コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
ライは貴族の反乱の鎮圧を終え、帝都ペンドラゴンに戻っていた。皇宮敷地内にある皇帝直轄部隊用の格納庫に蒼焔を格納すると、部下に声をかける。
「リョウ、報告書を出した後は自由にしていいとユキヤ達に伝えておいてくれ。僕は皇帝陛下に口頭で報告してくるよ。」
「了解ィ。」
答えたのは、騎士団時代からの部下であるリョウだ。他の元特務隊の面々も神根島で騎士団を離脱し、ライに着いて来ている。彼らはライとの付き合いは短いが、それでも彼のゆく道を信じて騎士団と袂を分かつ決断を下したのだ。そんな彼らをルルーシュは厚遇し、騎士団時代と同様にライの直属部隊としている。また、彼らが騎乗するアレクサンダや牙鉄はロイドやタカムラの手が入った事で、これまで以上の戦闘力を得るに至っていた。
「即位早々、ルルーシュ皇帝は歴史に名を残した。ブリタニアの文化を破壊したんだから…」
ブリタニア皇宮内にある、エグゼリカ庭園で、ルルーシュとスザクは話し込んでいた。
「序の口だよ。これから俺は、多くの血を流す。虐殺皇女の名が霞み、人々の記憶から消え去る程に…」
「ルルーシュ、君は…」
それがユーフェミアの事を指しているという事に、スザクはすぐに気付いていた。
「ユフィだけじゃない。ナナリーも、俺達は失った…失いすぎた。それでも明日を迎える為には、まず世界征服から。
フッ…口にすると笑ってしまうな。」
二人の後方から、蹄の音が聞こえた。スザクとルルーシュは、同時にそちらへ振り返る。
「だが、やるつもりなのだろう?お前達は…」
そこには、馬に跨がったC.C.がいた。彼女の問いに、ルルーシュは笑みを湛えながら答える。
「ああ、ゼロレクイエムの為に…」
そう言うと、ルルーシュはスザクの方に目を映す。彼はその視線を受けると、左手を自身の胸元へ持ち上げた。
「イエス・ユアマジェスティ。」
その直後、スザクの目にははもう一人、馬に乗ってこちらへ向かってくる人物が見えていた。
「戻ったよ。ルルーシュ、スザク、C.C.。」
現れたのはライだ。彼は皇宮内にルルーシュの姿が見えなかった為、わざわざこちらへ出向いたのだろう。
「手間をかけたな、ライ。だがこれで、貴族達の反乱鎮圧もほぼ完了した…後は…」
「ああ、カンボジアだな。」
ライの言葉に、ルルーシュは頷く。
「シュナイゼルが行動を起こす前に計画を次の段階へ…」
ルルーシュが言い切る前に、彼の懐から携帯電話の呼出音が鳴った。
『陛下、エニアグラム殿がお見えです。ウォーカー中将に会わせろと…』
警備兵からの連絡に、皇宮内に案内するよう返して電話を切る。ちなみに、ウォーカーとはライのことだ。
しかしその直後、もう一度彼の携帯電話から呼出音が鳴り響いた。
「…どうした?」
『陛下!ナイトオブラウンズが…!!』
部下からの連絡によると、ジノ・ヴァインベルグを筆頭としたラウンズ達とその直属部隊が、各々の専用機でこちらへ向かっているという。
ルルーシュはスザクに目線を移すと、彼は無言で頷き、馬の背に飛び乗った。
「我々はシャルル皇帝陛下に忠誠を誓っている。王位の簒奪など認められない!」
ジノがオープンチャンネルで告げながら、帝都ペンドラゴンへ近付く。その彼らの視線の先に、こちらへ向かって飛来するナイトメアの姿が映った。
「迎撃部隊…?しかしたった一機で…」
ナイトオブフォー専用機、パロミデスに騎乗するドロテアが呟く。そこに現れたのは、ナイトオブゼロ、枢木スザク専用機であるランスロット・アルビオンであった。アルビオンはエナジーウイングを展開すると、空高く舞い上がる。
「お、追いかけ切れない!」
パロミデスの主武装、グレイプニールと名付けられたメーザーバイブレーションウィップを起動して攻撃を放つドロテア。しかしアルビオンは余裕をもって躱し、パロミデスに一閃を浴びせてパイロットごと撃墜した。
次の瞬間には部隊の遥か上空に飛び上がり、翼から多数のブレイズルミナスを放つ。ラウンズ配下の部隊員達は、それに反応することすら出来ず、一瞬で全滅させられた。
「これが、第九世代ナイトメアフレームの力だというのか…」
ナイトオブファイブ、ダスティン・スウェンドンが自身の専用機であるユーウェインの主武装、ブレイズルミナスを纏った八つのチャクラムを放つも、アルビオンはそれらをすべて避け、ユーウェインの懐に潜り込んでスーパーヴァリスを放った。その一撃で、ユーウェインは爆散する。
「枢木スザク!!」
叫んだのは、ナイトオブエイト、ビルグラム・ゴールドバーグだ。専用機であるアグラヴェインの主武装、両腕に装備されたハドロンガトリング砲を撃ち続けるが、その弾丸は掠りすらしない。そして、気付いた時にはコックピットごと両断されていた。
「まだだ、我らは最後の時まで…!」
ナイトオブツー、パッカード・ブロックラップが、アルビオンの斬撃を自身の専用機であるベディヴィアの主武装、斧状のMVSでなんとか受け止めていた。そして、動きを止めるその一瞬を狙っている者がいた。
「ブロックラップ卿、流石です。」
ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーが1キロメートル先から狙撃用レールガンでランスロット・アルビオンを狙っていた。しかしモニカの視線の先で、ベディヴィアはスーパーヴァリスの一撃を受けて爆散。その直後には、フローレンスの目の前に迫っていた。
「まさか…!」
MVSでの斬撃を防ぐことが出来ず、爆散するフローレンス。しかしアルビオンは、一瞬でその場を離れてトリスタンの前に戻っていた。
「目を覚ませ!スザク!」
トリスタンから撃ち込まれた大型スラッシュハーケンを受け止め、簡単に破壊する。その姿を見ても、ジノはトリスタンを前進させた。
「今ならまだ戻れるぞ!」
「…戻る?逆だよジノ。君がブリタニアに忠誠を誓うのなら、僕の仲間になるべきだ!それとも、ブリタニアに反旗を翻すつもりか!?」
スザクの言葉に動揺するジノ。それによって一瞬出来たスキを、スザクは見逃さなかった。
ジノが気付いた時には、四本のスラッシュハーケンがトリスタンに突き刺さっていた。そして、トリスタンが後方へ押しやられるより速く接近したアルビオンが、トリスタンの頭部へ蹴りを放つ。その一連の攻撃でトリスタンは戦闘力を喪失し、地上へ向けて落下していった。
「私は…ブリタニア人なのか…?それとも……何の為に闘えばいいんだ!!」
かろうじて着陸に成功したトリスタンのコックピットで、ジノは叫びながら壁面を殴り付けた。
『全世界に告げる!今の映像で私が名実共に、ブリタニアの支配者とお分かり頂けた事と思う。』
スザクとラウンズの闘いを中継していたカメラの映像が、ルルーシュへと切り替わった。
『その上で、我が神聖ブリタニア帝国は、超合衆国への参加を表明する。交渉には、枢木スザクを始めとする武官は立ち会わせない。全て超合衆国のルールに従おう。但し、交渉の舞台は、現在ブリタニアと超合衆国の中立地帯となっている日本、アッシュフォード学園を指定させて頂こう。』
放送を終えたルルーシュは、目の前に立つライとノネットに目を向ける。この闘いと放送が終わるまで、ノネットを待たせていたのだ。
「待たせたな、ノネット・エニアグラム。要件を聞こう。」
「…大した用ではないんですがね。こちらの御仁と、一戦交えさせて頂きたい。」
ノネットが言葉を告げると、彼女に連れられていた兵士が二本の剣を持って近付いてきた。
「…僕は構わないが、ルルーシュ。」
ライの言葉を受け、ルルーシュは頷いた。
「闘いたい理由は分からんが、まぁいいだろう。合図は必要かな?」
両者が剣を受け取ったのを確認し、ルルーシュが問い掛けた。
「いえ、こちらから仕掛けさせて頂きます!」
ノネットが振り下ろした一閃を、ライは最小限の動きで躱す。続く突きでの連撃を全て弾くと、懐に潜り込もうとした彼女を膝蹴りで制した。それを柄頭で受けたノネットは、下がりながらも横に回転して鋭い斬撃を放つ。しかしライは、それをギリギリの所まで引き付けてから避けてみせた。すぐに体勢を立て直したノネットが上段からの突きを放つも、彼の髪を掠めただけで終わる。そしてその時には、ライは突きを放つ為に大きく右手を引いていた。
(やはりそうだ…体に隠れて剣が見えない。くらうまでその技が何かすら分からないこの一閃は…!)
ノネットは覚悟を決める。くらってしまえば死は免れないだろう。しかしライの突きは、彼女の目の前数センチで止まっていた。
「……やはり、あなたはライディース・リオ・ブリタニア様なのですね。」
剣先を見つめながら言葉を紡ぐノネット。その言葉に小さく頷いたライを見て、ノネットは彼の前に膝を着いた。
「参りました。王よ、もし宜しければこのノネット・エニアグラムを、あなたの配下に加えて頂きたい。」
予想外の言葉に、ライは動揺する。しかし彼女の真剣な目を見て、彼はそれを了承した。
「…お前は、俺と違って随分と人望があるじゃないか。ライ。」
ルルーシュの軽口に、ライは苦笑いを浮かべる。
「茶化すなよ、ルルーシュ。…ノネットさん、僕はこれまで失敗ばかりしてきました。そんな僕の下でも良ければ、こちらこそ是非お願いします。」
ライの差し出した手を、ノネットは両手で握った。
「やはりこうなったか。エニアグラムの血は争えんな。」
声がした方に目を向けると、いつの間にか反乱を起こした貴族の討伐から戻ったロックが立っていた。
「あの時お前が言っていた言葉の意味がようやく分かったよ。ロック・グルーバー…いや、ロック・エニアグラム。」
ノネットの言葉に、ロックが少し目を見開く。ライの事はともかく、自分の事までバレているとは思っていなかったからだ。
「気付いていたのか?」
「何、簡単な話だ。狂王に付き従う男の名前がロックとくれば、伝承に残っている騎士、ロック・エニアグラムしかあるまいと思っただけさ。自分の祖先と顔を合わせるのは、変な気分だけどね…」
そう言うとノネットはロックに歩み寄り、彼の前に右手を差し出した。
「まぁ何だ、同じ血族としてこれからよろしく頼むよ。」
ロックも片側の頬を上げて笑うと、彼女の手を強く握り返した。
「ああ、ついでにその不細工な突きを直してやる。後で訓練場に来い。」
「嫌な言い方をするなぁ…」
二人の様子を、ライは微笑みを浮かべながら眺めていた。
今日はこれで最後です。お付き合い頂きありがとうございました。