コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

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episode13 DOUBLE ACE

縦横無尽に空を駆ける月下特式と紅蓮・真。同等のスピードで追い縋るハークレイとストーンコールドであったが、息の合ったコンビネーションでポジションを入れ換えながら攻撃を繰り出す月下と紅蓮を相手に、二機は苦戦を強いられていた。

 

「クソがっ!!ボトムス、何とかあいつらを引き離せ!」

 

「了解!」

 

ストーンコールドが特大の銃撃を放つ。だが月下と紅蓮はあえてそちらへ向かうと、ギリギリでそれを避けてそれぞれの右腕と左腕を二機に向けた。

 

「まずいっ!!」

 

咄嗟に散開するハークレイとストーンコールド。先程までいた場所を、特大の輻射波動砲弾が通り抜けていった。

 

「この野郎が…!」

 

ハークレイとストーンコールドが並んで刃状ブレイズルミナスを放つ。だが紅蓮は落ち着いて輻射波動で防御すると、その後方から舞い上がった月下がお返しとばかりに刃状ブレイズルミナスを放った。二機はそれを避ける為に後退するが、月下と紅蓮は間髪入れずにハークレイへと襲いかかる。

紅蓮の右腕からなんとか逃れたハークレイであったが、退避した先には月下が待ち構えていた。

 

「な、んで…!?」

 

咄嗟にストーンコールドがフォローに入ったことで難を逃れるが、その為にストーンコールドは月下の蹴りをくらって弾き飛ばされてしまった。

 

「どうした?お前の力を見せてみろ、アダム!」

 

月下が猛攻を仕掛ける。防戦一方のハークレイは、なんとかそれを逃れようと退がり続けた。そこへ、さらに横から紅蓮が攻撃を加える。

 

「黒の騎士団の双璧に、勝てる訳がないでしょ!」

 

紅蓮がMVSを振るう。ハークレイはそれもギリギリで避け、月下が突き込んだブレイズルミナスソードにも自身の銃を横っ腹に当てて逸らした。

 

「何が双璧だ!一対一なら、負けるこたぁねえんだ!」

 

「…なら、そうしてあげてもいいわよ。」

 

カレンが答えると同時に、紅蓮がストーンコールドの方へと向かう。月下はハークレイの前で左腕を上げ、紅蓮は右腕を上げて構えをとった。

 

「…余裕のつもりか?後悔するぞ。」

 

ボトムスはそう言うと、砲口下部からブレイズルミナスソードを出現させた。

 

「あんたこそ、私達に闘いを挑んだ事を後悔させてあげるわ。それに、私の大事な人を傷付けた報い、受けてもらうよ!」

 

紅蓮がストーンコールドの周囲を超高速で飛び回る。ストーンコールドもそれに合わせて移動しながら銃を放つが、紅蓮には一発として当たらない。

 

「それが闘いだ。それが戦場だ。そしてそれこそが、我々の生きる道だ。薬物の実験台とされ、肉体改造も受けた。これ以外にどんな道があるというのだ!?」

 

紅蓮は急降下しながら輻射波動砲弾を放つが、ストーンコールドも当てさせない。

 

「あんたらの境遇には同情するよ!けど、だからってこの平和を崩していい理由には…あんたらの感傷に世界を巻き込んでいい理由にはならないんだよ!」

 

接近したストーンコールドがブレイズルミナスソードを振るう。紅蓮はそれを輻射波動でガードすると、MVSでの斬撃を返す。しかしそれは、ストーンコールドが放ったスラッシュハーケンにより逸らされた。

 

「それは一方的な見方だ。我々からすれば、お前達こそ平和を押し付けた世界の敵だ。」

 

「それこそ一方的な見方だわ!そんな事が、許されると思っているの!?」

 

ストーンコールドの放った銃弾が、紅蓮のエナジーウイングを掠める。それでもカレンは焦ることなくストーンコールドとの距離を徐々に詰めていった。

 

「虐殺を行った狂王の事を分かっていてそれを言うのか?お前の言葉には…」

 

「彼とあんたとは違う!自分達の都合を押し付けるあんたと、誰かの為に闘う彼とじゃ…!そんな事も分からないの!?」

 

輻射波動砲弾、輻射波動ワイドレンジ、スラッシュハーケンを使い分けてストーンコールドを追い込もうとするカレン。対するボトムスもその巨大な銃とブレイズルミナスソード、スラッシュハーケンを操り反撃を行う。ボトムスは紅蓮の接近を阻み、ストーンコールドが得意とする中距離を保つ為に銃を撃ち続けた。

そして、ついにストーンコールドの照準が紅蓮を捉える。

 

「どれだけ崇高な理念があろうと、これでお前の敗けは決まった。潔く塵となれ!」

 

ストーンコールドが引き金を引く。それと同時に紅蓮は右腕を引くいて手首から先を回転させると、そこに輻射波動のドリルを形作った。

 

「この時を待ってたのよ!」

 

ストーンコールドに向けて一直線に突撃する紅蓮。その右手が、弾丸ごとストーンコールドを貫いた。

 

「ば、馬鹿な…ここが俺の、爆心地だと…」

 

爆発するストーンコールドに背を向けた紅蓮の中で、カレンはボトムスに向けて呟く。

 

「さようなら。あんた、強かったよ。」

 

 

両手に持った銃を速射し、月下を追い続けるハークレイ。月下は空中で何度も軌道を変えながら、その弾丸から逃れていた。

 

「逃げてばっかじゃ、闘いには勝てないぜぇ!狂王様よぉ!」

 

さらに上空高く舞い上がる月下。ほとんど垂直に近い角度で銃弾を放つハークレイであったが、月下は左腕の輻射波動でそれを受けきった。

 

「一つ質問をしてもいいかな?アダム・ストローマン。」

 

ハークレイの周囲を飛び回りながら、ライが問い掛ける。

 

「なんだぁ?時間稼ぎでもしようってのかぁ!?」

 

返答しつつさらに銃撃を加えるアダム。それを避けながら、ライは彼に自身の疑問を伝えた。

 

「黒の騎士団ではなく、ジルグスタンへ下ったのは何故だ?我々と敵対しない道だってあったはずだ。」

 

「ハッ…!敵対していた組織に下れってか!?それこそ命を投げ出すようなものじゃねぇか!!ふざけんじゃねぇ!!俺らの苦しみも知ろうとしねぇで、上から偉そうに語ってんじゃねぇよ!!」

 

ハークレイがルミナスハーケンを放つ。月下はそれを曲芸飛行で全て躱すと、さらにアダムへと質問を重ねた。

 

「だから世界の敵になると?人々の幸せを踏みにじり、再び世界を混沌へ導くのが正しいとでも思っているのか!?」

 

接近して月下に向かってMVSを振り下ろすハークレイ。だがそれも、ブレイズルミナスソードによって弾かれる。

 

「少なくとも俺らにゃ選択肢は無かった!!俺らを利用するだけ利用しといて、ナメたこと言ってんじゃねえぞ!!」

 

「周りの状況を言い訳に使うのか?そうやって目の前の現実から逃げ、自分の都合のいい方へと流れてきた結果が、お前達を追い込んだんだと分からないのか!?」

 

再び高速飛行へと移った月下。ハークレイは離されぬよう背後に付く。

 

「言い訳だとぉ!?世界を壊した張本人であるテメェが…!」

 

「私は、世界の為に抗い続けた者達を知っている!だからこそ、お前達のような存在を否定する!」

 

ハークレイがルミナスハーケンで月下の正面を塞ぐが、隙間をすり抜けるようにして月下はそれを突破した。

 

「俺達はどこまでいっても傭兵だ!それ以外に生きる道なんて、ありゃしねえんだよ!」

 

その言葉を聞いたライは月下を反転させ、ハークレイと向き合う。そして、ハークレイにブレイズルミナスソードを向けながら彼への思いを告げた。

 

「なら、私がお前に傭兵としての死に場所を与えてやる!それが、お前達への最後の餞だ!」

 

月下がハークレイに向かって突撃する。その直線的な動きにハークレイは銃を速射するが、弾丸は全てすり抜けるようにして月下の後方に飛んでいった。

 

「なっ…何だ今のは!?」

 

ブレイズルミナスソードを振り上げる月下。ハークレイは咄嗟にMVSで防御するが、MVSは半ばから真っ二つに切断された。直後に大きく開いた左腕が迫るも、ハークレイはギリギリで回避すると月下から距離を取った。

 

「あの時とは見違えるような動きだな…だがなぁ、俺にだって負けらんねぇ理由があんだよ!俺達全員が生きる道を!世界を手に入れる為に!」

 

ハークレイが前腕と腰に着いている四基のルミナスハーケンを射出する。それに続けて背部からさらに四基のルミナスハーケンも現れた。

 

「ならばこそ、私はこの平和を守る為に闘おう!」

 

月下の頭角部が開き、全身をブレイズルミナスが覆う。それに当たったハーケンが弾かれたのを確認すると、ハークレイに向けて輻射波動砲弾を放った。

 

「チィッ…!だが、この程度なら!!」

 

ハークレイも機体前面にブレイズルミナスを展開する。輻射波動砲弾はそれにぶつかり、機体までは届かない。

 

「どうした!?こんなもんか狂王様よぉ!」

 

再び銃を月下に向け、速射する。それを躱した月下は、左腕を振り上げて掌を開く。するとそこに輻射波動が集束し、2メートル程の細長い槍を作り出す。そしてそれを、ハークレイに向かって投擲した。

 

「お前が言う程度とは、どの程度だ?」

 

超高速で飛来する槍をなんとか躱すハークレイ。だがその後方で槍は大爆発を起こし、その煽りを受けてハークレイは大きく体勢を崩した。

 

「ぐぉっ…!な、なんだありゃ!?」

 

動揺するアダムは一瞬月下から視線を外してしまったことで、急接近してきていることに反応が遅れた。そしてそれは、この場では間違いなく命取りとなってしまう隙であった。

 

「アダム。これで、終わりだ!!」

 

ハークレイの頭部を、月下の左腕が掴む。ライが輻射波動を起動させると、ハークレイの各部が徐々に膨れ上がって原型を無くしてゆく。

 

「まぁ、戦場で死ねるってぇのは、傭兵としては、本懐か…」

 

アダムが呟いたのとほぼ同時に、ハークレイは爆散した。

 

「…アダム。自分だけではなく、仲間を生かす道を探そうとした、その部分だけは尊敬するよ。」

 

落下してゆく残骸を見つめながら、ライはそう口にした。それと同時に、紅蓮が月下の隣へと降り立つ。

 

「ライ。私、決めたわ。」

 

「ん?何をだい、カレン?」

 

久々に味方として戦場を共にしたカレンが、何かを決意した表情でライに告げる。

 

「私はやっぱり、あなたの隣に立っていたい。卒業したら、黒の騎士団に戻らせて欲しいの。」

 

「でもカレン、これから君には色んな選択肢が…」

 

ライの言葉に、カレンは微笑みを浮かべながら首を振った。

 

「これは私が選んだ事よ、ライ。あなたの親衛隊隊長として、私はあなたの隣に立ち続けるわ。」

 

「…聞き捨てならんな。つまり俺にその立場を譲れと?」

 

オープンチャンネルで話していた為、二人のやり取りは周囲に聞かれていた。そして現在の親衛隊隊長であるアドニスが、二人の会話に割って入ったのである。

 

「アドニス、私が卒業するまでは、零番隊を預けておくから。」

 

「馬鹿を言え。零番隊の隊長は俺だ。欲しければ、奪い取ってみせるんだな。」

 

アドニスの言葉を聞き、カレンは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

神殿内にある格納庫へと飛び込んだ灰塵弐式とモルドレッド。奥へと機体を進めると、パソコンの前に立って肩を落とす一人の老人の姿があった。

 

「まさかあんたを捕縛する日が来るとはな、タカムラ博士。」

 

「ロック…ワシが自分の道を、自分の理想やと思う最強のナイトメアを造るには、こうするしかなかったんや。ラクシャータやロイド達の手が入らへん、自分だけのナイトメアを…」

 

ロックは灰塵弐式の腕を伸ばし、タカムラを確保する。

 

「だが、あんたはその為に俺達の敵となった。ならば、この結果も当然想定済みだろう?あんたには恩があるが、かと言ってこれを見逃せる程、事態は小さくないぞ。」

 

「分かっとるわ。やからこそ、最後はワレの手で殺してくれへんか?」

 

タカムラの頼みを、ロックは即座に否定した。

 

「断る。これだけの事をやっておいて、死を逃げ道に使うな。自分が仕出かした事を悔い、罪を償え。」

 

ロックは彼に伝えると、そのまま斑鳩へと引き返した。

 




次で終わりです。

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