コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode43 last resort

「あれは、アッシュズ・アトリビュート…」

 

指令室で戦況を見守っていたタカムラが呟く。彼の目に映る機体は、間違いなく自身が手掛けた機体であった。

 

「知っているのか?」

 

ルルーシュの問いに、タカムラは頷く。

 

「ワシが造った機体やでの。ロックに渡すつもりやったんやけど…ブリタニア軍に襲われてもうてエリア11から持ち出せんかったんや。その時はまだ完成してなかったんやけが…それに、あれを操縦できるパイロットは…」

 

しかし彼らの前でアッシュズ・アトリビュートは動き、灰塵壱式と闘っていた。その背中には、三対のフロートが見える。

 

「ロック!先日の借りは返すぞ!」

 

「ビスマルクか!やれるものなら、やってみるがいい!」

 

ロックもリミットを解除し、速度が上がる。互いのプライドをかけた闘いが、ここでも始まっていた。

 

 

 

「今かな…両翼を砕こう!」

 

シュナイゼルの命令により、斑鳩からハドロン砲が放たれる。アヴァロンのモニターでは、味方の識別信号がLOSTの文字で埋め尽くされていた。

 

「流石だな…この策を使わせるとは!」

 

味方の苦境を見たルルーシュが手に持ったスイッチを押す。すると、騎士団側のナイトメアや、斑鳩内に警戒アラートが鳴り響く。

 

「エネルギー反応…?下からです!」

 

「何っ!!まさか、このタイミングで…」

 

何が起こったのかを扇が悟った直後、斑鳩の直下に位置する富士山が火を吹いた。

 

「全軍、輻射障壁を展開せよ!」

 

そう命じる藤堂の斬月に、火山弾が直撃する。斑鳩や暁隊も、その噴火に巻き込まれていた。

 

「扇さん!応答して下さい!南さん!ラクシャータさん!」

 

墜落してゆく斑鳩に向かって、カレンが必死に声をかける。しかし、斑鳩は応答がないまま、地上へ向けて降下していった。

 

「まさか、地下資源のサクラダイトを…」

 

「これでは、ルルーシュの地上部隊も全滅だねぇ。」

 

冷静に状況を判断するカノンとシュナイゼル。彼らの前のモニターには、大多数の味方機が撃墜された事が表示されていた。戦力は完全に逆転している。

 

「迂闊…ルルーシュの基本戦術ではあったが、味方を犠牲にすることが前提とは…」

 

回転させたハーケンで身を守り、その場を切り抜けた神虎の中で星刻が呟く。彼の周囲でも、生き残った部隊は極少数であった。

 

アヴァロンでは、C.C.が格納庫に向かい、自身の為に用意されたランスロット・フロンティアの前に立っていた。

 

「これで敵の戦力は絞られた。後は…」

 

「ダモクレスを、叩くだけ!」

 

スザクがランスロット・アルビオンを突撃させる。それに蒼焔も続こうとしたが、その勢いを殺すように横から突っ込んでくる機体があった。

 

「やはり貴様とは、闘う運命にあるようだな!ライディース・リオ・ブリタニア!!」

 

アドニスは叫ぶと、ランスロット・クラブ・バーディクトを駆けさせる。MVSでの一撃は避けられたが、返しの斬撃もバーディクトには届かなかった。

 

「くっ…こんな時に!!」

 

一年以上前から続く因縁が、この戦場でまた再燃していた。

 

 

 

 

「残念だが、チェックをかけられたのは君達の方だよ。」

 

シュナイゼルはこちらに向かってくるアルビオンの姿を見ながら呟いた。

 

「ナナリー、照準は合わせてある。黒の騎士団が潰えた今、フレイヤという力で…」

 

「……はい。お兄様の罪は、私が撃ちます!」

 

シュナイゼルの言葉に従い、ナナリーはフレイヤの発射スイッチを押した。

それに従い、ダモクレスからフレイヤが発射される。

 

「来ました、フレイヤです!!」

 

セシルの叫びにも、ルルーシュは表情を崩さない。

 

「ここで撃ってきたか。第三特捜師団!」

 

ルルーシュの命を受けた部隊が、フレイヤを破壊すべくMVSで四方から弾頭を貫く。

 

「無駄だよ。このフレイヤはダモクレスから射出された時には、臨界状態にある。」

 

シュナイゼルの言葉通り、フレイヤは攻撃を受けても巨大な爆発を起こした。ルルーシュはそれを見て新たな指示を出しつつ、思考を巡らせる。

 

「アヴァロンはこのまま後退。各部隊はダモクレスに突撃し、フレイヤを撃たせ続けろ。弾切れに追い込むんだ!」

 

(チィッ…富士の作戦を使ってしまった以上、フレイヤの残弾から計算すると、こちらが一手不利になる。とすると、ニーナを頼りにするしかないが、当てに出来るか…?俺を憎んでいる筈だ。ユフィの敵…ゼロであった俺を…)

 

ルルーシュが思考する間にも、ダモクレスからはフレイヤが撃ち込まれていた。

 

「トワミー艦隊、消滅しました!作戦は…!?」

 

「作戦は継続する!このアヴァロンはこのまま後退、ダモクレスとの距離を取れ!各部隊は波状攻撃をもって、フレイヤを撃たせ続けよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、フレイヤを…!」

 

ランスロット・グレイルの強化機体である、ランスロット・ハイグレイルのコックピットの中でオルドリンが呟く。ルルーシュ皇帝を倒すという目的だけを考えれば、既にほとんどの機体がこの場にいる意味を無くしていた。

 

「それでも、それでも闘うというの!?」

 

彼女が乗るハイグレイルに、アレクサンダ・リベルテ正面からが突撃をかける。シュロッター鋼ソードをぶつけ合い、リベルテはすぐハイグレイルから距離を取ってヴァリスを構えた。

 

「俺達は、隊長の行く道を信じるだけだ。あの人は俺達を見捨てない。だから、俺達もあの人を見捨てない!」

 

「このっ…!」

 

空中でも高い機動力を発揮し、ハイグレイルを翻弄するリベルテ。ブラッドフォードの強化機であるブラッドフォード・ブレイブも救援に入ろうとはするものの、リョウやアシュレイによってそれも阻まれる。

アレクサンダに搭載されたブレインレイドシステムにより、アレクサンダ隊はまさに一つの群れとしてグリンダ騎士団を追い詰めようとしていた。

それを阻止せんと、オルフェウスが騎乗する業火白炎がアレクサンダ隊に向けてゲフィオンブラスターを放つ。それを見たアレクサンダ隊は散会して避けたものの、その隙にハイグレイルはゼットランドと合体してハイグレイル・チャリオットとなり、ギガハイドロランチャー・フルブラストをリベルテに向けて放つ。しかしそれを、黒いアレクサンダが両肩からハドロン砲を放って逸らす事に成功し、アキトは安堵の息を溢した。

 

「すまない、レイラ。だが、あまり前線に出過ぎるなよ。」

 

「あなた達だけを、闘わせるつもりはありません。」

 

アレクサンダ隊に加わるレイラ。その周囲を囲むように、アシュラ隊もグリンダ騎士団に剣を向ける。

 

「さぁ、気張っていくぜ!アシュラ隊!」

 

「おぉっ!!」

 

先頭に立ったアレクサンダ・レッドオーガがハイグレイル・チャリオットとブラッドフォードに攻撃を仕掛ける。救援に来たシェフィールド率いるヴィンセント・グリンダの部隊も、アシュラ隊の勢いを止めるまでには至らなかった。

それでも、ハイグレイルを先頭にしたグリンダ騎士団は何とか押し返そうと奮戦する。

 

「あなた達は、一体何を求めて闘っているの!?人を、世界を…!こんなにも犠牲にして…!」

 

「大層なお題目を抱えてりゃそれが許されるってか!?それこそ人を馬鹿にしてんだろうがよ!俺らは、あの人の後を着いていく!闘う理由なんざ、それだけで十分なんだよ!」

 

レッドオーガのヒートサーベルがハイグレイルを襲う。なんとか距離を取ってギガハイドロランチャーを放つタイミングを探すオルドリン。しかし、さらにそこへアヤノが騎乗するアレクサンダが突撃をかけてきた。

 

「これでっ!」

 

オーガズ・ロングレイでの一撃を、ハイグレイルの前に出たブラッドフォードがデュアルアームズで弾き返す。さらにその後ろから、ヴァルキリエ隊仕様のヴィンセントが進み出た。

 

「やらせないっ!」

 

ヴィンセントに騎乗するマリーカの猛攻に、アレクサンダは思わず後退する。それを見たオルドリンは好機と見て、部隊に反撃の指示を下した。

 

「今よ!進め!」

 

しかしそのハイグレイルを、遥か先から照準に捉えている者があった。小型浮遊艦に控えているユキヤのアレクサンダであった。

 

「さすがにこの距離なら、気付かれないよね…」

 

超長距離狙撃用レールガンの引き金に指を掛ける。だが一瞬だけ、火山灰の間から射した日の光が砲身に反射した。

 

「オルドリン!」

 

その光の反射に気付いたオルフェウスが咄嗟に動き、ハイグレイルを庇って業火白炎を前面に立てる。その直後、業火白炎を弾丸が貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに、あっさりと…私が…」

 

フレイヤの発射スイッチを握りしめるナナリーは、その場で涙を流す。その彼女に、シュナイゼルが感情の籠っていない声で指示を出す。

 

「ナナリー、次の次の発射準備が出来たよ。」

 

「は、はい…」

 

ナナリーは、自身に迷う事を許さず、発射スイッチを押した。

 

 

 

 

 

「ライ様、一旦下がって下さい!ここは私が引き受けます!」

 

蒼焔とバーディクトの間に割り込んだラモラック・カスタム。ノネットはフレイヤからライを遠ざける為、アドニスの相手を買って出ていた。

 

「やはりそちらについていたか…ノネットさん、出来ればあなたとは、闘いたくなかったのだが…」

 

「フン…ようやくその名で呼んだじゃないか、アドニス。」

 

ノネットは強化されたラモラックを真っ直ぐバーディクトに突撃させる。バイデントでの一撃を、アドニスは受け流して反撃した。

 

「行かせないよ!」

 

蒼焔に向かって飛来したのは、斑鳩に置いたままになっていた蒼月を改造したと思われる機体だ。ライは知らないが、名を奏月という。現在は朝比奈の専用機だ。

 

「お兄様の事は放っておいてと言った筈だけれど?」

 

奏月の一撃を、ヴィンセント・アソールトが受け止める。返しの一撃を放つが、ルーンの予測とは違い、奏月はそれを避けて見せた。

 

「君に鍛えられたんだ!君の太刀筋は分かっている!」

 

朝比奈が体勢を整え、アソールトに向かう。奏月から繰り出される連撃を、何とか捌いてゆくアソールト。状況を打開すべく大きくMVSを振り上げ、全力で叩き落とした斬撃を、ルーンはあえて受け止めて鍔迫り合いに持ち込む。そして至近距離から、両肩のハドロン砲を発射した。

 

「そう来ると思っていたよ!」

 

朝比奈はその瞬間、あえてフロートをオフにすることで降下し、ハドロン砲を避けた。そしてすぐにフロートを戻すと、下からの斬り上げを放つ。しかしそれを、横から蒼焔が斬って落とした。

 

「一対一だと、言った覚えはないわよ。まだまだね、朝比奈さん。」

 

ルーンの言葉に、朝比奈は悔しがりながらも脱出レバーを引くしか無かった。

ライは奏月を撃墜した為に再びバーディクトに目を移すが、その先からは紅蓮がこちらへ突撃してきていた。

 

 

 

「ノネットさん!あなたは、あいつらのやろうとしている事に賛同しているのか!?」

 

バーディクトからの斬撃を、辛くも受け止めたラモラック・カスタム。だがいくら強化されているとは言え、機体性能の差は歴然だった。

 

「私が今忠誠を誓っているのは、ルルーシュ皇帝ではなくライディース・リオ・ブリタニア様だ!」

 

「同じ事だ!それが、どういう結果を生み出すのか分かっているのか!?」

 

「だからダモクレスによる支配を認めろと言うのか!?お前は…」

 

ノネットの言葉の途中で、バイデントを形成するブレイズルミナスが崩壊する。咄嗟にスラッシュハーケンを放つが、バーディクトには掠りもしない。

 

「俺は、ダモクレスも認めない!だからこそ、戦場に戻ってきた!」

 

ラモラックの四肢を斬り落とすアドニス。とどめとばかりに繰り出した斬撃を、蒼焔が受け止めた。

 

「ノネットさん、もう大丈夫です。一度撤退して下さい。」

 

戦闘によって、ダモクレスからはかなりの距離が出来ていた。それを確認したライは、ノネットを下がらせ、再び自分がアドニスを相手取る事を選んだのだ。

 

「決着を付けよう、アドニス。」

 

「ああ、貴様の敗北という形でな!」

 

両者は一度距離を取ると、超高速での戦闘に移行した。

 


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