コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode48 Misery

「くっ…これで輻射波動も弾切れ…」

 

「シールドエナジーも尽きたか…」

 

「それでも!!」

 

紅蓮とアルビオンは同時に駆け出す。ハーケンを放ち、アルビオンを絡めとって接近する紅蓮。アルビオンはあえてそれに逆らわず、右の拳を叩き込んだ。しかしそれを左腕で防いだ紅蓮は、右腕を手刀としてアルビオンに突き込んだ。

スザクはそれを防いだものの、未だに決定打を打てていない事に驚愕していた。

 

「決めきれない!?ギアスの呪いを使っているのに…カレン、なんて強さだ!!」

 

スザクは現在、ルルーシュから受けた生きろというギアスを制圧し、自身の潜在能力を引き出す為に使用している。しかしそれでも、紅蓮を相手に互角以上の闘いができていない。

 

「スペックはこっちが上の筈なのに…スザク、これだけの力があって、なんで!?」

 

ランドスピナーを駆動させ、狭い壁を登る紅蓮とアルビオン。着地した紅蓮の上を、アルビオンが飛び越え、着地しながら攻撃を加える。しかし紅蓮もそれを捌きつつ、反撃を繰り出していた。

 

「終わりにしよう、カレン!!」

 

紅蓮のハーケンを、自身のハーケンを壁に刺すことで避け、かつランスロットが突進できる体勢を作っていたスザク。勢いよく壁を蹴ると、一直線に紅蓮へと向かった。

 

「あなたに、正義さえあれば!!」

 

紅蓮も右手を構える。紅蓮が突き込んだ右手と、アルビオンの右脚が激突した。紅蓮の突きに耐えきれず、アルビオンの右脚が破壊される。さらに紅蓮は右手をもう一度振り上げ、アルビオンの左腕を破壊した。

 

「くっ…!!」

 

スザクは咄嗟の判断で、スラッシュハーケンを二本同時に放つ。一本は紅蓮の右肩を、もう一本は紅蓮の頭部を貫いた。

それを受け、紅蓮は動作を停止した。

 

「そんな…届かなかったの?」

 

「いや、届いているよ…カレン。」

 

同時に、アルビオンも動作を停止する。アルビオンの胸部には、紅蓮の左腕が突き刺さっていた。

 

それを確認したカレンは、安心したような表情を浮かべ、気を失った。ダモクレスから落下する紅蓮を、下半身を失ったトリスタンが抱き止めた。

そのジノの視線の先で、アルビオンが爆散した。アルビオンの脱出機構は作動せず、パイロットごと爆発したようであった。

 

「そうか、勝ったのか…カレン。」

 

トリスタンはゆっくりと下降し、アーニャがいる空母へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「チィッ…本当に厄介だな!」

 

左脚を失い、MVSも一本を破壊されたランスロット・クラブ・バーディクト。その横には、左腕を失い、メーサーキャノンのエナジーも尽きた蒼焔が浮遊していた。

 

「だが、最後まで諦める訳には!!」

 

胸部からハーケンを放ち、同時に距離を詰める蒼焔。その先に佇むほぼ無傷のアッシュズ・アトリビュートに向けて、右腕を振り下ろす。それを止められた直後には、一回転しての蹴りに続けて再度右腕のMVSを突き込んだ。

それに続いて、バーディクトも上からMVSを振り下ろす。しかしアッシュズはどちらも防ぐと、剣と拳をほぼ同時に繰り出した。

 

「もう諦めたらどうだ?騎士として、最後は潔く死ぬがよい。」

 

ビスマルクの言葉が響き渡る。今の攻撃で蒼焔は右脚を、バーディクトは右腕を失っていた。

 

「まだ負けた訳ではないさ!ビスマルク・ヴァルトシュタイン!」

 

ライはそう返すと、蒼焔の右腕をアッシュズに向ける。だがビスマルクは、それを見ても自身の剣を構えようとすらしない。

 

「ここから、どうやって逆転できるというのだ?抗う分だけ、苦しむ時間が増えるだけではないか。」

 

「そうだ。僕達は抗ってきたんだ。状況や環境、そして世界に!自分に!!ここまで来て、それを止める訳にはいかないんだよ!!」

 

蒼焔を突撃させるライ。しかし、ダメージによってそのスピードは落ちてしまっている。ため息をついたビスマルクは、この一合で確実に仕留めるべく、剣を構えた。

だがその直後、アッシュズのコックピットにアラート音が鳴り響く。

 

「なんだ!?」

 

彼が状態を確認すると、多数のナイトメアがアッシュズに向かって飛来してきているのが映っていた。先頭に立つハイグレイル・チャリオットがアッシュズに向けてメガハイドロランチャー・フルブラストを放つ。蒼焔の一撃を弾いてからその砲撃を避けた所で、周囲を囲むように展開したアレクサンダ隊がジャッジメントやヴァリスをアッシュズに向けて掃射し、同様にブラッドフォードもハドロンスピアーを放っていた。

 

「フッ…雑兵が増えた所で!」

 

攻撃を避けながら一機ずつ破壊しようとハイグレイルに近付くアッシュズ。しかし、バーディクトがハイグレイルの前に割り込む事でそれを阻止した。

 

「距離を取って撃ち続けろ!絶対に近付くなよ!」

 

「特務隊!常に動き続けて的を絞らせるな!」

 

アドニスとライから命令が飛ぶ。その姿を見ても、ビスマルクは余裕の表情を崩さなかった。

 

「良いぞ。希望が多ければ多いほど、絶望は深くなる。貴様ら全員を、私一人で叩き潰してやろう!」

 

再び蒼焔とバーディクトに狙いを定めて突撃をかけるアッシュズ。周囲からの攻撃などまるでないかのようにバーディクトに接近し、斬撃を放った。

 

「ぐぅっ…!」

 

なんとか受け止めるも、その勢いによって弾き飛ばされるバーディクト。追撃をかけようとしたアッシュズに向けて、ライが蒼焔を急接近させる。それに対して大上段に剣を構えて迎え撃とうとしたその時、アッシュズのコックピットに再びアラート音が鳴り響いた。ビスマルクがモニターを確認すると、そこには何故かエナジーウイングの一つが破損したと表示されている。彼が振り返ると、アッシュズからかなり離れた場所にフローレンスのミストルテインを構えた、ヴィンセント・ウォードが浮遊していた。

 

「これで、一瞬でも隙を作れたかな…?」

 

ウォードのコックピットでノネットが呟く。それと同時に、蒼焔の機体速度が急激に上昇した。

 

「まさか、ダメージで機動力が落ちていると装って…!」

 

防御が遅れ、剣を砕かれる。咄嗟にフレイヤが装填されたライフルを構えたが、下から突撃して斬り上げたバーディクトのMVSによって、中心部から両断されてしまう。

 

「馬鹿な…」

 

ビスマルクの未来視のギアスは、あくまで見える範囲で発動している。視界の外からの狙撃に一瞬気を取られた事で、見えていても反応しきれない状況を自らが作り出してしまっていた。

 

「終わりだ!!」

 

蒼焔が突き込んだMVSが、アッシュズを貫く。コックピットまで達した事を確認したライは、エナジーウイングを広げてアッシュズから離れた。

 

「陛下…私は…」

 

ビスマルクの言葉を待たず、アッシュズ・アトリビュートは爆散した。

 

「ビスマルク…Cの世界であの二人に会えるよう、祈っているよ。」

 

ライが言うと、蒼焔とバーディクトは再び向き合った。彼らの後ろにはそれぞれ特務隊とグリンダ騎士団が整列している。

 

「……さて、残すは貴様との決着だな。ここまでは協力したが、貴様らの造る世界も俺は認める気はないぞ!」

 

バーディクトが蒼焔に向けてMVSを構える。しかし蒼焔は構えをとらず、MVSをダモクレスの方へ向けた。それと同時に、ダモクレスからはフレイヤが発射されていた。

 

 

 

 

 

「ナナリー、お前はもう立派に自分の考えで生きている。だからこそ俺は、俺の道を進むことができる。」

 

ナナリーの前に膝を着いたルルーシュは、彼女の手から丁寧に鍵を受けとると、一瞬だけ目を瞑って頭を下げた。そしてギアスが解ける前に、彼女に自身の本心を伝える。

 

「…ありがとう。愛している、ナナリー。」

 

その直後にナナリーにかかっていたギアスが解けた。彼女の前には、見下すような笑みを浮かべたルルーシュが、右手に鍵を持った状態で立っていた。

 

「…使ったのですね!ギアスを!」

 

彼女の言葉に、ルルーシュは無言のまま踵を返す。ナナリーは咄嗟に電動車椅子を動かし、彼の後を追った。

 

「待ちなさい!待って…あぁっ!!」

 

しかし、その先は階段だ。彼女はルルーシュに向かって手を伸ばすも、車椅子は段差に躓き、その衝撃で彼女は階段に投げ出される。

足を止め、冷たい目を彼女に向けるルルーシュに、ナナリーは怨嗟の声を上げた。

 

「お兄様は悪魔です!…卑劣で!卑怯で!なんて…なんてひどい…」

 

階段に投げ出され、その場で涙を流すナナリーを置いて、ルルーシュはその場を去っていった。

 

「ロロ、フレイヤの照準を合わせろ。こちら側も黒の騎士団も巻き込まないようにな。」

 

『分かったよ、兄さん。』

 

ロロに指示を出しながら、指令室へ向かうルルーシュ。照準を合わせ終わったと彼から連絡が入るのとほぼ同時に、ルルーシュは指令室に辿り着いた。

発射されたフレイヤは、神楽耶や騎士団員達の見る前で、巨大な爆発を起こす。

 

「全世界に告げる!私は、神聖ブリタニア帝国皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアである!シュナイゼルは我が軍門に下った。これによりダモクレスもフレイヤも、全て私のものとなった。黒の騎士団も、私に抵抗する力は残っていない…それでも抗うというのなら、フレイヤの力を知ることになるだけだ。」

 

神楽耶や星刻、千葉らは信じられない気持ちでその声を聞いていた。

 

「我が覇道を阻む者はもはや存在しない。そう、今日この日、この瞬間をもって、世界は我が手に堕ちた!

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる…世界よ!我に従え!!」

 

戦場には、オールハイル・ルルーシュの声が響き渡る。その状況を理解したアドニスは、コックピットの壁面を強く殴った。

 

「馬鹿な…ジノと紅月でも止められなかったというのか…!」

 

「アドニス…あの時とは逆になったな。降参するなら、今だよ。」

 

余りの衝撃に蒼焔に向けていたMVSを下げたバーディクト。反対に蒼焔は、バーディクトにMVSを構えていた。

 

「……俺達の敗けだ。」

 

現実を受け入れたアドニスは、投降の為に機体を降下させる。それを確認したライもほぼ同時に降下し、ロックがいる筈の空母へとアドニスを誘導した。その姿を見て、グリンダ騎士団の面々も降下を開始している。

そしてバーディクトが着艦したのを確認すると、ライは彼に通信を繋ぐ。

 

「アドニス、君とは敵として何度も闘ってきたけど、だからこそ敵として君の事を信頼している。僕の話を聞いてくれ。」

 

「…フン、敗れたこちらに選択肢があるのか?。まぁいい、聞くだけ聞いてやろう。」

 

アドニスの言葉を聞き、ライは蒼焔を空母の前に留めたまま自身の考えを口にした。

 

「…このまま、騎士団に残って欲しい。」

 

「……どういう意味だ?今の貴様らにとって既に騎士団は取り込む必要のない戦力だろう?」

 

「……」

 

その問いに、ライは答える事無く無言を貫く。

 

「…答える気は無しか。まぁ、どちらにしろ処刑されるのであれば、否も応もあるまい。」

 

アドニスの答えを聞き、ライは満足したかのように通信を切り、蒼焔のコックピット内で誰ともなく呟いた。

 

「これで、ようやく僕らの闘いも終わりか…」

 




この作品においての設定上の身体能力の高さ順は

ロック=マリアンヌ
ライ=アドニス=ギアス状態スザク
ビスマルク

通常時スザク=カレン
ジノ=星刻
ノネット=シン=機械化ジェレミア
ルーン=マリーベル
ルキアーノ=アキト
アーニャ、その他ラウンズ
藤堂=オルドリン=オルフェウス
サーシャ=アシュレイ

くらいに考えています。ただ、突撃専門のロックに比べ、先読みや経験、瞬時の状況判断で闘うライやアドニスは、ロック側から見れば相性は良くないので総合的には同等くらいかなと…

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