三千大千世界を駆ける   作:アマエ

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タイトル=煉獄に氷雪降れば

番外編。五年越しの邂逅、あるいはそれぞれの未来。




#??? Icestorm over Inferno

隻眼で片腕が不自由な兄の供としてその街を訪れた煉獄千寿郎は、帝都の喧騒とは異なる空気にすっかり呑まれていた。大藩の城下町として栄えてきた古い町並みは、浅草の人混みや銀座のきらびやかさの対極にある凛とした気位の高さがうかがえた。道行く人々はみな小奇麗で、どこか慇懃な余所余所しさをもっていた。

 

「どうした、千寿郎。宿はこっちだぞ!」

 

「すみません、兄上」

 

ずんずんと先を行っていた兄―杏寿郎が足を止めて声を掛けてくる。快活な彼らしい大声は、屋外にあっても一際よく響き、周りの視線を集めた。大柄にして長身、加えて珍しい髪色に燃える宝石のような隻眼。まさしく快男児といった、一度目にしたら忘れられない風貌だ。道行く人々はくすりと笑い、小声でその精悍な様を語り草にしていた。

 

「美しい街並みだな! 能楽も盛んだそうだ。滞在中に観にいくぞ!」

 

「はい、是非に。父上のお土産はどうしましょうか」

 

「九谷の湯呑はどうだ! 母上がお好きだった」

 

「それは……いいですね」

 

二人の父である槇寿郎も共に旅する予定だったが、数日前に腰を痛めてしまい、息子二人だけの旅行となってしまった。何年も飲んだくれていた男は鬼舞辻無惨討伐の少し前から断酒を決行し、杏寿郎らが幼かった頃のように背筋を伸ばして過ごすようになった。そのきっかけとなった人物を思い浮かべ、千寿郎は横目に兄を見やった。

 

「兄上、伊之助さんは本当にここにいらっしゃるのでしょうか」

 

「間違いない!」

 

輝利哉様が確認された、と答える杏寿郎は嬉しそうだ。五年前に継子の少年の行方が知れなくなった時は難しい顔ばかりしていたが、いつしか葛藤はなくなったらしい。

 

鬼の祖との決戦で杏寿郎は左肩を負傷し、片腕をほとんど上げられなくなった。もう少しで切断しなければならなかったと聞いて槇寿郎も千寿郎も顔を青くしたものだ。幸い利き腕ではなかったため、本人は特に不自由な様子もなく帝室博物館の刀剣担当学芸員として働いている。産屋敷家の口利きで就職が決まるまで、千寿郎は兄が史学に関心があることさえ知らなかった。

 

最初はまるで学芸員らしからぬ杏寿郎であったが、博物館の図書や資料を読み漁って教養を高め、数多の名剣名刀に囲まれて日々生き生きと過ごしている。そんな彼が休暇をもぎ取ってまで地方都市を訪れたのは、ひとえに元鬼殺隊上層部にもたらされた嘴平伊之助発見の報せゆえであった。

 

「伊之助は陸軍学校で剣術講師をしている。何の縁か、陸軍大臣直々の口利きだったそうだぞ」

 

「そこまでわかっているのですか!」

 

「うむ、琴葉殿の方も確認できている。住まいまではわからんが、珍しい名字だからな。聞いて回ればすぐに判明するだろう!」

 

「それはよかった。お変わりないといいですね」

 

「そうだな!」

 

どこを見ているのか分かりづらい片目が爛々と輝いている。杏寿郎が宿にむかってずんずんと進むのを半歩遅れて追いかけながら、千寿郎はずっと胸の中にあったつかえがなくなるのを感じていた。伊之助が煉獄家にいたのはほんの数ヶ月だったが、彼がもたらした変化は甚大だった。いつかお礼を言おうと思っていたのに、千寿郎の言葉は行き場をなくし、もう五年も経ってしまっていた。

 

姫君のような完璧な美貌を思い受かべれば目頭が熱くなり、このままではいけないと袖で拭う。もう兄と背丈が変わらない大人の男だというのに情けない。そう思い、気を紛らわすために視線を泳がせた先で、千寿郎は見事な朱色に目を奪われた。

 

「兄上、先に宿に行っていてくださいますか」

 

「うん? どうした、千寿郎」

 

「あの、ええっと、一人で買いたい物があるのです」

 

「そうか! わかった、先に部屋にあがっているぞ」

 

「はい」

 

大きな背中が遠ざかるなり、細身の青年は通りの脇へと寄り、店先の棚に置かれた朱塗りの椀を手にとった。麗しい赤に金箔の炎が浮かぶ素晴らしい逸品だ。身なりが良い千寿郎に店主が眉を下げて声をかけ、とんとん拍子で支払いを済ませれば、椀を桐の箱に入れて渡してくれた。丁寧に礼を述べて店を後にしようとしたところで、狭い戸口で誰かにぶつかりそうになり、慌てて足を止めた。

 

「失礼いたしました!」

 

「いやいや、気にしていないさ」

 

長身な千寿郎のさらに頭上から穏やかな美声が降ってくる。間近にある胸元は上物の藍色の着物を纏っており、うすらと白檀の香りがした。目に入る範囲の出で立ちは品良くまとまった和装だ。どんな人だろうと視線を上げれば、黒い山高帽のつばの下、薄い硝子越しに虹色が見つめ返していた。

 

「やあ、こんにちは。観光に来たのかい?」

 

にこりと笑った顔は優しげで大変整っていた。落ち着いた物腰に反して肌つやが良く、年齢が判断しにくい。旅先でこうして声を掛けられるのは嬉しいもので、千寿郎もやや幼い顔で笑い返した。

 

「はい。とても素敵な街ですね」

 

「ありがとう。俺も五年ぐらい前に住み始めたんだけど、本当に快適な良いところだよ。ねえ、ご主人?」

 

「先生みたいな方には良く合うでしょうよ。文豪の街ですからねえ」

 

男が店主に話を振れば、店主は機嫌よさげに応じる。どうやらこの男は店の常連のようだった。

 

「小説や詩を書かれるのですか?」

 

「うーん、そうだねえ。有名ではないけど小説家をやってる」

 

「凄いですね!」

 

勉強が好きで文学もたしなむ千寿郎が尊敬の目を向けると、男は眉をさげて柔らかい困り顔になり、少々わざとらしい話題の替え方をした。

 

「自己紹介が遅れたね。俺は嘴平というんだ。これも何かの縁だし、君の宿泊先が近いなら歩きがてら見どころとか案内しようか?」

 

はしびら。珍しい苗字をオウム返しにして、目の前の美しい男を目で測る。容姿からして琴葉と伊之助の血縁者ではないだろう。そうであるなら、考えられる可能性は絞られた。

 

「あの、もし違っていたらすみませんが、嘴平琴葉さんと伊之助さんのご家族ですか?」

 

千寿郎の問いかけに男はぱちりと虹の瞳を瞬かせ、「琴葉は妻で、伊之助は息子だけれど」と答えたのだった。

 

 

※ ※ ※

 

 

大通りを竹刀袋を背負って歩く伊之助の姿は、すでに街では知られた光景だ。上等な和装の、まるで物語から出てきたような美青年であるからして、道行く女性らの視線は熱い。しかし本人は集まる視線に不快感を隠さず、やや眉を寄せて足早に自宅へ向かっていた。

 

(うぜぇ……)

 

街で暮らすことにもう慣れたとはいえ、依然人混みは好きになれない。次の休日は山で過ごそうかと考えたところで、伊之助はピタリと足を止めた。上方から強い視線が突き刺さっている。獣の呼吸で気配を探るまでもなく、この視線の主は想像がついた。懐かしさからの喜色とついに来たかという緊張が同時に生まれる。ゆっくりと相手を仰ぎ見れば、燃える隻眼と目が合った。

 

「伊之助! 久しいな! 見違えたぞ!!」

 

「師範は変わんねぇな。元気そうでよかった」

 

小さな旅館の二階の窓辺から大声を出したのは、伊之助が継子として師事していた元鬼殺隊の炎柱―煉獄杏寿郎その人だ。五年の月日でより精悍な顔立ちになっているものの、獅子のような長めの髪も煌めく隻眼も変わらない。そこにいるだけで炎が燃え盛るような男は、何も含みもない笑顔を浮かべていた。

 

「よければ部屋に上がらないか!」

 

伊之助はその誘いに無言で頷き、成り行きを見ていた番頭に迎えられて客室へと通された。

 

小綺麗に整えられた部屋の入り口に竹刀袋を立て掛け、丸腰で上がり込む。杏寿郎はゆったりと座布団の上であぐらを掻いており、白い長袖シャツに黒いスラックス、その上に臙脂色のベストというモダンな姿だ。雄々しい印象ではあるが、体の線は最終決戦時に比べてずっと細くなっている。眩しいほど強かった師がもう戦えない体であると悟った伊之助は、身構えていた自分が馬鹿らしくなった。

 

「邪魔するぜ」

 

「ああ、座ってくれ。本当に息災そうで何よりだ! 琴葉殿も一緒に暮らしているのか?」

 

「母ちゃんも元気だぞ。師範は旅行か?」

 

「うむ、千寿郎と一緒にな。さきほど街でわかれたが、もう宿に着くはずだ」

 

「そっか」

 

杏寿郎はにこにこと目を細めて伊之助の成長ぶりを観察している。最後に会ったのは、まだ伊之助が少年だった頃だ。あの後、急激に身長が伸び、養父の背丈には届かなかったものの師とは目線がさして変わらないほど大きくなった。

 

用意されていた座布団にどかりと腰をおろし、どうしたものかと思考する。杏寿郎のことは好きだが、元鬼殺隊の者達にあまり関わり合いたくはない。確実に『痛い腹』を抱えている身としては、探られないうちに穏便に切り上げたいのだ。

 

「炭治郎と禰豆子が会いたがっているぞ。善逸もずっと気にしている。胡蝶とカナエ殿、蝶屋敷にいた少女たちもな」

 

竈門少年、少女、我妻少年と呼んでいた三人と元炎柱は親しくしているようだ。そして、蝶屋敷の女性陣の名が上がったことで元柱たちもまだ繋がっていることが伺えた。先月助けた迷子の子供で足がついたのだ。伊之助は端正な唇から小さくため息をつき、がしがしと黒髪を掻いた。

 

「戻らなかったのは悪ぃと思ってる。あん時は家族のことで頭がいっぱいだった。手紙ぐらいだしゃよかったな」

 

「そうだな! 聊か薄情だったと思う! こうして所在がわかったからには、近く君の同期と胡蝶あたりがやってくるだろう!」

 

「あいつら、元気にしてんのか?」

 

「炭治郎は炭焼きとして穏やかに暮らしているぞ。禰豆子は一昨年結婚した。美しい花嫁姿だった! 胡蝶はまだ独り身で、薬剤師として働いている」

 

つらつらと懐かしい面々の近況を話す杏寿郎に聞き入っているうちに、板張りの廊下をいくつかの足音が近づいてきた。ひとつは仲居、もうひとつは煉獄千寿郎のものだろう。そして最後に続くひとつがあまりに聞き慣れたもので、思い至るなり伊之助は腰を浮かしそうになった。美しい青年のその反応に杏寿郎も襖のほうを見やる。

 

「お連れ様がお見えです」

 

中年の女性がひと声かけ、静かに襖を開ける。そうして入ってきたのは、ひょろりとした杏寿郎によく似た和装の青年と、もう一人。その姿を見るなり杏寿郎の気配が変化した。仲居がまだ廊下にいるため大きな動きは見せなかったが、確かに下半身に力をこめ、いつでも応戦できる体勢に入ったのだ。相手もそれに気づいただろうに、優しげな顔に笑顔をのせて帽子片手に会釈した。

 

「兄上、お待たせしてしまいすみません。伊之助さん、お久しぶりです。千寿郎です、覚えてらっしゃいますか?」

 

「おう、久しぶりだな、千寿郎」

 

「ふふっ、お元気そうで何よりです」

 

何もわかっていない千寿郎が大人しい人懐っこさで頭を下げる。伊之助もそれに応じ、ついと翡翠の目を後ろの男に向けた。

 

「兄上、こちらは嘴平さんです。さっき土産物を買った店でお会いして、琴葉さんと結婚されていると聞いたのでお連れしました」

 

「伊之助、これはどういうことだ。童磨の頸は確かに斬ったはずだ!」

 

兄の厳しい表情に、千寿郎も何かがおかしいと気づいて自らが連れてきた男から数歩離れる。仲居が閉めていった襖を背に佇むのは、落ち着いた色合いの和装が似合う、白橡の髪に虹の瞳をもつ見目麗しい男だ。四十近くに見える渋い色みの出で立ちだが、顔や体付きを見ればずっと若いことが伺えた。鋭い隻眼の視線を向けられても、男はそしらぬ顔で薄茶の色眼鏡を外すだけだった。

 

こうなっては穏便に済ませるのは無理だと諦め、伊之助は座ったまま養父―嘴平童磨を見上げる。

 

「父ちゃん、どうすんだよ、これ」

 

じろりと睨んで全て丸投げしてくる息子に、元人喰い鬼は心配無用と言外に応えたのだった。

 

 

※ ※ ※

 

 

「産屋敷殿には四年前に連絡してあったんだよ」

 

部屋の隅の座布団の山からひとつ取り上げて座るなりそう切り出した童磨の話は、聞き手である元炎柱の息苦しくなるような殺気を交えながらも、血の雨を降らせることなく進んだ。琴葉との出会いから逃れ者になるまでの経緯、その後の八年間の生活、鬼を殲滅するための暗躍に至るまで、理路整然と語る様子は説法でもしているようだ。

 

無惨討伐後に家族三人で逃亡したのち、産屋敷輝利哉には生存を伝え、お互いのために秘匿するよう『お願い』したのだと締めくくった男は、まったく悪びれていない。あまりに堂々とした養父の開き直りに、伊之助は肩を落として眉間に手をあてていた。

 

「琴葉も伊之助も嘘はついてないし、君たちの邪魔になるような工作も一切してないぜ。この子が真面目に鬼狩りしてたのは君も知っているでしょう?」

 

「……何年も鬼を匿っていたのは明確な隊律違反だ」

 

「今更だよ、煉獄殿。それに俺を匿ってたのは伊之助じゃないから君たちに裁かれる謂れはない。もう人間に戻って真っ当に生きてるんだから、お互い過去は水に流したいのだけど」

 

「君はっ、何も悪いと思っていないだろう! 上弦の弐ともなれば、数千の人を喰らったはずだ。鬼殺隊士を何人殺した!? この悪鬼め、気まぐれで飼った人間に愛着を覚えたようだが」

 

「兄上」

 

激高して薄皮を傷つけるほどの剣気を立ち昇らせた杏寿郎を、弟の小さくはっきりとした一言が遮る。千寿郎は、何故止めるのだと不服顔の兄を正面から見つけ返し、つと伊之助へと視線を流した。

 

「相手が誰であっても、口にしてはいけないことがあります」

 

「……そうだな、ありがとう、千寿郎。伊之助も申し訳なかった」

 

「気にしてねえよ」

 

「あれ、俺への謝罪は?」

 

「君には謝りたくない!」

 

「ふうん? まあいいさ、君と長話する気はないし。伊之助が世話になったから、事情ぐらい教えてあげようと思っただけだよ」

 

「話さないのは大いに結構。はじめてまともに会話したが、俺は君のことが大嫌いだ」

 

「俺もあんまり好きじゃないかな」

 

元炎柱と元上弦の鬼の間で一方的に火花が散ったが、千寿郎が二人の間のちゃぶ台に湯呑を置いたことで遮られた。杏寿郎によく似た顔立ちだというのに、下がり眉ひとつで子猫が困っているような印象になるものだ。現実逃避に至っている伊之助がそう考えているうちに、大きく息を吐き出したかつての師が怒りを飲み下すように湯呑の中身を呷った。

 

「わあっ、兄上、それ淹れたてです!」

 

「ぐふっ、ごほ、ゴホッ!!」

 

慌てる弟と盛大に茶を吹き出して咽る兄。咄嗟に袖で飛沫をさけた童磨は、やれやれと肩をすくめて立ち上がった。そして咳き込みながら睨む杏寿郎には目もくれず、息子に声をかけた。

 

「伊之助、そろそろ帰ろう。琴葉が天ぷらの用意をしていたよ」

 

「おう」

 

養父に並んだ伊之助がちらりと兄弟をその目に映す。

 

「師範、言い訳はしねえ。今も昔も、俺は家族が一番大事だ。炭治郎たちにもそう言っといてくれ。それでも会いに来る奴は歓迎する。千寿郎、さっきはありがとな」

 

「伊之助さん、またお会いできてよかったです。貴方は父上を良い方向に導いてくださった。心から感謝していると、ずっとお伝えしたかったんです」

 

「俺は何もしてねえよ」

 

少しの穏やかなやり取りが充満していた物騒な空気を和らげ、伊之助が竹刀袋を背負って童磨ともども廊下へと出る。見送りに立った千寿郎の後ろから、咳き込みが落ち着いた杏寿郎の声が追ってきた。

 

「童磨、人間に戻った君を殺しはしない。だが我らが手を下すまでもなく、いつか必ず報いを受けるだろう!」

 

真っ直ぐな糾弾に嗤ったのは誰だったのか。先を行く童磨が後ろ手に伊之助の手を握り、二人は振り返らずに細い階段を降りていった。

 

 

※ ※ ※

 

 

氷の嵐のような元鬼が去った後、千寿郎はちゃぶ台を拭いて湯呑を片付けながら、再び窓際に陣取った兄の背に時折目を向けた。もっと烈火のごとく怒るだろうと思った杏寿郎は静かに外を見つめている。もう嘴平親子の姿はないというのに、猛禽のような隻眼でずっと遠くを眺めていた。

 

「お元気そうでしたね、伊之助さんは」

 

「そうだな」

 

声をかければ杏寿郎は体ごと向き直り、壁に背を預けて片膝をついた。宙をさまよった視線が畳のうえの自らの左手で止まり、甲を返して柔らかくなった掌に指を折る。この手こそが、鬼と戦うことがなくなった長い日々の象徴であった。

 

「不思議と裏切られた気はしないのだ。甘いと思うか?」

 

「いいえ」

 

千寿郎も兄と同じように隣に腰をおろし、立てた膝を抱くようにして座る。

 

「あの方が家族第一なのはわかっていたことですから。次にこの街に来る時は、事前にご連絡して父親抜きの食事でもしましょう」

 

「ははっ、そうだな!」

 

まずは炭治郎たちに手紙を書かねば、と杏寿郎は今も付き合いが深い若者たちを思い浮かべた。きっと彼らは入れ代わり立ち代わりでこの街を訪れることだろう。元蟲柱がやってくる時には、往来で童磨と鉢合わせないことを祈るばかりだ。あれほどの美女が大の男を殴り倒して叩きのめす等、下手をすれば地方紙の見出しを飾ってしまう。

 

杏寿郎の予想がおおかた当たり、蝶のような小柄な女が自称小説家の男に傘を突き立てようとするのを赫灼の兄と妹夫婦が必死で止めるのは、数カ月先の小雨の昼下がりのことだった。

 

 




【登場人物紹介】


童磨
元十二鬼月・上弦の弐にして万世極楽教の教祖。愛を知って世界が広がった人間性初心者。家族連れの逃れ者ライフの終りを迎え、晴れて人間として家族と過ごしはじめた。自称小説家だが作品はなく、お偉方の人生相談()が本業。毎度の心ばかりのお礼が一般家庭の月収を超えている。その浮世離れした色合いと優しげな美貌からちょっとした街の有名人だが、本人は慎ましやかに生きているつもり。家族と幸せに暮らすことが人生の最重要課題。千寿郎君のことは当然知っていた。煉獄さんのところにも故意に顔を出した。なお、悪鬼時代にしでかしたことは全て優秀な頭脳のどこかに埋まっているが、欠片も反省していない。

嘴平琴葉
ちょっぴり知能に難ありな超絶美人ママ。大藩の城下町のおっとりねちっとした風土に意外と馴染んだ。何を遠回しに言われても気づかず善意120%で受け応えするせいで、一年もすると近所の愛され奥様になった。得意料理は伊之助が好きな天ぷらと童磨が好きな肉料理全般。自身は少食だが、夫と息子に山盛りのおかずを用意する毎日である。

嘴平伊之助
お母さん似な獰猛系美青年。20歳。弱肉強食を世の真理としているスーパードライな猪。しかし両親にはウェット。地方の陸軍学校で剣術講師をしている。美しすぎるうえに強すぎると大変有名。最初に再会したのが煉獄さんだったのは、どこかの13歳の旧家当主と身近な元鬼が誘導したんだろうと踏んでいる。大体合ってる。鬼殺隊の仲間たちに重要なことを黙っていたのは後悔も反省もしていないが、多少なりと好意を持っている相手には弱い性分なので、しのぶさんや炭治郎らとの再会が思いやられる。

煉獄杏寿郎
黎明に散らず見事決戦を生き残った元炎柱。25歳。最初に輝利哉様から伊之助の近況を教えてもらった選ばれし元師匠。最終決戦の後遺症で左腕がまったく上がらないが、本人は気にせず元気に暮らしている。四年前から帝室博物館の学芸員として刀剣コレクションの管理に携わっている。武家の息子としてそれなりの教養はあるものの、はじめはあまりの世間ずれっぷりに同僚らから白い目で見られていた。現在はすっかり馴染んで一目どころか三目ぐらい置かれている職場最年少の兄貴分(概念)である。

煉獄千寿郎
元気弱系煉獄男子。大人しい性格はそのままに随分明るくはっきり物を言うようになった。購入したお椀は東京に戻ってから兄上に贈った。杏寿郎に並ぶほど背が伸びたのが密かな自慢。しかし体格は遠く及ばないため、顔がそっくりでも見間違われることはない。伊之助が炎柱の継子だった頃から、剣の才がない己は他の方面で人の役に立ちたいと強く思っており、今は帝国大学の学生として日々勉学に励んでいる。槇寿郎を諌めてくれた伊之助に恩義を感じている。

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