コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode6 Our only way

シャムナがギアスを使って過去に戻ってから六時間近くがたった。ジルクスタン首都内では、反乱を企てた兵達が着々と捕らえられている。その様子を、王城からボルボナ達が確認していた。

 

「さすがは姉さんの予言。だけど、本当に逃げたゼロが現れるのかな…?」

 

シャリオは車椅子を動かしながら呟く。それを受けて、ボルボナはそれを受けて、シャムナに一つ提案をした。

 

「姫様、非常警報を発令しましょう。敵の策が上手くいっているように見せかけるのです。」

 

「残った敵をあぶり出すか…よかろう。」

 

 

 

 

 

「何っ!?」

 

蒼焔が放ったゲフィオンミサイルは、首都に着弾する直前に大半が撃ち落とされていた。円形に囲まねば効果を発揮しないゲフィオンディスターバーは、これで無効化されてしまったと言っていい。

ライは蒼焔を降下させると、真母衣波に騎乗するジュリアス、昇月に騎乗する藤堂と合流した。

 

「読まれた…?しかし、どこから情報が…」

 

ジュリアスと藤堂に問いかけるライ。だがその答えが返ってくる前に、他の部隊から通信が入った。

 

『こちらは地上進行部隊、日向隊です!進軍方向に多数の敵影、待ち伏せされています!』

 

さらに、海上で不足の事態に備えていたルーンからも通信が入る。

 

『こちらも多数の敵機に囲まれているわ!これは、策が読まれたということ!?』

 

「まさか、こちらの策を全て…?そんなことが…ハッ…!スザク!アドニス!そちらはどうなっている!?応答しろ!スザク!アドニス!」

 

 

 

 

 

その頃、二人は作戦開始に備えてナイトメアの中で寛いでいた。しかし直後に衝撃がランスロットsinとランスロット・クラブ・レインを襲う。

 

「なっ…!?」

 

アドニスが見た先には、大量のジルクスタン製ナイトメアに加え、ビトゥル専用ナイトギガフォートレス、バタララン・ドゥの姿があった。

 

「ハハハ!ホントにいやがった!マヌケが!」

 

バタララン・ドゥが六基のハーケンを起動し、レインに向けて放つ。ハーケンにはブースターが着いており、アドニスですら予測できないような動きでレインを追った。

 

「このバタララン・ドゥ!サシの殺り合いならよお!」

 

一基のハーケンがレインを捕らえる。ビトゥルはすぐにそれを巻き戻すと、引き寄せられたレインの目の前で熱戦砲を起動する。

だがそれは、ランスロットが放ったスラッシュハーケンによって方向を剃らされ、地面に激突した。

 

「アドニス、距離を取れ!機動力で…」

 

言いかけたスザクのランスロットに、ナギド・シュ・メインが斬りかかった。ナギドはスザクが見せたように空中で横回転して蹴りを放つと、さらにナギドのモードを変更する。

 

「メギストスオメガ・フルバースト!」

 

シャリオの言葉と共に、残像が残る程のスピードで移動を始めるナギド。それを見たアドニスは、ある決断を下す。

 

「他の部隊と通信が繋がらない!スザク、お前は離脱してライ達と合流しろ!」

 

「しかし、君一人で…」

 

アドニスの言葉を拒否しようとしたスザクを遮り、彼は言葉を続ける。

 

「なめるな!時間稼ぎくらいはできる!それよりも、今は情報が最優先だ!ライと合流し、何が最適か判断して動け!」

 

「…分かった。後で会おう、アドニス。」

 

機体を翻すスザク。ナギドがそれを追おうとするが、アドニスがブレイズルミナスソードで攻撃を加えた。

 

「頼むぞスザク…!このままでは、俺達の敗北は確実だ。」

 

 

 

 

 

 

「クソッ…!策が完全に封じられた以上、ナナリーを助けるなら正面突破しか道はない…なんてザマだ!!だけど、僕達なら!藤堂さん、ジュリアス!我々は今から王城に突撃をかける!僕の後に続いて下さい!」

 

「…致し方ない!」

 

蒼焔を先頭に、進撃を開始する三機。しかし王城付近では、多数の量産機、ブランシュフォールが行手を塞いでいた。

 

「押し通る!」

 

次々とブランシュフォールを破壊してゆく蒼焔と昇月。だがその彼らの前に、ワンオフ機と思われる機体が複数現れた。その中には、エナジーウイングを装備している機体すらある。

 

「なっ…何故エナジーウイング装備型が…!?」

 

予想外の事態に驚きの声を上げるライ。彼の言葉に答えたのは、敵部隊の先頭に立つアダムであった。

 

「ナイトメアを造れれば場所なんてどこでもいいって男、てめぇならよく知ってんじゃねぇのか!?」

 

「まさか…タカムラ博士が!?」

 

アダムの返答に、今日何度目か分からない驚きの声を上げたライ。彼の反応に満足したのか、笑みを深めながらアダムはさらに言葉を続ける。

 

「俺らは元ブリタニアの傭兵部隊、12ラウンズだ!俺らはてめぇらの下で闘ってた事もあるんだぜ!

おいてめぇら!指揮官だけは捕らえろとお姫様からのお達しだ!ここで功績を上げて、この国で確固たる地位を築くぞ!気合い入れろ!!」

 

「「おおっ!!」」

 

アダムの乗機、三対のエナジーウイングを装備したハークレイが二丁の小型レールガンを手に取る。蒼焔にそのレールガンが向けられた事で回避行動に移るライであったが、直後にとてつもない轟音が彼を襲った。

 

「フム…やはり並の反応ではないな。」

 

そちらを見ると、これも三対のエナジーウイングを装備したボトムスの乗機、ストーンコールドが馬鹿でかいとしか表現出来ない程巨大な拳銃を、一瞬前まで蒼焔がいたはずの場所に向けていた。それを見て一旦下がろうとした蒼焔に、こちらも三対のエナジーウイングを広げ、前腕と脚部に小型のフロートが装備されたフロスト専用機であるレオニダスが、長剣型のブレイズルミナスソードを構えて突撃をかけている。

 

「くっ…!タカムラ博士があちらについているなど想定外すぎる…!藤堂さん、ジュリアス!僕が殿を務めるから撤退して下さい!」

 

レオニダスの斬撃を受け流しながら二人に伝えるライ。だが藤堂は、彼の判断を否定した。

 

「いや、残るべきは私だ。」

 

彼は昇月を前に出すと、レオニダスと剣を合わせる。

 

「しかし、藤堂さん…!」

 

「ライ君、ジュリアス。もう一度攻勢をかける為には君達の力は必ず必要だ!それに、ここでライ君に何かあればこちらの指揮系統は崩壊する!今は君が退くんだ、ライ君!」

 

藤堂の言葉を受け、ライは一瞬逡巡する。藤堂の言うことは正しいが、これは自分の判断ミスが招いたことである。その為に、彼を置いて自分が戦線を離脱するなどライには出来る事では無かった。だが、その逡巡が命取りとなる。遠方からの狙撃が、蒼焔の動力部を貫いた。

 

「ぐあっ…!」

 

衝撃でコックピットの壁に叩き付けられるライ。蒼焔は脱出機構が作動し、コックピットを射出する。それを、こちらに駆け付けたランスロットが受け止めていた。

 

「ム…これで指揮官は捕らえたと思ったが…」

 

ビルの上で伏射姿勢となり、狙撃用レールガンを構えた機体、マックールの中でダニエルが呟く。彼の視線の先では、ランスロットが徐々に戦線を離れようとしていた。

 

「スザク君!彼を頼んだぞ!」

 

「藤堂さん…!」

 

スザクは歯軋りしながらも、ジュリアスと共に撤退するしか道は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…」

 

ライが目を覚ますと、そこは斑鳩の医務室であった。どうやら蒼焔が撃墜された後、回収されて斑鳩に運ばれたらしい。

ライが視線を横へと向けると、そこには自身の左腕を握って目に涙を浮かべるカレンの姿があった。

 

「ライ!」

 

ライが意識を取り戻した事に気付くと、カレンは声を上げて彼に飛び付いた。それによって全身の傷が痛むものの、気持ちの部分では幾分か落ち着いたライは疑問を口にする。

 

「カレン…どうして…?」

 

「シュナイゼルの命令でな。後詰めとして俺達が送られた訳だ。」

 

それに答えたのは彼女の後ろに立っていたロックだ。彼の横には、アーニャとラクシャータ、ジェレミアもいる。

 

「聞くところによるとどうやら完敗したようだが…一体何があった?」

 

ロックの問いに、ライは何故こうなったかを思い出す。そして、自分を逃がす為に囮となってくれた人の事も。

 

「…藤堂さんは!?それに、スザクとアドニスは!?」

 

その問いに、ライから身体を離したカレンが答える。

 

「スザクとアドニスは上手く撤退したそうよ。でも、藤堂さんは捕まったみたい…」

 

「…クソッ!僕のせいだ!!僕があの時一時後退を指示していれば…!!」

 

ライは思わずベッドに拳を叩き付ける。その姿を見て、ロックが彼に言葉を投げ掛けた。

 

「後悔してももう遅い。それで、これからどうするつもりだ?聞くところによると敵に何故策がバレたのかは不明で、かつ敵主力には第九世代相当のナイトメアが複数確認されているそうだな。お前の蒼焔も撃墜された上に地の利が望めない以上、ハッキリ言って勝目は相当薄いぞ。」

 

彼の意見に、ライは現実を突き付けられて黙り込む。するとそこへ、ジュリアス・キングスレイが入室した。

 

「…目が覚めたのか、ライ。」

 

「ああ、すまない。迷惑をかけた。それよりジュリアス、今回の策が漏れたのは何故だと思う?」

 

ライの問いに、ジュリアスは少し考え込む。

 

「C.C.の話では、聖神官シャムナは何らかのギアスを持っているようだった。だが、その能力が分からない。もしかしたら何かしら先読みの…」

 

「…ジュリアス、スザクが捕らわれた時、まるで分かっていたかのように罠が仕掛けられていたとの話があったね。」

 

ジュリアスの言葉の途中で、ライあることに気づいた為に彼の言葉を遮った。

 

「事前に起こる物事が分かっているのなら、シェスタールを助けなかったのは何故だ?僕らが侵入した時も、分かっていたならクジャパッドの部隊だけでなく、フロスト達を送り込んでいたはず…自身の目で見たものしかわからないのか?しかし、それでは罠に説明がつかない。……いや、違う!…時間回帰なら全てに説明が付く!!」

 

ライの言葉に、その場にいた全員がハッとする。彼の予想通りであれば、全ての勝負を後出しでジャンケンできるようなものであり、ハッキリ言って対処の方法が皆無に近かった。

 

「だが、シェスタールが死んだままだというのは…」

 

ジュリアスの疑問に、再びライが答えた。

 

「回帰できる時間に制限があるのかもしれない。僕らが監獄を脱出したのは11時頃、車で直接王城へ報告しに向かったとすれば、9時間近くはかかる筈…」

 

「なら、その9時間を制限時間として行動すべきだな。だが、俺も対処方法が思い付かない。どうするつもりだ?」

 

再度問い掛けるジュリアスに、ライは頭をガリガリとかきながら答えた。

 

「…正直、対処できる気はしない。だが、賭けのような方法で良ければ一つだけ思い付く。ラクシャータさん、あれは持ってきていますか?」

 

ライの問いに、ラクシャータは片側の頬を上げる不敵な笑みを浮かべながら返答した。

 

「当然。」

 


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