コードギアス Hope and blue sunrise   作:赤耳亀

8 / 73
episode2 Justice from guilty

「これはどう受け取ったらいいのかしら?」

 

パイロットスーツに着替えたカレンが星刻に問う。

 

「ゼロが現れたら、動いてくれていい。」

 

「我々なら、例えブリタニアに発砲しても知らん顔を決め込めると?」

 

星刻の後ろから、C.C.が問いかける。

 

「悪い取引ではないはずだ。」

 

「武官と聞いていたが、政治もできるようだな。」

 

C.C.は星刻の才覚に感心する。中華連邦という、大宦官達が支配する腐りきった国には、とても収まりそうにはない器の持ち主に見えた。

 

「これはあくまで私個人の願望だが…君達が言うライという男に興味があってな。ゼロとは別に私も一度会ってみたいと思ったのだ。」

 

だから、総領事館内での戦闘を見逃すという。もちろん高亥を亡き者にできたことに対する恩もあるのだろうが、それを考えても相当な譲歩と言って良い。

 

 

 

「イレブン達よ!お前達が信じたゼロは、現れなかった。全てはまやかし!奴は、私の求める正々堂々の勝負から逃げたのだ!──構え。」

 

通告していた時間となったことで、ギルフォードが領事館周辺に集まった日本人に告げ、部下達に銃を向けさせる。その光景を前にしても、あまりの戦力差にカレン達は動くことが出来ない。

しかしその直後、ゼロのものと思われる声が響き渡った。

 

「違うな。間違っているぞギルフォード!」

 

「成る程…後ろに回ったか!ゼロ!」

 

ギルフォードはグロースターを振り向かせる。そこには無頼のコックピットに立つゼロの姿があった。

 

「貴公が処刑しようとしているのはテロリストではない。我が合衆国軍、黒の騎士団の兵士だ!」

 

「国際法に則り、捕虜として認めよと?」

 

無頼はギルフォードに向かって歩を進める。囚われた扇達も、ゼロが本物なのか疑っていた。例え本物であったとしても、この状況を覆すのは不可能に見えた。

 

 

 

 

「どうするつもりだ…カレンも出れないし、ライもいない…あの状態で勝つつもりか?」

 

C.C.が無頼のコックピット内で呟く。一方のカレンは自らブリタニア軍に囲まれる状態を作り出したゼロを心配しつつも、磔にされているであろうライの姿を探し続けていた。

 

「ライ…絶対、助け出すからね…!」

 

 

 

 

 

「お久しぶりですギルフォード卿、出てきて昔話でも如何ですか?」

 

「せっかくのお誘いだが遠慮しておこう。過去の因縁には、ナイトメアでお答えしたいが…」

 

ギルフォードの言葉を受け、ゼロは無頼に乗り込む。

 

「フ…君らしいな。ではルールを決めよう。」

 

決してナイトメアの操縦が得意ではないゼロが、ギルフォードの提案に乗る意思を見せる。ギルフォードにとって甚だ意外だった。

 

「ルール?」

 

「決闘のルールだよ。決着は、一対一で着けるべきだ。」

 

その言葉に、ギルフォードは笑みを浮かべる。

 

「いいだろう。他の者には手を出させない。」

 

「武器は一つだけ!」

 

「よかろう。私の武器はこれだ!」

 

ギルフォードは背面につけていたMVSをパージし、ランスをゼロの無頼へ向けた。

 

「では私は、その盾を貸して貰おう。」

 

そう言って無頼が指差したのは、ナイトポリスが持つ鎮圧用のシールドだ。

 

「何!?それは…」

 

「これでいい。」

 

言いかけたギルフォードを遮り、ゼロはシールドを受け取った。その姿を見ていた藤堂や星刻には、ゼロが自決しようとしているようにしか見えなかった。

 

「ゼロが無能ならば、黒の騎士団は外交の道具となってもらうしかないだろう。」

 

二人のやりとりを見守る星刻が告げる。それほどに、周囲から見ればゼロの行動は無謀に過ぎた。

 

「質問しよう、ギルフォード卿。正義で倒せない悪がいるとき、君はどうする?…悪に手を染めてでも悪を倒すか、それとも己が正義を貫き悪に屈するを良しとするか。」

 

この言葉遊びに対し、ギルフォードは戸惑うことなく毅然と答えを返す。

 

「我が正義は、姫様の元に!」

 

その言葉を合図に、ギルフォードはグロースターを無頼に向けて突撃させる。

 

「成る程。私なら、悪を成して巨悪を打つ!」

 

ゼロがその言葉を発すると同時に、総領事館の外壁が傾く。事前にギアスを使っての仕込みは完了しており、囚人となった騎士団員とブリタニア軍は総領事館内に落下していく。ハーケンを使い、なんとか踏みとどまったギルフォードのグロースターの上を、無頼がシールドをボード代わりにして滑り降りていった。

 

「カレン!突入指揮を取れ!」

 

命令を受けたカレンは紅蓮と部下達の無頼をを突撃させる。

 

「自在走行戦闘機部隊は着いて来い!扇さんやライの救出が最優先だ!」

 

その間にも、ブリタニア軍は落下や衝突により数を減らしていく。ゼロの無頼はその間を悠々と駆け、騎士団の部隊と合流した。

 

「黒の騎士団よ!敵は我が領内に落ちた!ブリタニア軍を壊滅し、同朋を救い出せ!」

 

その言葉通り、団員が扇らを次々と解放してゆく。そこへ近付こうとするグロースターを、紅蓮が止めに入った。

 

「ブリタニア!ここはねぇ、もう日本の領土なんだよ!」

 

生き残ったコーネリア親衛隊員であり、グラストンナイツの一員であるアルフレッドが、カレンの言葉に反論する。

 

「日本など存在しない!」

 

その言葉と同時に、彼の騎乗するグロースターからミサイルランチャーが放たれる。

 

「これだからブリタニアは!」

 

カレンは怒気を顕にしながら、ミサイルを避け、グロースターに接近する。

 

「さらばだ!イレブンのエース!」

 

ランスを捌かれ懐に入り込まれたものの、至近距離からのミサイルは避けられまい。アルフレッドの考えは、すぐ目の前で否定された。

 

「防いだっ!?この距離で…」

 

「こいつの威力はよく知ってるだろ!?」

 

紅蓮は輻射波動ですべてのミサイルを防ぎ、グロースターの頭部を掴む。カレンは再び輻射波動を起動すると、グロースターは彼女の目の前で爆散した。

 

「よくもアルフレッドを!」

 

同じグラストンナイツのエドガーが紅蓮にライフルを向けるが、既に中華連邦総領事館内であり、治外法権区域であることから味方に制止される。しかし、ブリタニア軍が攻撃を中止して撤退準備に入ろうという中、バベルタワーで卜部を殺害したナイトメア、ヴィンセントが単機で突撃した。

そのヴィンセントには機密情報局の隊員であり、ゼロの弟役を演じる暗殺者でもあり、人の体感時間を止めるギアスを持つロロが乗っていた。

ヴィンセントはあっという間にゼロの無頼に追い付く。

 

(来たか…来てしまったのか!ロロ!くっ…!ライがいれば、取れる手段もあるというのに…!)

 

ロロが突入してくることは予想していたルルーシュであったが、それでも確実にどうにかできるという対策は立てれていない。やはりライがいなければ一手遅れるというのは、ルルーシュの知略をもってしても埋めがたい事実であった。

 

「救出部隊!ライは見つかったか!?」

 

「それが、ライさんはまだ見つかっていません!できる限り捜索と救出を急がせます!」

 

ゼロの問いに、人質救出を行っていた部隊の内の一人が返答する。それを聞いたゼロは思わず舌打ちをした。

 

(やはりやるしかないのか…賭けに出るしか…!)

 

彼が考えている間にも、ヴィンセントはその機動力とロロの体感時間を止めるギアスを駆使して、自身のすぐ後ろにまで迫っていた。

こうなることも十分予測の範囲内ではあったのだが、実際にその状況になってみると一つのミスで全てが終わってしまう。ルルーシュは必死の思いで無頼を駆けさせた。

 

(やっぱり逃げるんですね。C.C.を差し出す約束は…ルルーシュ、最初から僕に嘘を!僕に未来をくれると言ったくせに!)

 

ヴィンセントの放ったハーケンが無頼の左肩を撃ち抜く。周囲の団員達の助けも間に合わない。誰もがゼロが捕縛されると思ったその時、ヴィンセントに向かって砲撃が行われた。

 

(しまった!物理現象は止められない…直撃コースだ!こんなところで…)

 

自身の死を感じ、絶望しかけたロロであったが、その砲弾とヴィンセントの間に、ゼロの無頼が割り込んだ。無頼の右肩に当たった事で、砲弾はコースを変え、ヴィンセントに当たることは無くなった。

倒れた無頼にヴィンセントが駆け寄る。

 

「な、何故!?」

 

ロロは、自分に嘘をついていたルルーシュがその自分を庇った理由が分からず、ゼロを捕縛することすら忘れて問い掛ける。

 

「…お前が、弟だから。植え付けられた記憶でも、お前と過ごしたあの時間に、嘘は無かった。」

 

(今までのことが、嘘じゃ無かったなんて…僕が、あの日誕生日が無かった僕に初めて…それも…)

 

「自分の命が大事だって、そう言った癖に…そんなくだらない理由で!」

 

「約束したからな。お前の新しい未来を。お前の未来は、俺と…」

 

二人のやりとりの間に出来た隙を、見逃さなかった人物がいる。ギルフォードだ。

彼は倒れた無頼に向かって、ランスを投げ放った。

 

「ッ!」

 

無頼はすでに動作を停止している。ゼロにランスを避ける術は無く、一貫の終わりかと思われた。しかしそのランスを、ロロがヴィンセントで受け止めた。この瞬間、ロロに対するルルーシュの策の成功は、決定的となった。

 

「そこまでだ!ブリタニアの諸君!これ以上は武力介入と見做す。引き揚げたまえ!」

 

そこへ、星刻から声がかかる。ギルフォード率いるブリタニア軍は、その言葉に従い、撤退するしか術はなかった。

 

「扇さん!」

 

カレンは、助け出された扇の胸に飛び込む。

 

「ありがとう、カレン。」

 

一時は生き延びることを諦めかけた扇であったが、こうして助けられたことで、もう一度日本の為に生きるという思いを取り戻していた。

 

「ううん、藤堂さん達も…」

 

「すまない、迷惑をかけた。」

 

「苦労したんでしょ?」

 

藤堂、朝比奈からもカレンに声がかかる。

 

「…ライはどこだ?」

 

カレンに問うたのは千葉である。

 

「…え?一緒に捕まってたんじゃ…」

 

てっきり扇達と共にブリタニア軍に捕らわれており、今回の作戦で助け出せたと思っていたライがいないことに、カレンは衝撃を受ける。

 

「そんな…でも…」

 

「ライ君は、てっきり君達と共にいると思っていたが…もしや…」

 

藤堂の言葉にカレンは最悪の想像をする。事実、東京決戦でライと最後に闘い、その後藤堂達を捕らえた男は、ナイトオブラウンズに取り立てられている。もしかしたらライは、既に…

その場にへたり込むカレンを、千葉が慌てて支えた。

 




ルルーシュ、カレン、星刻の台詞を追加しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。