コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode8 Liedice Rio Britannia

「お兄様…?」

 

「久しぶりだな、ナナリー。」

 

Cの世界で、ルルーシュとナナリーは再会を果たしていた。ナナリーダモクレス戦以降、彼に一度だけ、それも短時間しか会えていなかった為に素直に驚きを表していた。

そんな二人の前に、黒い球体が現れる。

 

「あれは…?」

 

「さあ?いろんな人の心残りだとしか…」

 

しかしルルーシュの言葉の途中で、二人の周囲を大量の黒い靄が覆う。同時に、二人はCの世界の深部へと落下してゆく。

 

「きゃああぁぁぁっ!!」

 

「チィッ…せめてナナリーだけでも!」

 

なんとか上に彼女を送ろうと、腕に力を込めたルルーシュにナナリーはしがみつく。

 

「イヤです!お兄様に、まだ何もお話できていませんもの!まだ、何も…!」

 

「クソッ…この空間を形づくる数多の思いよ!ジュリアス・キングスレイが命じる、お前達は…」

 

最後の抵抗としてギアスを起動するルルーシュ。だが、彼が命令を下す前に、無数の手が二人を受け止めていた。

 

「これは…」

 

「君達を助けるのは、どうやら世界の意思みたいだね。」

 

「…ライさん!」

 

二人の前に現れるライ。彼が言うと同時に、三人はその手によって上空へと押しやられ、Cの世界を後にしたのだった。

 

 

 

 

「失敗する可能性の方がはるかに高かったのに、それでも成功したのは人々の平和への思いがあったからこそだな。」

 

現実世界に戻ったライは月下のコックピットに入ってハッチを閉じると、ブレイズルミナスを展開したままジルクスタンへと急降下した。部隊に合流した彼を待っていたのは、王城から出撃する12ラウンズの機体とナギド・シュ・メイン、そしてバタララン・ドゥの姿であった。先頭には、アダムが騎乗するハークレイの姿があった。

 

「ハッ…!どうやら俺達が楽しんでいる間に、あのいけ好かねえ女は敗れたみたいだな。」

 

アダムの無礼な言葉に、シャリオは思わず激昂した。

 

「いけ好かないだって!?お前…!」

 

「シャリオさんよぉ、あんた、一人でこいつらを退けられるか?無理だろ?なら、ここは俺達に頼るしかないんじゃねえのか?」

 

アダムの言葉を受け、シャリオは眼前に展開する騎士団を見る。本隊を率いて戻ってきた彼らを、シャリオ一人で抑えることなど出来る筈がないのは、誰の目にも明らかであった。

 

「シャリオ、決断しろ。お前だけでもこの国を立て直すと。我々が傭兵としてその露払いをしてやる。」

 

アダムに続くボトムス。それを受け、シャリオは決断を下した。

 

「…アダム、ここは、君達と協力する。だけど!」

 

「分かってるってぇの!だが、指揮は任せて貰うぜ!てめえら、出番だ!」

 

アダムの言葉と共に、王城付近から数え切れない程の量産機であるブランシュフォールが現れた。彼らは世界が平和になったことで仕事を失い、その後アダムの呼び掛けに応じて集まった世界中の傭兵達である。

 

「いいか!俺ら12ラウンズは世界最強の傭兵部隊だ!こいつらを蹴散らし、俺らは俺らの生きる意味を!有用性を証明する!そしてこの国で、世界で!確固たる地位を得るぞ!覚悟はいいか!?」

 

「「おおおぉぉぉっ!!」」

 

鬨の声を上げ、陣を組み上げていく12ラウンズとジルクスタン王国軍の前に、月下特式がゆっくりと進み出た。月下は左腕を掲げると、輻射波動砲弾を上空に放つ。

 

「私は、黒の騎士団総司令紅月ライ。またの名を、狂王ライディース・リオ・ブリタニア!!この名を聞いてもなお私の前に立ち塞がるというのならば容赦はしない。貴様らの望む通り、正面から叩き潰してやろう!!」

 

「狂王…あの噂は本当だったというのか!?」

 

ライの宣言に、フロストが思わず声を上げる。他の12ラウンズの面々や、シャリオも驚きを隠せないでいた。それでも、彼らは退こうという様子は一切見せなかった。それを見たライは、彼らに向けて高々と宣言する。

 

「私の前に立ったことを、後悔させてやろう!!」

 

そう言って、ライは部隊に指示を出す。彼は各小隊に偃月の陣を敷かせ、それを長蛇の陣で一列にまとめ、敵陣へと突撃した。広く部隊を展開していたジルクスタン王国軍は、一瞬で部隊を纏めて一点突破をかけてきたことに意表を突かれ、それに対応できずに動揺する。その動揺が収まらぬ内に、ライは敵陣内で部隊を左右に分け、散々に敵機を食い散らかしてから側面を破って脱出した。右側の部隊の先頭は月下、左側の部隊の先頭は紅蓮だ。そして両部隊は一瞬で元の位置に戻ると、今度は部隊を広く展開した。

 

「チィッ!てめえら、すぐに体勢を立て直せ!反撃に出るぞ!」

 

ライの作戦により部隊に散々穴を開けられたジルクスタン王国軍は、アダムの指示で迅速にそれを塞いでゆく。しかしそれを待ってくれる程、ライは甘い相手では無かった。

 

「暁隊は右翼、ワイバーン隊とクインローゼス隊は左翼に回れ!紅蓮はこのまま、私と中央を進め!」

 

ライの命令に従い、即座に鶴翼の陣をしく騎士団員達。彼らは高速で進軍しつつもゆっくりと敵軍を押し包み、確実に敵戦力を削っていった。

 

「慌てんな!こっちも陣を組み替えるぞ!主戦力は中央に集まれ!!」

 

アダムは迅速に陣を敷く。日本で言う魚鱗の陣を組み上げたのだが、しかしそれが終わった時には、騎士団のナイトメアは全ての攻撃を辞めて急降下していた。

 

「今だ!放て!」

 

ライの命令に従って斑鳩艦首から重ハドロン砲が放たれる。意表を突かれ、それに反応出来なかった多数のブランシュフォールが飲み込まれていった。

 

「カレン!」

 

「ええ!」

 

紅蓮と月下が敵陣中央へ突撃する。そして紅蓮は左腕で、月下は右腕でお互いの機体の手を取ると、両機はその場で回転しながら周囲へ向けて輻射波動砲弾を放った。なんとかそれを避けた12ラウンズの面々が体勢を立て直して反撃に移るより早く、紅蓮と月下は敵陣を離脱する。アダム達がそれに気付いた時には、上空からランスロットとレインによって、多量の刃状ブレイズルミナスが撃ち込まれていた。

 

「なんだこれは…なんなんだこれは!!練度があまりにも違いすぎるじゃねえか!!なんでここまで差がありやがる!?」

 

アダムの疑問にルーンが答える。彼女の言葉は、アダム達の在り方を否定するものでもあった。

 

「騎士団の団員は、お兄様を中心として世界の為に、そして他者の為にという思いで一つに纏まっているの。自分達の事しか考えられないあなた達とは、思いの強さが違って当たり前だわ!」

 

「思いの強さだと!?ふざけんじゃねえ…そんなものの為に負けるってか…!?てめえら!!二人一組で当たれ!あいつらの主力を無力化し、指揮系統を潰すぞ!」

 

アダムの言葉に従い、12ラウンズとシャリオ、ビトゥルはそれぞれ二人一組となる。しかし騎士団主力とその状態で当たる為には、その主力を本隊から切り離す必要があった。

 

「よし、突っ込むぞ!まずは手前の雑魚どもから…あん?」

 

指示を出そうとするニコラスの目の前で、騎士団の主力部隊が続々と前に出てきていた。

 

「私は、軍隊としての君達だけではなく、個々としての君達の強さも理解している。だからこそ、君達の勝利を信じ、奴等に傭兵としての最後をくれてやろう!」

 

「「おおっ!!」」

 

ライの言葉に従い、それぞれが敵主力との決戦に望む。ライもカレンが騎乗する紅蓮とペアとなり、向かってくるハークレイとストーンコールドとの闘いに臨んだ。

 




紅蓮・真
5.01メートル
8.77トン
カレン専用機としてラクシャータが開発した機体。ランスロットsinと同様のエナジーウイングを装備しており、名称もそれに合わせられている。

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