コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode3 Sword

「ねえ、見えるかいゼロ。いや、枢木スザク。君がアジアやE.U.で何度か見せた動きだ。」

 

嘆きの大監獄の一室で吊るされ、至るところに傷を負っているスザク。彼の前には車椅子に乗った少年の姿があり、その奥のモニターにはナギドと闘う真母衣波 壱式の姿が映し出されていた。

 

「この時の姿勢制御は?プログラムにはない動きだよね?あとアルビオンを使った時、途中から挙動が変わったのはどうして?設計じゃないよね、アレ。」

 

「君こそ…どうして自分の動きが分かった…?後退する場所に罠を張るなんて…まさか、ギアス…?」

 

車椅子の少年、シャリオの質問に弱々しい声で返すスザク。しかしシャリオは失望したとでも言うように、口をへの字に曲げる。

 

「またそれ?こちらの質問にちゃんと答えてほしいな。こちらにはナナリーがいることを忘れないで。」

 

「思ったより、卑劣な男だな…」

 

スザクの言葉に、今度は少し笑って見せるシャリオ。

 

「ああ、そうだよ。僕は世界一の戦士になる為ならなんだってするからね。大切なものを守る為には、純粋な強さが必要だ。君のように…無垢なる狡猾、純然たる賎陋(せんろう)…守る、それ故にお前は死を選ばない。さあ、教えろ!!」

 

シャリオは鞭を取り出すと、何度もスザクの身体を打つ。

スザクは悲鳴を堪え、ただただそれが終わるのを待つしか無かった。

 

「やめて!やめてったら!それ以上やったら、彼が死んじゃう!」

 

スザクの向かいに吊るされたサーシャが叫ぶも、シャリオがそれに耳を貸すことは一切無かった。

 

「枢木スザク!君の強さは全て僕が貰う!」

 

鞭を振るい続けるシャリオ。しかし彼の部下が、シャリオの隣に膝をつき、シェスタールからの伝言を伝える。

 

「姉上が…?仕方ないな。」

 

彼は鞭を振るう手を止めると、車椅子を動かして部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

アドニスの手配したトラックに乗り換え、嘆きの大監獄へ到着したライとルーン。彼らは刑務官の制服に着替え、入口で警備を行う刑務官に書類を渡していた。

 

「下層ブロックに?」

 

「はい、内密にお願い致します。ジルグスタン王国のスパイを名乗る不届き者で、一週間以内には死刑にすると…」

 

ライが刑務官に報告すると、トラックの荷台が開かれる。そこには拘束衣で手足の自由を奪われ、布を噛まされる事で言葉も奪われたクジャパットの姿があった。暗殺者である彼の事は公には知られておらず、その為に刑務官達もこの状況を疑う事も出来ない。

クジャパットを背負い、エレベーターで下層へと降りる二人。その傍らには監視の為の刑務官が二人着いている。

 

「おう、新入りだ!」

 

「お前、何やったんだい!?」

 

「おお、女だ!女!楽しくやろうぜ!」

 

エレベーターの扉が開いた直後、周囲の牢に閉じ込められた囚人達から声が上がる。ライはそれを無視して進むと、小声でルーンに問い掛ける。

 

「…カメラは?」

 

「入る前に終わってるわ。いつでもいけるわよ。」

 

ルーンの返答を聞いたライは、クジャパットを放り投げて刑務官の鳩尾に全力の蹴りを放った。同時にルーンも、反対側にいる刑務官に掌打を叩き込んでいる。

その事態を見て、このフロアを担当している刑務官も駆け寄ってくるが、二人によってすぐに無力化された。

 

「…なんだぁ?仲間割れかぁ?」

 

牢の中から様子を見ていた囚人達が疑問を口にする。その中で、ビトゥルだけが事態をある程度理解していた。

 

「あいつら、黒の騎士団か!馬鹿が…あのヤローに、勝てる訳ねぇってのによ!」

 

去りゆくライ達の背中に向けて、ビトゥルは教えてやるとでも言うように、声を張り上げた。

 

 

 

 

下層ブロックの警備室にたどり着いたルーンは、瞬く間にそこを制圧した。彼女はカメラを操作し、捕らわれたスザクとサーシャ、最下層へ向かうライの姿を確認する。しかし、ライが向かう先を映していると思われるカメラに、一人の男の姿があった。

 

「お兄様、その先に誰かいるわ。随分と雰囲気があるわよ。」

 

『了解した。突破する。』

 

最下層、遺跡の入口にあたると思われる扉は水で塞がれており、その水路の前に長い金髪をはためかせ、アイスブルーの瞳をこちらに向ける男の姿がライの目にも入った。彼が腰から細剣を抜くのを見て、ライも刑務官から奪った警棒を構える。

 

「……フロスト・アローズだ。」

 

手短に名乗ると、フロストはライの返答を待たずに斬りかかった。その斬撃はライの予想を遥かに超えるほど苛烈で、なんとか警棒での防御が間に合ったものの、受け方を間違えればその警棒ごと両断されかねない一撃であった。

 

「ぐ…!!」

 

ライですらギリギリでしか反応できない速度で何度も剣を振るうフロスト。警棒で防御するが、彼の脇腹には浅くない傷がつけられている。

 

(骨までは達していないが、しかし…!)

 

なんとか防いでいるものの、防戦一方のライ。なんとかつばぜり合いに持っていくと、大きく剣を弾いてフロストを後退させた。そのスキに蹴りを放つも、フロストは宙返りで避けてみせる。半端ではない実力を持つ敵であると理解したライは、気持ちを引き締め直して対峙した。

それと同時にフロストも、ライの纏う雰囲気が変わったことを理解する。

 

「…フロストといったか。私の前に立った事を、後悔させてやろう。」

 

一瞬にしてフロストの懐に入り込むライ。警棒で繰り出した突きに、フロストは咄嗟に反応してみせた。しかし完全には避ける事が出来ず、左肩に警棒がめり込む。それでもその勢いに逆らわず、横回転して剣を振るうフロスト。ライはそれを受け流して反撃の一撃を放つが、フロストは大きく飛び下がってそれを避けて見せた。

その直後、銃弾がそれまでフロストがいた場所を通り抜ける。そちらへ視線を向けると、ライの窮地を察して駆けつけたルーンが警備室で手に入れた銃を構えていた。

 

「…フム、これでは不利か。」

 

一言だけ呟くと、フロストは出入り口に向けて走り出した。それを止めようとしたライを飛び越え、ルーンの横にある壁を蹴って逃走する。その姿はあまりにも鮮やかだった。

 

「…逃げられたか。すごい腕だったな。」

 

脇腹を抱えながら、ライは一つ息をつく。床から突き出た装置に歩み寄ると、それを操作して水を排出させた。

 

「ルーン、スザクとサーシャの場所は分かったのかい?」

 

「ええ、カメラに映っていたわ。どうやら拷問されてたようだけれど…」

 

水が排出される様子を眺めながら、ルーンが答えた。ライは先程のように待ち受けている兵がいる可能性も考慮し、どちらに向かうべきか考える。しかしCの世界の事は自分の方がルーンより詳しい。時間を有効に使う為にも、彼らの救出はルーンに任せる事に決めた。

 

「僕もすぐに行く。何かあったら連絡してくれ。」

 

ライの言葉に頷いて去っていくルーンを見送り、ライは遺跡の奥へと進む。彼の前には、神根島のものに匹敵する大きさの扉が聳え立っていた。

 

「さあ、教えてくれ。この国で今、一体何が起こっているんだ?」

 

ライが右手で扉に触れる。その直後、彼の意識はCの世界へと吸い込まれていった。

 

「…どういうことだ?」

 

ライが辺りを見回すと、そこは黄昏の間であったと思われる場所だった。だが無惨にも荒れ果て、思考エレベーターは動きを止めている。

 

「何故、人々の意識が留まっている…?一体何が…?」

 

戸惑うライの前を、二つの影が交互に通り過ぎた。それを見て、ライはおおよそその状況を理解する。

 

「成程、シャルル・ジ・ブリタニアに、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアか…君達が楔となって人々の歩みを止めているのか?」

 

ライは黄昏の間中央に鎮座する、黒い球体に手を触れた。同時に、彼の右目は赤く染まっている。

 

「紅月ライが命じる。人々の歩みの邪魔をするな!」

 

ギアスで命じてみたものの、球体は依然としてその場に留まっている。ライはため息を吐くと、球体に向かって一人ごちた。

 

「無駄か…ルルーシュのようにはいかないな。まぁ、この状態が分かっただけでも良しとしよう。」

 

彼は球体から離れると、ゆっくりと目を閉じる。次に目を開けた時には、意識が現実世界へと戻っていた。

 

「ツッ…やっぱり、やめておけば良かったかな…?」

 

右目に走る痛みに、思わず顔を押さえるライ。しばらく待って痛みが治まったのを確認すると、早足でスザクの元に向かった。

 

 

 

スザクが目を覚まして周囲を見回すと、自分の顔を覗き込むライとルーンの姿が目に入った。向かいのベッドには憔悴した様子のサーシャが座っている。

 

「ライ…?どうして…?」

 

「助けに来たよ、スザク。もう大丈夫だ。」

 

上半身を起こした彼に、ライは優しく笑いかける。

 

「助けに…?たった、二人でここまで来たのか…?」

 

「まぁ、潜入したのは僕達だけだ。だけど、脱出の手立てはある。さぁ、肩を貸すよ。」

 

ライに肩を借りて立ち上がるスザク。彼が寝かされていた部屋を出ようとした時、監獄の外からの声が響いた。

 

『施設内の侵入者に告げる。私はシャムナ聖神官親衛隊隊長、シェスタール・フォーグナーである。この監獄施設、その包囲は既に完了している。投降せよ。なお、かつて嚮団に関係したもの、もしくはそれに類する者が出てくれば、待遇は国賓級とさせて頂こう。』

 

出入り口に向かいながら、シェスタールの声を聞いていたライ達。出入口手前で、ルーンから受け取ったタブレットから、彼に対して返答した。

 

「シェスタール・フォーグナー、君達の姿はこちらでも確認した。そこで一つだけ、指摘したい事があるのだが…いいだろうか?」

 

『…指摘したい事だと?言ってみるがいい。』

 

ライからの通信に、既に勝利を確信しているシェスタールは尊大に応答する。だが彼には、不適に笑うライの顔を見ることが出来なかった。

 

「相手が黒の騎士団かもしれないと思っているのなら、地上部隊だけで包囲したのは失敗だったな。…アドニス!」

 

「何っ!?」

 

包囲するシェスタールの部隊に向かって、上空から超高速で迫る青い影。その影は三対の翼を広げると、監獄ごと刃状ブレイズルミナスで部隊を殲滅した。

 

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