コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
「まさかいきなり会えるとは思ってなかったけど、よく来てくれたねぇ。」
ロイドは喜びを隠すことなくアドニスを歓迎する。
「実は予算がついたからナイトメアをもう一機造ろうって話になったんだけど、肝心のデヴァイサーがいなくてね。スザク君から君の話を聞けたのはラッキーだったよ。君程の操縦技術があれば、僕の機体を活かしきってくれる事は間違いないと思うしねぇ。」
挨拶もそこそこにロイドは捲し立てる。アドニスが口を挟めないでいるのを気にする様子もなく、どんどん話を進めてゆく。
「ある程度まで設計と製造は出来てるんだけど、今回はランスロットと違ってデヴァイサーに合わせたナイトメアを造ろうと思っててね。是非君のデータを…」
「ロイドさん!まだ彼から答えを聞いていないのに、そんなに話を進めてどうするんですか!」
横からツッコミを入れたのは、特派所属のセシル・クルーミーだ。
「そうですよロイドさん。まずはアドニスの答えを聞きましょうよ。」
スザクもセシルに同調する。一応、組織の人間がいる手前敬称をつけようか迷ったスザクであったが、そのような事を一切気にしないロイドの前なので、結局普段のように呼び捨てにすることとした。
「ふうん。でも、スザク君に話を聞いてすぐここに来たってことは、少なくとも興味があるってことだよねぇ?」
ロイドがアドニスから視線を離さずに返す。
「それに、準皇族でもあり、クロヴィス殿下親衛隊の部隊員だった君が、こんなところで腐っていくつもりもないんでしょ?」
「…え?」
「…準皇族?」
セシル、スザクが驚く。それが本当ならスザクはとんでもない立場の人間を呼び捨てにしていたことになるし、場合によってはロイドもなんらかの処罰の対象になるかもしれない。ロイドの言葉に二人は青ざめた。
「…あれ?もしかして隠してた?」
固まった二人を見てロイドがようやく察した。とは言え、それは何かまずいこといったかな?という程度のもので、本人に悪気は全くない。
「──いえ、隠していたわけではないですが、別段自分から言う程の事でもない、というだけですよ。」
アドニスは苦笑しながら答える。ロイドの噂はある程度聞いており、この程度の事態は驚く程の事では無かった。面食らった、というのは事実ではあったが。
「それに、ロイド伯爵の言う通り、自分はこのままコーネリア殿下の軍内で腐っていくつもりはない。状況を変えられるなら、むしろこちらからお願いしたいくらいです。」
「ヤターーーーーーッ!!!」
アドニスの言葉にロイドは両手を挙げて喜ぶ。そして早速、彼をシミュレーターに座らせてデータを取ろうと言い出した。
「──ただ、所属は今回の作戦が終わってからにして頂きたいと考えています。後方支援とはいえ、自分が率いる部隊の事もあるので。」
そのロイドの提案を、アドニスは断る。準備をすっぽかしてこちらに来たのは事実であるし、今自分が特派所属となれば、今作戦で自分の指揮下に配属されている部下達を混乱させてしまう事になる。
「分かったよ。ああでも、一つだけ提案というか、プレゼントというか…」
ロイドはアドニスの言葉を理解した上でさらに笑みを深める。
「あれ、貸してあげるから持っていっていいよ。」
指差す先には、ランスロットに装備されているものと同様のMVSがあった。
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「何が起こっている!」
「コーネリア皇女殿下との連絡はどうなっている!?」
「日本解放戦線の新型機が見られるという話もあります!」
「黒の騎士団らしき部隊を発見したとの報告も!」
指令部は大混乱に陥っていた。土砂崩れによって多数のナイトメアが生き埋めとなり、さらにコーネリアが孤立してしまったからだ。
『どうもどうも~特別派遣嚮導技術部でございま~す!』
「無礼者!駐軍しているだけのイレギュラーはおとなしくしておれ!」
「お陰で困ってるんですよぉ、暇で。」
「白々しい。総督救出の手柄が欲しいだけだろう!どちらにしろ、あの土砂はランドスピナーでは越えられん!」
『ご心配なく!サンドボードがありますので!それも、二つ。』
ロイドは勿体ぶって言う。
『こちらのランスロットと、本陣付近に配備されているアーチャー卿なら、使いこなせると思いますよ。』
そのロイドの言葉に、ユーフェミアが頷く。
「その方を呼んで、特派と供に出撃させなさい!」
「思わぬところで出番が回ってきたな。」
アドニスの騎乗するサザーランには、すでにサンドボードの取り付けが完了していた。
「とにかく、今は総督を救出しよう!」
そう話す二人に、通信が入る。
『Z-01ランスロット、RPI-13サザーランドは、サンドボードを使用し最大戦速にて液状斜面を上昇、総督を救援せよ。』
「「イエス・マイロード。」」
『スザク君、君は人が死ぬのを極端に嫌うよねぇ。でも軍隊にいる。何故だい?』
ロイドの質問に、スザクは戸惑いつつも答える。
「死なせたくないから軍隊にいるんです。」
『その矛盾はさ、いつか君を殺すよぉ。…あぁ!ゴメンナサイゴメンナサイ!』
そう返すロイドは、セシルに胸ぐらを掴まれて画面から消えていった。それを見て緩みかけた表情を、スザクはもう一度引き締め直した。
「ランスロット、発進します!」
「続いてサザーランド、発進!」
二機のナイトメアが地面を滑るように駆けてゆく。出力で劣るサザーランドが徐々に離されるが、ランスロットは途中で止まり、木々をヴァリスで破壊してコーネリアの部隊までの道を作る。
「─特派だと!?誰の許しで…」
「ユーフェミア副総督より総督救援の許可をいただきました。」
コーネリアにとっては屈辱ではあるものの、助かったことに変わりはない。それだけに、スザクやロイド、ユフィを責める気にはなれなかった。
「枢木、お前はあの新型を!こちらは殿下の撤退ルートを確保した後、解放戦線の新型とやらを迎え撃つ!」
「了解!」
スザクに指示を出しつつ、すでに黒の騎士団に攻撃をしかけているアドニス。
アサルトライフルで騎士団の部隊を散らせると、端から順々にMVSで動力部に一撃を加えていく。体勢を立て直す為に一度騎士団の部隊が引いた隙に、サザーランドの腰部分にぶら下げていた予備のエナジーフィラーを素早く手に取りコーネリアのグロースターの補給を済ませると、脚部に自身のサザーランドが使用していたサンドボードを装着させ、自分達が通って来た道をそのまま使わせて撤退させた。
「逃がすなっ!」
ゼロが慌てて引き返してくるが、その道の前にはライフルとMVSを構えたサザーランドが立ち塞がっている。先程の攻防を見ただけで只者ではないのは一目瞭然だと感じたゼロは、悔しげな声音で部隊に再度命令を下した。
「…くそっ!撤退だ!」
ゼロはコーネリアを諦め、撤退に移る。黒の騎士団のナイトメアが全ていなくなっても、解放戦線のナイトメアが攻め入ってくる可能性があることから、アドニスはなおもその場に留まって警戒を続けた。
なお、すでにスザクはゼロの追跡に入っている。
「コーネリア殿下と無事合流した。アーチャー卿、よくやってくれた。」
コーネリアの騎士、ギルフォードから通信が入る。
「いえ、ほとんどは特派の枢木スザクのおかげです。」
「君が殿下の撤退を成功させてくれたのも事実だ。とにかく、礼を言う。」
その言葉を最後に通信は切れた。アドニス自身も撤退すると、本陣付近でロイドに出迎えられた。
「おかえり~大活躍だったみたいだねぇ。」
「サンドボードとMVSが無ければ、総督の救出も、黒の騎士団を撤退させることも出来ませんでしたがね。」
アドニスは苦笑しながらロイドに返す。
「でもいいデータが取れたよ。これを使って、しっかり造るよ。君のナイトメア、ランスロット・クラブを。」
その言葉に、アドニスは拳を握りしめる。自分の軍人としての人生は、ここからが本当のスタートだと感じたからだ。彼はこれまで準皇族という立場から低い年齢に対して高い地位を与えられつつも、クォーターという彼の血統を理由に何度も名誉ブリタニア人ばかりの部隊の指揮を任され、ナイトメア部隊の指揮を任せることなどほとんど無かった。コーネリア軍の配下となってからは、より不遇な立場に甘んじていた。しかしこれからは、自身の力で未来を変える事ができるのだ。
「君の異動も、僕からコーネリア皇女殿下に伝えておくよ。」
そう言うと、ロイドは軽く手を振りながらアドニスの前から去っていった。
アドニスは、自分の中ではブリタニア軍側のライ、といったイメージです。ロスカラのブリタニア軍人編をベースに、要素を足したり引いたりしながらどういうキャラクターにするか考えたので、個人的にはかなり気に入っています。
それと、手直しが終わっているのはここまでです。以降は、暇を見付けて修正しつつ、完成したら投稿するという形にさせて頂こうと思います。