【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記 作:ルピーの指輪
十七ページ目のあとがきでネムの制服姿が見たいとか書いちゃってたんですけど、そのリクエストを朽木_様が聞いてくださり、かわいいイラストを頂きました。
十七ページ目のあとがきに掲載しましたので、よろしければ是非ご覧になってください。
今回の前半はルキア視点です。感想欄では三人の十刃は捨て駒だと言われてましたが……。
海燕殿の霊体を喰らったという
井上を助けるために意気込んでいたのに……もう地に伏すようなことになるなんて情けない……。
せめて霊力を少しでも回復することが出来れば、傷の治療をすることが――そんなことが頭に浮かんだとき、先程の十刃よりも大きな霊圧が近くに現れた。
私は一瞬身構えようとしたが、すぐに安心する。この大きくて温かい霊圧は陽葵殿の霊圧だ。
「おろっ? ルキアちゃん、大変じゃない」
陽葵殿は私の傷口の応急処置をして、持ってきたという弁当を私に少しずつ食べさせる。これこそ、彼女だけが使える特技……霊力回復料理だ。
彼女の大きすぎる霊力が込められた手料理はまたたく間に私の霊圧を完全回復させるに至った。これなら、自分の回道で傷の手当ては出来る。
「そっか、十刃を倒したんだ。さすがはルキアちゃんだね。私も負けないように頑張らなきゃ。一護くんとかネムに先を越されて十刃と戦う機会がなかったりするかもしれないけど……」
陽葵殿はいたずらっぽく笑って、いつものように私の頭を撫でてくれた。
この人がいるだけで負ける気がしないのは、どうしてだろう。
恐らく、陽葵殿の実力なら十刃の一人や二人――。
そう思っていると大きな霊圧が三つもこちらに向かってくるのを感じた。
これは――まさか……。陽葵殿を狙って……。
「ちっ、藍染もビビりすぎだな。たかが女一人に三人がかりたぁ、苛つくぜ」
「ノイトラ、藍染様と言いなさい。殺しますよ」
「浦原
先程のアーロニーロよりも明らかに霊圧が大きい。恐らく三人とも十刃なのだろう。
藍染のやつ、陽葵殿をかなり警戒しているのだな。
「祈れ――
「軋れ――
「鎮まれ――
破面共特有の刀剣解放……
三人の霊圧は先程までよりもさらに増大する。しかし、さすがは陽葵殿だ。刀剣解放状態の彼らの霊圧を更に超えている。
奴らの能力は解らぬが陽葵殿なら……増援が来るまで或いは――。
しかし、私の希望的観測は見事に打ち破られる。
「それでは、さっそく絶望を味わって貰いましょう」
「女一人に三人ってだけでもムカつくってのに、ウルキオラの借り物までもう使うのかよ」
「じゃあ、テメーだけ使わずに死んでりゃいい」
――異形……姿形だけではない。霊圧そのものが暗く重いモノへと変質する。
大きさもそうだが、今まで私たちが対峙してきたどの虚や破面とも質が違う化物が目の前に現れた。
「――
「藍染様には感謝してるぜ。リベンジのチャンスをこうして与えてくれたんだからなァ」
「グリムジョー、テメーは下がってな。俺が一瞬で終わらせる。護廷十三隊、最強だかなんだか知らねぇが。この力を手に入れた俺はスタークにだって勝てる」
「ルキアちゃん、ちょっと離れようか」
こんな状況でも陽葵殿は優しく微笑みながら、私を抱きかかえる。凄まじい霊圧のせいで息苦しく感じていたが、こんなにも彼女の腕の中は安心感があるのか……。
しかし、あいつらが化物であることは紛れもない事実だ。如何に陽葵さんが強くとも――。
「じゃあ、二分の一に調節してっと……」
彼女がそう呟くと、陽葵さんの霊圧が爆発的に上昇する。
な、なんだ……、この霊圧は……!? 卍解状態でもないにも関わらず……先程までとは比べ物にならないくらいまで大きくなったぞ。
に、二分の一とはどういうことだ? まさか、フルパワーの半分だとでもいうのか……。
十刃たちもあまりの霊圧の上昇に若干怯んでいるようにも見える。
彼女は一瞬で距離を取り、私を下ろす。そして、いつものように「かっ飛ばせ」と解号を唱え――目にも止まらぬスピードで十刃たちに肉薄した――。
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◇月◎日 晴れ(ニページ目)
おいおい、
私がフルパワーの持続時間を上昇するのと同時に訓練したのはリストバンドによる霊圧の抑制を少なくしていくことだ。
兄貴が100年もかけて準備してくれたおかげで、私は何とか二分の一まで霊圧を解放しても戦うにあたって不自由がない程度までコントロールが出来るようになった。まぁ、時々些細なミスをすることもあるけど……。
藍染と戦うにはまだまだ不足だけど、戦闘力的に言えばかなりパワーアップ出来たと思う。
兄貴は私よりも私のことを知ってるなぁ。あんな訓練は自分じゃ絶対に思いつかなかったよ。
ルキアちゃんを抱きかかえて、連中と距離を取り……彼女の安全を最初に確保する。
さて、十刃の三人は見た目がかなり変わって禍々しい感じだな……。こりゃ、骨が折れそうだ。
「とにかく、十刃最速の私があの女の支配権を奪います。動きを封じれば、如何にパワーがあろうと関係ありません」
ゾマリって、足が早い子なんだっけ? 色黒の子って確かに足早そうだよね。
「わ、私の
いや、足に力を入れて無理やり速度を上げてるだけだけど……。動くたびに建物の床に穴が空いちゃってるけど、藍染の家だしまぁ良いか。
「しかし……
ゾマリが増えた。こいつの能力が私は全然思い出せずにいる。
分身の術が特技だったのか……。
「今です! 私の
「ちっ! ゾマリなんかのおこぼれに飛びつくなんざ――まぁいい。殺しとくか」
「粉々に砕いてやる!
ゾマリの特技が目で睨んだところの動きを支配するってことを思い出したとき――既に遅かった。
彼の体にある気色悪い無数の目がこちらを睨んだ瞬間にノイトラとグリムジョーが一斉にこっちに向かってくる。
ま、まずい――このままじゃ……。
「――ぐふっ……お、俺の
「がはっ……! ゾマリ、て、てめえっ……!」
意外なことに体がなんとも無かったから、ノイトラの腹を左手で殴り、グリムジョーの両手から刃が沢山飛び出てきたので、それを霊丸で彼ごと吹き飛ばした。
二人はその場に蹲り……、ゾマリを睨む。そりゃあそうだ。こいつは私の動きを封じたとか言って、それが嘘だったんだから。怒るよね……。
「まさか、藍染様が仰っていた鬼道を無効化する防御……。わ、私の
大量のゾマリが私の周りに現れて、ぐるぐる回る。
どれが本物かわからん。こういうときは頭脳プレーだ。
――全部殴った。百体全部殴れば、どれか本物だろ。
ゾマリは頭から血を吹き出しながら、藍染様万歳とか言って倒れる。
グリムジョーとノイトラも、そのあと立ち上がって、長い名前のオサレな大技を使ってきたけど、特大の霊丸をグミ撃ちしてたら、知らない内に倒れてくれてた。
うーん。立派な建物だったのに瓦礫の山にしちゃって悪いなぁ。
藍染の家で本当によかった。じゃなかったら始末書何枚書かされることか……。
そして、後ろで見てたルキアちゃんと合流。破面が何体も襲ってきたけど、適当に蹴散らしながら一護くんの方に向かう。
途中でネムやマユリさん、それに阿散井くんとも合流。雨竜くんとチャドくんは一護くんのところにいち早く向かったそうだ。
阿散井くんは、十刃のザエルアポロってやつに苦戦したけど、ボクシング特訓のおかげで軽傷で済んだらしい。
倒したのはネムだから悔しいとも言ってたけど……。
なんか、ザエルアポロはネムの体に卵を産もうとかしたらしいんだけど、それを感知した彼女は逆にカウンターを食らわせて、終始サンドバッグ状態にされたそうだ。
マユリさんから、「君に似て野蛮な戦い方が板についてきたヨ」とか言ってたけど、これって褒め言葉なのかな……。
私たちが一護くんのところに辿り着いたとき、彼はウルキオラを倒し終わった後だった。
彼は疲労困憊って感じで、仲間に支えられて立ち上がるのがやっとだったので、私はルキアちゃんに預けてた弁当を彼に食べさせる。
マユリさんが
とりま、卯ノ花さんと一護くんとネムに先に現世に行ってもらうということで、私が巨大ヤミーと戦うことに。
前に戦ったときは100パーセント、全開の力で戦ったし、ヤミーも小さかったから、すぐ倒すことが出来たけど……、今回はそうはいかんだろう。
「ずっとテメーへの怒りを溜めていたぜ! 俺が
とにかく、私はどんどんデカくなるヤミーの攻撃を躱しながら、霊力を
作戦は何度も避けながら溜めてぶっ放すを繰り返すという、ヒットアンドアウェイ作戦だ。
今日の私ってば頭いい。冷静に考えて戦うことだって覚えたんだぞ。
そして、霊力を極限まで溜めて、私はヤミーの頭めがけて紅鯉を振り落とした。
――ヤミー、地面に埋まって動かなくなっちゃった。
これで、私も現世に応援に行ける。一護くんが倒してくれるかもしれないけど、私も藍染を一発くらいはぶん殴ってやりたいし。
ということで、私はマユリさんに
どうしてだよ? さっきまで行けって言ってたのに……。
「君が敵地だからって、力加減も考えずに大技を放つから、余波で装置が壊れたんだヨ! 相変わらず、君は信じられない脳筋だネ!」
えっ? わ、私のせいで装置壊れたの? 一護くんたちは現世に着いた後だったから良かったけど……。
これじゃ、私が本当のバカってことになっちゃう。
「なっちゃうじゃなくて、バカなんだヨ! 直すまで時間がかかる。少しは正座して反省したまえ!」
マユリさんの説教を正座して聞く私。
そんな、私を見る阿散井くんたちの視線が痛かった――。
《日記はまだまだ続いている》
マッドサイエンティストのマユリ様が好きなのに、常識人にしか見えないんだけど……。
陽葵の新必殺は逆界王拳1/2倍でした。早く等倍をマスターして欲しい。
次回から舞台は現世に移ります!