コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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SIDE Twelve rounds
episode1 Raison d'etre


「ナナリー皇帝が即位して、世界は平和になった。人々はその平和を享受して幸せに暮らしているというが…」

 

長い金髪とアイスブルーの瞳が目を引く男、フロストの言葉に短髪で体格のいいボトムスが低い声で同意する。

 

「ああ。傭兵である我々12ラウンズは仕事も生きる道も無くした。それに、ブリタニア軍による改造手術を受けた為にこの身体は機密だらけだ。近い内に廃棄処分になるだろう。」

 

傍らに立っているダークブラウンの髪を短く揃えた男、ウイリアムも彼の言葉を引き継ぐ。

 

「だからってそれを黙って受け入れるってか!?俺達はただ殺されるのを待つ家畜じゃねえ。家畜、家畜!家畜じゃねえんだ!」

 

興奮するウイリアムを、肩まで伸びた真っ黒な髪が特徴的なロバートが宥める。しかし彼も、現状に不満があるという点ではボトムス達と同様であった。

 

「落ち着くだよウイリアム。もうすぐアダムが戻ってくるだ。あいつが上手くやってくれれば、まだ俺達の道もあるだよ。」

 

やや楽観的なロバートを、金髪を一つに纏め、黒い瞳を細めたアリシアが睨み付ける。彼女は成功した時ではなく、失敗した時の事を考えていた。

 

「それが上手くいかなかったらどーすんのかって話だよ。アダムがヘマしたら動きようがないだろ?」

 

そう言って噛んでいたガムを膨らませるアリシア。彼女の態度を長身で黒い髪を揃え、煙草を咥えたジュビアが注意する。

 

「アリシア、真面目にやりな。それは話を聞いて貰う態度じゃないよ。」

 

「でもアリシアが言ってることは一理あるぜ。アダムが失敗したら、俺達は確実に廃棄処分だ。そうだろ、カール?」

 

アリシアの言葉を肯定したのは体は小さいながらも筋骨隆々で、プラチナブロンドの髪を坊主に近いくらいまで刈っているケインだ。彼は自分の横に立つ男、茶髪をだらしなく伸ばしたカールにも同意を求め、彼もその言葉に頷いた。

 

「ああ。クソッタレの軍上層部達は、軍が解体される前に俺達を殺すつもりだな。」

 

盲人用の帽子を被り、手に持った杖を何度か床に打ち付けてコツコツと音を鳴らすダニエル。その音に周囲の目が一斉にダニエルを見た。

 

「いくら言ったところでアダムが戻るまでは動きようがないさ。ここで結論の出ない話をするよりも、彼の口から答えを聞いてから改めて話をした方が健全だと思うがね。」

 

ダニエルの意見に、彼のすぐ側にいた黒縁眼鏡をかけたジンダーも頷き、彼の後方にある椅子に腰掛けていた、スキンヘッドが特徴的なエイデンに問い掛ける。

 

「エイデェン、アダムから連絡は来ないのかぁ?」

 

エイデンは椅子をゆっくりと回転させ、彼らの方へと視線を向ける。

 

「ちょうど、今来たところだ。どうやらうまくいったらしい。」

 

エイデンの返答に、ケインとカールが喜びの声を上げた。

 

「おお、やったな!これで廃棄処分にならずに済むぜ!」

 

「そうだな兄弟!これで死に場所も自分で選べるってもんだ!」

 

騒ぐ二人を、ボトムスが落ち着かせる。

 

「ケイン、カール、準備は出来ているんだろうな?」

 

「当然だ、ボトムスの旦那。逃走ルートも、その後の移動手段もしっかり確保済みだぜ!」

 

ケインの返答にボトムスは頷き返すと、その場にいる全員に目を向けた上で命令を下す。

 

「全員、覚悟はいいか。我々はこれよりブリタニアを裏切り、世界の敵となる。再起には数年かかるだろうが、目的を忘れるな。目指すは南アジア、ジルクスタン王国だ!」

 

「「おおっ!!」」

 

ボトムスの言葉に、メンバー達も口々に声を上げ、ボトムスを先頭に移動を開始した。

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

ナナリーが皇帝に即位してから二年程が経過した。その間に扇は神楽耶へと日本の総理の座を譲り、ナナリーも帝政を廃止して人道支援団体の顧問となっている。そのナナリーが南アジアのとある砂漠地帯で、難民キャンプでの代表達との打ち合わせを行っていた。傍らにはゼロとサーシャも控えている。

 

「分かりました。その難民の方々はブリタニア公国で受け入れられないか、議会の方と相談してみます。ただ…今の私には政治の決定権がありません。出来うる限り、迅速に対応しようと思いますが…」

 

ナナリーの言葉の途中で、ゼロがこちらに向かってくる何かに気付く。目を凝らすとそれは紛れもないナイトメアで、サザーランドやグロースターの改造機、それに旧中華連邦や旧E.U.でも見たことのない、二機の飛行型ナイトメアの姿も見えた。

 

「私だ。近付いているナイトメアフレームは、どこの所属か?」

 

ゼロは通信機で小型浮遊艦に控える部下に問うが、返答の前にそのナイトメア部隊から小型ミサイルが幾つも放たれる。

 

「テロリストッ!?名誉顧問を艦内に!早く!!」

 

ゼロはサーシャにナナリーを任せると、自らは艦の格納庫へと走った。彼はコートを脱ぐと、唯一格納されているナイトメアへと歩み寄る。

 

「ダメですよ!これ、儀式用で武装が…」

 

「フロートシステムも切ってありますし…」

 

そのナイトメア、真母衣波 壱式に乗り込もうとするゼロを、研究員達が止めに入った。

 

「すぐ動かせるものはこれしかない!時間を稼ぐだけだ!」

 

ゼロはコックピットを閉じると、仮面を外して脇に置く。枢木スザクの素顔を現しながら、彼は迫り来るナイトメア部隊に向けて厳しい目を向けた。

 

「ここ一年、続いた平和を破ったな…僕達が築いた平和を!」

 

スザクは真母衣波を突撃させると、回転技やアクロバティックな動きで次々と敵ナイトメアを蹴散らしてゆく。空中のナイトメアもハーケンで破壊すると、敵の陸戦艇へと機体を向け直した。

 

「やはり姉さんの予言通り、ゼロは特別か…」

 

陸戦艇から、第八世代相当と思われるナイトメアが飛び出す。ゼロは知る由もないが、名を ナギド・シュ・メインという。真母衣波に真っ直ぐ向かってくるナギドを見て、研究員達はゼロに通信を繋いだ。

 

「ゼロ!もう一機向かってきますが、該当するデータがありません!」

 

その言葉を聞いて、スザクは真母衣波の剣を構え直すと、ナギドに向けて飛び上がった。

 

「分かった、鹵獲して…」

 

しかし、着地と同時に真母衣波は体勢を崩す。ここは砂漠地帯であり、整備された地面とは違った柔らかい砂に足を取られ、着地が上手くいかなかった為だ。

 

「クッ…サンドボードさえあれば…」

 

嘆くスザクに、ナギドが空中から突撃して蹴りを放つ。咄嗟に下がって避けたスザクだが、ナギドのパイロットであるシャリオはそれを見て笑みを浮かべていた。

 

「ハッ!姉さんの予言通り!」

 

着地した真母衣波を、地面から飛び出したハーケンが捕らえる。自身の動きが完全に読まれたどころか、戦闘の行方さえ理解した上での罠に、スザクは驚きを隠せなかった。

 

「こんな所に何故!?いけない、こいつの推力では…!」

 

ハーケンから電撃が放たれる。スザクはそれによって意識を失いかけるが、なんとか持ちこたえて抵抗を試みた。しかしその抵抗も、真母衣波の右脚を撃ち抜いた弾丸により、それ以上続ける事が不可能となる。

 

「ハッ!さすがのゼロもこれで終わりだな。ざまぁねえぜ!」

 

陸戦艇の上部で銃を構えるナイトメア、ハークレイに騎乗する金髪金眼が特徴的な男、アダム・"ゴールデンアイ"・ストローマンが笑う。真母衣波の後方では、ナナリーやサーシャ、その部下達がナイトメアに囲まれ、銃を向けられていた。

 

「シャリオさんよぉ、わざわざあんたが出なくても、俺達だけでなんとかなったろうに…」

 

「ああ、しかし目的は達成した。僕も君達もこれで、世界を変えられる…城に戻ろう。」

 

アダムはシャリオの言葉に、笑みを浮かべたまま答えた。

 

「了解ィ。ハッ!楽な仕事だったぜ。」

 

ナナリーを収用した陸戦艇はゆっくりと反転し、来た道を戻って行った。

 




12ラウンズ

ボクシングの世界タイトルマッチの全12ラウンドに例え、最後まで闘うという意味で名付けられた傭兵部隊。
全員が肉体強化手術を受けており、ナイトオブラウンズクラスの高い身体能力を誇る。

メンバー
アダム・"ゴールデンアイ"・ストローマン
ボトムス・ディーマレンコ
フロスト・アローズ
ウイリアム・トロン
ロバート・パンテーラ
ケイン・ヴァスコット
カール・スコットランド
アリシア・ソーラ
ジュビア・ルーシャス
ダニエル・ケナリス
エイデン・フォード
ジンダー・ヘニガン
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