【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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そっか、陽葵は二重の極みを覚えていたのか……。



十一ページ目

 ♡月♤日 くもり

 

 最近、五番隊の副隊長である雛森桃ちゃんがよく話しかけてくる。

 彼女は既に藍染を崇拝しているみたいだ。彼の話をしてる彼女の態度から、それは丸わかりだった。

 漫画だと、そのせいで散々な目に遭ってるんだよね。日番谷くんと一緒に……。

 

 桃ちゃんが昼食とか、買い物とかガンガン誘って来るものだから、二番隊の隊舎にいるときは砕蜂とネムを、十三番隊の隊舎にいるときはルキアちゃんと一緒に付き合う感じになった。

 吉良くんや阿散井くんと比べて真央霊術院では私に特に興味を示さなかったと思うんだけど、いきなりどうしたんだろう……。

 

 「ボクが忙しいから、桃ちゃんにスパイさせるって言うてましたわ。彼女、演技が苦手みたいやけど、どうせ陽葵さんを騙すのは無理やろうから、バレることも計算してるんやろうなぁ」

 

 久しぶりに会った市丸の言葉に私はお茶を吹き出しそうになった。

 

 マジか……。桃ちゃん、スパイだったの……?

 

 ――全っ然気付かなかった……! よく、死神になった理由とか護廷十三隊のことをどう思ってるとか熱い話を振ってくるなぁ……とは思ったけど……。

 スパイって感じではなかったし……。藍染は何を探らせてるんだろう……。

 

 「そら、陽葵さんのこれからの計画に決まってるやろ。ネムちゃんを造らせた目的も含めて探りを入れてはるんや。ボクがいつまで経っても突き止めんもんやから、女の子なら油断しはると思ったんちゃいます? 例え、スパイだとバレたとしても逆に桃ちゃんを懐柔しようとするとか。陽葵さんが何らかのアクションを起こせばそれを観察すればいいだけやし」

 

 はぁ……? 私の計画……? まさか、一護とかがやって来ることを待ってるのがバレてるとか……? 藍染ならあり得るかそれくらい……。

 やっぱりヤバい奴だよ、あの腹黒眼鏡は……。

 

 ネムについてもまだ疑ってるのか……。あれは不可抗力だから、いくら理由を聞かれても答えようがない。

 まぁ、ネムはかわいいから生まれてくれて良かったとしか思ってないけど……。

 

 「それにしても陽葵さんの演技力はさすがですわ。桃ちゃんのこと、とっくに気付いとるはずやのに初めて聞いたみたいなリアクションは忘れんのやから。ホンマ、怖い人やなぁ」

 

 いやいや、本当に初耳だったんだってばよ。藍染のやつ……純粋な桃ちゃんをも早速手駒にしやがるとは……。

 とにかく、気を付けないと――。って何に気を付ければ良いんだっけ? ダメだ、化かし合いはすげー苦手だ……。

 

 

 ◇月●日 雨のち晴れ

 

 十三番隊で現世に出向してる隊士がバットとグローブとボールを持ってきた。

 どうやら野球場で虚が現れて、私が使ってる紅鯉(アカリ)がスポーツで使われてる道具だということを知ったらしい。で、面白そうということで、道具を造らせたとのことだ。

 

 ついに尸魂界(ソウル・ソサエティ)に野球の文化が入ってきやがった。

 その隊士は斬魄刀が金属バットになるような私は野球という競技に当然詳しいと思っていたようで、私にルールを尋ねてきた。他の隊士たちも未知の競技に興味津々である。

 

 断っておくが私は野球は別に好きではない。前世で草野球なんてやってないし、大人になってから球場に見に行ったことなど一度もない。パワプロをちょっとやったことがあるくらいだ。

 

 紅鯉(アカリ)が野球、野球五月蝿いのにウンザリしてたのはそういう理由である。

 

 だから、ルールとか聞かれても困ったんだけど、途中から適当で良いということ気付く。

 んで、実際にやってみようということになった。

 

 「陽葵殿の強さのルーツになってる競技か」

 「陽葵様のデータを取るようにマユリ様から命令されてますので」

 

 ルキアちゃんやネムも野球をやりたがってるみたいだったので、みんなでやってみることに……。

 

 最初に打席に立って見本を見せてほしいと言われたので、私はバッターボックスに立つ。

 ネムが投手で、捕手は彼女が半ば強引に引っ張ってきた希千代くんだ。私が希千代くんってキャッチャー似合いそうだよねとか口を滑らしたからだけど……。

 

 そして、ネムがボールをヒョイと投げる。おおっ! 結構速い球を投げるじゃん。しかも初めて投げてるのにコントロールもいい……。

 

 とか思ってその球を見逃すと、気付いたらボールを取ろうとした希千代くんが吹き飛ばされていた――。

 ネムのボール、ちょっと威力が強かったのかな……。希千代くん、「痛って〜〜」とか言って既にボロボロなんだけど……。

 

 私はネムにもうちょっと力を抑えて投げるようにお願いした。じゃないと彼が死んじゃうかもしれないと思ったから。

 

 そして二球目――さっきよりもかなり遅い……。ネムは私と違って加減が上手だな……。

 

 私はボールをよく見ていつものようにフルスイングした――。

 

 「「…………」」

 

 ――静寂。そう、静寂があたり一面を支配した。私は「カキーン」と小気味よい音を鳴らしてボールが飛んでいくイメージでバットを振った。

 しかし、鳴った音は「ブォンッ」である。空振りしたわけではない。確かにバットはボールを捉えた。でも力加減を間違えたせいでボールが破裂して弾け飛んだのである。

 

 「なるほど。陽葵殿は飛んでくる球を敵と見立ててそれを蹴散らす訓練をこうやって行っていたのか……」

 

 ルキアちゃんが変な生真面目さを見せるが、そんな特訓したことない。

 というか、他の隊士たちは希千代くんが吹っ飛ばされたところでドン引きして、私がボールを粉砕したところで完全に引ききってしまった――。

 

 とりあえず、野球が尸魂界で流行りそうにないので良かったかもしれない――。

 

 

 ◎月♡日 晴れ

 

 前に私の技というか霊力を込めたパンチを真似ようとして拳の骨折をしちゃった阿散井くん。

 彼はまだまだ諦めていなかった。説明下手な私ではなく頭のいいネムにアドバイスをもらって、技術開発局が造ったグローブとサンドバッグを使って特訓をしてるんだそうだ。

 

 ――どう見てもボクシングの特訓に見えるなぁ。

 

 「陽葵さんも叩いてみてくださいよ。もう一回、見てイメージを膨らませたいです」

 

 阿散井くんがそんなことを言うものだから、私はグローブを使ってサンドバッグを殴ってみた。

 おおっ! 殴っても壊れないっていうのは良いな。さすが技術開発局――と、思ったんだけど……、殴った方と反対側の方向から「ぶわァッ」と音を立ててサンドバッグが破裂して崩れてしまった。グローブも穴が空いて拳がむき出しだし……。

 

 いや、ボクシング編の烈海王じゃないんだから……。どうなってんの……。

 

 「陽葵様の霊力が過剰に注入されたことでサンドバッグとグローブが形を保っていられる霊子の許容量を超えてしまって弾け飛んだみたいですね。予想はしていましたが……」

 

 何それ、怖い……。てか、予想していたんだったら止めてよ。ネムって頭が良いのにこういうところがあるよな〜。

 

 「拳一つですべてを粉砕する! やっぱ、こういうのが男の技だよな〜〜! よ〜し!」

 

 あの〜〜、忘れてるかもしれないけど、私は女ね。失礼なこと言ってるのを自覚してほしい……。

 

 阿散井くんは技術開発局にかなりの金額を払ってサンドバッグを買ってルンルン気分で六番隊の隊舎に持って帰っていった。

 

 

 

 そして、後日……。二番隊の隊舎に六番隊隊長の朽木白哉くんがやって来る……。

 

 「頼むから変なものを売りつけないで欲しい。休憩時間中、煩いと苦情が来ている」

 

 彼はどう間違ったのか私が阿散井くんにサンドバッグを売りつけたと誤解して苦言を呈してきた。

 どうやら四六時中「バシバシ」とサンドバッグを叩いてる彼が五月蝿い上に怖いらしい。

 変な噂が立たなきゃ良いんだけど……。

 

 

 ★月♧日 晴れ

 

 この頃、変な質問をやたらとされる。最初にその質問をしたのは乱菊ちゃんだった。

 

 「陽葵さんって、藍染隊長とデキてるんですか――?」

 

 はぁぁぁぁぁ? なんで、私が藍染なんかと……。つーか、誰だよ。そんなことを言ってきたのは。

 

 「うん。違うのは知ってたんですけど、それを疑ってる子がいるみたいで……」

 

 疑ってる子がいる? 私と藍染がデキてるって? むしろ避けてるくらいなのになんでだよ。

 

 「私は藍染隊長が陽葵殿を慕っておられると聞きました。誰がそう言っていたのか、名前は言えませんが……」

 

 ルキアちゃんまで、変な話を聞いてる。どういうことだってばよ……。

 なんで、藍染に私が好かれなきゃならんのだ。意味が分からない。

 

 「話の出処は雛森副隊長です。私も聞かれましたから。お二人の関係を」

 

 ネムはこともなげに私と藍染について桃ちゃんが聞いて回っていることを告げる。

 内緒にしとかなくていいのか聞いたけど、陽葵様の疑問に答えることの方が優先だと真顔で返事をしていた。

 

 つーか、なんで桃ちゃんはそんなことをみんなに聞いて回ってんだろう……。誤解されるようなことなんて一切ないのに……。

 

 「藍染隊長が陽葵さんのこと調べろなんて言わはったからや。桃ちゃん、藍染隊長があんたのことを好きやからそんな命令をしたんやと勘違いしはって、頓珍漢な方向に突っ走ったみたいや」

 

 どこからともなく、ひょっこり市丸が現れて原因は藍染が桃ちゃんを使って私を探らせたことだと伝えた。

 

 「健気やで、あの子。陽葵さんが藍染隊長の理想やと思っとるから着る服から髪型まで似せようとしとる」

 

 そういや、私が服を買う店とか聞いてきたりしてたな。髪型を変えたのも気にしてなかったけど、私に寄せてるっちゃ、寄せてるか……。

 

 「極めつけは、あれや。なんか十三番隊で変な競技やってたやろ? ほんで、恋次くんに変なもん売りつけたんやろ? 桃ちゃんは今、両方ともやっとるみたいやで」

 

 えっ……、両方ともって――。野球とボクシングをってこと? そんな馬鹿なことって……。

 

 市丸の話を半信半疑で聞いてると、噂の桃ちゃんがやってきた。

 桃ちゃんはバットにボクシングのグローブを括り付けて、色々と間違ってる「磯野! 野球行こうぜ!」みたいな格好をしている。嘘……、だろ? どっからどうツッコミをいれればいいんだってばよ……。

 

 「陽葵さん、あたし、頑張ります!」

 

 桃ちゃんが何を頑張ろうとしているのか、問いかける勇気が私にはなかった――。

 願わくば、早く誤解に気付いて欲しい――。

 




なんか、このまま原作スタートしてええんか、不安になってきたぞ。雛森ファンや恋次ファンには済まぬと言っておきます。
ネムにはいつかデンプシーロールかハートブレイクショットあたりを使わせたいなー。


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