【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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 ♤月♧日 雨のち晴れ

 

 ネムと阿散井くんがスパーリングするようになって一年くらい。

 白打の達人である砕蜂の手解きも受けているネムの方が強いけど、阿散井くんもその天才的なセンスを活かして鋭い彼女のパンチを躱せるようになってきた。

 

 「最初の方はフェイントに引っかかることが多かったが、自分の急所に来る奴だけを避ければいいだけなら問題ねぇ。そっから間合いを詰めて反撃してやる――」

 

 この人の斬魄刀の性質考えるとボクシング特訓要るのかなぁって思ってたけど、白哉の千本桜に対応するためには動体視力を鍛えて、相手の懐に潜り込む技術が必須らしい。

 だから、ネムを相手にする特訓はまさにうってつけなのだとか。しっかし、強くなってるはずの阿散井くんを圧倒するネムって……もしかしてめちゃめちゃ強くなってる? 

 

 「涅さん、あ、あたしともお願いします!」

 

 そして、相変わらず変な勘違いをしつつ私を監視している雛森桃ちゃんもスパーリングに参加している。彼女は毎日、素振りを1000回欠かさずに行って、その上でシャドーボクシングもしてるみたいだ。

 

 彼女の斬魄刀って鬼道系なんだから意味ないんじゃないのって聞くと、「飛梅から発せられる炎のスピードが早くなりました」と返された。その上で――。

 

 「あたし、すっごく楽しいんです! 目指すべき方向が見つかったというか……、心の底から頑張ろうと思えますので!」

 

 はにかみながら、笑顔を作る桃ちゃんは恋する乙女は盲目を地でいっていた。目がキラキラしてて可愛いんだけど、進むべき方向が間違いすぎて不憫になる。

 でもなぁ……。本当に楽しそうにやってるんだよなー。サンドバッグ殴るのも、素振りをするのも……。

 もうしばらく見守るとするか……。

 

 

 ◇月◆日 晴れ

 

 ネムが十二番隊の副隊長になってしまった。そういう約束だったし、むしろ遅すぎるくらいかもしれないけど、寂しい。

 マユリさん曰く、いつの間にか自我が芽生えてボクシングを開始したあたりで実験は既に想像を超えた段階に進んでいたとのことだ。

 霊圧も隊長格レベルまで上昇し、白打の戦闘技術も超一流とくれば技術開発局の最高傑作の名に恥じないと得意気である。

 

 「あとはこの暴力癖さえなかったら言うことは無かったヨ。君の遺伝子は野生の獣に近いのではないかネ?」

 

 松葉杖をついて、頭に包帯を巻いているマユリさんが私に苦言を呈した。

 あーあ、また何かしようとして反撃されたんだな……。 

 

 「陽葵様の戦闘力にはまだ到底及びませんので、二番隊を離れても訓練を続けます」

 

 ネムは何やら私に追いつこうとしているらしい。追いつこうも何も、頭の出来も戦闘技術も何もかも彼女が上なんだけどなぁ……。

 

 市丸に続いて、ネムも二番隊を去って行った……。でも、二人のせいというか、おかげというか、二番隊のイメージって相当変わった気がする。まぁ、私も人のこと言えないか……。

 

 

 ♧月▽日 晴れ

 

 夜一様と兄貴が居なくなってそろそろ百年が経過する。

 尸魂界の危機が差し迫るにあたって――私はなーんにもしてないんだけど大丈夫なのかしら……。二つの隊の副隊長なんてやらされてるから忙しくて何もやれてないんだよね……。

 

 せめて卍解でも……、と修行するんだけど斬魄刀を具象化させるなんて全然できない。

 

 市丸も砕蜂もそんなに苦労もせずに覚えちゃったし、最近隊長になった日番谷くんなんて速攻で会得してみんなを驚かせていたし……。凄いよなー。才能がある側の人たちは……。

 

 私なんて未だに虚はぶっ叩くか霊丸をぶっ放すかどっちかでしか仕留められないし……。鬼道もからっきしなんだよね。

 

 つーか、卍解ってどんな能力なんだろう……。

 

 「始解の力の延長線上になるはずだ。私の雀蜂もそうだった……」

 

 砕蜂に相談すると彼女はそう答えた。えっと、あの卍解(ミサイル)って始解の延長線上って認識なの? なんつーか、線の一本や二本飛び越えてそうだけど……。

 

 確かに弐撃決殺が一撃必殺になってオサレだとは思ってるよ。でもなぁ……。これじゃない感も強いじゃない。

 

 「陽葵さんの霊圧なら具象化くらいなら可能なはずなのだが……。もしや対話が上手く行ってないとか?」

 

 砕蜂のセリフは核心を突いてるかもしれない。ウチのカープ馬鹿は野球の応援に行かせろとか無理ばかり言う。

 そして、私がそれを聞き入れないから拗ねてしまっている。

 卍解修得の条件ってもしやカープの試合を見ることなのか……? そんなのってあるのかよ……。

 

 「なるほど。現世でその野球とやらの試合を見ることが卍解を覚える足がかりになるということか。では、この私に任せるといい。隊長の権限で、野球を陽葵さんが見られるように取り図ろう」

 

 マジか……。護廷十三隊の隊長ともなればそんな権限あるんか。

 砕蜂は長く副官で居てくれたお礼と言うことで、現世で私が野球観戦出来るように休みだけでなく、義骸まで用意してくれた。ありがたい。

 

 んで、カープの試合を見に行ったのよ。紅鯉(アカリ)は解放もしてないのにガタガタ揺れるくらい興奮していた。

 これはいい手応えだ。何とかこいつの機嫌を取れれば私も卍解出来るはず……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スコア表示は8対22……。ええ……、広島が8点……、阪神の打線がアホみたいに奮起して22点も取りやがった……。

 

 紅鯉(アカリ)さ〜〜ん! 

 

 ――ダメだ……、返事がないタダの屍のようだ……。

 

 やっぱり勝ちゲームを見せなきゃ無理みたい……。しかし、22点は取られすぎだろ……。笑顔で送り出してくれた砕蜂にどんな顔して会えばいいんだってばよ……。

 

 

 ◎月□日 くもり

 

 ルキアちゃんが現世任務から戻って来ずに行方不明になった。

 いよいよ、BLEACHの本編が開始したのか……。うう……、緊張するな……。

 さて、私もとりあえず藍染の動きには注意しとかなきゃ……。幸い、桃ちゃんは相変わらず私の側にいる。彼女を使ってさり気なく向こうの動きにも気を払っておこう……。

 

 と言うことで、最近はそうやって過ごして来たんだけど――。

 

 「相変わらず、陽葵さんは嫌なタイミングで仕掛けて来るんやね。急に分かり易すぎる探りを入れはるから、藍染隊長も動き辛そうにしとったわ。こんだけ、バレバレの動きをいきなりするんやから性格悪すぎやで」

 

 市丸は苦笑いしながら私の言動についてツッコミを入れてくる。

 一瞬で藍染のことを探ってるのがバレたみたい。私は気付かれないように、話を振ったんだけどそうでもなかったのか……。やはり、侮れない奴だ。

 

 そんで、動揺しすぎて「ルキアちゃんが居なくなって直ぐは露骨だったか」とかまた口を滑らせるポカをしてしまったから始末に負えない。

 

 「やっぱり、陽葵さんも狙ってるんやね。藍染隊長と()()()()()を。恐ろしいわ〜〜。ボクがどっちに付くのか試してはるんやろ? 藍染隊長に教えるかどうかを見極めることで。心配せんでええですって。ボクの上司は陽葵さんだけですから」

 

 市丸は私が崩玉でも狙ってるって勘違いしてるみたいだ。そんなもん要らんのに……。

 彼は調子のいいことを言ってるけど、ホントにそういう態度をやめろ。馬鹿だから、信じたくなるじゃないか……。

 

 こいつが仲間ならどんなに心強いか知っているし――。大体、私が上司ってお前のほうが隊長で立場が上じゃないか……。

 

 

 ◆月★日 晴れ

 

 雛森桃ちゃんの様子が最近より一層、変な気がする。

 私が昔着ていた古着が出てきて処分に困ってると言えばそれを欲しがって、渡すとギュッと抱き締めて幸せそうな顔をしたり、二人で一緒にご飯を食べているとボーッとしたり、顔を見て話をすると顔を赤らめて目を逸したり……。

 

 とにかく変なのだ……。そんなことを思っていたある日のこと――。

 

 「あの! 藍染隊長とのこと応援してます!」

 

 いきなり、桃ちゃんはよく分からんことを叫び出した。

 いやいや、まるで私が藍染のことが好きで告白できない奴みたいな言い方は止めていただきたい。

 

 私はそろそろこの子の勘違いを正す良い機会だと思って、彼女にゆっくりと藍染など全く興味がないことを伝える。

 すると彼女はそれならば藍染のことについて探りを入れた理由は何なのか説明してほしいって言ってきた。

 

 この質問は正直返答に困った。本当のことは言えないから……。

 だから私は「いつか桃ちゃんの力になれるようにだよ。私こそ応援してるから」とか適当なことを言ってしまう。

 

 それを聞いた桃ちゃんは鳩が豆鉄砲を食らったみたいに驚いた顔をしていた。

 そして桃ちゃんは少しだけ間をおいて、決心したような顔つきで口を開く。

 

 「陽葵さんのそういう優しいところとか、びっくりするくらい強いところとか……ずっと見てる内に……、その……気になるようになっちゃいました。だから、分からないんです。あたしがなんで今……陽葵さんみたいになりたいのか……」

 

 桃ちゃんは自分がどうして私の真似をしてるのか分からなくなったとか言い出す。

 えっと、それは君が思いっきり勘違いしてるからだよ……。

 

 「最近は……、陽葵さんのことを考えるだけで胸が……。やだ、あたしったら何を言ってるんだろう……!?」

 

 おいおい、砕蜂が夜一様に向けるような視線を私に送らないでくれ……。

 ていうか、君はこっち側の住人じゃないだろ……。

 

 気付けば桃ちゃんは顔を今までにないくらい赤くして走り去ってしまっていた。

 

 うーん。よく考えたら、これは藍染の作戦か何かに違いないだろうな。そうやって私の懐に入り込ませようとする作戦だ。

 

 あの野郎――百合をナメんじゃねーぞ。

 

 

 ☆月◎日 くもり

 

 兄貴の研究資料が見つかった。彼が住んでいた部屋の掃除をしていると、偶然にも引き出しが二重底になっていることに気付いたからである。

 そこには私が霊圧のコントロールをするにはどういう特訓をしたら良いのか……、が事細かに記されていた。

 どうやらこの課題をクリアすれば、私がリストバンドを外しても生活出来るように霊圧を抑えられるようになるらしい。

 

 リストバンドさえ外すことが出来たらそれだけで霊圧が上がるから多少は強くなれるはずだ。

 よし、ルキアちゃんが居なくなって、白哉くんたちがそろそろ捜索に出ようとしてるし、私も一護たちの戦力になるように特訓を頑張ってみるか……。

 

 何なに、まずは合言葉を言ってリストバンドを外す……。

 

 私は彼の残した資料の特訓の方法を後ろから読んでることに気付いて無かった。

 リストバンドを外すのは特訓の最終段階なのに――。

 

 気付いた時にはもう遅かった。前回、兄貴の前で外した時以上の力が溢れ出て、目の前の建物を吹き飛ばしてしまう。えっと……、確かあそこは四十六室の会議室がある棟だったような……。

 

 兄貴が前の失敗を教訓に()()()をもう一度叫ぶとオートで元に戻るようにリストバンドを作り直してくれたから、すぐに元に戻すことは出来たけど……一瞬だけでも解放された霊圧のせいでとんでもない被害が出てしまった。

 

 

 

 

 「陽葵さん、これはどういう作戦なんや? まさか四十六室怒らせて、禁固刑に処せられるなんて……。藍染隊長は表情に出しとらんけど、不気味がってるであれは」

 

 そう、私は修行中に誤って建物を壊したことは初めてではないが、今まで当たり前だけど四十六室に被害を出したことはなかった。

 今回は人気のない場所を選んだせいでエライもんを壊してしまったのである。

 

 禁固六ヶ月――色んな隊長や副隊長が弁護してくれて護廷十三隊からの除名だけはギリギリ避けられたけれど……。

 

 うへぇ……。よりによって、一番大事なときに牢屋に入れられるなんて……。

 

 夜一様との再会を夢見てこのときを待っていたのに……。まさか、独房から一護たちが来るのを待つことになるなんて――。前途多難である……。

 

 




ということで、原作開始したのはいいけど、陽葵はまさかの独房スタートです。
脳筋設定で書き始めたけど、思った以上に頭悪くなってしまった……。大丈夫か……、この主人公で……。

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