コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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Extra episode2 Conditions

「カミラ、ずっと来れなくてすまない。だがようやく、こうしてお前の墓へ来ることが出来る状況になった。謝ってばかりになるが、あの時守ってやれなくて、救ってやれなくて本当にすまなかった。」

 

そう言うと、ロックは彼女の墓前へと花束を置く。その後、しっかりと管理されている為に汚れがほとんどない墓を、それでも自分の手で磨く為に清掃に取り掛かる。

 

「お前がいない世界は寂しい。だがそれでも、お前達の事を覚えている人間がいなくなるよりはマシだ。だから俺は、これからも生きていくよ。」

 

掃除をしながら優しく語り掛けるロック。その後ろに、一人の男が現れた。

 

「…ロック。君とカミラには幸せな未来を築いて貰いたかった。本音を言えば、こんな姿は見たくなかったよ。まぁ、最近まで君の事を忘れていた私が言える事ではないが…」

 

その男、カーズは少し目を潤ませながら告げる。彼はアーニャと同様にシャルルのギアスによって記憶を書き換えられた為に、娘が死んだのは事故だと信じ込まされていた。そして夫であるロックという男の存在も、記憶から消し去られていたのである。ロックはカーズの方へ振り返ると、彼に深々と頭を下げた。

 

「アールストレイム卿…カミラを守れなくて、本当に申し訳ない。」

 

「…いや、君を責めるつもりはない。恨むべきはこれを仕組んだ者達だ。私こそ、それに気付けなかった事をすまないと思っている。君自身も頼れる場所が無くてさぞ困っただろうに…まぁとにかく、レイナも君に会いたがっている。また私の家で暮らしても良いのだぞ。」

 

カーズの言葉に、彼は苦い笑いでもって返答した。

 

「…まぁ、俺は記憶が戻ったのでな。かつての友を探して、そいつを頼って闘う事が出来たからまだマシだったさ。」

 

「記憶が…!?それは良かった!もし差し支え無ければ、君の過去を聞かせてくれ。」

 

ロックは頷くと、カーズが乗ってきた車に向かって歩き出した。

 

「詳しくはあんたの家に着いてから話すが、俺はこの時代の人間ではない。200年前にある男の騎士として生きていて、そして主が封じられたのを追うように俺も眠りについた。信じられん話だろうがな。」

 

ロックの言葉に、カーズは目を見開いて驚きを露にする。

 

「なんと…いやしかし、君が嘘を言うような男ではない事は理解しているつもりだ。だが、200年か…先程言っていた友というのは、君の主なのかね?」

 

「そうだ。まぁいずれ紹介するさ。」

 

運転席に乗ろうとするカーズを止め、自分が運転する為にそこへ座るロック。彼なりの気遣いだと分かっているカーズは、苦笑しながら後部座席の扉を開いて車に乗り込む。するとその直後、彼が開いた扉とは反対側の扉を開けて誰かが乗り込んできた。

 

「ん…?アーニャ。帰っていたのか。」

 

「うん。ただいま、お父様。」

 

彼女はカーズの隣に座ると、彼の顔を見上げた。なお、ロックは我関せずとでも言うように車を発進させている。

 

「アーニャ、調度いい。お前にも聞いておかねばなるまい。ナイトオブラウンズでも無くなった今、お前はどうするつもりだ?」

 

「うん、そのことで話をする為に帰ったの。お父様、ロックとの結婚を許して欲しい。」

 

その言葉に驚きの声を上げたのは、カーズでは無くロックであった。

 

「ちょっと待てアーニャ。お前とは、本当に何もないだろう。そもそも俺は…」

 

「これからある。だから、お父様に先に許可を取っておく。」

 

「お前…俺の都合は関係無しか?」

 

二人のやりとりに、呆気に取られていたカーズは思わず笑みを溢し、耐えきれなくなったように笑い声を上げた。

 

「ハハハハハッ!我が娘ながら、随分と胆が座っていることだ!だが、彼の意思を無視して事を進めるのは戴けんな。帰ってから、レイナと共にしっかりロックの思いを確認するから、とりあえずは保留にしておくよ、アーニャ。」

 

「おいおいカーズ…頼むからそんな冗談に乗らんでくれよ。」

 

そう言うロックを後ろから、運転中だということも厭わずにアーニャが軽く首を絞めた。

 

「ぬおっ…!やめろアーニャ。運転中だ!」

 

「やめない、冗談で済ませてる内は。」

 

じゃれているような二人の様子に、カーズは目に涙を浮かべながら、それでも笑みを湛えて彼らの様子を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺がこのまま騎士団に残る条件は一つだ。あの時の続きを、生身で。お前がそれを受けるというのなら残ろう。とは言えお前も忙しいのは分かっているつもりだ。期日は指定せんから、受けると約束するなら俺も残ると約束しよう。」

 

アドニスの言葉に、ライはゆっくりと頷いた。

 

「分かった。その条件で残ってくれるのなら、それを飲むよ。」

 

ライの言葉を聞いたアドニスは納得したように笑うと、修繕された斑鳩のブリッジを後にする。その背中を眺めるライに向けて、伺うように様子を見ていたレイラが問い掛けた。

 

「良かったのですか?あのような条件を受けて…」

 

「うーん…まぁ、本気でやるつもりはないんじゃないかな?なんというか、今まで敵対していた僕らと仲間になるのが照れ臭いんだと思うよ。それであんな態度を取ったというか…」

 

アドニスの言葉を本気にしていないライに、レイラはやや不安そうな目を向ける。だが、かといって本気であったとしても自分には止める事など不可能なのは分かりきった事である為、彼女は追及を諦めて彼の補佐としての仕事へと戻っていった。

 

 

 

 

「さて、約束は取り付けたし…後はタカムラ博士からレインを受け取るだけか。」

 

斑鳩艦内で自身に与えられた部屋に戻り、一息ついてベッドに腰掛けるアドニス。彼は本気でライと決着を着けたいと思っており、そしてその真意が彼に伝わっていないとは思ってもみなかった。その為にこの後幾度と無く勝負を吹っ掛けては流されるという事が続くのだが、今の彼はまだそれを知らない。

だが彼自身も黒の騎士団員として忙しくなっているのは事実であり、今もいくつか仕事を抱えている為にこれから取り掛からなければならない。

 

「フー…まずは各隊の編成からか。」

 

主要なメンバーをリストアップし、相性が良いとされる人物をその下へと着けてゆく。編成はアドニスの得意とする所ではあったが、主要メンバーだけとは言っても数が多い。アドニスは情報が記載された書類にしっかりと目を通しながら、それぞれの振り分けを行っていった。

 

「手伝ってやろうか?アドニス。」

 

そこへ訪れたのはノネットだ。彼女はライにアドニスの仕事内容を尋ね、一人では大変だろうと考えてサポートを願い出たのである。

 

「…それは有難いのですが、ノネットさんは大丈夫なのですか?」

 

彼女とて仕事は抱えている筈である。問い掛けるアドニスであったが、彼女は笑いながら彼に返答した。

 

「ノネットさんは仕事のできる女だからな。もう片付けてある。さ、データを送れ。」

 

彼のすぐ隣に座ってラップトップを広げるノネット。肩が着きそうな程の距離感に、思わずアドニスは声を上げた。

 

「ちょっ…ノネットさん…!」

 

慌てるアドニスの姿とは反対に、ノネットの表情は楽しそうだ。その表情のまま顔を近付けようとするノネットであったが、直後に部屋の扉を開いた者によってそれは遮られた。

 

「ノネット・エニアグラム、あなたは仕事を手伝いにきたのではないの?」

 

部屋の入り口に立っているのは、マリーベルであった。

 

「これはこれはマリーベル皇女殿下…いや、元皇女殿下。」

 

ノネットは薄笑いを浮かべたまま彼女へと顔を向ける。それに対してマリーベルはかなり険しい表情だ。

 

「嫌味ですか?彼の仕事を手伝う気がないなら出ていったらどう?私があなた以上に、彼の助けになってみせるわ。」

 

ノネットの挑発に、煽るような言葉でやり返すマリーベル。二人の間に緊張が走るが、当のアドニスは何が起こっているかを理解出来ず、呆然としたまま二人を眺めていた。

 

「いやいや、ノネットさんは仕事が出来ますからね。あなたの助けはいりませんよ。」

 

「それはどうかしら?あの闘いで彼を裏切って狂王の下に着いたような人が、部隊編成なんて相性と信頼、戦力の均等さが求められる仕事をこなせるなんて思わないけれど…」

 

痛い所を突かれたノネットから薄ら笑いが消える。変わって彼女の背後には炎が上がったように見えた。そしてそれは、マリーベルの方も同様である。

 

「…あなたこそ、グリンダ騎士団時代に何度も失敗をされていたようですが、私の事が言えるのですか?」

 

今度はマリーベルが急所を突かれた。彼女はさらに表情を険しくさせると、アドニスに向き直った。

 

「アドニスさん、あなたはどちらに仕事を手伝って貰いたいのですか?裏切り者のノネット・エニアグラムか、それともこの私か。」

 

「ま、待て…どうしてこうなっているんだ?手伝ってくれるのは嬉しいが…」

 

未だに事態を飲み込めていないアドニスに、今度はノネットが言葉を投げ掛けた。

 

「そうだな。お前に選んで貰おう。元皇女様か、仕事の出来る私か。」

 

「…そもそも、あなたが態度をハッキリさせないからいけないのです。さぁ、選びなさい、アドニスさん。いえ、アドニス。」

 

マリーベルに迫られ、ようやく何故こうなったのかを理解し始めたアドニス。思えば蒼焔と刃を交えた東京租界での闘いの後、アヴァロンの医務室でこの二人の雰囲気が悪くなった事もあった。全ては、彼があまりにも鈍すぎた為である。

 

「い、いや、ちょっと待ってくれ…いきなりそう言われても…」

 

「いきなりではないわ、アドニス。さぁ、答えを!」

 

「ああそうだぞ。さっさと決めてしまえ、アドニス!」

 

二人に迫られ、アドニスは考える。今までの事、そしてこれからの自分の事を。その上で、彼は自分なりの答えを出す決意をした。

 

「俺は…!」

 




もうちょいだけ続きます。良ければお付き合い下さい。残りの話はほとんど手直しが必要ないものが多いので、二、三日中に全て投稿できるのではないかと思います。
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