさん!兄さんは、今蜃気楼の手の上にいます!」

 

それを聞いたライは頷くと、蒼焔をモルドレッドへ向けた。MVSでシュタルケハドロンを両断すると、続く暁隊も、砲口がある左腕を狙って攻撃し、瞬く間に無力化した。

 

「ロロ、追跡部隊は僕が抑える。だから、出来るだけギアスは使うな。」

 

それだけロロに伝えると、周囲を囲むナイトメアを無視して、蒼焔は斑鳩に向き直った。

 

「どういう事かな?これは。」

 

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