【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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作者の原作知識がにわかなんで矛盾とかあったら申し訳ないです。


ニページ目

 △月◎日 雨

 

 真央霊術院での生活はまぁまぁ楽しい。授業も四楓院家でのトレーニングと比べれば天国だ。

 成績は夜一様と兄貴がトップ争いをしてる。というより、スペックがそもそも他の子と違うので本人たちは争っている感覚すらないのだろう。

 普通にやって1番か2番を取っている感じだ。

 

 私はというと中の上くらいの成績を何とかキープしてる。

 漫画のせいで忘れてたけど、死神の仕事って(ホロウ)をぶっ倒すことだけじゃなかった。

 (プラス)っていう迷ってる霊を尸魂界に送ったりするのも大事な仕事だったりする。こんな設定すっかり忘れてたわ。後半とか最早滅却師(クインシー)としか戦ってなかったし、そんな単語初期の初期しか出てなかったはずだし。

 要するに尸魂界と現世の魂魄の量を均等に保つことが死神の最も大事な仕事ってことなんだけど、これが意外と繊細な作業なのである。

 

 一護とかすげーよな。ルキアの補助があったとはいえ、いきなり死神代行とか無茶ぶり何とかしたんだもんなー。私なんかこのまま現世に出ると魂葬のとき魂魄破裂するって注意されたし。霊圧が抑えられてもまだまだ微妙なコントロールが苦手なんだよね。

 ちなみに一護が知らん内に修得してた瞬歩もまだ使えないままである。パワータイプがスピードに翻弄されて負けるよくある未来しか見えねぇ……。

 

 でも、兄貴のリストバンドのおかげで何とか悪目立ちせずにやっていけてる。無事に卒業して夜一様に褒めてもらいたい。

 

 

 □月♡日 晴れ

 

 完全に慣れちゃったみたい。リストバンドに……。

 霊圧の急上昇がまた始まった。何これ、病気なの……。剣術の試合なのに咄嗟に剣を躱してぶん殴って勝負を決めたり、瞬歩の練習でも足に霊気を込めすぎて大ジャンプして頭を思いきり天井で打ったりして酷いものである。

 兄貴にお願いして吸収される霊力の量を上げてもらうも、もう諦めて霊圧のコントロールの訓練に全振りしろと言われた。

 

 「霊力さえ高ければ鬼道も白打も出来なくても何とかなるっス。陽葵ちゃんは深く考えずに手加減を覚えるだけでいいんスよ」

 

 ――要約すると無能なんだから色んな技の修得は諦めろということだ。で、霊圧の高さだけが取り柄なんだから、それを極めろと……。

 兄貴の言うことは漫画じゃ間違いなしだったからなー。これは聞いといたほうがいいだろう。

 つーか、死神になれても始解すら使えなかったら、剣八コースじゃない? いや、彼には戦闘のセンスがあったからそれよりも酷い。

 とりあえず、高まってくる霊圧をコントロール出来るようにならなきゃ日常生活も送れないかもしれない。

 

 ドラゴンボールで悟空がスーパーサイヤ人のまま生活してると食器を何個も壊したりしてたみたいな現象も起こりかねない。そうなったら、いよいよ私は鼻つまみ者になる。

 この日から兄貴の指導の下、霊圧のコントロールの特訓が始まった。

 

 

 ◆月○日 くもり

 

 あかん、あかーん。これは、あかんて。いやいやいやいや、なんてこった。うわー、こんなんマジかー。

 

《以下、十数行に渡って内容のない言葉がひたすら綴られている》

 

 びっくりした。まさか、こんな展開になるなんて。

 兄貴が私と霊圧のコントロールの特訓をしてると、そこに夜一様がひょっこり現れた。彼女とはカリキュラムが違うから最近殆ど会えてなかった。

 相変わらずスキンシップが激しくて、私が男だったら絶対に前かがみになるようなことをいっぱいしていった。なんであの人はあんないい匂いなんだろう。これはもう、百合コース待ったなしである。

 

 それで、私の霊圧を見た夜一様は自分と本気で試合したいと申し込まれたのだ。素手同士で……。

 ここで勝てたら格好いいんだけど、結果は惨敗。よく考えたらみんなが斬魄刀を使う中、この人だけだよ素手で戦って最後までインフレに付いてきたのは……。白打で戦った方が刀使うよりも強いってマジだったんだね……。

 でも、試合が終わったあと、夜一様はすげー汗かいてた。私は泥まみれだけど彼女が手加減して当ててくれたので疲労はそんなにない。

 

 なんで、そんなに疲れてるのか質問すると……。

 

 「阿呆。手加減を知らないお主の拳を受けたら明日の予定を全部キャンセルせねばならんじゃろうが」と言われた。

 

 なんでも、ブンブン振り回す私の拳が凶器にしか見えずに躱して当てることに死ぬほどの集中力を注いだのだそうだ。

 そっか。当てたら夜一様といえども危険な目に遭わせるところだったのか。こりゃ、マジで頑張ってコントロール出来るようにならないと。

 真面目にそんなことを考えてたら夜一様から思いもよらない一言が飛び出す。

 

 

 

 「じゃが、陽葵も頼りになるようになった。お互い埃まみれじゃし、()()()風呂にでも入るか!」

 

 

 

 

 ――時が止まった。完全に私の時がこのとき止まっていた。セルフでザ・ワールドを体験していたのである。

 よ、よ、夜一様とお風呂て、そんなん良いの〜〜? だって主君だよ、この人。もう何年かすると当主になる人だよ。四楓院家の……。

 なんか、初めて女の子の体に生まれて良かったとか不埒なこと思ったわ……。

 

 しかし、そんな私に全裸の夜一様は刺激が強すぎたのか……背中を流し合った後でソッコーで湯当たりしてしまった……。彼女の肢体をもっと目に焼き付きたかったのに――目を覚ますと介抱してくれてた鉄裁さんの顔のドアップである。

 

 だから、何とか記憶に焼き付けた夜一様のナイスバディを思い出そうとすると鉄裁が横入りする。邪魔である。私の煩悩から消えてほしい……。ちくしょー!

 

 

 △月□日 くもり時々雨

 

 たまには転生者らしく原作知識についてどう利用するか考えてみようと思う。

 何事もなくこのまま無事に死神になって生きていったとして……大きな面倒事が必ず待っている。

 まずはヨン様こと藍染惣右介だ。彼って同期くらいかなって思ったけど学校にはいないから先輩かちょっと後輩かどっちかだろう。

 藍染のせいで兄貴も追放されて夜一様も出ていくことになるんだもんなー。まぁ、そのおかげで主人公が無事に誕生するんだから、後々のことを考えるとグッジョブだし、ユーハバッハは彼無しでは倒せなかっただろうから結果的には大正義なのかもしれないけど。

 じゃあ、私はどう身を振れば良いか……考えた結果……何もしないほうが良いんじゃね?って結論に至った。

 

 よくある凄い力を持った転生者が立ち回っていい方向に転がり込むとかそんなことバカな私には出来ないし。つーか、そこらの転生者なんかよりもウチの兄貴が数段有能だし……。

 出来るだけ介入せずにどうしてもという時は気の利いたアドバイスを送れるように準備しとくぐらいで良さそうだ。

 

 転生者なら何か秘密特訓してアバンストラッシュとか牙突とか小学校のときに傘を振り回して練習した技とか覚えたくなるかもしれないけど……本っ当に不器用なんだ私は。

 

 修行しても強くなれる気がしない……それどころか中途半端に強くなったら狙われるリスクすら感じる。パワー系の脳筋って噛ませ犬確定だし……。剣八くらいまで行けたら別だけど……。多分、私は頑張って狛村くらいだ……。黒棺でやられちゃう役になるだけだ……。

 

 最近、霊圧を抑えることをようやく覚えただけで、未だに右ストレート以外は使い物にならない現状なんだ。授業もギリギリ合格点をもらってる感じだし……。

 

 だけど完全催眠だけはかかりたくない。あんなのかかったら間違って愛しの夜一様に斬りかかるなんて事もあり得る。返り討ちだろうけど。

 要するに藍染の始解を見なければ良いんだ。つまり目を瞑っても違和感を感じられなきゃ良いということ。

 

 だから、兄貴にお願いしてみた。“目を瞑っても、目を開けてるように見えるアイマスク”を作ってくれって。自衛するために……。

 ドラえもんじゃないんだから、そんな都合の良い道具なんか出てくるはずないと思うじゃん? あの兄貴は何でも作れるからやばいんだって。浦えもんって呼ばれてた意味がよくわかる。

 兄である浦原喜助はたったの3日で約束のブツを作ってくれた。

 さっそく装着してみる。うん、何も見えない。真っ暗だ。私は兄貴に文句を言った。どういうつもりかと……。すると……。

 

 「こっちから見るとバッチリ目を開けてるように見えるっスよ。あとは陽葵ちゃんが霊圧の感知能力を高めて視界を失っても自由に動けるようになるだけっス」

 

 兄貴はめちゃめちゃ明るい口調で無茶ぶりをしてきた。「だけっス」じゃねーよ。

 

 どうやら、私がこのアイテムを所望したのは目を瞑っても戦えるくらいの霊圧感知能力が欲しいからだと勘違いしたようだ。

 要するに「後ろの天津飯が右の手刀でオラを狙ってる」みたいに気を察知して動きを知るような事が霊圧を感知して出来るようになればアイマスクをつけても自然に生活が出来ると……。

 

 この日から兄貴との修行メニューに視覚を断って戦うという無茶なトレーニングが加わった――。

 

 「最近、陽葵ちゃんが妙にやる気になってくれて色んな道具が試せるから嬉しいっス」

 

 兄貴は強くなるというより、私を使って実験出来るのが楽しいみたいである。まぁ、こうしてると夜一様にも会えるから私も楽しいんだけどね……。

 

 

 ♤月□日

 

 真央霊術院をついに卒業した。兄貴たちは3年も前に卒業しててもうとっくに席官になってるけど……。

 これで、正式に護廷十三隊のメンバーだ。もちろん、私は兄貴や夜一様がいる2番隊に所属することとなった。

 

 しかし、確かにおめでたい日なのであるが、私は自分の脳筋加減を呪っている。

 

 真央霊術院に入院したときに配られ、常に寝食を共にしてきた斬魄刀――浅打が正式に我が物となるのだが、入隊式のときに新隊員たちがそれを一斉に振り抜くみたいなそんな余興があり、私も浮かれてそれを振り抜いた。

 

 霊圧のコントロールのことなどすっかり忘れて刀を振り抜いたものだから、刀の大きさがビルくらいデカくなって会場を破壊してしまったのだ。

 よくある転生者が無双する小説とかだと「オレ、なんかやっちゃいましたか?」で済むのだが、やっちゃいましたかじゃ済まされなかった。

 入隊初日に始末書を書くのは前代未聞らしい。そして、偉い人に謝りまくってきた。兄貴と夜一様まで一緒に……。

 「さすがに擁護出来ないっス。そのためにずっと訓練してきたんスから」

 あの兄貴に普通にドン引きされてしまった。早く始解を修得せねば……。

 不器用な私は何年それにかかるのか不安で仕方ないのである――。

 




陽葵はずっとリストバンド付けっぱなしです。霊圧と感知能力特化型であとはポンコツというステ振りでいこうと思ってます。
感知能力に長けるところで剣八との差別化をしようかなとか思っております。

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