コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode34 Competition

「私、分からなくって…こんなに酷いことになるなんて…あの、私がこんなに…」

 

「殺した。」

 

自身の前に現れたニーナ。彼女の言葉を、スザクは肯定した。

 

「大成功だよニーナ。フレイヤ弾頭の威力は絶大だ。結果的に、我がブリタニアに勝利をもたらすだろう。」

 

それだけ言うと、スザクは彼女の横を通り抜け、その場を去っていった。

 

 

 

「うっ!…ぐぅ…うぅぅ!!」

 

同じ頃、突然の激しい頭痛によってアーニャは頭を抑えていた。彼女が閉じていた目を開くと、その瞳には赤い光が宿っていた。

 

「…そう、始めるつもりなのね。」

 

アーニャは、斑鳩の外縁にいたC.C.を発見すると、彼女の前にモルドレッドを着艦させた。アーニャはモルドレッドから降りると、C.C.に走り寄る。

 

「直接会うなんて久しぶりね!私よ、私!」

 

アーニャはC.C.に笑顔を向けるも、彼女は怯えて顔を背けてしまった。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「C.C.、まさかあなた…」

 

アーニャが視線を合わせると、彼女の精神はC.C.の精神に潜り込んでいった。

 

「何やってるの?またこんな所に閉じこもって…C.C.!」

 

C.C.の精神世界。その中で、椅子に座って正面を眺める彼女に、アーニャが声をかけた。

 

「ん?誰だ?」

 

「私よ。」

 

その言葉と共に、アーニャの姿が変化する。彼女の姿を見たC.C.は、思わず椅子から立ち上がった。

 

「お前、こんなところまで来て…そんなにルルーシュが心配か?マリアンヌ。」

 

そう、彼女はルルーシュとナナリーの母であり、殺された筈のマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアだ。

 

「あら、私がそんなに理想的な母親だと思っていたの?」

 

「では、どうしてここに?」

 

C.C.の問いかけに、マリアンヌは微笑みを浮かべながら答える。

 

「あなたは今でも私達の味方なのか知りたくって…

C.C.、自分のコードを自分で封印したのは何故?シャルルなら、あなたの願いを、死にたいという思いを叶えてくれたのに…」

 

「分からないんだよ自分でも。ちょっと驚いている。」

 

「アハハハハ。じゃあ確かめなきゃね。現実で。私が決めたんだから決定よ。」

 

そう言うと、マリアンヌはC.C.の手を取った。それを見たC.C.は、一つ息を吐くと、彼女に告げた。

 

「お前くらいだな。この私をいつもひっかき回そうとするのは。」

 

C.C.が言うと同時に、周囲が変化する。C.C.の精神世界から、現実世界へと戻ってきたのだ。それにより、彼女の腕を掴んでいるのはマリアンヌではなくアーニャになっている。

 

「ああ、感謝はしてるよ。私にギアスをくれたことに対しては。」

 

「契約不履行のくせに…」

 

C.C.のその言葉を、待ってましたとばかりに満面の笑みで受け止めるアーニャ。彼女はC.C.から手を離すと、真っ直ぐに彼女を見て伝えた。

 

「そう思うのなら一緒に行きましょう。」

 

そう言うと、アーニャは身体の向きを変え、モルドレッドへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、始めろ。」

 

シャルルの言葉に従い、嚮団員達がコンソールを操作する。すると、世界各地にある遺跡が起動し、神根島の遺跡と同調を始める。

 

「これで既存の神の世界は終わる…破壊と、創造。ラグナレクが始まる…」

 

シャルルの言葉が終わると同時に、指令室にいるナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーより通信が入った。

 

「陛下、東京租界のシュナイゼル殿下より通信が…」

 

「任せると言った筈。俗事など…」

 

「俗事…?」

 

シャルルの言葉に、モニカは目を見開いて驚く。しかしシャルルは、その通信をすぐに遮断してしまった。

 

「シュナイゼルめ、さては気付きおったか…だがもう遅い。戦争という名のゲームはおしまいよ。」

 

シャルルはそう呟くと、腰を上げた。自らが遺跡へ降下する為の小型機に乗り込む為だ。

 

「これで、ワシの悲願は…」

 

シャルルの後を数名の嚮団員が付き、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アヴァロン内にて、暇潰しの為にビリヤードをしているジノとセシル。そしてシュナイゼルに挨拶する為に訪れ、それに巻き込まれたオルドリン。ロイドは一人でダーツに興じていたのだが、彼らの元に東京租界でフレイヤの爆心地にいた筈のスザクが現れていた。

 

「ロイドさん。ランスロットはどうなっていますか?」

 

「どうって…コアルミナスがあの状態じゃ…」

 

「いえ、ランスロットアルビオンの方です。」

 

セシルが自身の構えるキューでボールを打ちながら答える。

 

「ロールアウト直前。」

 

「アルビオン…?」

 

「何だい?アルビオンって…」

 

疑問に思ったオルドリンとジノがスザクに尋ねるが、彼はそれを黙殺し、ロイドに視線を合わせ続けていた。

ロイドは、自身の投げた矢が的を大きく外れたことで失望の声を上げた。

 

「あぁ~……枢木スザク専用に開発したナイトメアなんだけど、今の君には渡したくないね。」

 

珍しく、ロイドが渋い表情で告げた。フレイヤを撃ったスザクを暗に批判してのものだが、スザクはそれを受けても顔色を変えることは無かった。

 

「これは命令です。ナイトオブセブンとしての…」

 

「…ますます嫌になったよ。」

 

肩を落とし、ダーツの的の方へ歩いてゆくロイド。それに変わって、セシルがスザクに近付いていた。

 

「スザク君、あなたはフレイヤを撃たない覚悟も必要だと言っていたわね。」

 

「セシルさん、兵器とはそもそも何でしょう?」

 

スザクの言葉に、セシルは呆れ返った。だが彼女は笑顔のまま、スザクに言葉を返す。

 

「枢木卿、子どもの議論をするつもり?」

 

「やめておけよスザク。らしくないだろ。」

 

止めに入ったのはジノだ。それに続いて、オルドリンも声を上げた。

 

「お久しぶりです、枢木卿。あなたは危うく味方の軍を…我々も巻き込まれる所だったんですよ!なのに…!アドニスさんはあなたの事を信頼していると言っていました!そんなあなたが…」

 

オルドリンの言葉の途中で、スザクが来たのとは反対側の入口からシュナイゼル達が現れた。

 

「あ、これは…」

 

シュナイゼルに向き直ったジノとオルドリンが姿勢を正そうとするも、シュナイゼルはそれを手で止めた。

 

「お久しぶりです~コーネリア皇女殿下。」

 

ロイドが挨拶するも、そのテンションの高さにコーネリアは少し引き気味だった。彼女は周囲を見渡すと、ある人物が見当たらないことに気付いた。

 

「ギルフォードはどうした?」

 

「コーネリア、実はギルフォード卿は、フレイヤ弾頭での攻撃の後、行方知れずに…」

 

答えたのはシュナイゼルだ。彼の言葉に、コーネリアは驚きを露にする。

 

「生死不明とは言え、功績は大きい。誇っていいよ。流石はコーネリアの騎士だ。」

 

「待ってください。フレイヤ弾頭を撃ったのは自分です。あれは、自分の功績です。ナイトオブワンになる為に必要な…」

 

異論を挟んだのはスザクだ。彼の言葉は、ギルフォードを無くしたコーネリアを気遣うシュナイゼルの言葉を、真っ向から否定していた。スザクはこれまで、決して人の心を無視できる人間では無かった。しかし今はそれどころか、他の誰かを気にかけるよりも自身の目的が最優先だと口にしていた。

 

「おいスザク!」

 

再びジノが止めに入るも、スザクはそれを無視してシュナイゼルに問いかけた。

 

「この処置は、ギルフォード卿の名誉を守る為ですか?」

 

「何を言っている?」

 

ギアスにより、彼がブリタニアを裏切ってゼロの配下となった事を知らないコーネリアは戸惑う。シュナイゼルも一つ息を吐くと、スザクを止める為の言葉を口にした。

 

「…よしたまえ、スザク君。」

 

「これまでの自分は甘かった。結果より手段と言いながら、自分が大事にしていたのは、理想や美学だったのではないかと…」

 

スザクはゆっくりと歩を進めると、シュナイゼルの前で立ち止まった。スザクの言葉を聞いたシュナイゼルは、異論を挟もうとする。

 

「しかし…」

 

「それとも、殿下がして頂けるのですか?自分を、ナイトオブワンに。」

 

スザクの言葉は、つまり今の皇帝からシュナイゼルが王位を簒奪しろ、ということだった。当然、皇帝シャルルの騎士であるジノは警戒を強め、スザクを睨み付けている。

 

「ナイトオブワンの任命は皇帝陛下にしかできないんだよ。つまり…」

 

ロイドが彼の言葉を不可能だと伝えようとした時、一瞬言葉を失っていたシュナイゼルが、ゆっくりと問いに対して答えを返した。

 

「…では、なるとしよう。」

 

「兄上!!」

 

コーネリアが詰め寄るも、シュナイゼルはそれを無視したままスザクに伝える。

 

「私が皇帝になるよ。それなら、問題はないだろう。」

 

「殿下、その発言は…」

 

これはクーデターだ。場合によってはシュナイゼルを捕らえる必要があると感じたジノは、シュナイゼルに向かって歩を進める。しかしシュナイゼルはそれに動じることなく、自身がその考えに至った理由を説明した。

 

「…俗事と、仰ったそうだよ。

陛下は黒の騎士団との、戦争の事を…コーネリアも知っているだろう?父上は危険な研究にのめり込み、度々玉座を離れた。そう、政治を、戦争をゲームとして扱ったんだよ。」

 

シュナイゼルは、視線をジノに移す。

 

「この世界に、今日という日に興味を失い、みんなが苦しんでいるのをただ眺めているだけの男に、王たる資格はない。」

 

シュナイゼルの言葉で、これは完全にクーデターとなった。その事実に驚愕する面々の中で、スザクだけが冷静に言葉を放った。

 

「ラウンズの自分なら、謁見が叶います。自分に、皇帝陛下暗殺をご命じ下さい。」

 

「スザク!」

 

「枢木卿!」

 

皇帝への忠誠を捨てるどころか、暗殺まで口にしたスザク。ジノとオルドリンは彼に厳しい目を向けるが、スザクは一歩も引こうとしない。

 

「人を殺めるということが自分の業ならば、ジノ、僕はこれを認めよう。必要なものは…結果だ!」

 

同じ頃、騎士団からはゼロの戦死が発表されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「エニアグラム卿、傷の具合は如何です?」

 

アヴァロンの医務室で治療を受けるノネットを訪ねたのはアドニスだ。表情はなんでもない風を装ってはいるが、内心かなり心配しているのは誰もが分かっていた。

 

「ノネットさんだ、アドニス。傷はナイトメアの損傷を考えれば大した事はない。すぐに戦線に復帰できるだろう。」

 

ベッドから立ち上がるノネット。それを見て安心したのか、アドニスは一つ息を吐いてから肩の力を抜いた。言い換えれば、それはノネットを前に完全に油断したのと同じであった。

彼女はいつかと同じように、アドニスの首に自身の腕を回して力を込める。

 

「ぬぉっ!?」

 

「それよりお前、機体を乗り換える時に私の事をノネット、と呼び捨てにしたらしいなぁ。んん?普段から心の中ではそうやって馬鹿にしているのか?」

 

空いている方の手をアドニスの頭にグリグリと押し付けるノネット。アドニスは痛みに抵抗しながら、言い訳を口にする。

 

「い、いや、そういう訳では…あの時は焦りすぎて、思わずそう言ってしまっただけで…」

 

その言葉を受けたノネットはフッと笑う。

 

「冗談だよ、アドニス。それとも、父の言っていた事を本気にしたか?」

 

婚期が迫る中、一向にそういった相手の影すら見えないノネットを心配した彼女の父が、ラウンズになったばかりの頃に一時的ではあるがエニアグラム領に住まわせて貰っていたアドニスに結婚の話を持ち出したことがあった。二人は冗談としてその言葉を流し、以降その話題を特に気にしてもいなかった。ノネットの父は半分以上本気だったのだが。

 

「エニアグラム卿、今は…」

 

「分かっているさ。そんな事を言う暇があるなら、さっさと怪我を治して有事に備えろと言うのだろう?全く、冗談の通じん奴め。」

 

そこで、医務室の扉が開く。入ってきたのはマリーベルであった。

 

「…エニアグラム卿、何をされているのですか?」

 

笑顔で問い掛けるマリーベル。しかしその裏には明らかな殺気が見てとれた。

 

「…これは皇女殿下。何、知らぬ仲でもなし、じゃれているだけですよ。」

 

「アドニスは迷惑そうですよ、エニアグラム卿。」

 

二人の間の空気が急速に冷たくなってゆく。こういった方面にはとんと疎いアドニスはその理由が理解できず、珍しく二人の間でオロオロと目線を動かし続けている。

 

「…まぁ、今はこんなことをしている場合ではありませんがね。」

 

ノネットは姿勢を正してからから告げると、ポケットから携帯電話を取り出して自身のナイトメア開発チームに連絡を入れた。

 

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