コードギアス Hope and blue sunrise 作:赤耳亀
中華連邦総領事館に戻った面々は歓喜していた。東京決戦途中にゼロがいなくなった事に対して一悶着あったものの、藤堂の言葉によってそれも手打ちとなっている。
「お前を助けたナイトメアは星刻のルートで外に出しておいたぞ。」
総領事館内の一室で、C.C.がゼロに告げた。
「星刻?」
「中華連邦の武官だ。頭も相当キれる男だぞ。」
「そうか。なら私も使わせてもらうとしよう。それはそうと、カレンは?」
ゼロの仮面をテーブルに置いて、ルルーシュが問い掛ける。
「…部屋に閉じこもっている。ライが既に死んでいる可能性が高くなってしまったことを、信じたくないのだろうな。」
「俺も藤堂らと供に捕らわれているのではと思っていたが…」
ゼロが復活するまでに、カレンやC.C.は出来得る限りの手段でライの行方を調べていた。カレンは自身の恋人として、C.C.は一人の仲間として、そしてギアスユーザーとしてという理由以上に、彼の指揮力を買っていた為である。
「あいつが死んだと思いたくはないが…俺にとっても、この件は非常に重要だ。捜索は続けさせよう。」
ルルーシュはゼロとしての決定を下し、総領事館を後にした。
「本日付を持ちまして、このアッシュフォード学園に復学することになりました、枢木スザクです。よろしくお願いします。」
学園に戻り、表面上はいつもの日常に戻ったルルーシュは驚愕していた。
ゼロの捕縛という手柄を立て、ナイトオブラウンズの、ナイトオブセブンに取り立てられたスザクがエリア11に戻っただけでなく、自身の生活圏内であるアッシュフォード学園にも戻ったのだ。
「枢木卿はエリア11配属に伴い、復学することとなった。席はとりあえず、ルルーシュの隣に。」
表向きはアッシュフォード学園の教員であり、裏では機情の指揮官であるヴィレッタが告げる。
指定された席へ歩むスザクと、その先に座るルルーシュの視線が交錯する。
「久しぶりだな!スザク!」
「懐かしいよ。ルルーシュ!」
咄嗟の判断で、皇帝のギアスで記憶をかけられているままの状態の演技をするルルーシュ。その目の前にいるスザクに、過去に同じ生徒会に所属していたシャーリーやリヴァルが話し掛け、教室内はちょっとした騒ぎとなった。
「スザク君が戻ったって!?」
教室の扉を開けて飛び込んできたのは、留年して同学年になったものの、クラスの違うミレイである。それが騒ぎに拍車をかけ、すでに授業という空気では無くなってしまっていた。
(失敗だったなスザク。ルルーシュという名前だけでそばに来た。つまり、俺のことを知っているからこその行動。さて…後はロロが下手なことをしなければ…)
同時にスザクも、ルルーシュやクラスメイトについて思考を巡らせている。
(やはり、ライはいない…騎士団員だったというアドニスの報告は本当だったのか…。そしてルルーシュ…君の正体は僕が確かめる。)
「僕らの監視が信用できないと!?」
そのロロは放課後、地下の機情が管理する監視室で、ヴィレッタ、スザクと打ち合わせをしていた。
「C.C.の件もあるだろう。君は今まで通り、弟役を頼む。」
「…イエス、マイロード。」
「それから、以前この学園にいたライという銀髪の男の情報はないか?」
スザクの言葉を聞いて、ロロは少し首を傾げる。
「いえ…僕らが派遣された頃にはそのような生徒はいませんでした。」
「そうか…もしその男の情報が手に入れば、自分まで報告して欲しい。」
「…イエス・マイロード。」
ロロの役割を確認したスザクは、ヴィレッタに目を向ける。
「生徒会主催で、枢木卿の歓迎会を行うようです。そこで再度確認を。」
「分かりました。」
一方その頃、政庁は大騒動となっていた。正体不明の戦闘機が政庁に侵入し、好き放題に暴れていたからだ。
「ハハッ!なんだこのあっけなさは。ユルユルだなぁ呆れるほどに。エリア11の防衛線とは、この程度か!」
戦闘機パイロットはその言葉とともに、機体を急加速させる。その先にはブリタニア軍のサザーランドが防衛線を敷いており、戦闘機に向かって一斉にライフルを斉射した。
「へえ、その判断はまぁまぁだ。」
戦闘機は上空へ飛び上がると、異常な機動力で全ての弾丸を避け、大型のスラッシュハーケンと思われる武器で、サザーランドを破壊していく。
「おっ?」
その戦闘機の前に、二機のグロースターが立ち塞がる。ギルフォードに政庁の留守を任された、グラストンナイツのエドガーとクラウディオだ。
「何者かは知らぬが、ここで終わりだ!」
グロースター2機がランスを構える。その姿に、戦闘機のパイロットが失望の色を含んだ声を放つ。
「失格。その武装は、建物を守ることを優先している。仕方ない。」
そう言いながら、操縦桿を操作する。するとグロースターの目の前で、戦闘機はナイトメアフレームに変形した。
「そういうことですか…可変ナイトメアフレーム、トリスタン。ということは、ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ卿ですね。」
「ああ、君達を試しに来た。さぁ、私を止めてみせろ!」
トリスタンは長槍、もしくは鎌にも見えるMVSを構える。
「いいでしょう、私たちも恥をかかされたままでは治まらない!」
二機のグロースターもランスを構えた。
「そうそう、本気で頼むよ。」
「言われずともぉ!」
叫びを上げがら、グロースターがトリスタンに突撃する。しかしトリスタンはそのランスを簡単にいなし、二機のグロースターに対し、的確にMVSでダメージを与える。
「こんのおぉッ!」
しかしまだどちらのグロースターも動くことが出来た。体勢を立て直し、再度トリスタンに突撃を仕掛けようとした直後、頭上から声がかかる。
「そこまでだ、三人とも。」
そこには白と青を基調にしたナイトメア、ランスロット・クラブが浮遊していた。
「もう十分だ。これ以上の戦闘に意味はない。」
ランスロットクラブからの声に、グラストンナイツのクラウディオは不満を込めて聞き返す。
「それは、ナイトオブイレブンとしての判断ですか?」
「その通りだ。」
二人はその言葉に悔しさを滲ませる。一方のジノも残念そうな顔だ。
「いいとこで止めるなよアドニス~…おっ?」
トリスタンとグロースターに向かって歩いてくる人物に気付いたジノが声を上げる。
「なんの騒ぎだい?」
そう声をかけたのはスザクだ。
「おぉ~スザク!」
ジノはトリスタンから降りながら、スザクに声をかける。
「ジノ、これはやりすぎだよ…それに、ランスロットを持ってきて欲しいと頼んだのに…」
「来週、ロイド伯爵と一緒に来るってさ!それより…」
言いながらジノはスザクの両肩に手をかけた。
「何だいこの服?」
「学校帰りだからね。制服。」
「へぇ、これが。」
スザクの言葉を意に介さず、ジノは自由に振る舞う。その様子に、呆れたような声がかかる。
「自由すぎるぞ、ジノ。」
灰色に近い、肩まであるややウェーブのかかった髪を靡かせて近付いてきたのは、ナイトオブイレブン、アドニス・アーチャーだ。右手には黒いバンダナが握られている。
さらにその横には、大型のナイトメアフレームも降り立つ。
「…おしまい?」
そのナイトメアとパイロットが来ることを知らされていなかったスザクは素直に驚いた。
「モルドレッド?アーニャまで来ていたのか?」
「おしまい?」
モルドレッドのパイロットであり、ナイトオブシックスでもあるアーニャ・アールストレイムが重ねて問いかける。
「終わりだってさ!アドニスが。」
ジノの言葉を聞いて、アーニャは退屈そうに携帯を手に取る。
「…つまんない。」
「こちらで目撃されたという、ボクサーに興味があるらしい。まぁ、それは俺もだが…。しかし、戦力という意味では申し分ないだろう。」
アドニスが皮肉そうな笑みを浮かべながら、スザクに告げる。そのスザクは、自身の歓迎会において、ルルーシュがゼロなのかどうか、真偽を確かめようと決意していた。