石森 ルナside
目が覚めた私が見たのは見慣れた病院の病室ではなく、見慣れない天井だった。
「ここは……」
『ハロ!ハロ!オキタ?オキタ?』
「きゃっ!?あっ!」
近くから聞こえてきた声、というよりは音声に近いそれに思わずベットの上から転げ落ちる。肌に感じる床の冷たさと皮膚がじんわりと痛む感覚がする。
「あれ?全然、苦しくない?それに体が軽い……」
最初に気付いたのは体が重く感じないと言う違和感。いつもより軽く感じる自分の体に困惑しつつ体を起こす。
『ハロ!ダイジョウブカ!ダイジョウブカ!』
聞こえてきた音声の先には緑色の丸いボールのようなロボットが跳ねていて、耳なのか丸いそれをパタパタと動かしていた。かわいい、目覚まし時計とかで出ていたら欲しいかも。
「う、うん。」
『セイコウ!セイコウ!ルナ、ゲンキ?ルナ、ゲンキ?』
「私の名前をなんで……あ」
思い出したのは、昨日の出来事。
ガンダムマイスターを名乗る人に病院で、お姉ちゃんが私のために仲間の人達を裏切ると聞いて、私はお姉ちゃんを止めたくて病院から出てプトレマイオス?と言う大きな船に乗った。
そして私の病気を治す事が出来ると言うマイスターさんから、治療して貰う為にこの部屋でシュジュツを受けた。きっとその時の麻酔で今まで寝ていたのかな?
「ねぇ、君は?」
『ハロ!ハロ!』
「えっと、ハロ?でいいのかな。私の手術って本当に終わったの?」
『オワッタ!オワッタ!』
「やっぱり、そうなんだ……!」
先ほどから感じていた身軽さの答えが確信に変わった。
私の病気、本当に治ったんだ……。
ためしに立ち上がりに部屋の中を歩く、前みたいにすぐ疲れない。なんならこのまま走り出せそうなほどに体の調子が良く感じられた。
ふと、ハロを見るとハロの目?らしい所が点滅すると羽?耳?をパタパタさせて跳ねて此方へと近付いてくる。
「うわっとと……」
そして私の方へと跳ねて飛んできたハロを何とか両手で受け止めた。
『メール!メール!』
「…メール?」
ハロは私の質問に答えるように耳をパタパタさせると、口らしき場所がカシャリと大きく上にスライドすると、液晶画面が現れてそこには恐らくメールの内容と思われる文章が描かれていた。
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From:マイスター
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手術を終え、目が覚めた頃だと思う。
可能であれば、今からでも君のLBX操作の訓練を受けて貰いたい。
既に君のLBXは完成している、君の姉が仲間を裏切るであろう作戦まで二十四時間を切った。
LBXの操作が可能ならば、即座に訓練を受けて貰いたい。
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姉さんが仲間を裏切る、ならそれを少しでも早く止めたい。可能なら、マイスターさんの言う一つの作戦はすぐに始まるかもしれない。
そう思い私は今すぐにでも参加したいと言う思いをメールで送った。
止めないと、それに伝えなきゃ。
私がもう大丈夫だって、お姉ちゃんを安心させて仲間を裏切らないようにしないと。
メールが送られてから少しすると、私の部屋の入り口が開いた。そこには以前見たマイスターさんの姿があった。
「マ、マイスターさん!ありがとうございます、マイスターさんが治療してくれたお陰でこんな風に動けるようになりました」
感謝を伝えると、マイスターさんは僅かに微笑んだ。それにしても、マイスターさんって女の人?男の人にも見えるけど、どっちなのかな?
「そうか、良かった……早速だがこれを、君のLBXとCCMだ」
そういいながらマイスターさんは持っていた小さなケースを私に差し出してくる、私はそれを受け取って膝に置いてからケースのパッチン錠を外してケースを開く。
「これが、私の……」
最初に見たLBX、マイスターさんのエクシアのような二つ目に白を基準として青や赤、黄色のトリコロールカラーと呼ばれる配色でかっこいいブイ字の角が特徴的な頭部。
そしてその隣にあるCCMは白を基調として水色で「GUND-ARM」と描かれていてとてもオシャレな感じがする。
「
「エアリアル?」
確か、空気中や風上を意味する言葉だったはず。
「ガンダムエアリアル。お前の、ガンダムだ」
「私の……」
「CCMには、その機体の武装を制御するための補助AIが追加されている。会話も可能だ、AIとコミュニケーションを取りつつ連携をする事を進める、早速だが起動してみてくれ。既にLBXとCCMの同機は済ませてある」
「わ、分かりました!」
「俺は君のLBXの対戦相手になる予定のLBXとDキューブを用意しよう。」
マイスターさんが扉から出ていくのを確認した私はケースからCCMを取り出す。そしてCCMをスライドさせてLBXの操作が出来るようにすると、CCMの上半分。恐らくLBXの目線だと思われる場所の後ろがスライドしてもう一つの画面が出てきた。
そしてケースから取り出したエアリアルの瞳に光が灯る、するとスライドして現れた画面に一人の女の子の姿が浮かび上がった。
現れたのは白い制服?らしき服装の赤い癖毛で褐色肌で太い麻呂眉が特徴的な……何処かタヌキを彷彿させる顔の可愛い女の子だった。
「えっと、はじめまして?でいいのか?私の補助AI?でいいの?」
『は、ははははじめまして!補助AIのスレッタと言います!アスティカシア高等専門学園パイロット科2年生です!』
な、なんかキャラが濃い……これもしかしてマイスターさんの趣味?なのかな……。
「私は石森ルナ、えっと……これからよろしくね?」
『は、はい!エアリアルの操作の補助は任せてください!こ、これでもパイロット科ですから!』
パイロット科がなんなのか分からないけど、この子と一緒にLBXを操作することに早く慣れないと。
そう考えていると、Dキューブとケースを持ったマイスターさんが入ってきた。
「待たせた、すぐに始めよう」
そういいながらマイスターさんがDキューブのボタンを押して地面に転がすと、自動でLBX用のバトルフィールドが作り上げられていく。
すごい、テレビでしか見たことなかったけどこんな風になってるんだ。
やがて出来上がったのは遮蔽物のあまり無い平原だった。
「エアリアルには接近武装として、ビームサーベルが装備されているが近接は後で訓練する。君にはエアリアルの武装であるビームライフルとエスカッシャンによる攻撃、その派生射撃を習得して貰う」
「エスカッシャン?」
「これは後にしよう。どう言うものかを説明するのも、操作するのも少し難しいからな」
そういいながらマイスターさんはバトルフィールドの向かい側に佇むと手に持っていたLBXをフィールドへと放った。
「エクシア」
見ると、マイスターさんのLBXには前見たような腕に付けていた剣がなかった。
「今回のバトルは、俺は武器を使わない。君は逃げる俺のLBXに一発でも射撃を当てろ、それがミッションだ。俺に射撃を当てられるまで、作戦には参加させられない。」
マイスターさんのLBXに射撃を当てたら、私も作戦に参加できる。
姉さんを止めることが出来る。
「やるよ、エアリアル!」
その声と共に持っていたエアリアルをフィールドへと放る。
「まず、LBXの基本的な操作に軽く慣れて貰う。バトルはその後だ」
「はいっ!」
『せ、精一杯サポートしますね!ルナルナ!』
「サポートはお願いするけどルナルナは止めてねスレッタ!」
『え、えぇ~!?け、結構可愛いと思ったんですけど……』
深海 セイカside
目の前でCCMを操作してエアリアルを操作する彼女は呑み込みが早く初めてLBXを操作したとは思えないほどに、どんどん移動等の基本的や操作が出来るようになっていた。
移動も最初は転んだりしていたのが嘘のように走れるようになり、飛行もマスターした。サポートAIとの関係も良好のようで、射撃やビームサーベルでの近接戦闘もまるでスポンジのように吸収していき、想定よりも早く俺との戦闘訓練となった。
エスカッシャンに関しては、もう少ししてからの練習になると踏んで教えていない。ダンボール戦機で初めてああいったビット兵器が登場したのはWからだし、何よりこの世界にはガンダムがないから説明も難しいからだ。
「それじゃあ、準備は良いか?」
「はい!」
『バトルスタート!バトルスタート!』
パタパタと耳を動かしながらハロがバトルスタートと告げる。その言葉と共にエアリアルが持っていたライフルをエクシアへと向けて即座に引き金を引く。
エクシアを横へとサイドステップさせて射撃を避ける、続けて此方へと向けてエアリアルのライフルから他所される射撃してくる場所を予測して、横へと背中の太陽炉のブースターで避ける。避けてすぐに先程までの居た場所にビームが着弾して煙をあげる。
彼女をもし、この作戦に参加させるのであれば月光丸の月下乱舞を避けるほどの実力と反撃できるほどの実力が必要だ。
元からこの作戦は一人で行おうとしていたから、暫く石森ルナには、LBXの操作の練習をして経験を積んで貰おう、そう思っていた時だった。
エアリアルの頭部にある一部の装甲や胸部、太腿の透明な装甲が発光し始め赤い線を描いた。
エアリアルは大きく腕を広げ、体の各部に装着されていた肩や前腕、腰等のガンビットが弾かれるように剥がれた。
エスカッシャン……まだ難しいから使わないよう話しておいたのだけど、恐らくはスレッタAIが発動しているのか?
そう考えていた俺は、まだ知らなかった。
彼女が原作でLBXプレイヤーとして登場しなかったからこそ、ゲームでも登場しなかった故に考えていなかった……想定していなかった彼女の持つLBXプレイヤーとしての才能と、エアリアルとスレッタAIとの愛称の良さを。
石森ルナside
CCMを操作する手に力が籠る、どれだけライフルの引き金を引いてもエアリアルの射撃はエクシアに届かない、届かないどころか予測されてあらかじめ避けられてしまう。
「このままじゃ……」
このままじゃ、私は作戦に参加出来ない。
そんなの嫌だ、今じゃなきゃダメなのに……この作戦に参加してお姉ちゃんが仲間を裏切るのを止めないとダメなのに。
マイスターさんの役に立ちたいのに、このままじゃ………。
『ルナさん!落ち着いて下さい!』
スライドした画面に映るスレッタが両手を握り私の方へと呼び掛けてきた。
「スレッタ……でも」
『焦っていたらダメです!私も手伝います、
「それって、確かマイスターさんが難しいって……」
『弱気になったらダメです!大丈夫です、私がエスカッシャンを操作します!元々、私はエスカッシャンの操作の為にも搭載されたAIですから!』
「なら、お願い……絶対にお姉ちゃんを止めないといけないの。」
『はい!逃げたら一つ、進めば二つです!マスターをあっと言わせてやりましょう!』
「うん、いくよスレッタ!エアリアル!」
『はい!いくよエアリアル、みんな!』
スレッタの声と同時に、私は肉眼でエアリアルの各部装甲が弾かれるように剥がれたのを確認して目を見開いた。それは身軽になったとか、装甲が薄くなったと言う考えではなく、目の前の光景と操作するエアリアルの目線に映った装甲が宙を浮かび、自由自在に浮遊し青い軌跡を描きながらエアリアルの近くを漂っているからだった。
「装甲が飛んで、綺麗………」
『行きますよ、ルナさん!』
「うん!」
エアリアルを操作して片手を向けると、空中に浮かぶ装甲達が次々とマイスターさんの操るエクシアへと向かっていく。
「みんな、お願い!」
「避ける、エクシア!」
装甲、スレッタ曰くビット達が様々な方向からエクシアへと向かいビームが発せられるが、エクシアが高速で飛行することで避け、ビットで囲んで撃たれない様に立ち回っている。
「やっぱり、マイスターさんは凄い……どれも最低限の動きでビームを避けてる!」
ビットに紛れて撃ったエアリアルのビームも避けられる。でも私だって負けられない……それはお姉ちゃんを止めたいとか、マイスターさんを助けたいと言う思いだけじゃない。
純粋に、LBXバトルで勝ちたい。
病室で寝たきりの私が、テレビで眺めてきた密かな憧れの遊び。初めて触れて、楽しいと感じたこのロボットの戦いで、遊びだけど本気になれる戦いで、勝ちたいと思ったから。
「だから、絶対に当てる!私も連れていって貰います!」
次の瞬間、CCMの操作画面が暗転し文字が浮かび上がった。
─パーメットスコア・シックスが使用可能になりました。─
「これって!?」
テレビでみたLBXのアタックファンクション?でも銃の技っぽくは無いよね?ソードサイクロンとか、乱れ撃ち、パワーナックルとは違う。
『ルナさん!それを使って一気に行きましょう!これを使えば、きってマスターに攻撃を当てられるはずです!』
「や、やってみる!」
スレッタの進めもあり私は、アタックファンクションらしきそれを起動した。
「必殺ファンクション!……でいいのかな?」
『アタックファンクション
パーメットスコア・シックス!』
その音声の瞬間、私のCCMから空中に映像が投影され始めた。そこには、恐らくこのDキューブのマップとエアリアルのビットの場所か詳しく表示されいる。そして肉眼でエアリアルを見ると、先程までの赤く光っていた透明な装甲が青く光り輝いていた。
良く分からないけど、これなら!
「スレッタ!みんなで囲って!」
『分かりました!』
「なっ!?」
マイスターさんの驚きの声を他所に私はエアリアルのブースターで加速させてビームライフルの先をビームサーベルとして展開しながら接近する。
同時にスレッタの操作するビット達がエクシアへと向かい、射撃を始める。
背後、横、正面からの射撃を上空へと飛び上がって回避するエクシアに更に待機させていたビットが射撃する。
それをLBXの体を横にして反らし射撃を避けた、恐らくマイスターさんの思考はビットに向かっている。つまり、今ならサーベルが当たる!
「一撃、貰いますよ!」
「しまっ!?」
「えい!」
空中のエクシアの頭部、Vアンテナへとライフルから伸びるビームサーベルの刃先が触れてアンテナの片方を袈裟懸けに切った。フィールドに切り離されたエクシアのアンテナが突き刺さる。
「や、やった!マイスターさんに一撃を与えました!」
『やりましたねルナさん!』
「うん!」
「驚いた、こんなにも早くエクシアに攻撃を当てられるとは思っていなかった。」
「それじゃあ!」
「あぁ、今回の作戦に参加して良い。いや参加してくれると助かる、恐らく君の力が必要だ」
「はい!」
「だが、詳しい話は夕方にしよう。恐らく君の姉達の組織が動き出すのは今夜だ。」
チラリとCCMの時計を見ると、そこには朝の四時と映っていた。
手術で寝てたから眠気がなかったけど、改めて時計を見たらなんだか眠気が……。
「今は休んでくれ、この部屋は君が使ってくれて構わない」
「分かりました、マイスターさん」
こうして私は今回の作戦に参加する権利をマイスターさんから勝ち取ることが出来た。
待っててねお姉ちゃん、私はもう大丈夫だって裏切らなくて良いんだって伝えるから。
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