コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
「シュナイゼルの、差し金か。」
目の前で斬り倒される嚮団員。それを見ても、シャルルは眉一つ動かさなかった。
「自分の意思です。
陛下、自分をラウンズに取り立てて頂いたことには感謝しています。しかし、あなたには二つの罪がある。」
スザクは鋭い目付きで、皇帝を見詰めていた。彼の右手には剣が握られ、刃先からは血が滴っている。
「ほぉう…」
「一つは、王たる責務を放棄したこと!そしてもう一つは…ギアスに手を染めたこと…」
スザクが剣を構える。しかし既に不死であるシャルルは、それを見ても逃げようとすらしない。
「それが、罪だと?」
「ギアスは、人の悪なるものを引き出します。そう、全てを知るあなたなら、ユフィの事だって救えた筈…なのに見捨てた。
この剣に、ルルーシュとナナリーの絶望も込めさせて頂きます!覚悟!!」
剣を大上段に構え、全力で踏み込むスザク。常人程の身体能力しか持たないシャルルには反応できる速度では無かったが、それでもその一閃はいとも簡単に止められていた。
「…ヴァルトシュタイン卿、どうしてここに!?」
スザクとシャルルの間には、キュウシュウでロックに敗れた筈のビスマルクが立ち、彼の剣を自身の大剣で受け止めていた。左目は、再びピアス状の物で閉じられている。
「ギアスのことを知っているのは自分だけだと思っていたか?残念だったな。お前のような裏切り続けの男を、誰が信じるというのか。」
「ビスマルク、俗事は任せる。」
シャルルはそう命じると、神殿へと入っていった。慌てて後を追おうとするスザクを、ビスマルクが剣を振り切ることで弾き飛ばした。
(いけない…僕にかかっている生きろというギアスが、ここは逃げろと叫んでいる…それ程までに危険な相手か、ナイトオブワン!!)
数合剣を合わせただけで、ビスマルクの実力に愕然とするスザク。焦りを露にするスザクに対し、ビスマルクは悠然と彼に歩み寄った。
「…しかし!弱さは捨てた!!」
スザクが飛び上がり、頭上から剣を振り下ろす。しかしビスマルクは片手でそれを防ぐと、そのまま彼の身体ごと弾き飛ばして見せた。
「愚かな…お前の弱さこそが、優しさという強さの裏付けであったものを…そう、規範無き強さなどただの暴力。ならば…ここで死ぬが良い、枢木スザク。」
地に伏せるスザクに向け、剣を振り上げるビスマルク。しかし二人の耳に、突如として爆音が響いていた。
「我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。マリアンヌ后妃が長子にして、帝国により捨てられし皇子!」
それを見た護衛のナイトメア部隊が、彼を殺害する為に降下しようとした時、蒼い閃光が彼らを斬り裂いていた。
「何者だ!?現状を報告せよ!」
その状況を見て、慌ててモニカが部下に命令を下す。
「…トウキョウで見られた新型と思われます。報告にあった、第九世代相当の…」
それを聞いたモニカの表情は驚愕に染まる。そして、彼女は皇帝シャルルを守る為に決断を下した。
「私が出る!指揮権は、エルンスト卿に移譲します!」
彼女は大急ぎで格納庫へ走り、自身のナイトメアであるフローレンスに騎乗して出撃した。それに合わせて、多数のナイトメア部隊も出撃している。
「あの蒼いナイトメアを囲んで追い込め!正面は私が…」
そう命じようとしたモニカだが、フローレンスに向かって突撃してくる機体があった。
「お兄様の邪魔はさせないわ。」
ルーンの騎乗する、ヴィンセント・アソールトだ。MVSでの一撃を、同じくMVSで防ぐフローレンス。
その間に、蒼焔が次々とロイヤルガードと呼ばれる、金色のラインが入ったヴィンセント・ウォードを撃墜していった。
また、式根島からの援軍の一部も、モニカ率いるロイヤルガード隊に攻撃を開始した。
「反乱だと!?」
地上から皇帝シャルルの旗艦である、グレートブリタニアに連絡を入れたビスマルクも、モニカと同様に驚愕していた。トウキョウ疎開での決戦で、ナイトオブラウンズ専用機二機を、立て続けに破った機体が現れただけでなく、自軍内で同士討ちが発生していたからだ。
なお、スザクはそのスキに逃走している。
(ルルーシュ!それは僕の十字架だ!!)
しかし、スザクの目の前にミサイルが着弾し、彼は地面が崩れるのに巻き込まれて落下していった。
それを見届けたビスマルクは、スザクによる危機は去ったものと判断し、グレートブリタニアとの通信を続けた。
「グレートブリタニアで指揮を取っているのは?」
『現在は、ドロテア・エルンスト卿です!』
「よし、ドロテアにはそのまま部隊の指揮を続けるよう伝えろ!」
彼は、シャルルが降下する為に乗ってきた小型機に向かって走り出した。
「モルドレッドとは、まだ連絡が付かないの?」
カノンの問いに、部下は戸惑いながら答える。
「はい、目的地は神根島かと…」
その報告を聞いた時、シュナイゼルは、キュウシュウより騎士団に合流した神楽耶らとの会談中であった。
「とすると、先程の情報を受けて皇帝陛下の元に移動したのかな?」
先程の情報とは、反乱の事である。スザクによる暗殺を命じたのはシュナイゼル自身だが、彼はそれをおくびにも出さない。また、式根島からの援軍の一部が反乱行動に移っているのは、自身の言葉によるところではない。
(スザク君と供に…?いやこれは…)
モルドレッドの行動に何らかの確信を得たシュナイゼルは立ち上がりながら神楽耶に告げた。
「神楽耶様、申し訳ありません。これから、神根島に向かわなければなりませんので…」
その神楽耶は、シュナイゼルの言葉を受けたことで自身の考えに答えを得る為に、一つの決断を下した。
「では、私達も参ります。この状況下で、ブリタニア皇帝に刃を向ける人物に、私は一人しか心当たりがありません。」
「私も同じです。」
その言葉に、星刻も賛同を示す。彼らは、ディートハルトや扇から、公式発表以上の事を聞いておらず、それに疑問を
抱いていた。特に神楽耶はゼロを心底自分の夫となる男と信じていたこともあり、強がってはいるものの、彼の死を信じられないでいたのだ。
「とすると、確認すべき点がいくつかありそうです。会談の続きは、この件が済んでからと致しましょう。」
神楽耶の言葉に、扇らは反論が思い浮かばず、頷くしか無かった。
「黒の騎士団が仲間割れしたということ?なら、反乱した部隊は…」
ルーンと戦いつつも、状況を分析するモニカ。しかし突如として、彼女とフローレンスを多数の小型ミサイルが襲っていた。
咄嗟にブレイズルミナスで防いでそちらを見ると、一気にこちらへ突撃してくるモルドレッドの姿があった。
「アールストレイム卿!まさかあなたまで!?」
アソールトを部下に任せ、フローレンスの主武装である、狙撃用レールガン、ミストルテインを起動してモルドレッドに発射する。モルドレッドは避けきれず、フロートに損傷を負った。
「クーデターに与するとは!それでもナイトオブラウンズか!!」
アーニャが、モニカに返答する。それを聞いたモニカは、少なくとも彼女は敵ではないと安心していた。
「勘違いしないで!敵は式根島から来ているのよ!ヴァルトシュタイン卿、エルンスト卿も証言してくれるわ!」
「分かりました。申し訳ありません。」
モニカの言葉に、まるで最初からそうなることが分かっていたかのように、すぐ返事を返したアーニャ。モルドレッドはフロートを損傷したことで、フラフラと降下してゆく。
「いいわ、それより、陸上から敵機を迎えうって。」
「了解。」
そう答えて通信を切るアーニャ。彼女の座席の後ろから、C.C.が顔を出した。その手には、チーズ君のぬいぐるみが抱えられている。
「大した役者だな。」
「ビスマルク以外のラウンズに知られる訳にはいかないから。こちらから疑っちゃえば、向こうは疑わないでしょう。」
モルドレッドの着陸体勢を整えつつ、C.C.の言葉に答える。
「その閃き、衰えてはいないようだな。閃光のマリアンヌ。流石はルルーシュの母親だ。」
「どうしよう?助けるべきかな?彼を…」
母として、妻として、どちらを取るべきか悩むそぶりを見せるアーニャ=マリアンヌ。そのわざとらしい素振りに、C.C.は彼女に見えないようにため息をついた。