【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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前半だけ、恋次視点です。



尸魂界篇
十三ページ目と恋次の奮闘


 ルキアの奴が人間に力を渡しやがったせいで死罪――なんか陽葵さんまで投獄されてるし、何がどうなってやがる。

 

 そんな中、旅禍(りょか)が瀞霊廷に侵入したと報が入った。

 そして、あの一角さんまで旅禍に倒されてしまう。正直言って驚いたぜ。現世であいつが死神の力を渡した奴がこっちまでくるなんてよぉ。

 

 ――俺が落とし前をつける。他の誰にもやらせねぇ。

 俺は懺罪宮に奴が向かうと読んで待ち構えた。

 

 予想通り奴は来やがった。

 

 ――黒崎一護……テメーは俺がぶっ倒す。

 

 

 奴は俺が思った以上に強かった。いや、強いだけじゃねぇ。

 あの野郎、死角から初見で俺の蛇尾丸を躱したんだ。

 あの芸当には見覚えがある。俺に戦い方の進むべき道を指し示してくれた浦原陽葵さん、そして修行に付き合ってくれた涅ネム……。

 この二人のやり方に酷似してやがるんだ。まるで見えない部分も見えているようなそんなデタラメな勘の良さ。一体、どんな修行をしたら身に付くってんだ――。

 

 よく見りゃ、霊力を一点集中して爆発的に攻撃力を上げて攻めるところもあの人に似ている。

 幸い、俺の方が経験は上だ。そりゃあそうだ、あの厳しいスパーリングで鍛えた動体視力はあらゆる攻撃を見切ることが出来る。

 当たらねぇよ。そんな簡単によぉ……。

 

 だけど、なんだ……。この違和感……。奴はまだ本気じゃないような……。

 

 ――そう思った刹那。俺は斬られていた。斬魄刀が霊力を喰らって巨大な斬撃飛ばして来やがった、だと……!? 切り札まであの人(霊丸)に似てやがるとは。気に入らねぇ……!

 

 だが、俺は意地でも負けられねぇ。蛇尾丸が折れようが関係ねぇ。

 

 

 まだ、俺の精神(こころ)が折れてねぇんだから――。

 

 奴の動きに全神経を集中させろ……。あの斬撃はもう一度食らったら終わりだ。

 上手く躱して、間合いを詰めれば……勝機はある!

 

 サンドバッグを叩きまくった経験を今こそ活かすんだ。拳に霊力を集中させて爆発させろ――。

 

 ――呆気なく、そう呆気なく俺は奴との間合いを詰める。

 あの野郎……何考えてやがる! なぜ……斬魄刀を投げ捨てるような真似を――。

 

 俺が拳を繰り出すのと同時にヤツも正拳を放つ。 

 なんだ……!? こいつも俺と同じことを!? この武術は聞いたことがある……確か、空手ってやつだ!

 

  拳と拳がぶつかり合い轟音が鳴り響く――。

 

 そこからは死神同士の戦いとは言えなかったかもしれねぇ。

 お互いに血を大量に流しながらの殴り合い……。口の中が血の味しかしねぇ。

 グローブを付けずに殴り合うなんざ何年ぶりだろうか……。

 まだまだ俺は戦える! 闘志の一片でも残っていりゃあ逆転出来ることを知ってるからなぁっ……!

 

 どれだけ拳をぶつけたのか解かんねぇ。どれだけ拳を食らったのかはもっと解かんねぇ……。

 

 気付いたら俺の目には空が映っていた。そうか――俺は倒れているのか……。

 

 黒崎一護――テメー、運が良いぜ。俺みたいな副隊長が10人くらい何とかなりそうだと言ってたがな……。もし、11人目の副隊長が動けていたら、夢も希望もなかったんだからよ……。

 

 陽葵さん、すまねぇ……。あんたに無理言って色々と良くしてもらったのに――負けちまった……。んで、負かした相手を頼るなんて恥ずかしいこと、しちまった……。

 

 「黒崎! 恥を承知で頼む! ルキアを! ルキアを助けてくれ……!」

 

 黒崎の野郎……なんで、斬魄刀を捨てたのか質問したら、「何となく」だってよ。

 そういう何にも考えてねぇとこまで、陽葵さん……あんたに良く似てやがる……。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ◎月●日

 

 ちくしょう。夜一様たちがせっかくこっちに来たっていうのに暇だ! これも藍染の奴のせいだ……。私を懺罪宮に閉じ込めろって指示は絶対にあいつだろう。私の霊圧なら普通の牢屋じゃ投獄の意味を成さないからって……。

 この懺罪宮は殺気石(せっきせき)とかいう、霊力を完全に遮断する鉱石を用いて作られている。

 加工後の切断面からも遮魂膜と呼ばれる霊力を分解する波動を放出するので、通常の霊力による攻撃では破壊は不可能らしい。これじゃ外に出られんじゃないか。上の方にはルキアちゃんが投獄されてるみたいなのに……。

 

 市丸は藍染が焦って四十六室の建物を速攻で子飼いの部下に直させたとか言ってたけど――なんかあったっけ? 大事なことだった気がするが思い出せない……。

 

 あと、隠密機動の部下の情報によると昨日は無許可で出撃した阿散井くんが負けちゃって、牢屋に入れられたらしい。

 んで、今朝頃になって藍染死亡騒ぎが起きて、市丸が殺人犯だと思い込んだ桃ちゃんが暴れたりする騒動もあったんだとさ。

 桃ちゃんも投獄されたんか。あの子、結構なひどい目に遭うから何とかしてやりたいな……。

 

 ううっ……、外に出たい。入って数日は飯も食べれるし、仕事もしなくて良いし楽園じゃんとか思ってたけど……。このまま、ルキアちゃんが処刑されるってのに、それを人任せにして外に出ないって人としてどーなのよ。

 どうにか出る方法――誰かに開けてもらうってのは無理だしなぁ……。でも、この霊気を遮断する材質で作られてるここをぶち破るなんて……。んっ……? 待てよ……。

 

 そういや、兄貴が昔……言ってたな。

 

 「密度が常識外れに高い霊子体ならば遮魂膜を突き破ることも出来るっス。そんな芸当出来たら投獄出来る場所が無くなるっスけど」

 

 密度が常識外れに高い霊子体――全然分からんけど、何かギューッとしたイメージかな……? 私はリストバンドの霊圧を五分の一に調節して、拳にいつも以上に霊力を込める。

 

 ――そして、懺罪宮の床を思いっきりぶん殴る。

 やばっ――足元から床の底が抜けちゃったから、瓦礫と一緒に私も落ちちゃった……。てか、意外と殺気石って簡単に割れるじゃん。

 

 

 ――落ちた先は地下道だった。つーか、よくよく考えると投獄出来る場所がないって、ビスケット・オリバみたいでヤダな。オリバ系女子とか、可愛くないし……。

 

 さてと、こっからどうするか。投獄されるときに斬魄刀は取り上げられてしまって二番隊の隊舎に置いてる。多分、砕蜂の部屋にあるはずだ。

 流石に藍染や下手したら市丸とも戦うかもしれないのに丸腰はマズいし……取りに行くか……。

 

 ということで、斬魄刀を取り戻しに二番隊の隊舎に向かうことにした。地下水路を泳いで行けば近道出来るはず……。ちょっと濡れるけどまぁいいか。

 

 私は地下水路の中に飛び込んだ――。

 

 

 

 そして、しばらく泳ぐと知らない大きな霊圧を感じる。

 これってもしかして……。

 

 

 私が地下水路から飛び出すと既視感のあるオレンジ頭の死神と厳つい男、それとなよなよとした死神がいた。

 

 「…………」

 

 なんか、凄い表情で私を見ている。オレンジの髪って、多分一護くんだよね……。

 うわぁ……、それにしても思ったより囚人服が水分吸って気持ち悪いな〜〜。

 

 「…………」

 

 髪型も乱れちゃったし……。ていうか、スッピンじゃん。一護くんに初対面だというのにスッピンってまずくない? 恥ずかしいな〜。隊舎に戻ったら先ずは化粧して、それから……。

 

 「…………」

 

 「――あれ? ええーっと、君たち誰?」

 

 「――今ごろかよっ!」

 

 私は一護くんたちを放置して化粧をしてないことを随分と悩んでいたみたいで、開口一番に彼は私にツッコミを入れる。いやー、なかなか切れ味の鋭いツッコミじゃないか。

 ちょっと、待ってね。とりあえず、服を搾って……、髪を整えて、と……。

 

 「う、()()副隊長!!」

 

 「――っ!? 浦原って……」  

 

 眠たそうな顔をした死神は私のことを知ってるみたいだ。この子はおそらく四番隊の山田花太郎くんだろう……。じゃあ、厳つい男は志波岩鷲くんかな……。

 一護くんは“浦原”って名前にピンときたみたいだね。というか、兄貴のヤツは私のことを話してないのかよ……。

 

 「こ、こいつ副隊長なのかよ! 同じ副隊長でも昨日の奴とまるで霊圧が違うじゃねーか! まるで、大人と子供くらいの差だ!」

 

 岩鷲くん、それはいくらなんでも言いすぎだよ。阿散井くんと比べて霊圧はあるかもしれないけど、大人と子供の差ほどではないかな……。

 

 「に、逃げましょう! 浦原副隊長は()()()()()()()()()()()()()()()投獄されていまして……。色々と危険な人なんです! その実力は隊長に匹敵するって言われてて、護廷十三隊で最も恐れられてる人の一人です――!」

 

 「んなこと見りゃ解るよ。こいつがとんでもねぇ化物っつーことはな。体の震えが止まらねぇ……! こんな経験初めてだ……」

 

 あーっ! 酷〜〜い! 私がヤバい奴みたいな説明すんの止めてよ。つーか、誰だ? 私が凶暴過ぎて投獄されたとか噂流してんの。一護くんたちも怖がってんじゃん……。

 よし、漫画の主人公との初対面だ。ビシッと格好良く自己紹介するぞ……!

 

 「初めまして、私は浦原陽葵。陽葵ちゃんって呼んでね」

 

 「…………」

 

 目一杯、愛想よく笑顔を作って自己紹介するも一護くんたちは恐ろしい奴と相対してますみたいな表情を崩さない。汗だくの顔をこちらに向けて斬月構えるの止めてくれない……。

 いやいや、そういう態度は藍染とかユーハバッハとかボスキャラまでとっといてよ。

 

 「――ちゃん付けが厳しいなら、陽葵さんでもいいよ……ぐすん……」

 

 私は若い子から“ちゃん付け”されることを諦めた。なんか、年齢を感じて涙が出てきたよ。

 

 「――陽葵さん。浦原って名前だけど、もしかして浦原喜助って名前を知ってるか?」

 

 「うん。そいつ、私の兄貴――」

 

 「あ、兄貴ぃ……?」

 

 そこから、一護くんたちに私が浦原喜助の妹であることを教えた。

 そして、ルキアちゃんを自分もまた助けたいということを伝える。

 喜助の妹でルキアの上司ということを両方告げるとようやく警戒を解いてくれた。まぁ、何で投獄されたのか聞かれて言い淀んでいたら、また変な顔されたけど……。

 

 一護くんは兄貴に扱かれたみたいで、目隠しで霊圧を感じ取りつつ、霊力を拳に集中して空手をするみたいな変な特訓をさせられたりしたらしい。

 なんか、私のせいで兄貴と一護くんの特訓内容変わってない……?

 

 岩鷲くんや花太郎くんは私が付いてくると心強いみたいなことを言ってくれたけど、私は隊長たちとの戦闘に備えて斬魄刀を取ってくることを説明して、後で合流することにした。

 

 一護くん……、すっごく頼りがいのある男って感じで初対面なのにマジで好感が持てた。正直言って、私は邪魔かもしれないけど、サポートしていけるところは、サポートしたい。

 とりあえず、「隊長たちは私なんかよりも数段強いから気を引き締めるように」とアドバイスしとく。

 

 ということで、彼らは引き続き懺罪宮を目指して、私は二番隊の隊舎に向かって走り出した。

 

 よし、ここまではどうやら漫画どおりに事が進んでるぞ――。そう安心してたんだけど……。

 

 目の前にはネムにボコボコにされているメガネをかけた若い男がいた。

 あれって、もしかして石田雨竜くん……? そういや、今のネムって単純な戦闘力だけで言えばマユリさんよりずっと強いんだっけ……。

 これって、もしかして私のせい? 違うよね? そうだと言ってくれ……。うわっ……、あの拳をモロに食らったら……。

 

 どーすれば、いいんだってばよ――。

 

 

 《日記はまだ続いている》

 




恋次も強くなってたけど、一護も目隠しトレーニングを受けて強くなってたから、何とかゲームオーバーを避けることが出来ました。

しかし、ネムが隊長クラスまでパワーアップしてしまい、雨竜をオーバーキルしてしまう結果に……。

感想で書かれていたように、牢屋で強者のように大人しく待ち構えるようなオサレなこと出来ませんし、最善の行動を取るなんて絶対に陽葵には無理なのです。
 ちなみに一護たちと会ったときの陽葵の霊圧は十分の一に調節されてます。


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