コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode5 Warriors

「許可証を見せろ、そのあとで積み荷の確認を行う。」

 

ジルクスタン国境近くの駅にて、列車の確認を行おうとするジルグスタン軍の兵士達。彼の前に現れた作業員は、書類を取り出しつつ答えた。

 

「積み荷は黒の騎士団のものでして…」

 

「は?」

 

言われた事を理解できず、目を丸くする兵士達。作業員の男に扮したジュリアスは、コンタクトを外した目を彼に向けた。

 

「これを使い首都を封鎖する。君達は作戦の間だけ、私の部下になりたまえ。」

 

「ナム・ジャラ・ラタック。」

 

兵士はジュリアスの言葉に従い、列車を発進させた。

 

 

 

「では、これより作戦概要を説明する。」

 

首都へ向けて走る列車の貨物車両内に格納されている、蒼焔轟柳型のコックピットよりライが通信を開いていた。

 

「作戦開始時刻は0時。首都近郊の基地四ヶ所で反乱が起こる。レーダー通信にジャミングをかけると共に、敵のナイトメア部隊の大半を私が無力化する。コーネリア隊とアキト隊が正面より陽動をかけている間に、側面から私と藤堂、スザクとアドニスは迂回して背後から攻め入って貰う。質問はあるかな?」

 

モニターに映る全員が頷いたのを見て、ライは命令を下した。

 

「では、作戦開始!!」

 

列車最後尾の貨物車両から、天井を破壊して蒼焔が飛び出す。全身にブレイズルミナスを展開しつつ、首都方面に向かって上昇、フロート装備型では到達できない高度9000メートルあたりで停止し、ブレイズルミナスを一部解除した。

 

「ジルクスタン王国よ、今お前達を止めてやる!」

 

蒼焔の背部から多数のミサイルが発射された。高速で飛翔したミサイルはジルクスタン首都を囲むように着弾すると、爆発せずに内臓された装備を露出させ、ゲフィオンディスターバーを起動した。

 

「何があったのです!?」

 

ゲフィオンディスターバーによって電力を奪われ、非常電源に切り替わった王城の中でシャムナが問う。

 

「報告にあった、ゲフィオンディスターバーではないかと。しかし、我が部隊とナギド・シュ・メインに関しては対策が出来ております。ただ、それ以外は多数のナイトメアが停止させられているでしょうな。」

 

ボルボナがそれに答える。それを見たシャリオは、格納庫へと車椅子を動かした。

 

「姉さん、神殿背後の守りは僕がやるよ。」

 

「気をつけなさい。敵の実体が掴めぬ以上…」

 

「大丈夫、ナイトメアにさえ乗れば、僕は自由に動けるんだから。」

 

シャリオはシャムナに笑いかけ、部屋を後にした。

 

 

 

 

「警告はした!」

 

ゲフィオンディスターバーの影響から漏れた機体を、ロイドがゼロ専用機として製造したランスロットsinと、アドニスのランスロット・クラブ・レインが次々に破壊していく。第九世代の中でも最上位クラスの力を持つ二機を相手に、ジルクスタン王国軍はなす統べなく撃墜されていった。

 

「腕は鈍っていないようだな、スザク。」

 

「その名は死人の名だ。今は…」

 

スザクは自身の名を否定する。しかしそれに対して、アドニスはいつもの皮肉さを表すことなく、優しげに笑いかけた。

 

「フッ…俺やあいつの前でくらい心の仮面を取ったらどうだ?今更遠慮する間柄でもあるまいに。」

 

アドニスの言葉に、スザクも笑みをこぼして進軍を再開した。

 

 

 

 

「順調だな。藤堂さん、ジュリアス、このまま一気に進軍する!」

 

「了解した!」

 

降下した蒼焔の隣に、藤堂の為に製造された新型機、昇月が現れる。その後方には、ゼロ専用機として設計された真母衣波の同型機、真母衣波 零式の姿もあった。三機はスピードを上げると、一気に王城へと突撃する。だが彼らの前に、ナナリーを襲った際にも現れた、量産機と思われる複数の飛行型ナイトメアフレームが立ち塞がった。

 

「ジュリアス、先に行け!君の手でナナリーを助けるんだ!」

 

「ああ、すまない!C.C.、ギアスユーザーがいたら対応を頼む!」

 

蒼焔と昇月が次々敵機を撃墜してゆく。それによって出来た道を通って、真母衣波は王城へと突入した。

 

「シャムナ様、ここは危険です!避難を…!」

 

「必要ありません。」

 

ナナリーが拘束されているポッドの真下に設置されたベッド型の装置に入り込んでいるシャムナは、部下からの勧告にも耳を貸さないでいた。

 

「今は少しでも、システムの完成を急ぐだけのこと…」

 

しかし直後、真母衣波が彼女らの前に現れる。壁面を破壊して現れた真母衣波は、内蔵型機銃でシャムナの部下達を撃ち殺した。

 

「降伏せよ、このゼロの名を恐れるのなら。」

 

真母衣波のコックピットより、ゼロの衣装を着たジュリアスが現れる。

 

「さすがね…シャリオはあなたの事を、死んだ筈の枢木スザクだと思っていたようだけど別の人?それとも何人もいるのかしら?」

 

「お前ごときと会話をする気はない。用があるのはナナリーだけ。降伏すれば殺しはしない…国を滅ぼしたくなければ、我に従え!」

 

その言葉を聞いて、シャムナは蔑むような笑みを浮かべて彼に返答した。

 

「殺さない?フフッ…降伏は無理ね。」

 

「民を守る気はないのか?もう一度言う、降伏しろ!」

 

その言葉とほぼ同時に、真母衣波の足元へC.C.が現れる。彼女はシャムナの姿を見て、彼女が力を持っている事を理解し、ジュリアスへと通信を繋いだ。

 

「あの女、ギアスを持っていると思うが…能力は分からない。」

 

「そうか。」

 

二人の前で、シャムナはセプターを地に着ける。するとナナリーが拘束されているポッドが赤く染まり、彼女の姿が見えなくなった。

 

「6時間前だと…ちょうどお風呂に入っていた頃かしら?」

 

「貴様!」

 

ゼロが咄嗟に手に持ったスイッチを押す。直後に真母衣波の機銃から弾丸が放たれ、シャムナの左胸を貫いた。

 

「うっ……正々堂々と闘えば、我が国の戦士は絶対に負けない…また、会いましょう。」

 

シャムナが言い終えると共に、彼女の瞳にギアスの光が宿る。何が起こったかを理解できるのは、この場にはシャムナ以外には誰もいなかった。

 

 

 

 

「ハッ…!」

 

シャムナが全てを認識した時は、部下達を連れてシャリオと大浴場で入浴している場面だった。

 

(また、私の人生だけが6時間リセットされたか…)

 

何かを考え込む様子を見せるシャムナに、それを不審に思ったシャリオが問い掛ける。

 

「どうしたの、姉さん?」

 

「…少し待ってちょうだい。フォーグナーに繋ぎなさい。」

 

彼女はシャリオが寝かされているベッドから手を放すと、部下達の方へ向けて歩き出す。

 

「予言を受けたんだね。」

 

「ええ、そうよ。」

 

部下がボルボナ・フォーグナーと通信を繋げた状態のラップトップをシャムナに向ける。

 

『姫様、フォーグナーです。』

 

「よく聞きなさい。これより6時間…いえ、それより少し前に反乱が起こります。黒の騎士団のナイトメアもいるので何らかの策略かもしれません。また、ゲフィオンディスターバーを使ってこちらのナイトメアの動きを封じられます。詳細は後ほど伝えますが、まずは警戒レベルを上げるように。」

 

『ナム・ジャラ・ラタック。全ては、予言のままに。』

 

通信が終わった事を確認したシャムナは、それでもラップトップを見詰めたままその場に立ち続けていた。

 

(ゼロ、あなたが嚮主様を味方につけようと私には決して勝てない…このシャムナは死ぬ度に人生をやり直すさだめ…どんな手で来ようと、経験の積み重ねがこのジルクスタンをつくりかえる。そして、次こそは手に入れてみせましょう、世界を、狂王を…)

 

「姉さん?」

 

上半身を起こしたシャリオの元へ戻ってくるシャムナに向けて、シャリオが声をかける。

 

「私はねぇシャリオ…私達の国に力がないのも、あなたに頼らなければならない事も全てが許せない。」

 

「僕の事なら、気にしないでいいのに…」

 

シャムナはゆっくりとシャリオに歩み寄りながら、自身の決意を口にした。

 

「いいえ、世界は間違っている。私は、予言の力で世界を正してみせる。」

 




昇月
体高 4.9メートル
重量 8.89トン
藤堂の為に設計された新型機で、強化型の飛翔滑走翼を装備。斬月同様に衝撃拡散自在繊維が搭載され、武装はブレイズルミナス発生型制動刀、ブレイズルミナス発生型飛燕爪牙、内蔵型ハドロンガトリング砲。

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