コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
「ナナリーが拐われた!?」
ダモクレス戦で撃墜されるも、修理を受けて再び黒の騎士団の旗艦となった斑鳩の艦内で、ライは部下からの報告を受けていた。その報告の中には不確定ではあるが、南アジアの傭兵国家、ジルクスタン王国の手による事件の可能性が高いとの情報もある。彼はすぐにその情報を纏めると、部下を退がらせて通信を開いた。
「アドニス、ルーン、聞こえるか?」
『聞こえている。ナナリーの事か?』
ライの前にあるモニターに、二人の姿が映し出された。二人とも事態を知っているようで、説明は不要と見える。
「ああ。何が目的かは分からないが、このままナナリー達を放ってはおけない。ジルクスタン王国が首謀者と見られているが、まずは確認と、可能であればそのまま救出を行う。ルーンは僕と、アドニスはレインで待機して欲しい。藤堂さん達には、僕から伝えるよ。」
『分かったわ、お兄様。とりあえず出発までに、ジルクスタンの刑務所の場所を調べておくわ。』
そう言ってルーンが通信を切る。アドニスも自身の考えをライに伝えた。
『潜入するには偽装が必要だな。あちらで使用されているトレーラーを調べ、それと同様のものを用意しておく。各合衆国の代表達からも、俺が賛成を取りつけておこう。脱出ルートの構築も忘れるな。』
「分かっている。あちらに着くまでには、作戦を詰めておくよ。」
アドニスが頷いたのを確認し、ライは通信を切って立ち上がった。藤堂らに向けてメールを打ちながら足早に格納庫へ向かうと、小型浮遊艦へ乗り込む。データスティックを持ったルーンが現れたのを確認すると、ライは浮遊艦を斑鳩から発艦させた。
数時間後、国境付近に浮遊艦を着艦させる。艦内には車が用意されており、ライとルーンはそれぞれ艦内で着替えたジルグスタンの装束でそれに乗り込んだ。なお、途中でアドニスが手配したトレーラーに乗り換える予定だ。
ライはナビを起動すると、ルーンが絞り込んだうちの一つへ向けて、何か確信を持っているかのようにハンドルを向ける。
「お兄様、ナナリーとゼロ、サーシャが捕まっている場所が分かっているの?」
「……ジルクスタンには、ギアスの遺跡があった筈だ。今向かっている刑務所は、僕の記憶が正しければその遺跡の場所とほぼ同じ場所にある。今回の事件がギアスやCの世界に関わりがあるのなら、そこに捕らわれている可能性も高いと思ったんだ。あくまで予測だけどね。」
ライの言葉を聞いて、ルーンも納得した表情になる。しかしその刑務所に到達出来たとしても、中に入る手段が彼女には思い付かない。
「準備はアドニスに頼んだ。中に入ってからは、君となら生身でも簡単に制圧できるだろう。」
つまり、ライにしては珍しく力押しである。それだけ急いでいるとの証でもあるが、それにしてもここまで確実性の無い作戦をライが立てる事は、ルーンには覚えがない。
「まぁ、それだけ信頼されているというのは伝わったけれど…」
言い澱むルーンを見て、ライは自身の考えが雑な事を理解した上で苦笑する。
「大丈夫さ。いざとなったらギアスもある。それに、内部を制圧してしまえば、脱出はそう難しい事じゃない。アドニスが遅れさえしなければだけどね。」
「…いいわ。たまには無茶にも付き合ってあげましょう。その代わり、帰ったら埋め合わせをお願いするわ。」
ルーンの言葉に頷き、ライはアクセルペダルをさらに踏み込んだ。
「一旦休憩しようか、ルーン。」
あれからさらに車を走らせ、ジルクスタン内のとある町に入った。既に時間は深夜になっており、交代しながらここまで運転してきたものの、二人の顔には多少の疲れが浮かんでいる。
「侵入前に疲れきって、ミスなんてしたら馬鹿な話だものね。とりあえず、怪しまれないように宿で仮眠をとりましょうか。」
ルーンは開いている宿を探すべく、車を降りた。
「ダブルベッドの部屋でいい?」
「いいわけないだろ……普通に一部屋ずつ…いや、襲撃された時のことを考えると同室の方がいいか…というか、そういう冗談は疲れるからやめてくれって何度も言ってるだろ?」
ライがため息をつきながら返答すると、ルーンはその反応を見て満足そうな笑みを浮かべてから、宿に向かって歩き出した。
「あの女か?」
「はい、間違いありません。」
ジルクスタンへ侵入者アリという報告を聞いた、ジルグスタン王国軍暗殺者のクジャパットがスコープを通して宿に入ってゆく一人の女性を見ていた。彼女は黒の騎士団所属のルーン・ウォーカーであり、ナナリーとゼロの捜索、もしくは救出に来たという事は疑いようが無かった。
「よし、全員配置に付け!奴らを捕らえて黒の騎士団に対するカードを増やすぞ!」
クジャパットが命令を下す。しかしまだ周囲に控えているはずの部下達からは、一言も返事が返ってこない。
「どうした、お前達…?」
不審に思ったクジャパットが振り返ると
、意識を失って倒れている部下達の隣に、銀髪を夜風に靡かせる男が立っていた。
「どうも。君が彼らのボスだね?」
クジャパットは咄嗟に男に向けて発砲するも、弾丸は彼をすり抜けてゆく。クジャパットはおそらく避けられたのだろうとまでは想像できたが、まるで幽霊のようにさえ見える回避を行う方法など、ましてやそれが自身との実力差がどれ程あってのことなのかというところまでは思い至らなかった。
「チィッ…!なんなんだお前は!?」
クジャパットは残った銃弾を全て放つ。しかしその銀髪の男であるライは、彼との距離を詰めつつまたしても銃弾をすり抜けた。
「この…!」
銃を捨て、懐から取り出したナイフを振り下ろす。しかしライは優雅とも言える動作でナイフを捌くと、強烈な掌打を彼の顎に叩き込んだ。
「ぐおっ…!」
衝撃で視界が歪み、後退するクジャパット。しかしライはその動きに追従し、左胸、鳩尾、腎臓へと連続して打撃を叩き込む。それも、意識を失わない程度の絶妙な加減で。
一瞬にして動きを奪われたクジャパットは、その場に膝をついて胃の中にあるものを全て吐き出した。
「ぐへぁっ…うぅ…くそっ…!てめぇ、何モンだ!?」
「君達の予想通りだよ。君達は僕らを追っているつもりだったんだろうけど、逆さ。わざと追わせていたんだ。三人の場所を吐かせる為に。」
ライはクジャパットらの追跡に気付いており、彼らが襲撃をかけやすいタイミングを自ら演出したのである。
「ヘッ…素直に言うとでも思ってるのか…?」
なんとか取り繕って笑みを浮かべるクジャパット。しかしライは彼が地面に着いている右手に自身の足を近付けると、人差し指を逆方向へ押し込んで折ってしまった。
「ぐぎっ…!!」
そして彼が悲鳴を上げる前に、その足で顔を蹴り上げる。
「思わないけど、早く吐いてしまった方が身の為なんじゃないかな?こっちも手段を選ぶ余裕はない。」
「脅しの…」
クジャパットが言い切る前に、彼の後ろからルーンが頭を強く蹴りつけた。
「余計な事は、喋らなくていいわよ。」
「クソが…てめぇら、いい気になってんじゃねえ!!」
クジャパットが言葉を放つと同時に、彼の目にギアスが宿る。それをライとルーンが直視した瞬間、ライの目にはクジャパットがいる筈の場所にルーンが、そしてルーンがいる筈の場所にはクジャパットが立っていた。ルーンの視界も同様に、ライとクジャパットが入れ替わった状態になっている。
「…ハハハハハ!これで攻撃できないだろう!余裕こいてやがるから…」
しかし、またもクジャパットが言い切る前に、ライが彼の顔へと拳を振り下ろしていた。
「な…何故…?」
「視覚を操り、敵と味方を誤認させるギアスかな?理解さえしてしまえば、しょぼい能力だ。」
クジャパットのギアスは、反射ではなく頭で考えてから動くライやルーンには相性が悪すぎた。ライは自身の拳によって吹っ飛ばされたクジャパットに何事も無かったかのように歩み寄り、彼の右手の中指に足をかけた。
「ま、待ってくれ!ナナリーの場所は知らないが、ゼロの居場所なら分かる!だから、こ、これ以上は勘弁してくれ!」
クジャパットの言葉にライは足を引くと、黙って続きを促した。
「ゼロとサーシャって女は…な、嘆きの大監獄だ!あそこに捕らわれていると聞いてる!」
その言葉を聞いたライは、黙ったまま彼の手足をきつく縛り、車の後部座席へと放り込んだ。
「クジャパットからの連絡がありません。おそらくしくじったものかと…」
聖神官であり、ジルクスタンの内政を取り仕切っているシャムナの親衛隊隊長、シェスタール・フォーグナーが告げる。その報告を聞いたシャムナは、微笑みを浮かべたまま言葉を返した。
「やはり黒の騎士団の総司令が狂王だという噂は本物かしら…?それなら、ナナリー以上にCの世界を…フフフッ…これは天啓か?」
「敵はギムスーラ平原にある嘆きの大監獄を目指しているものと思われます。あそこには、古いアラムの門もありますし…」
シェスタールが視線を落としながら報告を続けた。シャムナは彼を見下ろしながら尋ねた。
「弟は、シャリオはどこに?」
「まだ大監獄です。いつものように彼の所かと…」
その言葉を聞いて、シャムナは一つため息をついた。
「すぐ戻るように伝えて。代わりにシェスタール、あなたが大監獄に。」
「ナム・ジャラ・ラタック。」
彼は右手を自分の顔に添えて返事をすると、シャムナの前から去っていった。
機体名
アダム→ハークレイ
ボトムス→ストーンコールド
フロスト→レオニダス
ウイリアム→ヘクトール
ロバート→ウォリック
ケイン→クロムウェル
カール→ローラン
アリシア→スパルタクス
ジュビア→アレミラ
ダニエル→マックール
エイデン→モルゴース
ジンダー→ルッジェーロ